Teardrops(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「本部長、ちょっとよろしいでしょうか、」

志藤が出社すると萌香が彼の前に行く。


「え? ああ、いいけど。 向こう行く?」

応接室を指差した。


「あ、はい・・」



二人は中に入っていく。



志藤は座ってタバコを取り出したが、萌香は立ったままで、

「この前の本部長の秘書にというお話なんですが、」

神妙な顔で切り出す。


「ああ、」



「・・大変申し訳ないんですが。 お断りしたいと思って、」



「え・・」



志藤は彼女が受けてくれそうな雰囲気だったので

意外そうに見上げた。



「本当に・・せっかく言ってくださったのに。 申し訳ないんですが。」

消え入りそうな小さな声で言った。



「・・・・」



志藤は考え込むように何も言わずに黙ってしまった。



沈黙が流れる。



「・・わかった。 無理を言って、こっちこそ申し訳なかった。 まあ、秘書なんかな、ジュニアがどうかって言ってきただけで。 おれは別に一人でもやれるし。 手が空いたとき秘書課の子に手伝ってもらえばいいと思ってたから。気にしないで。」

志藤はニッコリと微笑んだ。




理由を

聞かれなかった・・・




萌香は意外そうな顔をした。


「栗栖も忙しいしな。 まだこっち来たばっかやし。」


「すみません・・・。」

萌香は恐縮した。



本当は

理由を聞きたかった。


しかし

彼女はきっとよくよく考えてくれたと信じて、志藤はそれ以上は聞かなかった。



萌香のことを慮ってしたことが

これからの騒動のきっかけになっていくとは

夢にも思わずに。



昼時になり、萌香は南に

「南さん、よかったらお昼一緒に行きませんか?」

と声をかけた。



「え、」

南はパソコンから目を離し、ちょっと驚いたように彼女を見た。



萌香から誘われるのは

初めてのことであった。


「忙しくなければ、」

萌香は控えめにそう言った。


「え? 忙しくなんかないって。 こんなん。 よし、んじゃ行こうか、」



南は嬉しくなってすぐに仕事を切り上げた。

萌香も嬉しそうに微笑んだ。



「なんかさあ、みんなでパーっと飲みたいな。 真太郎が9月いっぱいまで休み取れないから夏休みどこも行かれないからさあ。 志藤ちゃんは京都に帰るとか言うてたけど。 バーベキューとかさあ、いいよね。 なんならウチの庭でもいいし、」

南は夏の青い空を見上げながら言った。



「・・そう、ですね。」



みんなと一緒に飲み会に参加することさえほとんどなかった萌香が

そう相槌を打つことさえも

本当に珍しかった。



「今度はさあ、萌ちゃんもおいでよ。 みんなで花火したりさあ。 子供みたいだけど、けっこう楽しいよ。」

南の明るい笑顔に



「・・ええ。」

萌香も頷いた。



彼女が

少しずつ変わってきてるのかもしれない。



南はそれが嬉しくて

妙にはしゃいでしまった。



午後から志藤は萌香とともに

広告代理店に打ち合わせに向かい、それが遅くなってしまったので彼女に直帰を勧めた。



「もう帰ってもやることないやろ。 ここんとこ忙しかったし。 そのまま帰っていいよ。」

萌香はちょっとためらうような表情をしたが



「・・はい。」

素直に頷いた。



乗り換えの駅で

「んじゃ、明日な。」

志藤が笑顔で小さく手を振り、行こうとすると



「本部長、」



萌香は思わず彼を呼び止める。



「ん?」

振り向いた志藤に




「・・私・・ここへ来て本当によかったです。」




萌香は笑顔で言った。



「なんやねん、急に。」

志藤はふっと微笑んだ。



「みなさんと一緒に仕事ができて、良かった・・。 初めて自分として存在できる場所だったんじゃないかって、」



「栗栖、」




「ありがとうございました、」




萌香は静かに一礼してその場を去った。




萌香はいったいどうなる!?

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