To meet you(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

絵梨沙との仕事が続く夏希は彼女の家を訪れることも多くなった。

竜生や真鈴たちとも、すっかり仲良くなって時間がある時は一緒に遊んだりしていた。


「ね~、早くヒコーキ飛ばそうよ~。」

竜生が夏希の手を引っ張る。


「ウン、ちょっと待ってて。」


「竜生、加瀬さんはお仕事があるんだから。 もう会社に戻らないと、」

絵梨沙がたしなめるが、


「・・30分だけ。 昼休み終わるまでには戻りますから。」


夏希はにっこり笑って庭で子供たちの相手をしてくれた。



と言うより


一緒になって遊んでいた。



昼ごはんも絵梨沙に作ってもらってごちそうになってしまった。


「あ~、おいしーですぅ~。 いっぱい食べてしまいました、」


「たくさん食べてくれて嬉しいわ、」


「真尋さんは、お仕事なんですか?」



だいたい

いつも彼は家にいないようだった。


「スタジオ。 だいたい日本にいるときは昼間はそこに。」

絵梨沙はにっこりと笑う。


「でも、ここの地下にも立派な練習場があるって聞きましたけど、」


「そうなんだけど。 でも、家じゃないところで一人になりたいみたいで。」


「そんなにピアノに集中したいんでしょうか・・」



「ピアノじゃないことに集中したいからよ、」

絵梨沙はまた笑った。




ああ


あんなことや

こんなこととか?




夏希は彼がスタジオでエロビデオを見たり、ピアノの蓋の上でケーキを食べたりしていたことを思い出した。




「明日、彼の渋谷のライブ。 加瀬さんも行かない?」


「え・・・」


「私も行きますから。 一緒にどうですか? お仕事がなければ。」


「はい、」



「彼のピアノは生で聴くのが一番だから・・・。」



そう言う彼女の横顔は


本当に嬉しそうで。





「あのう。」


夏希は常日頃から思っていた疑問点を彼女にぶつけてみた。


「絵梨沙さんは、真尋さんのどーゆーとこが好きなんですか・・」


「え?」


その質問に絵梨沙は驚いたように彼女を見た。


「や、なんか・・・。 なんでかなあって、」

素直すぎる質問に絵梨沙は笑いながら、



「最初はね。 彼のこと大っきらいだった。」

あっけらかんとそう言った。



「は?」







「私。 ピアノしかしてこなかったから。 ピアノ以外に楽しいこともなかったし。 ウイーンに住んでいたんだけど、両親が離婚して。 10歳の頃に日本に戻ってきたの。日本語もおぼつかなくて、友達もできなくて。 一人っ子で、母はずっと仕事だったし。 もうピアノやるしかなくって。 ジュニア時代からいくつもコンクールで優勝するくらいになって。 そして、ウイーンに留学した先で、あの人と出会ったの。」



絵梨沙は食後のデザートの手作りのプリンを出してくれた。




「最初は。 もう・・なんて人だろうって思ってた。 学校の課題ひとつまともにこなせなくて。 ほんと、下手だった。 よくこんなんで留学できたなって思うくらい。 私の父はピアニストだったんだけど。 その学校の講師を勤めていて。 その縁で私は留学したんだけど。 父が真尋の先生だったの。」


「絵梨沙さんのお父さんが、」


「ええ。 父は真尋のピアノを初めて聴いたときから、すっごく何かを感じていたみたい。 ほんと、ふざけてばかりで、私も彼が本気でピアノを弾いているところさえ見たことなかったのに。 ある時、ピアノデュオの課題が出されて。 父が私に彼と組むように言ったの。 ほんと、イヤだったんだけど。 二人で練習をしていくうちに、何だか。 すっごい不思議な気持ちになって。」




絵梨沙は遠い目をしてその頃のことを思い出しているようだった。




「この人は私が欲しくて欲しくてたまらないものを持ってるって。 思うようになって。 私は全てをピアノに賭けていたのに、彼はそうじゃなかった。 自分のやりたいことやりつくして、楽しいこともたくさん経験してきて。 いつも心に余裕があって。 うまくいえないけど、一度聴いたら耳から離れない不思議なピアノだった。 彼がピアノを弾くと、誰もが一瞬立ち止まるような。 ああ・・・・この人『天才』なんだって。 いくら私が努力しても、叶うことのないものを持ってる。 いつしか彼のピアノをそばで聴いていることが幸せになって。 気がついたら離れられなくなっちゃった・・・」




彼女の整った顔立ちが、嬉しそうに少し崩れる。



「ピアノが・・好きってことですか・・?」




夏希は彼女が彼のピアノにほれ込んでいることはわかったのだが、それがイコール愛に繋がるのが不思議でたまらない。




「あの人、ほんとピアノを取ったら何もできなくて。 子供みたいに純粋で、いつも上ばかり向いていて。 自分の才能をわかっているのかいないのか、わからないけど。 いつも自然体で生きてる。 確かにピアノの結びつきは強いと思うけど。 私は真尋がいない世界はもう考えられないの。 自分にどれだけのピアノの才能があったとしても、それが彼のためになるのなら沢藤絵梨沙として、世にでなくても、北都マサヒロの妻としての私が存在していればもうそれでいいって。」




彼女の話に


鳥肌が立ってしまった。




『真尋がいない世界は考えられないの』




ドラマみたいなセリフ。

生で初めて聴いた。




すっごい


愛しちゃってるんだなァ。


あたしは

そこまで人を愛せるだろうか・・・・。




ふと


高宮の顔が脳裏に浮かんだ。

絵梨沙さんの想いに比べたら。


やっぱりあたしの恋なんて

中学生レベルだなあ。



絵梨沙の真尋への愛情の深さに夏希は考えさせられます・・

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