Only as for your eyes(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

高宮は相変わらずの忙しさだった。


社長と共に、ホクトエンターテイメントの仕事プラスグループの系列のホテル建設の件で1週間も大阪に出張することになっていた。


「う~~~~、なんっか・・・行をどうしても間違えてしまう・・・」



夏希はパソコン画面に食い入るようにして格闘していた。


「もう帰れば? 一日中そんなして、」

八神は呆れて言った後に、


「あ、そっか。 高宮、大阪に1週間だって? さびしいもんなあ、帰っても。」

とからかった。


「それは、関係ないでしょう・・」

夏希は八神をジロっと睨む。


「大阪って、大阪支社だよな。 例のかわいいって評判の支社長秘書の子!『あ~、久しぶり~』なんて、盛り上がっちゃったりして!」


とさらに煽ると、夏希の背中がギクっとした。


「久しぶりに会うとさあ、お互い新鮮に思えちゃったりして、」


さらに続けられ、背中がふるふると震える。



「ちょっと、」


見かねた玉田が八神を小突く。



「え?」



我に返って夏希の背中を見ると、モロ動揺が背中に出ている。


「あ、ウソ、ウソだって! 冗談、冗談。」

慌ててフォローした。


「・・・わ、わかってますよ!」

夏希が強がったので、八神はまたちょっと憎たらしくなり、



「ま、でも。 夜電話がなかったら・・・アウトだな、」



最後のとどめをさしてしまった。



「八神!」

玉田に背中を叩かれた。



夏希はいきなりすごい勢いで帰り仕度を始めた。

その勢いで脇机にあった書類が雪崩のようにどどどっと落ちた。


「あ~あ~、もう、」

八神が拾うのを手伝ってやると、夏希は自分のしたことを思いっきり棚にあげて、


「おねがいします、」

と真剣な顔で言って、部屋から出て行ってしまった。


「って! おまえが落としたんだろっ! おねがいしますじゃねーだろっ!」

八神の声はもちろん聞こえなかった。




その頃、大阪では・・・。



「じゃあ、あとは片付けておくから、水谷さんは先に帰って。」



「でも、」


「これはホクトエンターテイメントの仕事じゃないから。 厳密に言うと、明日からは今度神戸にできるノースキャピタルホテルの打ち合わせで、」


「社長の全般の秘書をされているんですか?」


「うん、まあ。 ほとんどがホクトエンターテイメントの仕事だけど。 たまに、」


「お忙しいですね、相変わらず。」


「いやいや。 ここに来た当初のことを思えば。」

高宮は理沙に笑いかける。



ほんと

もう毎日目が回りそうなほど忙しかったけど

今思えば楽しかった。


理沙はそんな風に思っていた。



「来週の水曜日までいらっしゃるんですか?」


「うん。社長は別の仕事があるから明後日帰られるんだけど。 おれはその後も残って打ち合わせで。」


「彼女は寂しいでしょうね。」

理沙はそう言ってふと微笑んだ。



「え・・・」



ちょっとドキンとした。



「や、彼女も忙しいし。」

恥ずかしそうに小さな声で言った。


「うまく・・いってるんですね。」


「まあ、」



嫌味でもなんでもなく。

理沙は素直にそう言えた。



そして、ふと彼のネクタイに目をやり、


「変わった柄のネクタイですね、」

と言った。


「ああ、これ、なんだと思う?」

高宮はそれを手にして笑う。


「え・・・幾何学模様??」

理沙は目を凝らす。


「ゼンマイ。」

高宮はちょっと得意そうにそう言った。


「は??」

思わず聞き返す。


「変わってるだろ? 彼女がくれたの。」

高宮はおかしそうに笑う。


「え?」

また驚く。


「センスがいいのか悪いのか。 よくわかんないけど。 でも、これを見つけてくる人って、あんまいないかなって・・」


理沙もおかしくなって笑いながら、

「ほんと、おもしろい人ですね。」

彼女と東京で会ったときのことを思い出す。


「おもしろいっていうか。 変わってんだよ、ホント。」

と言う言葉とはうらはらに

本当に嬉しそうで。


そのゼンマイ柄のネクタイもちょっと自慢げで。

理沙はもう彼の気持ちが彼女に全て埋め尽くされているとわかってしまった。



「じゃあ、おつかれさまでした。 あたし、先に帰ります。」


「ウン。 ご苦労さま。」

高宮は軽く手を挙げた。




考えないようにしよう

考えないようにしよう



夏希は家に帰ってきたものの、何もすることができずに携帯を目の前にただ座っていた。



この前だって

あたしがつまらないヤキモチを妬いちゃったから

あんな騒ぎになっちゃって。

もっともっと

隆ちゃんのこと信じてあげなくちゃいけないのに。



そう自分に言い聞かせて。



しかし



『夜、電話が来なかったらアウトだな、』



八神に悪魔のような言葉が蘇る。



「い・・・いやだァ~~!」



両手で耳を押さえて絶叫してしまった。



と、そこに電話が鳴る。



「もっ・・・もしもし!!」

慌てて出た。


「なに、そんなにすごい勢いで。」

高宮の声だった。



「は・・」

全身の力が抜けてしまった。



八神によけいなことを吹き込まれ、またも不安になる夏希でしたが・・

人気ブログランキングへ 左矢印お気に召しましたら、ポチっ!ぶーぶーお願いします!!