With you(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

志藤は夏希が持ってきた書類に目を通して、


「いいよ。 ハイ。」

とハンコを押して彼女に返す。



「ありがとうございます・・・」

一礼して去ろうとすると、



「ゆかた、直ったの?」



そんな言葉を投げかけられた。



「南さんの知り合いの、縫製屋さんで。 サービスで直してもらって・・・。」



くら~~く、返事をした。



「そっか。 よかったなあ。 新品やもんなァ、」

いやらしい笑いを浮かべられ



その話は

おしゃべりな二人からあっという間にみんなに知れ渡り。

夏希はみんなの冷やかしにジっと耐えた。



自業自得・・・・



そんな四字熟語がアタマをぐるぐる回る。



「ほんっと、加瀬ってカワイイね。 あの無防備さが、」

南はアハハと笑った。


「羞恥心ゼロだな。」

斯波は仏頂面で言う。


「もう高宮なんか、気の毒なくらい真っ赤になっちゃってさあ。 けっこうピュアだよね~、」


「単純に直してもらったらまたお金がかかるって思っちゃったんでしょう。 彼女らしいと言うか。もうからかわないであげてください。」

萌香も苦笑いをした。



そこに

噂をすれば

高宮がちょこっと顔を出した。


南はまたぶっと吹き出しそうになりながら、


「なに?」

と言った。


「や、えっと、栗栖さん、ちょっといいですか?」

斯波がいたので気まずかったが萌香を呼んだ。


「あたし? いいわよ。 昼休みだし、」

萌香は席を立った。





「え? 指輪?」



高宮に休憩室に呼ばれた萌香は少し驚いて言った。



「もうすぐ彼女の誕生日なんで。 でも、なんか意味深かなあって、」

大真面目に言われたので、


「や、別にいいんじゃないかしら、」

萌香は少々引き気味に言った。


「そう、かな、」

高宮はちょっと嬉しそうに言った。


「女の子なら好きな人に指輪を貰うのはすっごく嬉しいと思うんですけど。ただ・・」


「ただ?」


ドキっとした。



「普通の女の子は、ですけど。」



その意味を高宮もかみ締める。



確かに

彼女が普通でないことは

わかってる・・・。



「加瀬さんは、普通の女の子とスイッチが違うっていうか、」

萌香は遠慮がちに言う。



彼女、指輪なんかあげたら

どう思うだろう。



なんだか想像がつかない。


「それって、高宮さん的には意味深な指輪なんですか?」


「・・・に、したかったけど、」

願望であることを述べた。


「まあ、たぶん。 深い意味の指輪でも、あの子は気づかないかもしれへん、」

萌香はふっと笑った。


「はは、」

高宮も力なく笑った。


「お誕生日のプレゼントとして気軽に渡したら? それはそれで嬉しいものよ、」

萌香は彼を励ますようににっこり笑った。


「なんか、それも悲しいけどなあ、」

はあっとため息をついてタバコを手にした。



「本気、なのね。」



萌香は高宮の顔を覗き込むようにして言った。



「ん。 彼女がね・・まだまだ成長してないことくらいわかってる。 結婚とか? そういうことが、全く彼女の意識の中にないってことは。 でもね、彼女に近づけば近づくほど。 ・・もう、たまんないんだよね、」

ため息と一緒に煙を吐き出した。



「ずっと、ずっと一緒にいたくて。 栗栖さんたちみたく、一緒に棲むとかじゃなくて。 おれはあの子と家族になりたいんだ。」


「家族・・・」




高宮はにっこり笑って、



「ウン、でもなかなかね。 わかってくんないんだよね。 ほんっと子供みたくって、」

と言った。



「いわき、行くんでしょう?」



「え、ああ。 彼女が来てくださいって。 なんか期待しちゃったんだけど。 でも、まあ、友達と同等みたいな? あっちは全然、まったく、少しも深い意味なくて。 まあ、おれが家族と疎遠にしてるの見てかわいそうに思ったのかもしれないし。 ほんっとね、いいお母さんなんだよね。 家族二人っきりでも、いい家族だなあって思えるんだよね。 お父さんを亡くして、お母さんひとりで頑張って娘を東京の大学にやるなんて、並大抵なことじゃないと思うよ。 娘のこと、いっつも考えてるし。 ほんと、いいお母さんで、」


高宮の言葉は羨望に近かった。



「でも、ほんと、焦らないで。 そこまで彼女のことをわかってあげられているのなら、」

萌香は静かにそう言って笑った。






そうこうしているうちに

夏期休暇になり、夏希と高宮はいわきに向かう。


「で、おれのホテルとってくれたの?」

荷物を網棚に載せながら夏希に言うと、


「え? ホテル? なんで?」

きょとんとして言う。


「なんでって、」


「だからウチでいいって言ってるのに。 もったいないですよ。 ホテルなんか。 それにウチ、市街地からちょっと離れてるからホテルなんか泊まったら行き来が大変。」


「はあ?」

まさか本当にそうなるとは思っていなかったので高宮は驚いた。


「お母さんも布団干して待ってるって言うから。 ノープロ、ノープロ。」

夏希はお気楽に笑った。



いいのかなあ。



高宮はまだ迷いがあった。



1時間半ほど電車に乗ると、いわきについた。


「あっつ~い! もうほんっといわきって東北かなあって思うんですよ。 夏に来るたんびに、」

夏希は言った。



「あ、夏希~!」

母が駅前まで車で迎えに来ていた。



高宮はお辞儀をした。


母は車から降りて、

「まあまあ、高宮さんもこんな田舎までようこそ。 ほんっと、なんにもないけどさ。 おいしいものはたくさんあるから。ゆっくりしてください。」

とにっこりと微笑まれ、


「あ、ほんとすみません母子水入らずのところを図々しくお邪魔することになってしまって。」

本当に恐縮してしまった。



「ああ、いいから。 お盆はね、にぎやかなほうがいいんだって。 ほら、荷物を乗っけて。」

夏希にそっくりな朗らかな笑顔で母は言った。



夏希と『家族』になりたいと願う高宮。 そして、彼女の実家に行く日がやって来て・・

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