されど忘れること勿れ
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いくばくかの虚しさを抱え 生きるのだ


自分はもちろん 名も知らない誰かも


そして果てしなく長い時を生きるあの人も


深い虚しさを弄びながら 生きている






風がそよぐ 飾られた風鈴がちりんと音を立てた


帳簿を広げたまま突っ伏している男は


まるで何年もの眠りから目覚めたような顔をして


またきみのいない夏がきた 


ぼんやりとそう思い 乾いた笑みを形作る




待ち人はいまだ帰らず 空虚だけがそこにはあった










おれはおまえを殺すことができる

けれどおまえはおれを殺せない


おまえが殺せるのはただひとり

おまえが救えるのもただひとり


殺せばおまえは解放される

救えばおまえは消去される


さて あててごらんよ 彼の望みを 

さすれば 選択肢が増えるかもしれない


すべてはこの世界の支配者のままに





昔 指切りをした

嘘と本当をない交ぜにのらりくらり生きていた自分が

最初で最後の

けれど交わした約束は果たされることはなかった


なにを間違えたのか どこから狂ったのかわからず

いつのまにか 音信不通になって 

きみがいなくなった この街から気配がきえた

幼馴染みには笑われ そして続く怠惰な日々


危なくなったら姿をくらませる 

そんなことを考えていたのはいつも自分のほう

きみはいま どこでなにをしているのだろうか



いろいろと考えをめぐらせ

もしかしたらとの思いで 彼は立ち上がった



消し去れない記憶がある


戻れない過去がある


痛みを伴うとわかっていても


告げなければならないことがある


あの日からはじまったこの関係を終わらせることになっても


やらなければならないことがある



これで最後 あんたに迷惑掛けるのも 一緒にいられるのも


拾ってくれてほんとうに嬉しかった


さよなら


ひとつの通過点でしかないのに


君の面影をもとめている僕は


ひどく愚かだ


守りたいものは今はもういない 引き離されてそれからは何もしらない

ふれあえた時間は短く けれど 凍てついた心に火が灯るには十分で 想いはたしかにここに 



仮面を被り血に染まるこの身に手をのばしてくれた まっすぐに穢れないそれで

訪れるたびに嬉しそうにはしゃいだ ただ眩しかった

異端と呼ばれてようが殺戮者の自分には温かな存在に変わりなく 笑顔が欲しかった

救いはそれだけだから 


でも もういない


どうしているだろうか 思い 想像は容易い 

仲間外れにあい 理不尽な暴力と罵倒を受け 誰からも見向きされてないだろう

きっとひとり 


あのきらきらとした笑顔をまた見たいと 歪まずに育って欲しいと

血に染まりきりなにも出来ずにいながらそう願う 



伝えたいことはいろいろある たとえば

悪いことなんてお前は何ひとつしてないよとか あの人たちの大切な忘れ形見なんだよとか

今度は傍でちゃんと見守らせてほしいだとか  お前がいて本当に嬉しかったってことを


だから 会える日をただひたすら待ち続けるよ

ともに過ごした時間を忘れててもいい 人を憎んでようがかまわない


すべて受け止める 次は俺が掬いあげるから






意味もなく羅列された言葉


そこに感情はない


空虚なただの文字


きみはそれに何を望む?


何を願う?




どうか許して だなんて言うつもりはない 

そんな資格がないこともわかっている

きみを数え切れないほど傷つけてきて今更 だとも

だけどこれだけは知っていてもらえないだろうか

きみは 私にとって 初めて出来た友人で

そして今でも 『特別』 な存在なのだと



きみは今 笑えているかい 

一人でうずくまっていないだろうか

それとも もう私のことは忘れてしまったろうか


ああでも もし覚えていて 

ココロが壊れそうになっているならば

まだ誰にも縋れないのなら 

私のところへいつでもおいで

いつまでも きみをよろこんで迎え入れるから



――きみを見捨てはしないよ



















白く白く塗りつぶされた世界  何も見えない 銀の世界
自らの後ろには何も残されていない  闇の中
留められない思いが加速する  叫びだしそうになる声は

暗い光が広がる  飲み込まれそうなココロ
伸ばした手は届かなくて  一人で啼いていた
助けを求めるように何度も扉を叩く

ふと『誰か』の顔を思い出す どこか軋んだ顔を思い出す
違う 本当に助けを求めていたのは――



今度は救えるだろうか  記憶は取り戻した
何回でもこの手を伸ばそう もう放しは しない