Time goes by(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

姉弟4人の中でも

おれが一番ばあちゃんにかわいがってもらったって

自信ある。



おれが東京の音大に行きたいって言ったときも

渋る家族の中でもすぐに賛成してくれた。


いっつも

おれのこと応援してくれて。




ぼんやりと祖母の寝顔を見ていると、ふいっと目を開けた。


「・・・慎吾?」

すぐに名前を呼んでくれた。


「うん・・」


「かえって・・きたの?」



声も弱々しかった。



「もう夏休みだからね、」

ニッコリと笑いかけた。


「なつやすみ・・そうか。 もうなつやすみなんだね。 仕事は・・どう?」



母は少しボケてるようなこと言ってたけど、祖母の会話はしっかりしていた。


「うん、なんとか頑張ってる。」


「そう、」


「美咲も明日帰ってくるって。」


「美咲・・・? ああ、東京に行ったんだっけ、」


「うん、頑張ってやってるみたいだよ。」


「美咲までくるんじゃあ・・・あたしも長くないね、」

と言って笑ったので、


「バカ言うなよ、」

ドキンとした。



「慎吾が。 お嫁さんをもらうまで・・なんとかがんばりたかったけどねえ、」



寂しいこと、言わないでくれよ・・



「まだ・・当分ないよ。 だから、がんばってくれよ、」


「いつまでがんばらせるんだよ・・」

祖母はまた笑った。



そして、

ふっと思い出したように



「美咲は・・」


「え?」


「美咲とは・・」

祖母が何を言いたいのか少しわかった。



「ばあちゃんは、おれと美咲が一緒になればいいって思ってるの?」

と聞いてみた。



祖母はふふっと笑って、

「そうなってくれれば。 何も心配することないかなあって。 美咲は・・・かわいくて、いい子だし。 小さい頃から、ほんとの孫みたく思ってたし、」


「・・そうなっちゃったら。 ばあちゃんが安心して死んじゃうといけないから。 ならないよ、」

八神は戸惑う気持ちを少し冗談っぽくそう言った。




「ばあちゃんが美咲のこと、本当の孫みたく思ってたのとおんなじで。 おれだって、美咲のこと兄弟みたいに思ってた。 そんな・・・結婚とか。 そんな気持ちになれないよ・・」

祖母にこの迷いをうちあけるように静かに言った。



「ばあちゃんもねえ・・そうだったよ。」



祖母は天井をぼんやりと見た。



「え・・?」


「ばあちゃんは子供のころに両親に死なれて。 遠い親戚だった八神の家にもらわれてきたから。」


「え、そーだったの?」

初耳だった。


「じいちゃんは4つ年上で。 本当に兄ちゃんみたく仲良かったし。 学校を出してもらって、畑を手伝いし始めて。

18のときだったかなあ。 突然、八神の両親に呼ばれて。 『あんた幸三のヨメになりなさい。』って。 びっくりしたよ・・」



ゆっくりとゆっくりと

話し始める祖母の話は

八神を少なからず驚かせた。



「昨日までほんとの兄ちゃんみたいに思ってきた人を、今日からはダンナになる人だよ、なんて言われても。 もう抵抗あってねえ。 でも、八神の両親はあたしをそのつもりでひきとったんだって。 そう言われちゃあ、」

祖母は遠い遠い昔を思い出して微笑んだ。


「そんなにいやだったの?」


「じいちゃんのことはね。 好きだったけど。 でも・・あたしも若かったし。 なかなか・・気持ちが切り替えられなくて。 でも、ここまで育ててくれた八神の両親には感謝してたし・・・断れなかったけど、」



年寄りって

昨日の晩御飯のことは忘れちゃうけど、大昔のことは昨日のようによく覚えてるって

前に何かで読んだことがある。

その通りにばあちゃんは、すらすらと大昔のことを話す。



初めて聴いた祖父母のなれそめの話は衝撃だった。



「そのわりには。 すぐに、あんたのお父さんが生まれちゃったんだけどねえ、」

と笑ったので、つられて笑ってしまった。


「とまどいはあったけど。 まあ・・どのみち家族としてやっていくんだって。 それがじいちゃんとなら、いいかって。  幸せ、だったしね。」

その言葉にはホッとした。


「じいちゃんは平気だったのかな、」



「聞いた事なかったけど。 でも、あたしはその話を聞いて・・とりあえず1週間くらいで覚悟はできたけどね。 じーちゃんは・・・2ヶ月も迷ってたんだよ? 失礼な話だよねえ・・・・ぜったい他に好きな女がいたんだよ・・」



ばあちゃんはまるで

少女のように笑った。



祖父母のなれそめを聞いた八神は、初耳なことに驚き・・

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