斯波はオケとの練習が始まった真尋が心配で
萌香へのメールや電話はぷっつりと途絶えた。
大変なのは
わかるけど。
萌香は一人の部屋で
恨めしそうにメールチェックをしてため息をついた。
真尋さんに
夢中なんやから。
ちょっとグチりたくなくなる。
少しだけ
彼にいじわるをしたくなって
メールを打った。
ね・・
眠い・・・。
ベッドに寝れるなんて
何日ぶりだろうか・・。
斯波はスタジオに入り浸る真尋に付き合って
睡眠はほとんど転寝程度だった。
さすがに真尋も疲れたようで
この日は宿泊しているコンドミニアムに戻り、爆睡していたので
斯波も身体を休めることができた。
すると
「ぐっもーにん!!」
すごい勢いで部屋のドアを開けられ、
「ほらほら、すっごいいい天気だよ! テムズ川もよく見えるし~!」
真尋のけたたましい声で起こされ。
無理やり部屋のカーテンも勢いよく開けられ。
バーンと窓も開けられて、冷気が思いっきり入ってきた。
「さぶっ!! 何すんだっつの!」
斯波は毛布を被った。
「いや~、いい朝だ~!」
真尋はシャワーを浴びてきたようで
一人爽やかだったが。
彼は
全裸だった・・。
「って!! 窓を思いっきり開けるなっ! そんな格好で!」
斯波は慌てて起き上がり、カーテンを引いた。
「え、誰も見てないって・・」
「そういう問題じゃねーって! 風邪ひくだろっ! 公演前に・・もー!!」
迷いが吹っ切れた真尋は
毎日
張り切って練習をしていた。
それはいいのだが。
張り切りすぎて
全くついていかれなかった。
「あ~~、起こされて迷惑・・」
と言いながらモバイルを開いてメールをチェックすると。
『明日から本部長と3日間の札幌出張です。 家のパソコンにメールを貰っても見れないかもしれません。』
萌香から
あまりにも
思わせぶりなメールが入っていた。
「なっ・・・」
驚いた声を出すと、
「え? なに?」
真尋が覗き込もうとしたので、慌ててそれを閉じてしまった。
「なんでもないから! あっち行け! シっ!」
犬を追っ払うように手を振った。
「なんだよ・・・。 彼女から? そーだよなあ・・ひと月も留守するんだもんな~。 浮気しないでね、なんてメール来ちゃった?」
真尋はニヤつく。
「・・おまえに言われたくない・・。」
斯波はそこを出て行った。
「・・あ・・清四郎さん?」
萌香は志藤と共に札幌に移動し、志藤が打ち合わせをしている最中、そのホテルのロビーで仕事を片付けていたところに電話が入った。
「ど、どこにいるの?」
斯波の動揺する声に、クスっと笑ってしまった。
「札幌です。」
「志藤さんと?」
「はい・・。 本部長は今、打ち合わせ中で私そこのホテルのロビーで仕事をしていました。」
「ほんとなの???」
そのリアクションにまたまたおかしくなって笑ってしまった。
真尋番のつらさを思い知っている最中の斯波は萌香の現状を知り・・・