石破大臣の趣旨説明読み間違いの何が問題か? |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 3月15日、衆議院地方創生特別委員会において、地方創生担当の石破大臣が、その日審議入りした地域再生法の一部を改正する法律案の趣旨説明文を間違え、しかも読み続けるという前代未聞の事件が起きた。読み上げたのは昨年の改正の際の説明文だったというのだから、開いた口が塞がらないといったところだろう。

 これについて、翌16日の参議院予算委員会で、維新の党の寺田典城参議院議員が、質疑の冒頭、大臣の引責辞任を求める一幕もあったが、この一件、大臣の辞任にまでつながる話なのだろうか?そもそも何が問題なのだろうか?

 国会の質疑、特に本会議での代表質問に対する答弁において、一部の質問の答弁を飛ばしてしまう、いわゆる「答弁漏れ」はありうる話。(例えば、就任当初の小泉総理(当時)。私は総務省の外局で法令担当の係長をしていたが、代表質問に対する答弁漏れで本会議場が大騒ぎになったのをはっきり覚えている。)

 また、漢字の読み間違いや、例えば「地域」とあるのを「地方」と言ってしまったり、そうしたことは国会の審議の中では日常茶飯事と言ってもいい。(数年前であれば、麻生総理(当時)が未曾有を「みぞうゆう」と誤って読んだのが話題になった。まあ野党議員でも発言原稿に読み仮名がふってあるというのはありうる話。誰とは言わないが。)

 しかし、今回のように、これから審議しようという法案の説明を、全く別物で行ってしまうというのは、そうした答弁漏れや単なる読み間違いとは意味が大きく異なる。読上げとは言っても、公式な記録として残るものであり、当然間違いは許されない。誤った説明文のままであれば、審議の対象となる法案が異なるということになる。今回の石破大臣の読み間違いは、それ程大きな問題だということである。(読み間違い程度であれば、議事録訂正が可能であるが、さすがに全文別物ということになれば、そういうわけにはいかないだろう。)

 さて、では、それだけ大きな問題なのだから引責だという話になるかと言えば、筆者はそうは思わない。そもそもなぜ異なる説明文を読み上げてしまったのかを考えると、途中に多くの審査の過程があり、そのどこかで間違えたということであろう。大臣発言の原稿は何であれ、役所では、原課から官房へと幾重にも審査の過程を経る。そして最後に秘書官を経て大臣へということなる。逆に言えば、責任が分散される体系になっているわけであり、それを辿ればどこで間違えたのかが明らかになるはずである。

 端的に言えば、役人のミスである可能性が高いということであろう。
(もっとも、石破大臣も内閣府の陪席者から間違っている旨を指摘されるまで気づかなかったようであるから、大臣も確認ミスと言えばミスなのだが。)

 しかし、石破大臣は担当大臣であり、責任を取って当然ということになりそうだが、実はそう単純な話ではない。石破大臣は、あくまでも内閣府特命担当大臣であり、内閣府の主任の大臣でもなければ権限を分掌されているわけではないので、権限どころか人事権もない。内閣府の主任の大臣は内閣総理大臣である。したがって、仮に大臣の責任を問うということになれば、安倍総理の責任を問うべきということになるが、さすがにこの件で総理が辞任というところまでは行き着くまい。強いて言えば、総理から石破大臣に口頭で注意するとともに、本件担当部局や官房総務課の関係者に対する注意、場合によっては配置転換を行うといったところだろうか。

 もっとも、石破大臣にとっては、安倍総理から口頭注意を受けることが、引責辞任以上の屈辱かもしれないが。

 問題のある閣僚を追求して辞任に追い込むというのは野党の役割の一つと言ってもいいかもしれないが、それは制度的背景をしっかりと踏まえて行うべきであろう。そうでなければ、単なる揚げ足取りとしか見えない。

 最近の国会での動きを見るヒントとして。