斯波は深夜近くになって戻ってきた。
「おつかれさま、」
萌香はまだ起きて待ってきた。
「先に寝ててもいいのに。」
斯波は荷物をどさっと置いた。
そして紙袋を差し出して、
「これ・・。 今日、中華街の近くまで行ったから。 肉まん。」
「こんなにたくさん?」
「加瀬、好きだから。 明日分けてやって、」
ボソっと言ってバスルームへ行ってしまった。
なんだかんだ言って。
いつも彼女のことを心配している。
萌香は小さなため息をついた。
さっきやって来た夏希は
『ここにいたい・・』
と、子供のように言って
わんわんと泣いた。
高宮のことを好きなことは
間違いないのだが
彼女と自分だけの
空間を早く作りたいと思っている彼と
まだまだ
子供のような精神年齢の彼女とでは
あまりにも温度差がありすぎる。
そのことを
斯波に話したりしたら
また
大変なことになることは火を見ることより明らかだ。
萌香はとってもさっきのことを
彼に言う気にはなれなかった。
「やっぱ・・こんくらいがどうかなあって思うんだよね~。 駅からも近いし。」
高宮は翌日の晩、夏希の部屋に来て、
ピックアップしてきたマンションの情報をプリントアウトしたものを持ってきた。
「ん・・・・」
相変わらず夏希は暗かった。
「どしたの?」
高宮は彼女の顔を覗き込んだ。
「隆ちゃん、」
夏希は上目遣いに彼を見た。
「ん?」
「・・あの、あたし・・・」
夏希はふうっと息を吐いて、
「あたし・・まだ・・隆ちゃんと一緒に棲むとか・・できないかなって、」
正直な気持ちを彼に言った。
「え、」
高宮は少し驚いたように彼女を見た。
「隆ちゃんのことは、好きだけど! でも・・」
夏希はうつむいて、それ以上言葉が続かなかった。
でも
の、後の言葉を予測するのが怖かった。
高宮は小さなため息をついて、
「・・・ここのが、いい?」
と言った。
「え・・・」
夏希は高宮を見た。
「ここにいるほうが・・いいの?」
高宮は自分でもわかっているのに
彼女を責めるようなことを言ってしまった。
「こ、こっちのがいいとか・・そーゆーんじゃなくって、」
夏希は必死に否定しようとしたが、
「おれのこと・・好きって言ってくれるのに、誰よりもおれに時間をくれてもいいのに。 それができないって・・・夏希はおれのことを一番に思ってくれないの?」
「隆ちゃん、」
「おれは・・いつだって夏希のこと考えるのに。 ずっとずっと夏希と一緒にいたいのに! ・・夏希はおれよりも大事なものが・・たくさんあるんだよな。」
夏希は首を振って、
「そーじゃないよ!」
と、必死に言うが
「・・わかったよ。」
高宮は帰り仕度をして、出ていこうとした
「隆ちゃん!」
夏希は慌てて追いかけた。
ささいなことから二人の気持ちはスレ違って・・