「続・最後から二番目の恋」第3話~過去の恋は、笑って葬れ | 日々のダダ漏れ

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「続・最後から二番目の恋」

続・最後から二番目の恋

第3話
過去の恋は、笑って葬れ


啓子) あっ、もしかして、あれ聞いちゃった?
千明) 何?
啓子) こないださ、涼太君がさ、どこが無理だった
    んだろうとか話してたじゃない。
千明) ああ、あれか。
啓子) ダメだよ。私のどこが無理だったの?とか、
    マジに聞いちゃったりしたら、ダメだからね。
    もうさ、男はそういうの聞かされるとさ、萎える
    んだよ。
千明) 遅えよ~。
啓子・祥子)えっ?
祥子) 聞いちゃった?
千明) 思いっきり聞いちゃったよ。
啓子) わっ!
千明) 落ちましたよ。ええ。地の底まで落ちましたよ。
祥子) マジで?
千明) そもそもさ、どこが無理とかね、
    以前の問題だったらしいんだわ。
祥子) 以前の問題って?
啓子) それ、どういうこと?
千明) 最初から、別に私のことなんか好きじゃなか
    ったんだって。
啓子) 何それ?
祥子) え~っ!
千明) コンクールで賞は取ったもののさ、全然仕事
    はうまくいかなくてさ。たまたま飲み屋で知り合
    った私がさ。まあ、自分で言うのもなんだけど、
    当時はね、当時は、そのう、それなりに、力を
    持ったドラマのプロデューサーだったわけじゃ
    ん。この女、俺のことちょっと気に入ってんな。
    この女の男になったら、大きな仕事させてもら
    えるんじゃないかなって思ったみたいよ。
啓子) え~っ。
祥子) マジ?
千明) くら~っとくるでしょ? これ。
祥子) くる。
千明) ねっ。ねっ。でね、もともとそんなに図太い男
    じゃないからさ。どんどんこっちがさ、自分にさ、
    本気で惚れていくのを見てさ、罪の意識に耐え
    かねて…。
祥子) ごめん、無理。
千明) でね、そのポスト・イット。
    実はもう一枚あったらしいんだわ。

「もう騙せない。俺は最低です」

千明) 相当きついよね。痛いよね、私ね。
    痛すぎて笑うこともできねえよって感じで。私と
    一緒にいた時間のさ、私が行ったこと、したこと、
    感じたこと、もう全部が全部、痛さ満載って感じ
    でしょ? でもね、でもね、でもね。何かさ、ホン
    トだったらさ、こう打ちのめされてさ、ここで人生
    終わり~みたいな気分なんだろうけどさ。
    私何かそれ今嫌なのよそれが。
祥子) うん。
千明) 何か負けたくないわけよ。
    こんな事で落ち込んでいたくないわけ。
啓子) だよね?
祥子) うん。
千明) でもさ、でもさ、何かそれと同時にさ。
    いやいやだからここで質問なんですけど。
啓子) はい。
祥子) はいはい、どうぞ。
千明) そんな思いをさせられてもね。
啓子・祥子) はい。
千明) 何かあいつの事、嫌いになってないんだよね。
    いや、もちろん好きじゃないよ。好きじゃないけ
    ど、嫌いじゃないんだよね。これって何だろう?
    教えてください。
祥子) 千明がいい女だってことだよ。
啓子) そうだよ。
千明) ありがとう。
啓子・祥子) うん。
千明) もういいや。来たから食べようか。
一同) 食べよう。食べよう。わあ!
千明) 特上の鰻を食べる特上の女たちだね~?
祥子) いいね。
啓子) だよね?
千明) ごめん。1回泣くわ。(泣)

**********

和平) どうです? 鎌倉。
涼太) ああ。いいとこです。じじくさいですけど。
和平) あっ、そうね。でも、嬉しいです。気に入って
    くれて。僕、こんなことやってるんで。
涼太) ああ。はい。千明から、色々聞いてます。
和平) あっ、どうせ、悪口ばっかりでしょ?
涼太) はい。…でも、面白かったです。
和平) そう? でも、あれよ。あのう。
    全部嘘、嘘だから。
涼太) 嘘じゃないって言ってました。
和平) そうか。
涼太) あっ、いや、でも、
    和平さんの話が一番長かったです。
和平) あっ、そう。
涼太) 何か、ずっと話してたかったんだと思います。
    話をそらすっていうか、嫌な話に戻らない為に。
    すごく傷つけること言ったんで、俺。
    その話なるべくしたくないみたいな。
和平) つかぬことを伺うけど、
    それって、吉野さんと別れた理由のこと?
和平) あっ、いやね。あなたが現れて、自分の何が
    嫌だったんだろうとか。無理だったんだろうとか、
    考えてたみたいだから、彼女。そこを克服した
    い。克服っていうか、直したいとか思ってたんじ
    ゃないかな。
涼太) 俺、最低ですね。

**********

和平) そりゃ、きついなぁ。ホントに。
涼太) はい。
和平) それ言われて彼女、どんな気持ちだったか、
    考えただけでも。
涼太) はい。
和平) でも彼女は、普通に君を受け入れたんだ?
涼太) はい。

**********

千明) この、長倉万理子はとてもいい本を書きます。
    構成力がすごくいいし、ストーリーを緻密に組
    み立てるのが得意。いろんな意見を、臨機応
    変に取り入れて作り上げる力がある。ただ、最
    初から、現場に必要とされてる本を書いてきた
    から、自分から発信した経験がない。
    で、この高山涼太。この人は、ゼロから自分の
    書きたいものを書いて認められた人。でもそれ
    だけ。最初は書きたいものがいっぱいあったと
    思うんだけど、あれはやだ。こういうのは好きじ
    ゃない。ありがちだ。くだらない。大衆に迎合し
    すぎだと言ってね。うん。やりたくないものがた
    くさん増えてしまった。で、何が書きたいのか、
    分からなくなってしまった人。
    私ね、ドラマっていうのは、この長倉万理子的
    なものと、高山涼太的なもの。この両方がない
    とつまんない。っていうか、面白くないと思うん
    だよね。この2人はまだまだ半人前です。でも、
    力を合わせれば、一人前どころか、それ以上
    の力を発揮するんじゃないかなあと。何かちょ
    っと、ピンときちゃいまして。フフ。
    三井さん、どう思う?
三井) 千明さんの予感は当たりますからね。
千明) だよね。
    というわけで、今日から。というか、今から、取
    りかかって頂きます。よろしくお願いします。


**********

千明) 何?
    どうしてこんなことしてくれるんだって話?
涼太) あっ。うん。
千明) だってそのために近づいたんでしょ? 私に。
    だったら応えてあげるよ。男らしく。
涼太) 女でしょ。
千明) そっか。女か。
涼太) ありがとう。


**********

和平) 振られてばっかりですよ。
千明) へえ~。
和平) 一番悲惨だったのはね。
千明) はい。
和平) 初恋の時。
千明) ハハハ。悲惨? 初恋。
和平) 喜ばないで下さいよ、そんなに。
千明) いやいや。喜んでないですよ。
和平) 小学校の時ね、クラスの男子の間で、ラブレ
    ターが流行ったんですよ。しかも、嘘の。
千明) えっ!? 嘘のってどういうこと?
和平) いやいや。誰かが、いたずらで始めたんでし
    ょうけど。例えばですよ。吉野さんの名前で、
    私があなたに成りきってラブレターを書いて、
    勝手に誰かに出しちゃう。
千明) うわ~。なかなかファンキーな小学生ですね。
和平) ファンキーっていいます? その頃ね、クラス
    の中に私ちょっと、好きな子がいたんですよ。
    何かこう…。何だろう?この胸の高鳴りは、み
    たいな。小学生ながら思ってたんだけど。それ
    があの、シノブちゃんっていう子だったんです
    けど、おとなしい感じの子でね。
千明) ふ~ん。癒やし系だ~。
    一貫してますね、そこんところは。
和平) 別にね、小学生の頃に癒してほしいとは思っ
    てないですよ。で、ある日ね、家に帰ったら、
    わが家のポストにですよ。そのシノブちゃんか
    らの手紙が入ってたんですよ。
千明) ああ、嘘のやつね。
和平) 違う違う違う違う。それはホントだったんです。
千明) へえ~。
和平) 後で確認もしたんですけど。
千明) うん。
和平) どうやら、誰かが私の名前で出したラブレタ
    ーの返事をくれたんですね。
千明) ほ~う。
和平) で、彼女真面目な子だったからね。それを真
    に受けて、返事をくれたんですよ。何て書いて
    あったと思います?
千明) わかんない。めんどくさい。早く言って。
和平) 少しは考えろよ。
千明) いえいえ。どうせ言うんでしょ。
和平) 言うけど。
千明) いいから、いいから。早く。
和平) クラスで。
千明) はい。
和平) 一番嫌いです。…きつくありません?
千明) きつっ。
和平) きついでしょ?
千明) きつい。
和平) ねっ。私別に。私別にね。その、シノブちゃん
    も私のことを好きでいてくれるんだなんて、
    そんな事みじんも思ってないですよ。
千明) うん。
和平) ねっ。何かこう、クラスの中でそばにいて、シ
    ブちゃんって可愛いなって、思わせといてくれ
    りゃそれでいいじゃないですか。初恋ってそう
    いうもんでしょ。そんな、淡~いもんでしょ。
千明) フフフ。
和平) もう一つあります。もう一つ。
千明) はい。
和平) 悲惨な話。
    あのね、私が、中学に入った時だったかな。
千明) ああ~。
和平) はい?
千明) あなたあれじゃないですか?
和平) はい?
千明) もしかして、涼太に何か聞きました?
和平) えっ? 何枝尾?
千明) うわ~。やっぱそうなんだ。えっ? それで?
    自分の悲惨な話をして、私を慰めてくれようと
    思ってたんですか?
和平) いや。いや、別にそういうんじゃないっすよ。
千明) 優しいなあ。
和平) ああ!? もう。こぼれたじゃないですか。
    やめてくださいよ。
千明) いや、もう、ありがとうございます。
和平) いやいや。そんな、とんでもない。
千明) うれしいっす。フフフ。
和平) はい。どうぞ。
千明) あっ。すいません。
和平) あのう、一つ、伺ってもいいですか?
千明) はい。何でしょうか?
和平) そのう、涼太君。
千明) うん。
和平) あなたはどうしてそんなに普通に受け入れる
    んですか? 仕事のことまで。
千明) フフフ。う~ん。塗り替えたいんでしょうね。
    思い出とか記憶とか。傷を残さないために、
    塗り替えようとしてるんです。涼太との思い出も、
    涼太の中の、痛い私の記憶も。うん。新しい思
    い出に変えちゃえばいいのかなあって。今どき
    の言葉で言うと、記憶を上書きするって言うん
    ですかね。わかります?
和平) わかりますよ。
千明) 上履きじゃないですよ。
和平) それ何?
    そんなこと何にも思ってませんよ、私は。
千明) ちなみに私はうわばみですけどね。
和平) 何うまいこと言っちゃってんですか。
    確かにうわばみですけどね。
千明) あっ。そうだ、ほら。
    さっきの、悲惨な話の続きしてくださいよ。
    それで私を慰めてくださいよ。
和平) 何ですか? その、何か、上から女王様目線
    みたいなのやめてください。もういいですよ。
千明) 優しくするなら最後まで優しくしてくださいよ。
    早く。朝まで私を慰めてくださいよ。
和平) 朝まではやだって言ってんじゃないですか。
    だからさっきちょっとだけって。

**********

千明) あのう、私たち。
和平) ええ。
千明) かつてしそうになったことありましたよね?
和平) ええ。ありましたよね。
千明) あの時は、ホテルの部屋が満室で、
    未遂に終わったじゃないですか。
和平) まあ、そうでした。
千明) あれ、
    部屋空いてたらどうなってたんですかね?
和平) さあ? どうなってましたかね?
千明) ハハハハハ!
和平) 笑い過ぎでしょ。笑い過ぎですよ。
千明) だって、似合わねえ~。
和平) 何がですか? 何がですか?
千明) あなた、似合わないんですよね、そういう?
和平) どういう?
千明) 裸とか、ベッドどか。
    そういう色っぽいの全般ね。
和平) 失礼な。失礼な。そんなことありませんよ。
千明) 失礼じゃない。似合わない。
和平) そんなことありませんよ。
千明) そんなことあるよ。
和平) 私は鎌倉では有名なんですよ。
千明) 何でですか?
和平) 羊の皮をかぶったオオカミって。
千明) ハハハ!

**********

涼太) 千明さ。
千明) うん?
涼太) あの頃、俺、わかんなかったけど。
千明) うん。
涼太) いい…女だよね。
千明) 遅いよ、気づくのが。ねえ。

**********

痛い、痛い、痛い。痛すぎて、見てるこっちまでが辛
くなる。若い男の(女もだけれど)残酷さに泣けてくる。
そして、その若さに甘くなる、大人の弱さにも泣ける。
相手の好意を利用して自分に利益を得ようとするの
は、多かれ少なかれある話だと思う。「惚れた弱み」
っやつで、昔から、そういう公私混同はあるものだし。

年の差、というものの中には、そこに期待される財力
や権力と切り離せない力関係があるという…身も蓋
もない面は確かにあって…。若さと引き換えの、ある
意味、それもまた等価交換だったりもして。プロデュ
ーサーとしての自分の力をあてにされた話を聞いて、
なるほどと思わざるを得ない千明の気持ちが痛々し
く。ドン底に落ち込んでも、だったらいっそ、その期待
に応えてやろうじゃないという男前な千明の気持ちが
もう、わかりすぎて痛い。こうなったらもう、思い出を
上書きするっきゃないって、思うよね、思うよそりゃあ。

一回り下の若い男に好かれたと浮かれて過ごした自
分のあれこれ、きれいさっぱり消しゴムで消せたらと。
どこが嫌とか、どこが無理とか以前に、好きじゃなか
ったってのは、ホントきっつい! 何もかもが恥ずかし
すぎる。嫌われても振られてもいいから、最初ぐらい、
そこに愛が、ほんの少しでも「好き」はあってほしいよ。
ずっと引っ掛かっていた「ゴメン無理」の意味。それを
知って思いきり傷ついても、嫌いになれない。なんか、
そういう気持ちもわかるんだよね。嫌いになるような男
を好きになった自分っていうのも許せなくなってくるし。

自分の悲惨な話で、千明を慰めようとする和平のや
さしさが沁みる。いい男だ、和平さん。ホント、いい男。
結局、あの時(最後から二番目の恋 2012 秋)しそう
になったけど、その後もしなかったというオチが判明。
もう一度誘う勇気は持てなかったか…もう、和平さん
の意気地なし!(女流作家にも言われていたっけw)

千明と和平がホテルに行けなかったお話は↓
「最後から二番目の恋」 2012 秋

過去の恋は、笑って葬れ。上手に笑い話にできたら、
いつかいい女の恋バナに…変わるような気がするw


「最後から二番目の恋」関連ブログ↓
「最後から二番目の恋」関連ブログリスト

●「最後から二番目の恋」HP


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