Forever and ever(11) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「八神さん、ご苦労様でした。」

ようやく落ち着いて自宅に戻ったのはもう深夜だった。


絵梨沙からそう言って労われた。

真尋は疲れきって、ワインをしこたま飲んだ後寝てしまった。



「いいえ。 なんか興奮して寝れそうもないです、」

八神は微笑んだ。


「八神さんには本当にいくらお礼を言っても言い切れないくらい。 真尋のわがままにいつもつきあわせてしまって。 真尋があれだけ頑張れるのも八神さんがいてくれるからです。」



見れば見るほど

その鳶色の瞳に

吸い込まれそうなほど

彼女は美しかった。



そんな風に

優しい言葉をかけられると

ホント、

魂が抜かれそうだ・・・



八神はボーっとしてしまった。




「い、いえ・・おれなんか。 絵梨沙さんの存在が・・彼の原動力だと思うので、」

我に返って、ちょっと赤面をしながら言った。



「あたしは・・・。 真尋のためになっているのかしらって。」



少し寂しそうに言う彼女を、



「え・・?」



意外そうに見てしまった。



「真尋が学校を辞めて。 ウイーンで一生懸命に頑張っている頃。 あたしはピアニストとして挫折して。 ううん、真尋と離れて暮らすことがもうできなくなってて。 彼のところに転がり込んだの。 もう、ピアノを弾く気にもなれなくて・・・。 彼だってその頃は必死で。 仕事だって今みたくたくさんあったわけじゃないし。 自分のことだけで精一杯だったはずなのに。 そんなあたしのことも受け入れてくれて。 ・・真尋の足をひっぱるようなことになるのなら・・別れなくちゃいけないかなって。 思ったり。」



そんなことが

あったんだ・・・。




「もう、100%、真尋に縋ってたから。 こんな女なんか重くてどーしようもないんじゃないかって。 でも・・真尋は、あたしに側にいて欲しいって言ってくれて、」

絵梨沙は思い出してちょっと涙ぐんだ。



「もうね・・八神さんが真尋に振り回されて大変なのと同じようにあたしも、彼につきあって何度も倒れたわ。 南さんやお義兄さんは、真尋にそこまでする必要ないって言ってくれるんだけど。 あたしはもう・・ほんと、そうすることしかできないし。 あたしが倒れるたびに、真尋、泣きそうな顔で『ごめんな、ごめんな。』って言ってくれるの。 でも、あの人、自分の感情、コントロールできないから。 そう言ってもやっぱり、切羽詰ってくると周りが見えなくなって。」



その大変さは

痛いほどわかる。



「子供が生まれて・・。 玉田さんや八神さんがフォローをしてくださるようになって。 そういうこともなくなったけど。 みなさんにご迷惑をかけてしまって・・」




本当にすまなさそうに言う彼女に八神は笑顔で、


「ほんっと。 おれ、何とも思ってないですから。 あの人は不思議な人です。 なんでもしてあげたくなっちゃうって言うか。 つくすことに喜びを感じられるって言うか。 人徳なんですかねぇ。」

と明るく言った。



「八神さん、」



「それが・・なくなったら・・あの人でなくなってしまう。 おれは真尋さんのピアノを誰よりも側で聴いていたいから。」

八神は真剣な瞳でそう言った。



「じゃあ・・あたしのライバルね、」

絵梨沙は潤んだ瞳で少しいたずらっぽく笑ってそう言った。





「あ、おかえり~。 おつかれさま。」

美咲は八神が帰るのを待ちかねていたように玄関に出てきた。


「ただいま~。 あ~~、つっかれた・・」

八神はぐったりとして入ってくる。



「公演、大成功って、こっちの新聞にも載ってたよ。 すっごいね~。」

美咲は八神の上着を受け取ってハンガーにかけた。



「ん・・。 ほんっと。 まだ、身体に染み付いてるっていうか・・。」

八神はふっと微笑んだ。



「そう。 ・・よかったね、」



「うん、」





「慎吾、おふろ沸いたよ・・」

寝室に戻った八神に声をかけたが、八神はベッドに服のまま気持ち良さそうに眠っていた。



「あれ・・寝てる。 も~、しょうがないなあ・・。スーツ、皺になるって、」

美咲はベッドの端に腰掛ける。



それでも




すっごい

幸せそうな顔しちゃって。


こんにゃろ~

心なしか

笑ってるし。




よかったね。

慎吾。



慎吾のやりたいこと見つかって。

あたしは

そうやって楽しそうに

仕事をしてる

慎吾の顔を見るのが

大好きだよ・・。




そっと彼のやわらかい髪をなでた。



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