Say anything(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

斯波が萌香の部屋から戻ってきた。


「やっぱ蛍光灯が切れてた。 もう点いたよ、」


「すみません、」

萌香は頭を下げた。



「普段は下の管理人のおじさんに言って。 夜はいないけど・・」

と言われて、


「あ・・すみません、」

また頭を下げた。


「ああ、いいよ。 真っ暗じゃあしょうがないもんな、」



萌香は玄関の棚にディスプレイのように置いてある真尋のCDに目をやった。



「これは・・北都マサヒロさんの・・」

思わず手に取る。


「彼のピアノは聴いたこと、ある?」


「いいえ。 あまりクラシックに興味はなかったので。 彼が社長の息子さんであることしか、」


「おれも・・腐るほどいろんなクラシック音楽を聴いてきたけど。 こいつのはちょっと違うかな・・・。 なんて言うか、音が・・生きてる。」

ちょっとだけ彼の顔が緩んだ。


「聴いてるだけで・・ドキドキする。 彼が日本でデビューした時の公演を見たけど。 ああ、まだここの社員じゃなくて、フリーで評論なんか書いてたときだけど。 ほんと、びっくりした。 こんなピアニストが日本にいたんだって。 決まりきった解釈じゃなくて、独特の感性で弾いてる。」



こんなに優しい顔は

見たことがない、というくらい

真尋のことを嬉しそうに話す。



萌香は彼の話よりもその横顔に見入ってしまった。

「これ、貸すから。 聴いてみな。」

ぶっきらぼうに手渡された。


「え・・」


「どういう因果か。 ウチの部署に来たんだから。 看板ピアニストの演奏聴いたことないってのも、まずいし。」


「は・・はい。」

萌香はそのCDを手にした。




その時、けたたましく玄関のチャイムが鳴る。


萌香は驚いて後ろのドアに振り向いた。



「な、なんだ??」

斯波も慌てて、鍵を開けると、いきなりガバっとドアが開く。



「清四郎~・・泊めて~・・」

いきなり現れた女性が彼に抱きつく。


「わっ・・な、なんだよっ!!」



萌香は驚いて立ちすくんでしまった。



「また・・こんなに飲んで! いいかげんにしろよ!」


「ちょっと飲みすぎただけじゃない・・」

その女性は萌香に気づいた。



「・・えっ!! 女!?」

あからさまに驚いた。


「ち、違うって!!」

斯波が慌てて否定をすると、


「え? 女じゃないの? すっごい・・キレイな子だけど・・ひょっとしてニューハーフとか??」

とんでもないことを言い出すし・・。



「だからさ・・」

斯波は大きなため息をついた。




萌香はこの女性の存在がよくわからなかったが、彼のところに女が訪ねてきた事実にハッとし、

「あ・・す、すみません、ありがとうございました、」

慌てて帰ろうとした。



「ああ・・いいのよ~。 ごめん、邪魔しちゃって。 あたし、帰るから・・」

その女性はニヤっと笑った。


「バカ! だから誤解すんなっつーの!」


「ホント、失礼します・・」

と行こうとする彼女に



「こ、コレ、オフクロ!」



斯波は焦ってそう言った。



「えっ、」



思わず驚いて足を止めた。


「・・コレなんて言わないでよ、」

女性は不満そうに言った。



お母さん?

こんなに若い人が・・?



萌香のオドロキを察した斯波が、

「若く見えっけど、とうに50は過ぎてっから、」

と、言い訳のようなものをしてしまった。


「ちょっと! 年は関係ないでしょ! どうも~。 清四郎の母です~。」

女性は改めて笑顔で萌香に言った。


「もう、ほんとこの人、何だか知らないけど、いっつもいっつも難しい顔して音楽のことばっか考えてて。 絶対に父親似だと思うんだけど。 あたし、この子に彼女の一人も紹介してもらったことないし~! 今日は嬉しい!」

母ははしゃいだ。


「だから、違うって・・」

もう否定をするのも疲れてしまった。


「だって、もう12時だよ。 こんな時間に部屋に入れるなんてさあ。 どーゆー関係よ、」

母はジロっと斯波をにらんだ。



「ど、どーゆー関係でもないですから。 あたし、この隣の住人で・・・。 斯波さんとは一緒に仕事をさせていただいています、」

萌香はそう言った。


「え? なに? よくわかんない・・」


「酔っぱらってるから。 気にすんな。」

斯波は萌香にため息混じりに言った。


「はあ・・」


「あ~、もうつっかれた・・」

母はまた斯波に抱きついた。



「も~、勘弁してくれよ~。」

萌香は彼とはあまりに対照的なこの母に驚きっぱなしだった。



コントのような斯波の母の乱入で、萌香は驚くばかり・・

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