Say anything(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

リハを何とか終えた真尋は上を向いて、大きくふうっと息を吐いた。

そして客席を見て斯波の姿を見つけた。



「なんだ、いたの?」

迷惑そうに言う彼に


「リハのチェックだろ。 まあ・・まあだったな。」


いつも

彼は簡単には褒めてくれない。


「あ、そ。」

それもいつものことのように真尋はピアノの蓋を閉める。



「『月光』はラストにしたほうがいいんじゃないか?」


「ん~~。 どーしよっかなあって思ってたトコ。」



真尋は立ち上がったとき、斯波の後ろに立っていた萌香に視線がロックオンされた。



「ん??」



188cmの大きな体の彼だが

ものすごく身軽に舞台からぴょんと飛び降りた。


もう斯波のことは全く無視で萌香に近づき、

「だれ? この美人、」

彼を押しのけるようにして言った。



「え? ああ・・4月からウチの部署で仕事してる・・栗栖、」


「クリス? え? 日本人???」

突拍子もないことを言い出す真尋に萌香は思わず、ぷっと吹き出してしまった。


「・・栗栖萌香です。 初めまして。」

と彼に一礼した。



「・・・・」



真尋は固まった後、斯波の肩をバシっと叩き、


「ちょっと! なんでこんな美人が来たことをおれに言わないんだよっ!」

と当たり始めた。


「・・いちいち言うか、」


「え? なに、いくつ? どっから来たの?」

真尋は萌香に食い入るように質問攻めだった。


「ナンパか?」

斯波は呆れて彼のオデコをぴしゃっと叩いた。


「明日のライヴ。 スペシャルシート用意しておくから! 絶対に来て!」

真尋は萌香の手をぎゅっと握りながら言った。


「は・・いえ、社員ですから・・・入れますので、」

さすがに萌香もちょっとのけぞった。


「だから、やめろっつーの、」

斯波は図々しい真尋を制した。


「なんだよ~~。 おい、斯波っち、手え出すなよ~、」

真尋は斯波を見てニヤっと笑った。



「・・アホか。 ほんっと小学生みたいなこと言うな。 おまえ。」

いつものようにバカにしたように彼をジロっと睨んだ。


「うるせーな! もう、斯波っちが腰抜かすくらいの演奏すっからな! 見てろよ! 絶対に褒め言葉をその口から言わせてやる!!」

真尋はまたも子供のような挑戦状をたたきつけた。


「バカ・・」

斯波も呆れて笑ってしまった。




しかし

早速。



「あ~~、つっかれた。」

真尋は夜の7時ごろになりひょっこり事業部に現れた。


「・・だからな。 なんで疲れたって言ってここ帰ってくんねん。 家、帰れ! 家!」

志藤は眉間に皺を寄せて言う。


「今日さあ・・絵梨沙と子供たち、お義母さんトコ行っちゃって。 泊まるってゆーからさあ。 おれ一人だし。」

真尋は甘えるように言う。


「もう、ライブも明後日だしさあ。 今日もリハで疲れちゃって。 ・・でさ、」

真尋は志藤にずいっと近づき、みんなに背を向けるようにして



「ねえ・・彼女誘ってメシ行かない?」

一生懸命デスクワークに励む萌香をチラっと指を指して言った。


「は?」



「栗栖さん。 栗栖萌香さん、」

ニヤっと笑う。


志藤はぎょっとして

「アホ・・彼女はアカン。」

真尋のオデコを叩く。


「いってえなあ・・・。 志藤さんと一緒ならいいだろ~?」

オデコをさすりながら言った。



「アカン!」



ただでさえ

色んな噂がある彼女に真尋を近づけるのは危険すぎる。



「おまえなあ、エリちゃんが留守やからって、何を考えてるねん、」


「だから、メシだけなのに。」



志藤は黙って携帯を取り出し、


「じゃあ、エリちゃんも呼ぶ・・」

と電話をかけようとするので、慌ててその手を押さえた。


「バカ! なんてことすんだっ!」


「バカはおまえやろっ! ホンマ・・あの子だけはやめといてくれるか?」

志藤は小声で真面目な顔になってそう言った。



「・・なにそのガード、」

真尋は不服そうに言った。


「ガードっていうか。 ホンマ、社員となんかあったら困るし、」


「なんでおれがなんかするのが前提なんだっつの! メシだけって言ってんじゃん、」

志藤はそんな真尋をジロっと睨み、


「前科があるやつは疑われるねんで・・・。 世間とはそういうもんや、」

と言い放った。


「くっ・・昔のことをいつまでも・・」

真尋は思わず胸を押さえた。


「メシならおれが行ってやるから、」


「別に志藤さんとは行きたくねえの、」

真尋はため息をついた。




『天才』の乱入で、空気が若干乱れ始めました・・・。

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