政治・政策を考えるヒント!

   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)


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 現地時間の2月10日から行われる安倍総理とトランプ大統領による日米首脳会談、日本では鳴り物入りの会談のように報道されているが、一方のアメリカではほとんど話題になっていない。強いて言えば、フロリダのMar-a-Lagoの利用問題に関するものだけ。相変わらずの温度差である。

 

 さて、この会談何について話をすることになるのだろうか。ホワイトハウスの報道官の定例記者会見で唯一出された記者からの質問に対し、スパイサー報道官は貿易と安全保障についていろいろと話すことになるだろうと回答している。大方そんなところだろうというところなのだが、どうも日米では会談の内容についても温度差があるように思われてならない。

 

 会談に先立って、トランプ大統領が日本と中国を名指しで為替操作国であると非難したと報じられた。また、日米の貿易不均衡についても不満を持っているとも伝えられている。「貿易不均衡」という言葉、昔聞いたことがあるような言葉であるが、そうしたことを受けて現政権は大慌てになったようで、会談前から「日米成長雇用イシアティヴ」なるものを提案すると言い出した。その趣旨は、日米が協力してアメリカで70万人の雇用を創出しようというもののようで、それをインフラ投資を中心にという話のようだが、日本がアメリカでの雇用創出に日本のカネで協力するというのは何だか変な話。しかもそれが日本企業にとってビジネスチャンスになるかのような話にまでなっている。インフラの新設や更新に日本が何らかの形でお金を出すとしても、調達主体は米国政府なり米国の地方政府なり米国の政府関係期間である。それを日本企業にも云々とは、これでは結局日本はアメリカを使って自分だけが儲けようとしていると言われてしまいそうである。要はトランプ恐怖症に取り憑かれて右往左往で支離滅裂になっているということなのだろう。一応、アメリカには雇用創出お手伝いしますというリップサービス、日本国内に対しては、日本のお金は使いますが日本にもメリットがしっかりありますというリップサービス。なんとも情けない。

 

 つまるところ、日本側としては、トランプ政権に取り入って、今後かかってくるであろう日本への圧力を未然に和らげたい、まずはその一点なのだろう。一方のアメリカ側の狙いはと言えば、日本に為替操作をやめさせること、二国間交渉を行いたいことを伝達すること、インフラ投資のためのインフラ債(米国債)を買わせる等の譲歩を得ること、といったところか。麻生財務大臣の同席を求めてきた背景事情としてはそうしたことがあるのだろう。

 

 この中で特にトランプ大統領の関心が高いであろうと思われるのは、為替操作をやめさせること。これについては、先述のとおり日本では最近唐突に言われたように報道されているようだが、トランプ大統領は就任よりずっと前、1年半程前にも同様の指摘をしている。それがためにアメリカのビジネスと雇用を奪っている国としており、そうした国との二国間交渉(individual deal)を進めるというのがトランプ大統領の基本的な考え方であり、基本的な雇用創出戦略である。(トランプ大統領は何を考えているか分からないといった評価が日本では定着しているが、ここ数年の彼の発言を見れば、その考えは首尾一貫している。分からないのは情報不足に加えて分析不足によるものだと言えよう。まあ、日本のメディアも現政権も、希望的観測でヒラリーヒラリーと考えていたようであるから、さもありなんだが。)

 

 したがって首脳会談ではこうしたことを踏まえた対応が求められるのだが、「日米成長雇用イニシアティヴ」に閣僚級協議の設置の提案とは、ズレまくっているとしか言いようがない。

 

 もう一つ、今回の会談で話題となりうるのが安全保障であるが、前掲のホワイトハウスの記者会見で、先程の記者からの日本に米軍の駐留経費の増額を求めるのかとの質問に対しては、スパイサー報道官は特段回答はしていない。ただ、トランプ大統領の安全保障についての基本的な考え方は、アメリカを守るための軍事力の維持・向上を図る、アメリカと関係のない海外での軍事行動はしない、過激なイスラム原理主義を掃討するといったことに集約される。したがって、アメリカの国益にとって日本に駐留する必要がなければ撤退するが、日本が自らの国益のためにアメリカ軍に駐留してほしいというのであれば、駐留経費をもっと払えということなる。極めて単純明快である。そして同盟関係の強化は、アメリカの安全保障にとってメリットがあるように進めるが、海外での余計な軍事行動を行うつもりはないので、アジアの安定は同盟国である日本が自分でやってくれ、それこそが同盟の(アメリカにとっての)強化であるということになろう。

 

 しかし、一方のニッポン安倍政権、そんなトランプ政権の基本的な考え方などどこ吹く風ということのようで、最も関心が高いのは、日米安保条約の尖閣諸島への適用のようである。先日マティス国防長官が来日した際も最優先で確認したのはこのネタで、適用ありとの回答を得て安堵したところ、今度は大統領にも確認して確実なものにしたいといったところなのだろう。

 

 日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用については、これは当たり前の話であって、トランプ大統領も言及するについて躊躇はしないだろうが、当たり前のことを繰り返し確認するというのは、アメリカ側からすれば「しつこい」行為であるのみならず、日本は自分で自国を守るつもりも能力もありませんと言っているに等しい。そんな国をトランプ大統領が同盟国として認めるかと考えれば、推して知るべし、であるのみならず、負担増のためのいい口実を与えるようなものである。(ちなみに、この第5条が適用されるからといって、アメリカが守ってくれるわけでもないし、中国軍が尖閣諸島を上陸・占拠したとして、これを武力で排除してくれるわけではない。日本では日米安保条約に関する嘘が出回っている。トランプ大統領風に言えば、"fake news"である。)

 

 しかし、それよりも、「しつこく」確認することにより懸念されることは、日本が自国の防衛・安全保障を日米安保に過剰に頼ろう、アメリカに過剰に頼ろうとする姿が、中国等の周辺諸国には日本は自ら自国を守ろうとする意思がない国だと映ることである。もっと言えば、自ら進んでアメリカの属国になります、保護領になりますと世界に向かって言い放っているに等しい。(もとよりそんなことは承知の上かもしれないが。)そもそも、尖閣諸島への日米安保条約の適用を確認しても、それは現状では尖閣諸島が日本の執政権の下に置かれているから適用されるという話になるのであって、尖閣諸島の日本の領有権を確認するものではない。

 

 重ね重ね情けない話であるが、結論めいたことを言えば、真の自主独立国にならなければ、トランプ大統領との有意味な首脳会談はできまいし、トランプ大統領から「いいパートナー」として扱われることはないだろう。(おそらく政府は日米首脳会談の結果を、針小棒大どころか針小ロケット大ぐらいに喧伝するのだろうが。)

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