いつかこの恋を
思い出して
きっと泣いてしまう
第７話
第７話
明かされる真実彼に何が起きたのか
音） ごめん。
朝陽） 「ごめん」じゃなくて、返事。
音） 返事できないのは、私の仕事のこともあって。
朝陽） あんな仕事…。いや。
音） 一生懸命やってるの。
朝陽） うん。分かってる。
違う。そういう意味じゃなくて。
音） 派遣だしね。確かにきついし、理不尽だなって
思う事もたくさんある。だけど、この１年ぐらいで、
やっと自分のできることが増えてきたの。
今辞めたくない。
朝陽） 分かるけどさ。
音） それにね、この部屋出たくない。この部屋はね、
私が東京出てきて、自分で手に入れた部屋なの。
大したものないけど。どれも自分のもので、自分
で自由にできるものなの。それって私にとって、
すっごく大事なことなの。
朝陽） ごめんね。勝手に取り替えちゃって。
（花瓶を取り替える朝陽）
朝陽） 何で？ 何でこんな時に、昔好きだった男に会
いに行くわけ？ 会っていいかどうかなんてどう
して俺に聞くかな？ そんなのさ、会うなって言
うのも、会っていいよって言うのも、どっちも嫌
だよ。だったら黙って行ってほしかった。
こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
君と幸せになりたいだけなのに。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
佐引） 変わったろ？ あいつ。
音） 角生えてました。
佐引） 結局、じいさんが死んだのが
大きいんだろうな。
音） はい。
佐引） 震災の年の、秋ごろか。
俺も実家に帰ってたからさ。会津まで練の
顔
見に行って。そんときにはもう、じいさん倒れ
て入院した後だった。じいさんは…。
人が変わってた。
音） はい。
佐引） 苦労して、農業一筋に生きてきた80の老人
がさ、怒りと、憎しみだけの人になってた。周
りを罵って、傷つけて、恨んでた。それを誰よ
りも向けられたのが練だった。もう、じいさん
には練が誰なのかも分かってない。そんな
状態で、毎日毎日、練を口汚く責めるんだよ。
「この卑怯者が。この盗っ人が。俺の畑を返
せ。俺の山を返せ。おめえのせいだ。死んず
まえ」。病気だから仕方がないのに、練はバ
カだからさ、受け止めちゃうんだよ。「じいちゃ
ん。申し訳ねえ。じいちゃん。申し訳ねえ」っ
て言って。罵倒されて、蹴られて、謝ってた。
じいさんは、それから一度も練を思い出す事
はなかった。80年間ダイコン育ててきた人の
最期が、怒りと、憎しみと、孤独だけだった。
それが大好きなじいちゃんの最期だったんだ
よ。夢も、思い出も、帰る場所も、あいつを支
えてた全部が消えてなくなった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
音） おじいちゃんは…おじいちゃんは、
曽田さんのこと大好きだったと思います。
恨んだりしてなかったと思います。
ちゃんと大好きで、心配で、
ありがとうって思ってたと思います。
練） 会ったこともないのに。
音） はい。でも…。
練） 何も知らないのに。
（祖父の遺品を取り出す練）
練） じいちゃんのパジャマです。
じいちゃんは駅の便所で死にました。くっさい
くっさい駅の便所の床に倒れて、一人で死に
ました。そこに俺はいなかった。何の言葉も、
何の遺言もないまま、憎んで、恨んで、
一人で冷たくなりました。
何もご存じないなら、勝手なこと言うな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
練） もういいんで。もういいんで、俺は。
あなたはもう自分のことを。
音） パジャマのポケットに、
こんなものが入ってました。レシートです。
スーパーとかそういう。おじいちゃん、
何度か病院から出掛けてたんですね。
練） はい。
音） 何がってわけじゃないんですけど。
ちょっと読んでみてもいいですか？
練） はい？
音） 読みますね。
９月３日。12時52分。スーパーたけだ屋。
蒸しパン、160円。牛乳小、120円。一口ようかん、
80円。時間的にお昼ご飯でしょうか？
蒸しパンと、牛乳と、一口ようかん。
９月４日。13時８分。スーパーたけだ屋。
クリ蒸しパン、180円。牛乳小、120円。きんつば、
100円。次の日は、蒸しパンからくり蒸しパンにし
たんですね。あと、きんつば。おじいちゃん甘党
だったんですか？ ちょっと飛びます。
９月29日。15時32分。家庭菜園の店、オオタニ。
ソラマメの種、230円。
練） えっ？
音） はい？
練） いや。
音） 五角オクラの種、210円。小カブの種、320円。
熊手、460円。軍手、160円。
練） ちょっと。
音） 10月９日。10時53分。スターベーカリー。
あんパン、90円。
13時２分。スターベーカリー。あんパン、90円。
練） あんパン。
音） またおんなじの買いに行ったんですね。
練） フッ。
音） 同じ日。14時30分。家庭菜園の店、オオタニ。
ハクサイの種、490円。ダイコンの種、290円。
分かんないですけど。ホントのところは、
分かんないですけど。おじいちゃん、怒ったり、
憎んだり、そういうのばっかりじゃなかったん
じゃないかなって。毎日ちゃんと生活してたん
じゃないかなって。昨日は蒸しパンだったから、
今日はクリの蒸しパンにしよう。さっきのあん
パンおいしかったから、もう１回食べよう。そ
んな日もあったんじゃないかなって思います。
畑のことも、忘れてなかったんだと思います。
10月11日。12時２分。スーパーたけだ屋。
クリ蒸しパン、180円。牛乳小、120円。
最後の１枚です。16時15分。みかわ商店。
純米カップ酒、２本、500円。さきいか、160円。
お酒２本買われて、
どこかで飲んだんでしょうか。
練） いや。じいちゃんは、自分じゃ１本しか飲みま
せん。じいちゃんが、酒を２本を買う時は決まっ
てます。種を植えた時…。種を植えた時です。
１本は自分で飲んで、もう１本は…。
畑に飲ませます。
音） お酒、おいしかったでしょうね。
練） （泣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
練） 晴太。
晴太） うん？
練） 俺、この仕事辞めるよ。
晴太） 分かった。俺も辞める。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静恵） 震災のときは、どこにいたの？
練） 会津の、家の近所に。
静恵） ああ、無事でよかった。よく頑張ったわね。
よく頑張った。生きてる自分を責めちゃダメよ。
音ちゃんを見てると、音ちゃんのお母さんが、
どんな人だったか分かる。練を見てると、練の
おじいちゃんが、どんな人だったか分かる。
私たち、死んだ人とも、これから生まれてくる
人とも、一緒に生きていくのね。
精一杯生きなさい。
練） （頷く）
静恵） おかえり。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
なんかね～朝陽が可哀想で。そういう意味では、練も
音も、似た者同士。半端なやさしさで…人を傷つける。
５年も経っているはずなのに、音と朝陽の親密度合が
分からないというか、見えてこないのは意図的なのか。
まさか、プラトニックなお付き合いなのかって思うほど、
プロポーズされる関係のはずなのに、よそよそしいし。
練に対する気持ちの10分の１ほども、朝陽には、音の
心は配られていない感じが、観ていてホント痛々しい。
朝陽とはつきあってない設定にすればよかったのに。
練がいなくなって、そうなるのも分かるんだけど、音に
はそういうズルさがない女の子でいてほしかったなと。
わざわざ錬に会っていいか聞くのも、誠実なようで朝
陽のやさしさにつけこんでいるし、何かね、いろいろと
残念な女の子キャラになっていて…脚本家の好むと
ころというか、露悪趣味なところが性に合わないとい
うか、ものすごく嫌いなんだなって、自覚してしまった。
レシートの話も、泣かせるところだとは思うけど、あざ
とく感じてしまったし、ちょっとしつこ過ぎると感じてし
まって…。とはいえ、それは脚本に対する不満で、高
良君の表情には泣かされたし、じいちゃん役の田中
泯さんの、そこにいるだけで伝わってくる佇まいに泣
けて泣けて…。脚本は好きになれないけれど、役者
さんたちはみんな素晴らしくて。役者の力でものすご
く補われているけれど、汚い現実をより誇張して見せ
ているのだろう手法は、私には失敗してるようにしか
見えない。いいところもあるだけに、やりすぎが痛い。
会ったことがなくても、目の前にいる人の中に、その
人を感じることがある。命は、つながってるんだなあ
って、不思議な縁に驚く瞬間がある。静恵さんの、八
千草薫さんの存在が、どれほどこのドラマを救ってく
れていることか…。言葉に命を吹き込む役者の力で、
このドラマは救われていると思う。毒が漏れてしまい
そうなので、この辺でお口にチャック…しておきます。
「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」関連ブログ↓朝陽） うん。分かってる。
違う。そういう意味じゃなくて。
音） 派遣だしね。確かにきついし、理不尽だなって
思う事もたくさんある。だけど、この１年ぐらいで、
やっと自分のできることが増えてきたの。
今辞めたくない。
朝陽） 分かるけどさ。
音） それにね、この部屋出たくない。この部屋はね、
私が東京出てきて、自分で手に入れた部屋なの。
大したものないけど。どれも自分のもので、自分
で自由にできるものなの。それって私にとって、
すっごく大事なことなの。
朝陽） ごめんね。勝手に取り替えちゃって。
（花瓶を取り替える朝陽）
朝陽） 何で？ 何でこんな時に、昔好きだった男に会
いに行くわけ？ 会っていいかどうかなんてどう
して俺に聞くかな？ そんなのさ、会うなって言
うのも、会っていいよって言うのも、どっちも嫌
だよ。だったら黙って行ってほしかった。
こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
君と幸せになりたいだけなのに。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
佐引） 変わったろ？ あいつ。
音） 角生えてました。
佐引） 結局、じいさんが死んだのが
大きいんだろうな。
音） はい。
佐引） 震災の年の、秋ごろか。
俺も実家に帰ってたからさ。会津まで練の
顔
見に行って。そんときにはもう、じいさん倒れ
て入院した後だった。じいさんは…。
人が変わってた。
音） はい。
佐引） 苦労して、農業一筋に生きてきた80の老人
がさ、怒りと、憎しみだけの人になってた。周
りを罵って、傷つけて、恨んでた。それを誰よ
りも向けられたのが練だった。もう、じいさん
には練が誰なのかも分かってない。そんな
状態で、毎日毎日、練を口汚く責めるんだよ。
「この卑怯者が。この盗っ人が。俺の畑を返
せ。俺の山を返せ。おめえのせいだ。死んず
まえ」。病気だから仕方がないのに、練はバ
カだからさ、受け止めちゃうんだよ。「じいちゃ
ん。申し訳ねえ。じいちゃん。申し訳ねえ」っ
て言って。罵倒されて、蹴られて、謝ってた。
じいさんは、それから一度も練を思い出す事
はなかった。80年間ダイコン育ててきた人の
最期が、怒りと、憎しみと、孤独だけだった。
それが大好きなじいちゃんの最期だったんだ
よ。夢も、思い出も、帰る場所も、あいつを支
えてた全部が消えてなくなった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
音） おじいちゃんは…おじいちゃんは、
曽田さんのこと大好きだったと思います。
恨んだりしてなかったと思います。
ちゃんと大好きで、心配で、
ありがとうって思ってたと思います。
練） 会ったこともないのに。
音） はい。でも…。
練） 何も知らないのに。
（祖父の遺品を取り出す練）
練） じいちゃんのパジャマです。
じいちゃんは駅の便所で死にました。くっさい
くっさい駅の便所の床に倒れて、一人で死に
ました。そこに俺はいなかった。何の言葉も、
何の遺言もないまま、憎んで、恨んで、
一人で冷たくなりました。
何もご存じないなら、勝手なこと言うな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
練） もういいんで。もういいんで、俺は。
あなたはもう自分のことを。
音） パジャマのポケットに、
こんなものが入ってました。レシートです。
スーパーとかそういう。おじいちゃん、
何度か病院から出掛けてたんですね。
練） はい。
音） 何がってわけじゃないんですけど。
ちょっと読んでみてもいいですか？
練） はい？
音） 読みますね。
９月３日。12時52分。スーパーたけだ屋。
蒸しパン、160円。牛乳小、120円。一口ようかん、
80円。時間的にお昼ご飯でしょうか？
蒸しパンと、牛乳と、一口ようかん。
９月４日。13時８分。スーパーたけだ屋。
クリ蒸しパン、180円。牛乳小、120円。きんつば、
100円。次の日は、蒸しパンからくり蒸しパンにし
たんですね。あと、きんつば。おじいちゃん甘党
だったんですか？ ちょっと飛びます。
９月29日。15時32分。家庭菜園の店、オオタニ。
ソラマメの種、230円。
練） えっ？
音） はい？
練） いや。
音） 五角オクラの種、210円。小カブの種、320円。
熊手、460円。軍手、160円。
練） ちょっと。
音） 10月９日。10時53分。スターベーカリー。
あんパン、90円。
13時２分。スターベーカリー。あんパン、90円。
練） あんパン。
音） またおんなじの買いに行ったんですね。
練） フッ。
音） 同じ日。14時30分。家庭菜園の店、オオタニ。
ハクサイの種、490円。ダイコンの種、290円。
分かんないですけど。ホントのところは、
分かんないですけど。おじいちゃん、怒ったり、
憎んだり、そういうのばっかりじゃなかったん
じゃないかなって。毎日ちゃんと生活してたん
じゃないかなって。昨日は蒸しパンだったから、
今日はクリの蒸しパンにしよう。さっきのあん
パンおいしかったから、もう１回食べよう。そ
んな日もあったんじゃないかなって思います。
畑のことも、忘れてなかったんだと思います。
10月11日。12時２分。スーパーたけだ屋。
クリ蒸しパン、180円。牛乳小、120円。
最後の１枚です。16時15分。みかわ商店。
純米カップ酒、２本、500円。さきいか、160円。
お酒２本買われて、
どこかで飲んだんでしょうか。
練） いや。じいちゃんは、自分じゃ１本しか飲みま
せん。じいちゃんが、酒を２本を買う時は決まっ
てます。種を植えた時…。種を植えた時です。
１本は自分で飲んで、もう１本は…。
畑に飲ませます。
音） お酒、おいしかったでしょうね。
練） （泣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
練） 晴太。
晴太） うん？
練） 俺、この仕事辞めるよ。
晴太） 分かった。俺も辞める。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
静恵） 震災のときは、どこにいたの？
練） 会津の、家の近所に。
静恵） ああ、無事でよかった。よく頑張ったわね。
よく頑張った。生きてる自分を責めちゃダメよ。
音ちゃんを見てると、音ちゃんのお母さんが、
どんな人だったか分かる。練を見てると、練の
おじいちゃんが、どんな人だったか分かる。
私たち、死んだ人とも、これから生まれてくる
人とも、一緒に生きていくのね。
精一杯生きなさい。
練） （頷く）
静恵） おかえり。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
なんかね～朝陽が可哀想で。そういう意味では、練も
音も、似た者同士。半端なやさしさで…人を傷つける。
５年も経っているはずなのに、音と朝陽の親密度合が
分からないというか、見えてこないのは意図的なのか。
まさか、プラトニックなお付き合いなのかって思うほど、
プロポーズされる関係のはずなのに、よそよそしいし。
練に対する気持ちの10分の１ほども、朝陽には、音の
心は配られていない感じが、観ていてホント痛々しい。
朝陽とはつきあってない設定にすればよかったのに。
練がいなくなって、そうなるのも分かるんだけど、音に
はそういうズルさがない女の子でいてほしかったなと。
わざわざ錬に会っていいか聞くのも、誠実なようで朝
陽のやさしさにつけこんでいるし、何かね、いろいろと
残念な女の子キャラになっていて…脚本家の好むと
ころというか、露悪趣味なところが性に合わないとい
うか、ものすごく嫌いなんだなって、自覚してしまった。
レシートの話も、泣かせるところだとは思うけど、あざ
とく感じてしまったし、ちょっとしつこ過ぎると感じてし
まって…。とはいえ、それは脚本に対する不満で、高
良君の表情には泣かされたし、じいちゃん役の田中
泯さんの、そこにいるだけで伝わってくる佇まいに泣
けて泣けて…。脚本は好きになれないけれど、役者
さんたちはみんな素晴らしくて。役者の力でものすご
く補われているけれど、汚い現実をより誇張して見せ
ているのだろう手法は、私には失敗してるようにしか
見えない。いいところもあるだけに、やりすぎが痛い。
音ちゃんを見てると、
音ちゃんのお母さんが、
どんな人だったか分かる。
練を見てると、
音ちゃんのお母さんが、
どんな人だったか分かる。
練を見てると、
練のおじいちゃんが、
どんな人だったか分かる。
どんな人だったか分かる。
私たち、死んだ人とも、
これから生まれてくる人とも、
一緒に生きていくのね。
精一杯生きなさい。
これから生まれてくる人とも、
一緒に生きていくのね。
精一杯生きなさい。
会ったことがなくても、目の前にいる人の中に、その
人を感じることがある。命は、つながってるんだなあ
って、不思議な縁に驚く瞬間がある。静恵さんの、八
千草薫さんの存在が、どれほどこのドラマを救ってく
れていることか…。言葉に命を吹き込む役者の力で、
このドラマは救われていると思う。毒が漏れてしまい
そうなので、この辺でお口にチャック…しておきます。
第１話～失くした手紙が繋いだ奇跡…二人は出逢った
第２話～都会の現実、募る想い…もう一度会いたい
第３話～突然のキス、幸せな１日
第４話～あなたを好きになりました
第５話～突然のさよなら…訪れた運命の日
第６話～衝撃の再会
第７話～明かされる真実彼に何が起きたのか
第８話～好きです
第９話～決意のとき、別れの夜
第10話～永遠の約束
●「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」ＨＰ第３話～突然のキス、幸せな１日
第４話～あなたを好きになりました
第５話～突然のさよなら…訪れた運命の日
第６話～衝撃の再会
第７話～明かされる真実彼に何が起きたのか
第８話～好きです
第９話～決意のとき、別れの夜
第10話～永遠の約束
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