Somebody loves you(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「どういう・・こと?」



高宮の母が半ば呆然としながら帰ったあと、夏希はやっと口を開いた。



「ああ、おれ、長野に本籍と住民票あったの。 オヤジが長野から出馬しててるから。 そこに住民票ないとダメだし。 だから家族全員。まあ、おれが選挙権持つようになってアメリカにいるときもね。 不在投票までさせられて。 でも、なんか意味ないかなって。 で、この前、長野の役所に行って、本籍と住民票を東京に移す手はずをしてきた。」


高宮は淡々と説明した。


「それって、どーゆーことなんですか。」


「どうでもないよ。 ここに住民票を移したってだけ。 そんだけ。」

高宮はふっと笑う。


「なんで・・急に。」


「相変わらず。 選挙のことしか考えてないなあって。 ウチの親。 オヤジのあとを継がなかったおれには、もう高宮の家のことも全て継ぐ権利はないと思う。 この際、ハッキリさせたほうがいいんじゃないかって。 恵の邪魔はしたくないし。 おれがいないほうがいいのであれば、もう、それでいいと思ってる。」



「隆ちゃん、」


「今まで育ててきてもらったことは事実だから。 その点では、感謝しないといけないけど。 おれはもう兄貴の身代わりではなく、高宮隆之介として生きたい。 今の自分に誇りを持って生きたいんだ。」



落ち着いた瞳で

笑顔さえ浮かべて

そんなことを言う彼が

本当に悲しすぎて。



夏希は大粒の涙をこぼしてしまった。



「え、なんで・・泣くの?」

高宮はぎょっとした。


夏希は言葉が出ずに、高宮に抱きついた。


「もう、あたしは。 政治のこととか・・ぜんっぜんわかんないし。 なんも・・言ってあげられなくって。 それがすっごくもどかしくって。 ほんとは、隆ちゃんと、お父さんとお母さんがもっともっと・・仲良くなって欲しいって、思うけど。 どーしていいかわかんなくって、」



もう

ジレンマで。

夏希は悔しくなって涙をこぼす。



高宮はそんな彼女を優しく抱きしめて


「いいんだよ。 今は・・寂しくない。 おれがこんなに冷静にいられるのも、夏希がいるからだ。」


「え・・・?」


「この前みたく、自分を失ったりしないで。 今の自分を見つめられるのもきみがこうしてそばにいてくれるからだ。」



「隆ちゃん・・」


夏希はぎゅっと彼の背中にすがる。



「なんも、なくなっちゃってもいい?」



高宮は彼女につぶやくように言う。



「え・・・」



「おれは、元財務大臣の息子でもなく。 代々続く、高宮家の長男でも、もうなくなる。 どんだけあるかわかんない財産だって、妹夫婦のものになる。 それでも・・いい?」



あまりの壮大な問いかけに、


「お、お金?」

夏希は泣きながら高宮の顔を見る。


「うん、そうだよ。 おれはただのサラリーマンになる。」



彼の笑顔に

夏希は再び高宮に抱きついた。



「隆ちゃんは、隆ちゃんだから。 ずっと、こうやっておんなじように、いられればいい・・」



言葉だけ

聞いてたら

ほんと

子供みたいで。



でも

何よりも嬉しいよ。

きみのその言葉が。


そう

きみがいてくれたから

こうしてあの『家族』と離れられる決心ができたんだ。




翌日は

父が会社にまでやって来た。


それも

もうだいたい想像がついていた。



近くの喫茶店に二人で入る。



「・・本気なのか。」

父は厳しい目で高宮を見た。


「はい。 悪いけどおれはもう。 選挙に関してはなにもしない。 オフクロから北都社長に口ぞえして欲しいって言われたけど。 それも、しない。 息子を勘当したなんて世間体が悪いだろうけど。 気持ち的にはもうそうしてもらってもいいと思う。 オヤジは遺言状とか書いてるかわかんないけど、それも全部恵たちに宛ててほしい。 おれは、全て放棄する。」


「隆之介・・・」


父は息子が本気であることを感じ取った。



「それと、おれは、本当に好きな人と一緒になりたい。 もう、彼女なしの自分が考えられない、」

高宮は夏希のことも仄めかした。



「それは、この前の・・・」


「うん。 彼女が『高宮家』につりあうとか、そういうことではなくて。 おれが彼女につりあうか、どうかなんだ。 オヤジやオフクロが気に入るかとか、それも、もう・・。 自由にして欲しい。」



父はショックが顔に出ていた。


「もう、そこまでの話になっているのか、」


「いや。 まだまだ。 彼女は若いし。 とてもそこまで考えられないけど。 でも、おれの気持ちは本気だから。 おれが『高宮隆之介』としておれらしく生きるのに彼女が必要だ。 ・・おれは、兄貴じゃない。」



高宮はこうして父に面と向かってこんなことを言ったのは初めてだった。



子供のころから忙しくて

まともに顔をつき合わせて話すこともなかった。


思えば。

自分の跡を継いで政治家になってくれると信じて疑わなかった息子が

全くその気がなくて

どうしてもそれを承知しないなんて

親にしてみれば

焦っただろうな・・・。



「おれは兄貴の代わりにはなれないし、ならない。」



キッパリとそう言った。


まだ呆然としている父に



「・・・長い間、ありがとうございました。 これからはひとりで頑張っていきます、」



高宮は素直に父に頭を下げることができた。



父の

こんなに動揺した顔を見るのは

初めてだった。



今はもう夏希が側にいてくれるだけで高宮はひとりで頑張れそうでした・・

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