Time goes by(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

八神はその日一日精彩を欠いた。


「八神さん、これはあたしがまとめておきます。」

萌香がすっと手を出してファイルを見た。


「え・・」


「仕事、たまってるみたいだし。 これはあたしがパソコンに打ち込んでおきます。」


「栗栖さん、」

少し驚いた。



彼女は自分が入社して2ヶ月後にここにやってきた。


1つ年下だが

本当に美人でスタイルがよくて


だけど

すっごく冷たい雰囲気で。

しゃべることさえ、ほとんどなかった。

その彼女が助けてくれた・・・



彼女も色々あったけど・・

そう言われれば最近

表情が少し優しくなったような気がする。



「ありがとう。」

八神は小さな声で萌香に言うと、少し微笑んで会釈を返された。



何とか代わりのホールを探さないとならないのだが、なかなかうまく進めない。


玉田も見ていられずに手助けをしようとするが、斯波にものすごい怖い顔で睨まれてしまう。


「・・・まだ、時間はあるから。 焦るなよ、」

そう言うだけで精一杯だった。


「はあ・・」



もう

泣きたい・・・



八方塞のままその日は帰宅する。

帰り道、メールが着信した。


麻由子からだった。



『おかげさまで元いたパリの音楽院の試験を受け直すことでまたそこで勉強ができるかもしれない、というところまでたどり着けました。 今は本当にヴァイオリンが楽しくて、もっともっと上を目指して勉強をしたいと心から思えるようになりました・・・・』



希望に満ちたメールだった。



よかった・・



そう思う反面

今の自分があまりにも惨めな気がした。



『持っていない』

やつは

どこまでも

『持ってない』んだ。



おれ

ほんっと

何やってんだろ



オーボエの才能もなかったし

マユちゃんみたく

必死で頑張ろうって気持ちもなかった。



オケを辞めていくときの

惨めな気持ちを思い出してしまった。



そして

今日してしまった

あまりにも初歩的なミス。



麻由子のメールは

さらに八神を落ち込ませた。



部屋に帰っても何もする気になれなかった。



『向いてねーんじゃねーの?』



斯波の言葉が何度も何度も頭の中をぐるぐると回る。

そこにインターホンが鳴る。



「あ、帰ってた? よかった。」

美咲だった。



「なんだよ・・」



ひとりになりたかったのに。



ちょっと彼女の出現は迷惑だった。



「今日ね、会社の人が北海道の出張から帰ってきて。 レトルトのスープカレーたくさん買ってきてくれたの。これ、北海道で超有名なんだって。 いっぱいあったから慎吾にもあげる。」

と紙袋からカレーの箱を取り出した。


「あたしもスープカレーは初めてだなあ・・。 ね、食べてみよっか? ゴハンまだ?」


彼女の明るい声にイラっとしてしまい、



「いいよ。 もう・・・。 悪いけど帰って。」

ブスっとして言ってしまった。



もう全てネガテイブに感じてしまう八神。 かなり落ち込んでますが・・

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