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   室伏謙一  (公式ブログ)


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「外交報告」と「財政演説」という奇妙な組合せで始まった通常国会
 1月4日、異例とも言える正月明け早々に開会した通常国会、冒頭、平成27年度補正予算の国会提出に併せて行われるはずの総理の所信表明演説ではなく、「外交報告」(正確には「最近の海外出張に関する報告」)という奇妙な「演説」と財務大臣の財政演説という組合せで始まった。

 出張の概要とその成果を報告すること自体は別に悪いことではないが、通常国会冒頭、しかも安倍政権の新たな目玉政策である「一億総活躍社会」の実現に向けた第一弾となる補正予算の審議を行うに当たって総理が所信を述べないというのは、いかにもお粗末である。単に安倍総理が「逃げて逃げて逃げ回っている」だけなのか、それとも「一億総活躍社会」の優先度が低いのか、そんな風にも受け取れてしまう。

突っ込みどころ満載の「外交報告」
 その「外交報告」、ある野党議員が「修学旅行の思い出話」といったような表現で揶揄していたが、その実態とは別に、自らの外交の「成果」を過剰に喧伝するものであったし、演説する姿は自己陶酔で悦に入っている様にさえ見えた。(子供で喩えれば、「僕ちゃんこんなにすごいことしてきたんだぞ~!」とひたすら親に向かって喋っているといったところか。)

 その中身、例えば、従軍慰安婦問題での日韓合意、総理は最終的かつ不可逆的に解決されることになったとしていたが、少女像の撤去を巡ってゴタゴタしたままで、とても解決される方向に向かっているとは言い難い状況。とても「成果」とは言い難い。(そもそもの状況認識からして誤っていることについては、前回指摘したとおり。一方、先日たまたま自民党本部前を通ったら、右翼団体が、今回の合意で「安倍政権に失望した」と多くの日章旗を、さながらネオナチのハーケンクロイツのように多数掲げて街宣活動を行っていた。)

 また、頻繁に安倍総理の演説に登場する「基本的価値を共有」する云々、TPPとの関係でも使用していたが、TPP参加国、果たて「基本的価値を共有」していると言えるのだろうか?共有などしていないが、TPPを通じて制度はおろか価値観まで標準化してしまうということを是とし、将来的にそうなることを先んじて言っていたのだとすれば、なんとも恐ろしい。価値を共通化、標準化するとは、ものの見方、考え方、それが根ざす社会や文化、さらには信仰まで標準化してしまうということ。敗戦直後マッカーサーが目指したのがまさにこれであり、端的に言えばキリスト教化であった。(今日の日本の多くのキリスト教徒が、キリスト教化すれば民主主義が根付くなどという根も葉もないことを考えているわけではないのは勿論のことだが。)「基本的価値を共有」する云々、どうも物事の本質を隠す際に使われているように思えてならないが。

 さらに、国際社会における法の支配を重視する立場から、主張する時は国際法に則って主張すべき、武力の威嚇や力による現状変更は行ってはならない、問題を解決する際は平和的に国際法に則って解決すべきという三原則を、英国国際戦略研究所が主催するシャングリラ会議で提唱し、これが国際社会に浸透しつつあるとしていたが、それら全てを無視しているのがアメリカではないか?もしその三原則を提唱し浸透させるというのであれば、アメリカに向かっても安倍総理は正々堂々とその原則を守れと主張し、言い含めるのであろうか?そこまでやらなければとても「成果」とは言えないし、安倍総理も「言うだけ番長」ということになってしまうのではないか。

 加えて、G20首脳会議やAPEC首脳会議等において、一億総活躍社会の実現を目指して、GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロという三つの的に向かって新しい矢を放つということについて説明し、各国首脳の理解と支持を得たと言う。理解はいいとしても、支持を得る必要があるのだろうか?と単純に思う。「一億総○○」などと言えば、むしろ警戒されてしまいそうだが。そもそも、各国首脳の支持の前に国民の理解と支持のはずだが、新三本の「矢」は総理の報告の中では三つの「的」にいつ間にか変わり、新三本の「矢」とは一体何なのか分からない。(それが27年度補正予算だというのなら、お粗末すぎるが。)とても成功したとは言えないアベノミクスの総括はそっちのけで、アベノミクス第二ステージとは、聞いていた各国首脳もさぞ呆れていたことだろう。

突っ込みも踏込みも甘い野党
 さて、「外交報告」に対する野党の代表質問はどうだったのか。党首が論壇に立った衆議院で見てみると、端的に言って、こうした事項には踏み込めず、また外交姿勢への突っ込みもないか甘かった。無論、衆議院本会議で代表質問は、総理の「外交報告」と財務大臣の財政演説の両方に対するものであり、その後に27年度補正予算の審議が控えていることを考えれば、補正予算関連に質問が集中することはある意味仕方がないのかもしれない。

 しかし、所信表明をせず、それに代えて「外交報告」を行ったに等しいのであるし、総理の外交日程を優先したことが臨時国会を召集しなかったことの理由の一つとして挙げられていたのであるから、補正予算に関する質問は後の予算委員会での質疑のための頭出しにとどめて、3分の1から半分くらいの時間を「外交報告」に対する質問に割いてもよかったのではないか。(実際、筆者が政策担当秘書時代、代表質問の作成に当たっては、党首の質問である以上、その後の各委員会での審議において党所属議員が質問するに当たっての「頭出し」ということを念頭に置いていた。)

逃げ回る野党か与党に伍す野党か
 安倍総理は民主党の岡田代表の質問に対する答弁の中で、「~それぞれの政党が、経済政策でも外交・安全保障政策でも、日本を取り巻く現実を直視し、逃げて、逃げて、逃げ回っているようでは、国民の負託に応えることはできません。」と述べていた。こうした発言に安倍政権の驕りを感じると同時に、いまひとつ踏み込んだ姿勢のできない野党に対するある種の「余裕」が見て取れる。確かに、党内がまとまり切らない一方で、野党第一党の地位に安住し、維新の党との統一会派でも自分たちが維新を飲み込んだと勘違いしている民主党は、安倍政権からすれば、無用の失点や党内での無用の対立をおそれて「逃げて、逃げて、逃げ回っている」ように見えるのかもしれない。

 さて、通常国会を安倍政権にとっての余裕の「消化試合」にしてしまうのか、安保法制以外でも効果的に安倍政権を追及し、与党に伍していくことができる位置にまで失地回復できるのか、民主党を筆頭に、野党にとってはまさに正念場といったところだろう。
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