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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「家出してきたの? 26にもなって??」

もう八神は美咲の行動に疑問でいっぱいだった。


「家出じゃないよ。 お父さんが見合いしろとかうるさいから。 もうウチの会社の仕事も辞めて、東京にいる友達に頼んで、ワインの輸入会社に伝つけてもらったから。 明日、面接に行ってくるの。」

美咲はため息混じりに言った。


「み、見合い?」


「ほんっとうるさいったら。 んで、ケンカして『あたし、東京に行く!』って出てきちゃった。 一応宣言したから家出じゃないよ。」



そういう問題じゃねーだろ・・。



志藤と真尋は植木の陰に隠れるように二人の会話を盗み聞きしていた。



「まだ仕事も決まってないのに! 無謀すぎる! 美咲は東京で暮らしたことないから、そんな甘いこと言ってんだ。 ほんっと大変なんだからな! 東京は!」

だんだん彼女に腹が立ってきた。


「もう勝沼には戻らない。 この会社に採用されなくても、絶対に東京で暮らす!」



「なんか、ケンカしてるよ、」

真尋は志藤に言う。


「ケンカっつーか。」

もう、興味が沸いてしまい二人は我を忘れて八神と美咲の会話に耳をそばだてた。



「とにかく! なんでおれんとこなんだ! その友達の家に行けばいいだろ?」


「だって、その子結婚してるもん。 しかも新婚2ヶ月だよ? そんなとこ行けないよ。 他には知り合いもいないし。」


「だから! もちょっと考えてから家出て来いっつーの!ホテルに泊まるとか!」


「いつまでになるかわかんないんだよ?・・・んじゃあ、渋谷のクラブにでも行って、泊めてくれそうな人探すから!」


「はあ??」


「もう、いいよ!」

美咲は怒って荷物を持って行こうとしたが、


「おい! 待てって!」

それはそれで心配になり・・・。



八神は仕方なくポケットから自宅の鍵を取り出して、彼女に手渡した。


「長居したらしょーちしねーからな。」

ブスっとして言った。



美咲は、ぱあっと明るい顔になり、

「ありがと! やっぱり慎吾なら助けてくれると思ってた!」

と喜んだ。



「ちょっとちょっと、カギ渡してますよ、」

真尋は志藤の背中を叩いた。


「う~~ん、」

志藤も彼らの関係が気になった。



美咲は上機嫌になって、志藤と真尋の元に歩み寄る。

二人は慌てて椅子に戻った。


「どーも、お騒がせしました。 あ、これ! ウチのワインなんです。 ベルギーのコンテストで賞も取って。 よかったらどーぞ。」

大きなバッグからワインを2本取り出して、それぞれ志藤と真尋に手渡した。


「あ、ありがと、」

二人は顔をひきつらせてそれを手にした。



「じゃあ、ごちそうさまでした!」


美咲はペコリとお辞儀をして行ってしまった。

八神はその後姿にため息をついた。




「な~な~、ほんとにただの幼なじみ~?」


「・・・幼なじみですよ、」


「え~? 部屋に泊めちゃうんだろ~?」

真尋のしつこい追及がウザかった。



「・・幼なじみですから、」



八神は頑なにそれをくりかえすだけだった。



美咲のヤツ

何考えてんだ。

なんで

いまさら。



八神は美咲の気持ちが全く読みきれなかった。




「うっそ! 八神のこと追っかけて彼女来たの?」


「あんまり女の子の影ないし、意外ですね。」

さっそくその話は南と玉田に言いふらされた。



そんなことを言われているとは露知らず

八神はもう

いろんなことで頭がいっぱいだった。



「あのう、」

八神は斯波との打ち合わせを終えた真尋におそるおそる近づいた。


「なに?」



「あの、申し訳ないんですけど。 今日、泊めてもらえませんか?」



「はあ?」



「スタジオでもいいんです! ほんと、真尋さんとこの地下の練習室でもいいですから!」

必死な彼に、


「なんで?」

真尋は怪しんだ。



「え、」

すぐに理由は答えられなかった。


「彼女、待ってんじゃねーの?」

ちょっと意地悪く言うと、


「・・・・・」


八神は暗く無言になってしまった。



そして



「すみません、いいです。」

くるっと後ろを向いてしまったので、


「ウソウソ。 いいよ。 そんなスタジオなんかじゃなくってさあ。 ウチに泊まればいいじゃん。 部屋、いっぱいあるし。」

真尋は八神の肩に手をやって彼の顔を覗き込んだ。




「え? 帰れないの?」

その後、会社から美咲に電話をした。


「冷蔵庫に食い物はあるから、適当に食ってて。 鍵は明日でかけるときにポストに入れておいてくれればいいから。」


「仕事?」


美咲の追及に

「・・うん。」

ウソをついてしまった。



「わ~、しんごだァ~! ね、きょうはえびふらいがいい~!」

真尋の家に行くと竜生が飛びついてきた。


「もう無理を言わないで。 竜生ったら、」

絵梨沙は彼をなだめる。


「いえ。 いいんです。 おれが役に立てるのはそのくらいですから。 絵梨沙さん、ほんっとすみません・・いきなり。」


「いいえ。 八神さんならいつでも大歓迎ですから。」


「げーむもやろ、げーむ!」

竜生は嬉しくてしかたないように八神の手を引っ張った。



「わかった、わかった。」

八神は笑顔を見せながらも、心が重かった。


美咲を自分の部屋に泊めてしまった八神はそこに帰ろうとせず・・

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