政治・政策を考えるヒント!

   室伏謙一  (公式ブログ)


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 通常国会も終盤、参院選を目の前にして、消費税率の10%への引上げの是非や有無についての発言や議論、憶測が、外野も含めて活発になってきた。

 18日には本年1—3月期のGD一次速報値が発表になり、GDPが前期比でプラスになったと喧伝された。それが予定どおり引上げる根拠となるとの見方もあったが、この速報値を必ずしも良いものと考えておらず、延期する方向に傾いたとの報道も見られるようになった。

 一方、野党側は増税の凍結を主張、民進党は税率引上げを平成31年4月まで延期する「消費税増税凍結法案」なるものを提出する方向のようである。

 国民や企業の活動に密接に影響する消費税率引上げ問題、一体どうなるのか?

 5月19日、フジテレビオンデマンドの番組「あしたのコンパス」でこの件に関するコメンテーターとして出演する機会を得た。その際のコメントの概要に、時間の関係で話し足りなかったことも付け加えつつ、消費税率引上げを巡る状況について簡単に解説したい。

 まず、税率引上げを予定どおり実施するかどうかのメルクマールともされる、本年1-3月期のGDP成長率一次速報値について、対前期比で実質で0.4%増、名目で0.5%増と騒がれたというか持ち上げられたが、あくまでもこれは対前期比での増加。ここ1年、1-3月期は対前期比で上がる傾向。しかも今回の比較の対象である平成27年10-12月期は実質でマイナス0.4%、名目でマイナス0.2%。つまり、このところのそうした数値を見れば、GDP成長率は微妙な上下を繰り返しているだけで、言ってみれば「凪」の状態にすぎない。(こうしたことは内閣府発表の資料を読めば容易に明らかになるのだが。)

 そもそも、今年は閏年であり、営業日が1日増えるとそれだけでGDPを約1.5%増加させる効果があるようである。今回の速報値ではその分が調整されていないようであり、額面どおりに受け取ることはできない。

 内閣府の発表資料には前年同期比の数値も後ろの方にシラっと掲載されているが、ほとんど項目でマイナスである。その数字で見れば、景気が緩やかな回復基調にあるなどとはとても言えず、むしろ後退しているという表現の方が適切であろう。

 実はこの点に関し、18日の党首討論では、民進党の岡田代表の質問に対して、安倍総理は消費が弱い、特に消費税率を8%に引き上げて以降そうなっているということを、あっさり認めている。まるで、この速報値の見せ方は正しくはないと言わんばかりである。

 次に、消費税引き上げをめぐる各党の考え方を整理しておこう。

 まず、野党のうち明確に消費税率の10%への引上げに反対しているのは共産党である。志位委員長は、党首討論において、景気が悪化することが明らかな場合でもあっても増税するのかと、安倍総理に噛み付いていた。

 増税凍結法案を提出する予定の民進党はどうかと言えば、特に民主系が、与党時代に社会保障・税の一体改革の三党合意をしてしまっている関係か、明確に反対とは言えない状況のようである。党首討論でも、岡田代表は来年4月の引上げには否定的ではあったが、あくまでも延期という意味であり、延期後には必ず引き上げることを確約するよう、安倍総理に迫っていた。

 ただし、民進党内でも旧維新系はずっと消費税増税凍結を訴えてきており、旧民主系とは一線を画している。したがって、現状での態度は、増税に真に賛成なのか反対なのかはっきりしない、ある種「玉虫色」といったところである。(こうした態度が民進党、特に民主系への不信感や失望感を高めてきたように思うが、どうだろうか?)

 与党側はと言えば、自民党については、官邸は消費税率引上げには消極的であると聞いている。実は8%への引上げについても消極的であったようで、この時、私はまさに政策担当秘書時代であったので、関係者間ではそうした話が飛び交っていたのを記憶している。

 もっとも、自民党幹部でも谷垣幹事長らのように、予定どおり引上げるべきと考える議員も少なくないようだ。要するに、党内でも積極・消極両方いて、綱引きをやっている状況のようである。(もっとも、この背後には、引上げに消極的な官邸=経産省と、是が非でも引き上げたい財務省の対立があるとも言われている。)

 結局、与野党というより、与党内でも野党内でも消費税率引上げを巡って、複雑な思いが交錯している状況であると表現するのが正しいのかもしれない。

 さてさて、そうしたことを踏まえた上で、消費税率の引上げはどうなるのかについて考えてみたい。(無論、この記事を書いて以降の状況の変化については知る由もないので、その点はお含みおきいただきたい。)

 もともと、官邸や官邸を取り巻くブレーンたちの頭の中は、基本的には経済成長で税収を増やせば消費税増税は不要というものであり、そもそも論からしても、これ以上の税率引上げには消極的であるというより、否定的であるようである。

 それに、GDP統計や熊本における震災等を考えれば、とても是が非でも上げるという状況ではないというのが、現政権、特に官邸の理解であるということになるのではないか。すなわち、税率引上げは延期される可能性が大きいということである。

 財務省内にも今回の引上げは難しいのではないかという厭戦ムードが漂っているとの話もあった。ただ、この機を逃すともう何年も上げられないとか、二度とチャンスはこないとの話もあり、官邸が思い描くとおりにことが進むかどうか、一筋縄ではいかないようにも思う。

 ところで、税率引上げが延期となれば、代替財源はどうするのか?という議論に必ずなる。民進党はその分を国債発行でと言っているが、社会保障費の増大に対して、国債発行を抑制していくための税率引上げであるのに、また国債発行で借金とは本末転倒も甚だしい。

 財源論を考えるのであれば、消費税にのみ着目するのではなく、税制の在り方を全体として見直すという議論になってしかるべきなのだが。その時に注目すべきは法人税であろう。法人税については「実効税率」の引下げが常に優先度の高い措置として上げられ、段階的に引下げられることになっている。

 しかし、この「実効税率」というのが曲者である。一般に出てくる「実効税率」とは実は「法定税率」のことで、実際に企業が負担している税率、「実行税負担率」はこれとは大きく異なり、巨大企業の場合10%台というのも当たり前にあるらしい。なぜそのようなことが起こるのかと言えば、研究開発税制のような、税制上優遇措置が幾つも設けられており、その恩恵を受けることで実際の税負担率を極めて低く抑えられているのである。(ただし、これは規模の大きな企業の場合であって、中小・零細企業はその恩恵にあずかることができていないようである。)

 要するに、こうした「既得権」とも言えるような税制上の優遇措置を整理し、法人税制を適正化すれば、相当額の税収の確保が見込める。(この辺りは中央大学名誉教授の富岡幸雄氏の著作に詳しいので、そちらをご参照いただきたい。いかにおかしなことが、国民の知らないところで起こっているのか、非常によく理解いただけると思う。)

 税制については、目先の税率の数字の話に終始するのではなく、こうした大所高所からの議論があってしかるべきだと思うが、やはり負担と受益を両睨みにした、冷静な議論を行うことができるような議員は、残念ながら減少傾向にあるということなのだろうか・・・

 以上、消費税率引上げ問題を考えるヒントとして。
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