こいつは
こんなん世の男どもが見て
いろんなこと想像しちゃったりすることが
イヤじゃないんだろーか・・
斯波はぼんやりとそう思ってしまった。
「絵梨沙はさあ、ほんっといい女なんだから。 もっともっと世間に出ればいいじゃんって。」
真尋は嬉しそうに頬づえをついてニッコリ笑った。
おれは
萌香のことを
そんな風に思えるだろうか・・。
むしろ
彼女を大事に大事に
箱の中にしまったおきたいくらいだ。
世間の男たちの目にさらすことも
本当はイヤだ。
斯波はそう思った瞬間。
え?
おれってそんなに嫉妬深い男??
ゾッとしてしまった。
二人で街中を歩くだけで
男たちが彼女に視線をやるのがわかって。
ちょっと誇らしいような
嫉妬するような。
「斯波っちだってさあ、萌ちゃんのこと自慢したいだろ~?」
と言われてドキンとした。
「え・・」
「ほんとお似合いですもんね。」
絵梨沙も微笑んだ。
「そ・・・っかな、」
真っ赤になってうつむいた。
「斯波っちと萌ちゃんのツーショもあんま見ないもんなあ。 恥ずかしいの?」
真正面からそう聞かれて、
「えっ・・・」
ちょっと図星だったりする。
出勤する時も、彼女と一緒にいるのが恥ずかしくて
少し時間差で行ったり。
人前でいちゃいちゃしたりとかも
なんか
意識してしまって・・・。
別に
つきあってるし
しかも
一緒に棲んでるし。
何が恥ずかしいっていうんだろーか。
なんか
目からウロコ・・・。
斯波はぼんやりと考えてしまった。
「絵梨沙~。 ハラ減った。」
真尋が絵梨沙に甘えるように座っている彼女の後ろから抱きしめるように言った。
「さっきお昼食べたばっかりじゃない。」
絵梨沙はまるで駄々っ子をあやすように苦笑いをして言った。
人前だろーが
なんだろーが
こうやっていちゃついて。
キスなんかも平気でするし。
まあ、こいつらみたいにはなれないけど・・・
だけど
こうやって気持ちを表現していったら
どんなに楽だろうか。
斯波は
自己嫌悪にも陥ってしまった。
結局
曲の打ち合わせなんかせずに
真尋と絵梨沙のいちゃいちゃぶりを見せ付けられただけで帰ってきてしまった。
はあああ。
ベッドにごろんと寝そべった。
かといって
いったい
どうすればいいんだろう・・。
不器用で無口な斯波は、自分の気持ちをどう萌香に伝えていいのかわかりません・・