「わ~~! けっこう広いんやなあ。」
南と真太郎、そして志藤とゆうこは彼らの運転する車で、江ノ島の水族館へやって来た。
「水族館やなんて。 子供みたいやなあ。」
志藤は思わずつぶやいた。
「ちょっと! 何一人で冷めてんの!? もっとほら。 童心に帰ってさあ、」
南は彼をつついた。
「あんたひとりはしゃいでるやん、」
志藤はアハハと笑った。
「アホ! 自分ばっか大人~みたいな顔して。」
二人のやり取りに、真太郎とゆうこは顔を見合わせて笑った。
「あ、クラゲもいる、」
ゆうこが小走りに移動しようとすると、
「あ、走ったらアカンやんか。」
志藤は彼女の腕を取り、いきなりぎゅっと手をつないできた。
「ちょ、ちょっと・・」
ゆうこは恥ずかしそうな顔をしたが、
「あ~~、手えつないでるし~。 真太郎! あたしたちも負けずに!」
南はすかさず、ふざけて真太郎の腕を取った。
「バカ・・」
真太郎は笑ってしまった。
「白川さんたちはまだつきあってほんの数ヶ月なんだよ? おれらと一緒じゃないんだから・・」
真太郎の言葉に
「え? あ・・そうか。 そう言われてみればそやなあ。 なんかずっと前からつきあってるような気もする・・」
「昼間に・・こうして出かけるのは初めてですね、」
ゆうこは少し恥ずかしそうに言った。
「あー・・そっか。 夜ばっかやったんやな。」
南の冗談に志藤は笑ってしまい、思わず彼女の後頭部につっこんでしまった。
「ちょっとお・・。 普通女子のここにつっこむ~?」
「ほんまに、もう昼間っから下品すぎるって!」
志藤さんて
ほんとはこんなに明るい人だったんだなあ・・・。
真太郎は彼の新しい一面を見た気がした。
それは
ゆうこも同じだった。
水族館を出て、海の方に出て行く。
春の風が温かく。
「あ~~、海はいいな~。 ほんまに開放的な気持ちになれる!」
南は伸びをした。
「海、好きですね。」
ゆうこは思わず言って笑った。
「・・去年の夏。 思い出すね。」
南が言うまでもなく
みんなあのときのことを思い出していた。
ほんの数ヶ月前のことなのに
信じられないほど劇的に運命が変化した。
もう
こうして4人で笑顔で海に来ることなんか
ないんじゃないかと
南は思っていた。
「ほんま。 よかったぁ・・」
彼女の声は風に流されそうだった。
大好きな人と
大好きな時間を
共有して。
これからもずっと・・・
あたしたちはこうして4人で笑顔でいたい。
「これからも。 いろんなことあると思うけど。 あたしたちはずっとがんばって行こうね、」
南はポツリと言った。
ゆうこは笑顔で頷いた。
志藤も真太郎も。
波の音が
風に紛れて。
このときを永遠に
閉じ込めるように。
4人はこのときの誓いを胸に今も頑張っています。
さてさて。
なが~~い間おつきあいいただきありがとうございました。
これでPartⅣ、終了です。
クラシック事業部がどのように立ち上がっていったか、南、真太郎、志藤、ゆうこの4人の青春の日々と共に描いて参りました。
そして、現在の事業部は
夏希が高宮との結婚を決意して、斯波たちの元を巣立ってゆきました。
妊娠した萌香はその事実を斯波に言えないままでいます。
その他にも悩みがあるようで・・・
いったいどうなるんでしょうか???
その二人の番外編をお送りします。
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