ロンドンから帰国した斯波は
翌日、非常に疲れていたが定時に出勤した。
「え！ 斯波さん・・すっごい痩せちゃいませんか？」
八神は一見して彼を見てあからさまに驚いた。
斯波は彼をまじまじと見て、
「・・おまえってホント偉いなって・・感心したよ。」
ボソっと言われた。
「はあ？」
『真尋番』の過酷さを思い知った斯波であった。
「なんや、おまえ休んでも良かったのに。」
志藤は斯波を見て言った。
「・・いろいろ報告とかもあるんで。」
朝の申し送りの際に、斯波はロンドンでの概要をみんなに話した。
「そっかあ、そんなに素晴らしかったんですかあ。おれもききたかった、」
八神はふっと笑う。
「まあ、仕事も。 ぼちぼち入ってきてるし。 地元の評判も良かったし。 まあ、ヒヤヒヤしたけど成功やな。」
志藤もホッとしたようにタバコをくわえた。
「真尋が神経性ナントカになるなんて、信じられへんけどな、」
南は笑った。
「そのくらい・・・切羽詰ってたんでしょうね。 あの真尋さんがって、感じですけど。 あれでけっこうナーバスなとこもあるし、」
玉田も言う。
「・・・以上、ロンドンでの報告・・。 ですが。」
斯波は顔を上げて、主に玉田と八神に
「・・ま・・関係ない話なんだけど。 ・・・志藤さんと南は・・知ってるけど、」
ちょっと恥ずかしそうに話始めた。
何事かとみんなきょとんとしている。
「いや、別に・・隠していたってわけでもないんだけども・・。 言うのもどーかって感じで、」
前置きが長く、なかなか本題に入らない。
「？？？」
みんな怪訝な顔をした。
「・・おれ・・栗栖萌香と・・つきあってっから、」
小さな声でボソっと言った。
あ・・？？
みんないきなりのカミングアウトに
固まった。
と
言うか。
玉田と八神は
とっくに気づいていたのだが。
言うのもなんだと思っていたので黙っていただけで。
志藤も南も
斯波がいきなりそんなことを言い出したことに驚いていた。
そして
萌香も・・・。
玉田はハッとして八神を肘でドンっとつついた。
「あ？？ はっ？？」
わけがわからず八神は玉田を見た。
みんなの視線も一斉に八神に集まる。
いったい
みんなおれに・・何を期待してる？？？
八神はあまり
回転の良くない頭でジッと考え
そして・・
「えっ・・・！！！ あ～～～！！ っと、そーだったんですかあ！」
いきなり大きな声を出して
今、初めて知ったようなわざとらしい声を出し。
南は思わず吹き出しそうになった。
「・・いや・・まあ、こーやって言うほどのことでも・・ないんだけど・・」
斯波は大いに照れてうつむいた。
「・・・きっ・・・気づかなかったなあ・・ぜんっぜん！！ もう！！」
八神のヘタな芝居に、もう志藤もおかしくておかしくて笑いを堪えるのに必死だった。
「・・よ、よかったですね。 おめでとうございます、」
八神はさらにわけのわからない言葉を続け、ふった玉田もうつむいて笑いを堪えた。
「ま・・まったくお似合いですよね・・斯波さんと栗栖さんなんか、もー！」
日本語の使い方も怪しげに・・
「やっぱ、アレっすか？ 斯波さんからコクったんですか？」
八神の
蛇口は
止まらなくなり、どんどん彼が嫌がるプライベートへと侵入して行ってしまった。
初めは照れていた斯波だったが
「・・そんなことカンケーねーだろが・・・、」
ものすごい怖い顔で八神を睨みつけ、
「バカ・・」
南は八神のアホさ加減にもうデスクにつっぷして笑ってしまった。
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「ってことがあってさあ！ もー、あんときの八神の顔！ 今思い出しても笑える・・」
南はまたデスクをバシバシ叩いて笑ってしまった。
「もう！ 玉田さんが、なにを言いたいのかぜんっぜんわかんなかったんスよ！ ほんっとに斯波さんはめちゃくちゃ怖い顔になってくし、も～～！」
八神はオーバーにそう言った。
「なんかリアクションしろよって意味だったんだよ、」
玉田も笑ってしまった。
「へえええ。 そうだったんだあ。 あたしも見たかった。八神さんのその姿。」
夏希が言ったので、
「ひとごとだと思って・・」
八神は膨れた。
八神のアホは地球を救う・・・じゃないか。(^∇^)
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