Shooting star(5) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あ、いっけね。 映画配給会社との打ち合わせの資料揃えておかなくちゃなんなかった。うわ~、時間ね~。」


志藤はひとり言をいいながらデスクの上をバサバサやりはじめた。



すると、


「どうぞ。 時間があったのでやっておきました。」

その気配を察した高宮がすっとクリアファイルを差し出した。


「え・・・・」


「その打ち合わせは常務も同席されますから。」


「あ・・ありがと。」

あっけに取られながらそれを受け取る。


「いえ。」

またくるっと背を向けて仕事をし始めた。



こいつに

なんかしてもらったの・・初めてやん。

しかも、礼まで言ってしまったし。




「はあ? 高宮とエスニックも行ったの~?」



夏希はいつものように昼休み、コンビニのサンドイッチを食べながら、同じく弁当持参の八神と雑談をしていた。


「それがね~。 めちゃくちゃ美味しかったんですよ~。 タイ? インドネシア? なんかわかんないけど、そっち方面の料理で~」



「おまえ、高宮なんかやめとけよ、」

八神はへっと笑った。


「え? やめとけって?」


「なに、つきあったりしてるってこと?」

と言われて、



「なっ・・・! そんなわけないじゃないですか!」



そんなことを微塵も思わなかった夏希は八神の腕を思いっきり叩いた。



「いっ・・・・そのデカい手で叩くなっつーの!」

八神は身をよじった。


「高宮なんかなあ。オヤジは元財務大臣で、現役の大物代議士で。 オフクロさんはなんだかすっごい家柄のいい人だとか。 んで、本人はコロンビア大学の大学院まで出てるし。 社長から乞われてここで仕事し始めたって評判だったんだから。 おまえにはいきなり大物過ぎるって、」




「え・・・・。」




夏希はサンドイッチを食べていた手を思わず止めた。


「ま、くやしーけどエリートを絵に描いたようなやつじゃない? 背も高いし、顔もいいしね。 女子がキャーキャー言ってるもん。 おまえ、二人でメシ行ってるなんてバレたら殺されんじゃね?」

八神は冗談交じりに言ったが、夏希はいきなり考え込んでしまった。




そんな人だったんだ


なんか・・

よくわかんないけど。


その南米・・じゃなくてコロンビア大学ってゆーのもやっぱすごいトコなんだ。

お父さんが政治家?


・・・今までそんな人と知り合ったことさえないし。




いきなり現実をつきつけられた。




「あ、加瀬さん、」

残業中に休憩室でコーヒーを飲んでいた夏希はいきなり高宮が入ってきて驚いた。


「あ・・ども、」

昼間の話を思い出してしまう。


「昨日のトコ、美味しかっただろ? 今度はイタメシとか行ってみない?」

笑顔で言われて、


「・・あ~。 はあ・・」

何だか彼女の様子のおかしいことに気づく。


「どうしたの?」


「や・・あたし。 ほんと、なんもわかってなくって。」


「何が?」


「高宮さんが・・そんなすごいおうちの人とか知らなかったし。 お父さんが・・・偉い政治家さんとか・・。」



「え、」



高宮は絶句した。



「あたし、もう、もの知らないって言うか。 その・・コロンビア大学だってどーゆー大学かとかわかってなかったし。 なんか図々しく何度もゴハンごちそうになったり、」

夏希は頭をかいた。


高宮はふうっと息をついて、




「・・きみも。 同じなの?」




チラっと夏希を見た。

「え・・・・。」


「みんなオヤジのこととか知ると、『すごーい、』とか。 言い出すし。 コロンビア大出てるって言うと、女の子なんかきゃあきゃあ言い出すし。 おれは別に政治家なんかにひとつも興味ないし、なるつもりもないし。 学歴だってそんなの後からついてくるだけで。 みんな、おれ自身のことなんか見てないんだ。」



その顔が。

何とも言えず、さびしそうで。



「高宮さん・・」

「きみもそんなこと知ってしまったら・・・おれのことなんかどうでもいい?」


「そんなこと・・・」

夏希は顔を上げた。




そうだ。

自分で見て感じたことが全てなのに。

高宮さんは

あたしのバカな話も笑ってちゃんと聞いてくれて・・・。




「おれはきみといると本当に楽しくて。今までこんな女の子に会ったことないなって。 新鮮で。 こんなに自分を飾らないで全部をさらけ出してくれる人に初めて会ったって、思ったし。」

高宮は少し恥ずかしそうにうつむいた。



「ごめんなさい、」



夏希は彼に頭を下げた。


「え?」


「あたし、小さい頃から母にずっと言われていたんです。 自分が信じたら周りがなんて言おうと。自信を持って全力で信じなさいって。 高宮さんはそういうことを全くひけらかすことなく、あたしに接してくださいました。 そんなことで、気持ちが引いてしまって。 バカみたい。」


「加瀬さん、」



「大切なのは・・・信じることですよね、」



夏希はいつもの笑顔で言った。



本当に太陽のような・・・・。




ああそうか。

もう彼女のことを、興味本位に知りたいとか。

そういうんじゃないんだ。



おれは

この子が

好きなんだ・・・・・。



高宮はどこまでも明るく素直な夏希に一気に恋してしまいました・・


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