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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

う~~~~~ん。



八神は重い重いまぶたを開いた。

ぼんやりと

天井が見える。


しかも

見慣れぬ。



あれ?



「あ、気がつきましたか?」

その優しい声にふっとその方向を見やる。



「絵梨沙・・さん?」


「よかった。 ずっと眠りっぱなしだったから、」

彼女の笑顔が見える。



「あれ? おれ・・」



状況を把握すると

ここが

病院だということがわかった。



「過労だそうです。 お医者さまが点滴を打ってしばらく安静にするようにって。」

腕に点滴の管がついていることにも初めて気づいた。



「倒れたんですか? おれ、」

それさえもわかっていなかった。


「ええ。 真尋のスタジオで。 それで慌てて救急車に連絡して。 本当にごめんなさいね。 真尋のせいで、」

絵梨沙は申し訳なさそうに八神に謝った。


「そんな・・。 そんなこと、ないです。」



そこに

「あ、気がついた?」

南が入ってきた。


「南さん、」


「ほんと死んだみたいに眠ってたからさあ。 死んじゃったかと思った、」

能天気にそう言って笑った。



ああ、そっか

おれ

真尋さんのピアノ聴いてて。

このまま

天国に行ってもいいなあってくらい気持よくて。



ほんっと

天国に行くトコだった。



そう思うとおかしくなってきた。



そして、ハッとして、

「えっ! 今日、何日ですか? 真尋さんの・・・リサイタルは?」

慌てて起き上がり、まためまいを起こしてふらついた。


「ほらほら。 無理しないで。 もう昨日終わっちゃったよ。 あんた丸2日間寝っぱなしやったし。」



2日も!?



それにも驚きだった。


「え~~~? 終わっちゃったんですかあ?」


「そう。 も、すっごくお客さんも喜んでくれてさあ。 盛り上がったし。」


「なんだ、も~~~。 おれも聴きたかった、」

本音を口にした。



あのわがままについていけたのも

あの人のピアノを聴きたい、それ一身だったのに。



「でも、それも八神さんのおかげです。 真尋ね、八神さんが倒れた時持ってたカツサンドもすっごい美味しいって言って。 たまに外食なんかしてもね、『八神が作ったメシのがうまい。』っていつも言ってるし。」

絵梨沙はニッコリと微笑む。


「そ、そんな、おれなんか。」

八神は大いに照れた。


「ほんまごくろーさん。 よう頑張ったなあ、」

南は八神の頭を撫でた。




「お! 八神~~!」

真尋もやってきた。


「真尋さん、」


「よく寝てたなあ。 ほんっと、このまま一生目が覚めないかと思っちゃった。」

さっきの南と同じコトを言われて、おかしくなって笑ってしまった。


「も、リサイタルもばっちし! アンコール3回もやっちゃって! 斯波っちにも褒められたし!」

満面の笑みで言う。



ほんっと

不思議な人だな。

いちいち

びっくりすることだらけだけど。



「な、再来週からから1ヶ月ウイーンに行くんだけどさ。 そん時もついてきてくれない?」


「は?」


「もうさあ、八神のメシ目当てがモロわかりなんやけど?」

南が呆れて言うと、


「やっぱさあ、海外に行くとね。 食生活が大事じゃん? 絵梨沙はまだまだ行かれそうもないしさ~。 あと、掃除と洗濯してくれる人がいると助かるんだよね、」


「ほんと、図々しいわよ。」

絵梨沙も呆れた。



海外で1ヶ月・・・。



これまでのいきさつを考えると

とてつもなく過酷そうだったが。


でも

何だか嫌じゃない。



むしろ、

もっともっとこの人のピアノを聴いていたい気がする。



「志藤さん、行かせてくれますかね、」


「え、八神行くの?」

南は驚いた。


「もし、志藤さんが許してくれたら、」


「うわ~~~、物好き~。 あたしやったら絶対ヤだ。」


「なんだよ、ソレ、」

真尋は大いに不満そうだった。



その時から

真尋さんに喜んで欲しい

いいピアノを弾いて欲しい

それだけを望むようになっていた。




入社して1ヶ月。



おれは

生まれ変わって、ここで頑張るぞ~~!!



・・と、夢と希望の燃えていた八神でした。 そして・・

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