Go together(17) | My sweet home ~恋のカタチ。

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斯波はそれ以上のことは言わなかった。



きっと

彼なりに一晩考えて出した結論なのだろう。

萌香は彼の言うことに黙って頷いた。





「ああ、こっちはかまへんで。 そういうことなら少しでも早い方がええやろから、」

志藤は病院に直行した斯波と電話で話をした。


「・・どうなるか、わかりませんが。 とりあえず、検査をと思って。」


「うん、」

志藤も斯波の決心にホッとした様子だった。




父の入院している病院に行き、事情を話して特別にすぐに血液検査を受けさせてもらった。




「斯波先生の・・・本当の息子さんなんでしょ?」

医師はカルテを書き込みながら不思議そうに言った。


「ええ。」


「じゃあ、どうして先生にきみが検査を受けることを言っちゃいけないの?」

当然の疑問であった。



「・・いろいろありまして。 もし、もしですが・・型が適合して、移植ということになっても。 ぼくからのものとは絶対に言わないで下さい。 一般のドナーの方からの提供であることにしてください。 このことを守っていただけたら、ぼくは移植手術でも何でも受けます。」



そう言われた医師は不可解そうな顔をしたが、仕方なく頷いた。




それが

精一杯の抵抗だった。


父に恩を売ることもしたくないし、父だって自分に恩を売られたくないはずだ。


そんなことで解決するほど

自分たちの間はカンタンなものじゃないのは

自分が一番良くわかっている。



しかし

自分の骨髄が必要としている人間が目の前にいるのに

それから目を逸らすようなことは

人としてできない、と思った。





戻ってきた斯波に萌香が心配そうに駆け寄った。


「結果が出るまで3~4日かかるらしいから。 先生が電話してくれるって。」

斯波は何か吹っ切れたような顔でそう言った。



「・・お父さまのところへは・・?」


「行かなかった。」


「え、」


「・・それはまた別の話しだから。」




父の見舞いに行くこともしないのは

冷たいような気がしたが、今の彼の複雑な心境がうかがえた。





そして3日後。

斯波の元に医師から電話が入った。



「え? ・・・・そうですか。 わかりました。 また、日にちを連絡下さい、」

斯波は短い受け応えだけで、電話を切った。


そして隣にいた萌香に




「・・白血球の型、一致したって。」




静かにそう言った。



「え、」


萌香は驚いたような顔をして、少し息をついた。


「じゃあ・・移植手術を・・?」


「ああ。 日程はまた連絡が来るはずだから。」



骨髄を移植する手術というものはどういうものなのか萌香には全くわからなかったが、彼の身体にも傷がつくことを思うと別の心配が沸いてきた。




彼女が心配そうな顔をしているのに気づき、

「・・ま、死ぬことはないだろうから。」

とふっと笑って見せた。


その冗談にも何だか笑えなかった。




「え? ほんま?」

斯波は萌香と共に志藤と南にはいきさつを説明した。


南はそんなことになっているとは全く知らなかったので、びっくりしていた。


「仕事にも差し支えることがあるかもしれませんが。 おれもまだ詳しいことを聞いてないので何とも・・」


「ま、仕事はいいから。 おれがこっちの仕事増やすし。 ネットで調べたんやけど、その白血球の型って親子でも一致せえへんことが多いんやって。 運が良かったんやな、」

志藤は言った。




なかなか一致するものではないものが

自分と父がぴったりと適合するとは

何とも皮肉だな・・




斯波はそう思わずにはいられなかった。



「・・骨髄の提供は、一般のドナーからだということにしてもらいました。 だからお二人も余計なことは言わないように、」



斯波の言葉に志藤と南は顔を見合わせ、少し驚いた。


「・・そうじゃなきゃ。 とってもこの現実に向き合えない。」

斯波は自分にも言い聞かせるようにそう言った。




萌香は少しだけ決心をして斯波の父が入院する病院へと向かった。



「こんにちわ、」

病室の前で大森奈保子が待っていたので挨拶をした。


「わざわざ・・ありがとうございました。 あの・・息子さんは、」

萌香が一人でやって来たので彼女は周囲を伺った。



「私、ひとりです。」



ふと微笑んだ。




いまだ父への憎悪は拭いきれない斯波でしたが、精一杯の歩み寄りでした。

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