Loving you(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

斯波は少し驚いた後、ため息をついた。


「またか。 もう・・いいって、」


「今度は、ほんと大丈夫だから、」



何度もこんなこと

過去にもあったが

だいたい母が騙されて終わってしまう。



「前に言ってた・・家庭のある男かよ。」


「その人じゃないよ・・。 あたしこの前、ちょっと入院しちゃったの。」



「え?」

萌香も驚いた。


「たいしたことないからあんたには言わなかったけど。 ちょっと肝臓が疲れちゃったみたいでさ。1週間くらいだったんだけど。 夏ごろかな。」


「なんで言わないんだよ、そんなこと・・」

斯波は不満そうに言った。



「検査入院程度だったから。 まあ、結局何ともなかったんだけど。 お酒は控えたほうがいいとか言われちゃって。」

と言いながらビールを飲む母に


「バカっ! そう言いながら飲むなよ!」

斯波はコップを取り上げた。



「ちょっとだけじゃん・・・。 でね。 その時の担当の先生・・なんだけど、」

母は嬉しそうに言う。


「・・医者・・?」


「うん。 年はね、57。 奥さんは10年前に亡くなっちゃって。 一人娘がいるんだけど、結婚して今はロンドンに住んでるんだって。 孫もいるし。 それでその人が病院を辞めて、沖縄の離島に勤務医で行きたいっていうことになって。 あたしに・・一緒に来て欲しいって、」

母ははにかんだように微笑む。



「沖縄・・?」



斯波は驚いた。


「ええっと・・竹富島? ってそんなんあったっけ?」

萌香に言う。


「え、ええ・・ありますけど、」


「そこに行くことになったんだって。 今までそこで医者してた人がその人の友達だったんだけど、腰が悪くてね。辞めちゃうことになったんだって。 だから、」


「・・また、騙されてるんじゃねーの? いっくら医者だからって、」

斯波は全く信用できなかった。


「今度は大丈夫だって。 ほんとね、すっごく真面目な人なの。 なんかね、あたしに一目ぼれしちゃったんだって!」

と斯波の背中を叩く。




「だってあんた東京以外で暮らしたことねーだろ?」


「そうだけど。 でもすっごくいいところなんだ・・。 この前つれてってもらったの。」


「ずっと水商売みたいに派手な世界でやってきて、そんな何にもないところにいきなり行って耐えられっこねーじゃんか!」

斯波は思わず声を荒げてしまった。




「え、反対?」


「・・反対とかじゃなくて! 今までほんっと騙されまくって! 金、巻き上げられて。 痛い目にたくさん遭ってきただろ? ちょっとは慎重に考えろ!」

ものすごくイラついてしまった。


「そんな頭ごなしに言わなくても、」

萌香はたしなめた。



「ほんっとおれだって尻拭いで巻き込まれて大変だったし! 今度のコトだって信用できっか、」

と言うと、母は寂しそうに


「まあ、あんたには迷惑かけたと思ってるよ・・でもさあ、今度は。 ほんっとに本気なの。 たしかに何もないところだけど・・彼と一緒ならずうっといられそうな気がする、」


「もう年なんだし、」


「わかってるわよ。 でもね。 もうあくせく働かなくていいかなって。」


「それは勝手だけど、」



萌香は斯波の様子がおかしいことに気づく。




すごく

イライラして

動揺している・・・。




「ほんっとおれは知らないからな! そんなトコ行って、泣いて帰ってきても、おれは知らない! もう会わない!」

斯波はそう言って自分の部屋に引っ込んでしまった。



「清四郎・・」

母のテンションも一気に下がってしまった。


「・・突然のことで驚いているんじゃないでしょうか・・。 お母さんのことを心配しているんです、」

萌香はフォローするように言った。


「ほんと。 清四郎にはたくさん迷惑かけたから。 怒ってるのかも、」


「・・でも、本気なんでしょう?」


「うん。 今度の人はね・・一緒にいるとホッとできるの。 場所なんかどうでもいいから、二人でいたいって思っちゃうのよね。」




斯波の母は

50を少し過ぎたところだが

そうは見えないほど、頬を赤らめて少女のように言った。


「・・私はお母さんの人生ですから。 好きにしたほうがいいと思いますけど、」

萌香が言う。


「また・・来るから。 ごめんね、後片付けもしないで・・」

苦笑いをして母は帰り支度をした。




母が帰った後

斯波はそこのデスクで書き物をしていた。


「・・おなか、空いたでしょう。 あんまり食べてへんかったし、」

萌香が声をかけると


「・・もう、いいよ。」

振り向きもせずに言った。



「お母さん、帰りましたけど。」



「そう、」



萌香は彼にそっと近づく。



「・・ふざけてるよな・・もっと真剣に考えろって・・」



斯波はボソっと言った。

それは怒っているようではなく

とても寂しそうな声だった。




母の結婚話に斯波の心は大きく揺れ動きます。

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