Go together(16) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あのっ・・・」



萌香の布団を自分のベッドの下に敷きながら夏希は思い切って声をかけた。


「え?」


「斯波さん・・何かあったんですか?」

ずっと気になっていた。



「・・ちょっと。 お父さまのことで、」



萌香は苦笑いをした。



「斯波さんのお父さん? って、あの、えっと・・なんかえらい人なんですよね?」

夏希らしい記憶の曖昧さにまた少し笑ってしまった。


「・・うん。 まあ。 彼、お父さまのことでずっと悩んでいて。」


「あんまり、いい関係じゃないみたいだって・・前に本部長がチラっと言ってたことがあるんですけど、」


「そうね。 子供のころご両親が離婚してしまったけど。 ずっとお父さまのことは憎んでたみたい。 一度も父親らしいことなんかしてもらったことがないって、」



夏希はその話に


「・・でも・・親なのに子供がかわいくないとか、そんなのあるのかな、」

思わずそう言った。



「加瀬さんはね、お父さんやお母さんにとってもかわいがられて大事に育てられてきたのがよくわかる。」

萌香はふっと微笑んだ。


「え~? いや~、そうでもないですよ? お父さんはまあ、かわいがってはくれましたけど。 お父さんが死んでお母さんと二人になったら・・ほんっとケンカばっかりで、」

夏希は口を尖らせるが


「ううん。 加瀬さんのお母さんは本当にあなたのことが心配で大事で、どうしようもないってことが伝わってきたもの。 いいお母さんよ。 親から愛されて育った子は、人を恨んだりとか妬んだりなんかしないもの。 あなたを見てるとそう思う、」

萌香は優しくそう言った。


「・・・まあ・・そんなに人を嫌いになることは基本、ないですけど・・」




「あたしは。 ずっと世間が憎かった。」




萌香は遠くを見つめるように言った。



「世間・・?」


「幸せそうな人が大嫌いだった。 なんで自分だけこんな境遇に生まれてきたのかって、恨めしかった。 彼も・・

ずっとお父さまのことが心の中で重荷になっていて。 それを自分でも振り切りたいって思っているのよ。 でもそうできないジレンマで悩んで・・」


夏希は感心したように

「栗栖さんって、ほんっと・・斯波さんのこと全部わかっちゃってるんですね、」

と言った。



「え、」


萌香は少し赤面をした。




「なんで、結婚しないんですかあ?」



思ったことをすぐ口にする彼女はやっぱり聞いてしまった。


「・・なんでって・・・。」

戸惑った。


「傍から見てもすっごく愛し合っちゃってるって思うし。 分かり合ってるし。」



「結婚は・・そんなにカンタンなものじゃないわよ、」



そう言ってごまかしたが、



「そうかあ・・・大変なんですねえ。」

夏希はまるで子供のように素直な気持ちを言った。



萌香はそれがおかしくて、

「まるでひとごとね。 あなただってそんなに遠い話じゃないんじゃない?」

とからかった。


「は? 誰が?」

夏希は眉間に皺を寄せた。


「誰が?って。 あなたはまだまだ若いけど・・・もうすぐ25歳だし。 高宮さんだって相応の年やし。 彼の方は結構考えてるんちゃうの?」


萌香の言葉に夏希は大きな声で笑って

「もー! 栗栖さんってば! そんなのあるわけないじゃないですかあ! あたしって人間的にもダメダメだし。結婚って大人の人がするもんでしょ?」

他人事のように萌香の腕を叩いて言った。




ほんと。

しょうがない子・・

高宮さんも気の毒に。

そうとうわかってないし。




萌香はまた笑ってしまった。





翌朝、となりに戻っていくと、



「・・おはよ。」

斯波はいつもと変わらない様子だった。


キッチンにグラスが置いてあるのを見て、


「・・無理して飲んだりして、」

萌香はふっと笑ってそのグラスを洗った。



「萌、」



「え?」


手を拭きながら振り返る。




「おれ・・病院に行こうと思う。」




しっかりと目を見てそう言った。


「清四郎さん・・」


「とりあえず。 調べてこようと思う。」

萌香はふっと気持ちが緩んだ。


「そう・・」



「ただ・・・」



「え?」




「このことは、オヤジの耳には入れないで欲しい。」




「どういう、こと?」



「もし・・おれの骨髄がオヤジに適合したとして、移植手術を受けることになっても、黙っていて欲しい。」



萌香は

彼の言葉がすぐに理解できなかった。





斯波なりに心にケジメをつけようと決心したようです。

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