Go together(11) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・なんじゃ、こら・・」


帰ってきた斯波は夏希が作ったと言う、不思議な食べ物を思わず凝視してしまった。


「・・だから。 もんじゃですって、」

夏希は不満そうに言った。


「ぐっちゃぐっちゃのうどん粉だろ?」


「失礼な! けっこうおいしかったですよね~。」

夏希は萌香と母に同意を求めた。


「・・まあ。」

二人は曖昧に苦笑いで頷く。


「て言うか。 なんでおまえがウチでもんじゃ作ってんの?」

斯波は椅子に座りながら言った。


「斯波さんたちが沖縄に行ってていなかったとき~。 お母さんがね、ゴミ出ししようとしてるとこに会っちゃって。そんなのあたしがやりますって。」

夏希は屈託ない笑顔で言った。


「それはありがたいけど・・・。 この子、勝手に上がりこんで掃除もするとか張り切ってしまって、」

萌香の母は笑いながら言った。


「ほら、まだ手術したばっかじゃないですかあ。 傷が痛いだろうし。 あたしはほら、高いところにあるものとかもすぐ取れるし、」

夏希はアハハと笑った。



「勝手に人んちに・・」

斯波はそう言いつつも、夏希の人懐っこいこの存在が少しありがたくも思えた。


「よかったわね。 退屈しないで。」

萌香は母に言った。


「声が大きくてかなんわ、」


「あ、すみません。 調節きかないもんで・・・」



そう言いながらも

萌香の母は少し嬉しそうだった。




こんな母の笑顔を見るのも初めてかもしれなかった。


過去にあった

あのドロドロとした毎日がウソみたいで。


母とこうして

笑顔で話ができる日が来るとは思わなかった。





そして

母が退院して2週間が経った頃。

志藤が口を利いてくれた

青山にある料亭で仕事をすることが決まった。



「取締役の接待にもよく使う店なんだ。 そんなに堅苦しくなくて、敷居が高いところでもないし。 ちょうど、女将が一人辞めてしまって困っているって話してたから。 店の近所に従業員用のアパートもあるし。 福利厚生もしっかりしてるしな。」

志藤は萌香に言った。


「・・少し、心配ですけど。」

萌香は不安そうに志藤を見た。


「大丈夫。 お母さん、自分でやってみるって言いはったんやろ? 信じてあげなくちゃ。 一番変わりたかったのはお母さんかもしれへん。」

志藤はそんな不安を拭い去ってくれるような笑顔で言った。



「・・本当にお世話になりました。 本部長にご迷惑をかけないように・・私からも母に言いますので・・」

萌香は頭を下げた。


「お母さん、まだ若いから。 いっくらでもやり直せるし。 よう考えたら、おれとそう年もかわらへんし。」

志藤はいつものように軽い調子で笑った。


その軽さが萌香には心地よかった。




6月に入った頃、萌香の母は

従業員用のアパートに引っ越して行った。


京都の店は借家だったので、萌香が暇を見て京都まで行き手続きを取ったり、残った荷物を送ったりした。




全てが

新しく始まる。

萌香は母の再出発を見届け、少し安堵していた。





そんな頃だった。



志藤はクラシック専門誌の編集長と打ち合わせをしていた。

この雑誌にはよく北都フィルも載せてもらったりしていたのだが、斯波が以前勤めていた編集部でもあった。




「ま、北都マサヒロも今は一段落だな。 海外の評判がいまだに日本よりもいいってことはよしとして。」

編集長は笑った。


「真尋のこともあるけど、もっともっとオケを展開していきたいんですけどね・・」

志藤はため息混じりに笑った。



「あ・・そう言えば。 斯波宗一郎が入院してるって知ってる?」



彼は唐突にそう言った。



「え・・」



「斯波から、聞いてない?」


「や、全然。 どうかしたんですか?」


「わかんないけど・・・今年の初めくらいから入退院を繰り返してるらしいよ。 」




斯波の父親も

入院していたのか・・




志藤は少し驚いた。

入退院を繰り返していると聞いて

嫌な予感が志藤の脳裏をよぎった。





一転して斯波の父親の身になにかが??

左矢印 お気に召しましたらポチっ!わんわん お願いします!