長管トランペットの話。

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ロマン派までのオーケストラでは現在のような短管トランペットではなく、長管トランペットが用いられていたという記述をよく見かけます。

 

 

 

 

写真を見て分かるとおり通常のトランペットよりも大きいです。管も太く、長さも明らかに現在の短管トランペットに比べると長く見えます。

 

現代のトランペット奏者が使うトランペットは基本的に短管のB♭管ですが、古典時代からロマン時代初期にかけてはたくさんの種類の管があり、そのどれもが長管トランペットでした。

 

歴史的にはハイドンやモーツァルトの時代には実に様々な種類のトランペットがあり、替管を用いることによっていろいろなキーに対応していました。C管のトランペットは8フィート(2.4384m)もあったそうです。

 

 

当時はまだ現在のようなバルブシステム(バルブシステムの発明は1815年)はなく替管によって様々なキーに対応し、後は唇の緊張だけで様々な音を出すことによってフレーズを演奏するという現代人から見れば不便この上ない方法が行われていました。そのため古典時代のオーケストラでは、盛り上がる部分なのに突然トランペットがいなくなるなどの現代人から見ると違和感のあるオーケストラションが行われていることが多々あります。

 

 

これらは現代のCDを聞くと親切心からという意味なのか、聞き映えがするという意図なのか、指揮者が楽譜を書き換えて「本当はこうを書きたかったのだろう」という古典時代の作曲家の意図を想像してレコーディングされており、楽譜に書いていないことが鳴っていることもよくあります。

 

このようにたくさんの種類のあるトランペットですが、1800年代初頭近くになって色々あったトランペットの管はF管のトランペットに統合されていきます。これはウォルター・ピストンの管弦楽法によれば管長約6フィート(1.8288m)だそうです。

 

 

 

ブルックナー交響曲7番のトランペットパート

 

 

いま個人的にブルックナーの交響曲7番を勉強しているのですが、やはりトランペットはF管で書いてあります。

 

 

もちろんこの時代の作曲家のすべてがF管のトランペットを想定してスコアを書いたということはありません。例えばブラームスはトランペットパートに様々な管を用いています。ただブラームスはバルブシステムがあるにもかかわらず、ベートーヴェンの時代のような自然ホルンのようなフレーズをあえて書く作曲家なので、意図的に古い時代のトランペットを使っていたと言う可能性もありますが(私の偏見です)、ブルックナー以外だとマーラーや交響曲やドビュッシーの管弦楽にもやはりF管のトランペットが使われています。

 

 

面白いのが、この方の記事サン=ジャコメの教則本(1870年出版)にトランペットのパートをコルネット(短管)で移調読みする練習があると書いてあるので、当時の作曲家がF管以外の様々な管で楽譜を書いても、実際にF管で演奏されていたかどうかはわからず、現代のように別の管で吹くという風習はこの時代から始まったのかもしれません。

 

 

現在の短管トランペット

 

現在のような短管トランペットがいつ作られたのは正確にはわかりませんが、19世紀の終わりの時期なのではないかと言われています。

 

このトランペットの長さは現在のメインであるB♭管であれば、約4.3フィート(1.3mちょっと)なので、古典時代のトランペットと比べると約半分の長さということになります。

 

 

歴史な事は置いておいて、私が最も興味があったのは音色の側面で、管の長さが2倍近いのであれば基音も当然1オクターブ下になるはずであり、それで同じ音を出そうと思えば当然音色が変わってくるということです。

 

 

実際に長管トランペットの基音は現在の短管トランペットの1オクターブ下であり、当時の長管トランペット奏者は楽譜に書いてある事をそのまま吹いていると考えるのであれば、現在の短管トランペットよりも高次の倍音を吹いているということになります。

 

 

長管トランペットの倍音列(C管)

 

 

C管の場合、長管トランペットの基音は中央ドの2オクターブ下の音になります。例えば中央ドの1オクターブ上のドをならしたいと思ったら8倍音を吹かなければならないということになります。

 

 

 

短管トランペットの倍音列(C管)

 

 

しかし現代の短管トランペットであれば中央ドの1オクターブ上のドを吹きたい場合は、5倍音を鳴らすということになります。管の長さが半分なので基音も1オクターブ上になるわけです。

 

 

いろいろな本あるいはネット上の記事を読んでいると長管時代から短管時代に移り変わる際には、トランペット奏者の戸惑い・不満も当然あったようですが、現在では多くの人が知っている通り短管に統一されています。総合的な面を見て短管の方が有利なのでしょう。

 

 

管の長さが約2倍なわけですから、もっと深みのある音が出るように思いますが、こればかりは聞いたことがないので何とも言えません(ひょっとしたら何かのCD聴いているのかもしれませんが)。

 

 

古典時代の長管トランペットは12倍音(C管の場合は中央ドのオクターブ+完全5度)まで使用するのが一般的な常識だとウォルター・ピストンの本には書いてありますが、現代の短管トランペット奏者は8倍音、9倍音あたりまで使うのが基本となります(管によって高い音が出にくい出やすいというのがあります)。

 

 

つまりモーツァルトやベートーベン、あるいはブルックナーあたりまでが生きていた時代に演奏されていたオーケストラの金管楽器の音と現代の金管楽器の音は厳密には違うものであり、当時どんな音色で演奏されていたのかという点に非常が興味があります。

 

 

DTM音源では当然、長管トランペットの音色などあるはずもなく、基本的にはすべて短管トランペットの音です。古楽器をフューチャーした音源であれば長管トランペットもあるかもしれませんが、一般的では無いというのが現状です(個人的にはDTMで使ってみたいと思っています)。

 

 

(長管トランペットについてはこの方の記事が詳しいです。)

 

お読み頂き有り難う御座いました。

 

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BGMで色々作りたい方やボーカル曲で幅広いアレンジを目標とする方にとっての基礎的な内容の習得として今まであまりブログにジャズボイシングのアプローチのことを書かなかったので、少し所見を述べてみたいと思います。

 

和声学の偶成和音のジャズ版ように私が勝手に感じているジャズボイシングのアプローチですが、クラシックの作曲において偶成和音がいまいち上手く習得出来てない、あるいはよくわからないという方はジャズのアプローチを勉強するとヒントになるかもしれません。

 

 

 

 

シューマン 子供の情景よりトロイメライ(5小節目から)

 

 

まず偶成和音とは何?という方は上の譜例を見て下さい。(動画は18秒あたりから)

 

有名なシューマンのトロイメライですが、3小節目のFmの部分がいわゆる偶成和音です。これはアルトに相当するパートの半音階的な経過音によって偶然発生している和音であり、ノンダイアトニックコードですが、こういった和音が挟まることによって調的な広がりや響きの豊かさを得ることが出来ます。

 

 

和声学の本にも偶成和音については書かれていますし、実際のクラシックの作品において偶成和音の譜例には枚挙に暇がないのでわざわざ説明の必要はないかと思いますが、言葉のみで簡単に説明すると「コードトーンや経過音などの非和声音が集まり、カデンツに矛盾して成立している和音」のことを指します。

 

 

実際は偶然そうなっているというわけではなく、意図的に豊かな響きを求めて行うもので、作曲家ごとに使い方に個性があったりします。

 

 

フォーレっぽい偶成の用法

 

 

例えば先日の記事でフォーレの弦楽四重奏を軽くアナリーゼしてみましたが、フォーレなら偶成の借り元を同主短調や準固有和音調(同主短調のダイアトニックコードを主和音とする調)に求める傾向があり(すべてがそうという意味ではありません)、色んな作曲家の曲を分析・解析するうちに傾向予測が出来るようになります。

 

上の譜例ならソプラノの最初のシと最後のソに対してEmGという和声付けがされています。ソプラノはシ→シ♭→ラ→ソという風に一部クロマチックオルタレーションを含み、シ♭に対してE♭という偶成和音を当てていますが、この和音は同主短調の♭Ⅲを借りてきているわけで、フォーレが好んで用いるパターンの一つです。

 

 

こういったことを言い出したら、また記事が長くなってしまうのでこれだけにしたいのですが、色んな作曲家の偶成の使い方には個性があり、時代によっても違います。既に自分なりのお気に入りの偶成和音の使い方を確立している作曲家の方もたくさんいらっしゃると思います。

 

 

なかなか素敵な偶成和音なのですが、レッスンで和声をやらせて頂いている中でどうにも感覚が掴みにくいという方が多く、独学でやってらっしゃる方にも偶成和音の意味はわかるけれど、いまいち実際に自分が使う上では上手く活用出来ていないという方のために、ちょっと趣向を変えてジャズのアプローチを勉強してみると良いかも?と思いました。

 

 

クロマチックアプローチ、ドミナントアプローチ、ディミニッシュアプローチ、etc…など色々あり、バップ期までのジャズよりも近年はもっと発展的なアプローチの用法もあって、ある意味偶成和音に近しい考え方をしています。

 

 

 

例えばコードがFの時にドソラというメロディーがあったとします。これにFコードに合わせてハモリを付けると次の譜例のようになります。

 

 

 

特に難しいことはなく、Fコードの下にFM7のファラドミの音を下に足しているだけでいわゆるハモリと言い換えても良いかもしれません。

 

響きとしてはトップにある2つ目の「ソ」を除けば完全にFM7の範疇なのでよく言えばコード通りの協和度の高い和声付け、悪く言えば変化のないつまらない和声付けです。

 

 

これにジャズでいうところの「ディミニッシュアプローチ」を行ってみましょう。

 

 

真ん中のトップが「ソ」の下にB♭dimが割り当てられてちょっと響きが豊かになっています。ディグリーでいうとⅣdimですね。

 

このレ♭は何処から来たのか?というとC7の♭9thなわけですが、ノンダイアトニックの音が鳴ることで色彩的にも豊かになりますし、出鱈目な響きではなくちゃんと4和音の形態を取っていますので美しく響きます。

 

鍵盤で弾いてみるとFM7だけで和声付けするよりも別の可能性や広がりがあるわけですが、これはある意味においてクラシックの偶成和音である倚和音とよく似ています。似ているというか、倚和音そのものです。

 

偶成和音とジャズのアプローチの違いは偶成和音は一切の制限がなく、ジャズのアプローチは一応は種類が限定されていることでしょうか。

 

 

用法としてはクラシックの方が自由であり何をやってもいいので面白い響きが作れますし、方向性を決めればそれがフォーレのように自分の個性にも繋がってきます。

 

何でもアリと言われてしまうと逆に困ってしまう方もいるわけで、ジャズのアプローチのようにある程度限定された内容から取っ掛かりを得てみるのもありかもしれません。

 

 

ジャズのアプローチ=クラシックの偶成和音ではないので、あくまで違う角度からの勉強方法のお勧めという意味であり、結局はたくさん色んな作曲家の作品を聴くのが一番かと思いますが(後期ロマンや近代フランスは特に面白いです)、これを勉強しておけばジャズを作曲するときに多いに役に立ちますし、ビッグバンドはこれを理解していないと書くことが出来ないため、ジャズも作りたいという方は手を出してみると良いかもしれません。

 

 

お読み頂き有り難う御座いました。

 

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木管楽器と金管楽器の移調楽器はそれぞれ成り立ちが異なり、なぜ移調楽器が存在し、どうして移調楽器用の譜面が必要なのかは多くの方がご存じだと思いますが、普通オーケストラスコアを見るとクラリネット、ホルン、コールアングレ、トランペット、サクソフォン、etc…は移調譜で書かれています。

 

 

移調譜面は(特に木管がそうですが)、基本的に演奏者側の都合で存在するものだと個人的には思っていますし、移調で書いてある譜面を読むのが普通だとも思っていますが、あまりにもややこしい譜面になってくると脳内移調が面倒臭くなることもあります。

 

 

01

 

上の譜面はサクソフォン四重奏ですが、コードネームで表すとなんというコードネームになるでしょうか?ソプラノサックスはBb管なので長2度下、アルトサックスはE♭管なので長6度下、テノールサックスはBb管なので長2度下+1オクターブ下、バリトンサックスはE♭管なので長6度下+1オクターブ下です。下に答えがありますが、出来れば自分で楽譜を読んでみて下さい。

 

サクソフォンについて

 

 

これにサックスやクラリネットなど普段から演奏者側で移調楽器に慣れ親しんでいる方以外で、即答出来る方は相当譜面に強い方だと思います。

これを大譜表に直すと下の譜例になります。

 

 

001

 

正解はFM7ですが、実際のサクソフォン四重奏はかなり複雑なので譜面を読むのはそれなりに大変です。

 

サクソフォン四重奏は実音が一つもないので常に脳内移調で読み進めていきますが、オーケストラスコアでも似たような箇所はたくさんあり、A管のクラリネットとコールアングレとテノールで書かれたバスーンと調号のないホルンのような譜面はト音とヘ音の実音が一つもないので、同じように大変です。

 

 

01 ト音とヘ音の実音が一つもないケース(バスーンは途中からヘ音)

 

しかしこれは「慣れ」の問題であり、訓練次第で段々と速くなってきます。レッスンでも移調譜面が苦手という方はいらっしゃいますが、ト音やヘ音が読めるようになったのなら、同じ理屈で移調譜面やアルトやテノールやソプラノ記号も読めるようになりますし、移調も慣れていきます。

 

 

打ち込みだけで音楽をやっていて、市販のオケ譜面などを一切読まない人にとっては移調楽器は全く関係ないですし、それどころかト音とヘ音さえ読めればアルトやテノールやソプラノ記号すら読む必要はありません。もっと言うならピアノロール主体で作業する人もいるわけで譜面そのものと付き合う必要が全くない方もいると思います。

 

 

しかしアレンジの仕事で誰かに演奏してもらう場合にはこういったことは必要になりますし、市販のスコアのほとんどは移調楽器はそのまま移調譜面で書かれていますので、やはり無視することは出来ないのが現状です。

 

 

とはいえ、面倒と言えば実際に面倒ではあるのですが、むかし千住明のピアノ協奏曲「宿命」というテレビドラマのスコアに手書きのオケ譜面が掲載されていて、作曲家がオケ譜を書くときはすべて実音で書いてありました。

 

私たちもホルンやクラリネットをDTMでDAWに打ち込む時にB管やF管として打ち込む人はおそらくいない?と思いますが、千住明のような立派な人でも移調譜面は演奏者側の問題であり、作曲の段階では無視しているのがわかり安心?した記憶があります。

 

 

手書きの譜面の段階で移調譜面で書く人が、果たしてプロの作曲家でどれくらいいるのか私はよく知りませんが、少なくとも出版される段階ではほぼ100%移調されて出版されるのが普通です。楽譜は演奏するために出版されるのですから、移調楽器のパートがすべて実音で書かれていたらクラリネットやホルンの人たちは困るのではないかと思います。

しかしプロコフィエフのようにオケ譜を実音で書いたものもあり、近年でもどうも現場によって色々な考えがあるようです。

 

01

プロコフィエフ  ピアノ協奏曲2番 第4楽章

 

 

ベートーヴェンだとかブラームスだとかドビュッシーの譜面は移調譜があるのが当然ですが、プロコフィエフの譜面を見ているとホルンやトランペットやクラリネットパートに違和感を感じて、読み始めるとたまに「??、、、、あぁー実音か…」となるときがあります。特にホルンが実音で書いてあるのが未だに不思議に感じます。

 

移調楽器に限らず対位法でもソプラノ、アルト、テノール、バスの記号を別々に使うので、慣れないうちは誰でも大変ですが、トータルで見ればあらゆる譜面に対応出来た方が絶対的に有利です。

 

どんな練習方法がありますか?と問われることがありますが、移調譜として書かれていない普通の簡単な譜面でも移調譜面やト音とヘ音記号以外の音部記号のつもりで読む練習をすれば段々慣れてきます。

 

 

一番簡単なものをご紹介します。

 

 

001

 

例えばこの譜面はヘ音記号で書かれていますが、これをト音記号だと思って読めば当然音は変わってきます。同じ理屈でアルトやテノールやソプラノ記号だと思って読み直せば良い練習になります。

 

さらにト音でクラリネットのB管だと思って読んだり、F管のホルンだと思って読んだり、D管のトランペットと思って読んだりすればいいわけです(この楽器でこんな音出ないよ、というのは無視して練習します。)。

 

 

#や♭が付いていると逆さまにして活用するのに不具合が出ますが、変化記号がない譜面であれば前述の練習に加えて、逆さにして読む練習も出来ます

 

001

普通の譜面

 

001

上下逆にした譜面

 

こうすれば一つの譜面で2回練習が可能ですし、移調譜面として読めばさらにバリエーションも増えます。

 

ほかにも色々な練習方法があるのでしょうが、個人的には実際の譜面に慣れ親しむのが一番だと思います。

 



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よく使用する音源や自作のパーカッションをKontakt音源化しておくと色々便利なので、私なりの方法をご紹介したいと思います。

 

 

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特に利便性が高いのはIntegra-7などのハード音源や自分でマイクを使って収録したパーカッションなどで、Kontakt音源化しておくとボリューム、パンニング、エフェクト、ピッチ変更、そして高速書き出しなどメリットがたくさんあります。

最近はライブラリー化していくようになりました。

 

 

例えば3分のBGMでハード音源から5種類のパーカッションを使った場合は個別にWAVE化する場合3分×5トラックの時間が掛かり面倒ですし、それぞれの個別のトラックに、最終的に行う予定のエフェクト処理がどれくらい行えるかは音源の性能に依存し、VSTエフェクトで行うような何でもアリというわけには行きません。

 

 

例えばIntegra-7ではRPN・NRPNを使ってDrum Inst PanやDrum Inst Levelなどの調整は出来ますが、1つのチャンネルのドラムキットの中のスネアのみ、キックのみに個別のインサーションエフェクトを掛けることは出来ないため、大抵は個別に録音した後でトラックごとに編集を行います。

 

たった1つのパーカッションのためだけに1ch(1trackではなく)潰しても良く、エフェクトのRolandのインサーションエフェクトで良いなら個別のパーカッションにエフェクトを掛けながら製作することは可能ですが、ベロシティーレイヤーの数が少ないものであれば、Kontakt上で扱ったほうがミックス処理が遙かに楽だったりします。

 

○具体的なやり方

やり方は簡単で、まずは音源化したい楽器・声などをWAVEで録音します。個人的には効果音系で使いたいものに対して行うことが多いです。

 

 

wave01

 

編集時には0秒発音にすること、ノイズの混入などに気を付けましょう。

冒頭に不要な無音部分があると無音部分も再生されるためMIDIの発音タイミングと音が鳴るタイミングがずれてしまいます。

 

ノイズ処理に関しては、生録音した場合や何らかの特殊な事情でノイズは入ってしまっている場合はノイズリダクション系のソフトでノイズを除去しておきます。

 

 

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WAVES Z-noise

 

 

Kontakt上で波形の何処から再生するかは実は設定出来るのですが、特別な意図がないなら綺麗に処理しておいたほうが賢いです。

 

 

音源によってモノラル・ステレオ、あるいは16bit・24bit、44,1kHz~96kHzなどを決めていくと良いと思います。私の場合はモノラルかステレオかは音源次第ですが、基本的には簡単なパーカッション系やSEにしか使わないので44,1kHz/16bitで作っています。

 

ハイレゾに拘る方は高いレートで行うのもありですが、そもそも発音元の音源側がハイレゾでなく、受け取り側だけをハイレゾにしてもあまり効果的でありませんし、生録音の場合もマイクの価格帯やアウトボードの性能に依存するので一概に録音ソフト上のみでハイレゾだから良いとは言い切れないと感じています。

 

 

ともあれ、とにかく音源化した波形を片っ端から録音していきます。ここで問題になるのがレイヤーをいくつにするか?ということですが、自分がその波形をどういう風に使うのか?によって1つで良かったり、4つくらい欲しかったりするのでまちまちです。

 

 

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必要に応じてベロシティーレイヤーを考えて録音します。

 

 

ボリュームフェーダーを書くことでベロシティーレイヤーがあるかのように聞こえさせることは音源によっては可能ですが、生楽器の場合は複数のレイヤーがあったほうがリアルです。例えたった2つだけだったとしても1つしかないよりは全然マシです。

 

 

シンセで作った1発もののFX系であればレイヤーは1つで良いでしょうし、生録音時に強弱を付けにくい、あるいは付ける意味があまりない楽器もありますので、その辺りはケースバイケースです。

 

 

例えば楽器屋でタンバリンを買ってきて、それをKontakt音源化するなら、レイヤー数よりも鳴り方のバリエーションの方が大切なので、レイヤーは2つもあれば十分な表現力を持っています。

 

もちろん曲中でどんな使い方をするかによって変わりますが、左右にパンを振ってサイドで小さく聞こえる脇役程度の扱いであれば、レイヤー数よりも鳴らし方のニュアンスが多い方が重要です。

 

 

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色々なニュアンスを録音しておきます。

 

 

録音したものをそのまま使うこともありますが、この時点でコンプやEQ、あるいはその他のエフェクト処理をして音作りを行うこともあります。

 

 

例えばキックの音であれば、思う存分波形に対してエフェクト処理を行い思い通りのキックを作ってしまえば、それを使うことが出来るのでクラブミュージック系を製作するときはよく過剰なコンプやEQやディストーションなどを予め波形に対して行ってから使うことが多いです。

 

 

出来上がったらWAVEファイルをKontakt上にドラッグ&ドロップします。

 

 

 

kontakt02

 

 

ドラッグ&ドロップするだけで普段DAWで使っているソフト音源と同じように使うことが出来ますので、エフェクト処理やパンニングやフェーダーを調整しつつ使うことが可能です。

 

 

 

 

1つの波形をドラッグ&ドロップした状態では中央ドの位置が元のピッチになっていますが、敢えて多少高い・低いピッチを使うことで異なるニュアンスを活用することもあります。

 

 

kontakt03

 

 

1つのWAVEファイルだけで良い場合はこれだけでOKなのですが、レイヤーを作ったり、キーごとに異なるサンプルを割り当てる場合は「スパナのマーク」をクリックして「Mapping Editor」と「Wave Editor」で設定を行います。

 

 

 

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ファイル名が日本語だとKontakt上では「????」と表示されてしまいますので、複雑なものを作る場合は半角英数にしておきましょう。

 

 

キーマッピングしたいファイルをドラッグ&ドロップしていきます。ピッチの変化のニュアンスを残したい場合は1つのキーにつき3~5半音当てれば十分ですが、純粋にそのまま使う場合は鍵盤1つのみにします。

 

 

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レイヤーを作るときもマッピングエディター上でのマウス操作で簡単に作れます。

 

 

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完成したらKontakt上部のファイルメニューから保存をします。「.nki」という拡張子のファイルが出来ますので、2回目以降は一度作ったものをそのまま使えます。

 

 

一度作ってしまえばハード音源やいちいちマイクを使って録音をする手間が省けますので、こういったライブラリー化は時間の短縮という意味で便利ですが、個人的には時間の短縮よりも、ピッチの変化やエフェクトでの音作り、波形の途中や逆再生などの面白い効果を活用したクリエイティブな側面が面白いと感じています。

 

 

たった1回しか使わない音であっても、Integra-7などのハード音源から録音したり、あるいはソフト音源から1つの音だけを書き出して、あれこれ弄くることも多々あります。

 

 

ソフト音源だったらいちいちそんなことをする必要はないのでは?と思われるかもしれませんが、これもケースバイケースで例えばSUPERIOR DRUMMERの場合はクラッシュシンバル用のマイクが個別にないため、クラッシュシンバル類に対する個別処理が上手く出来ません。

 

 

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SUPERIOR DRUMMERのミキサー画面

 

 

ですのでシンバル類のみを別に書き出しておいて、Kontakt上で前述のような方法で扱えばエフェクト処理やパンニングもかなり明確に行えるので、SUPERIOR DRUMMERの欠点を補うことが出来ます。

 

ほかにもその時々の意図でいちいち1つの音だけを書き出して面白い効果音的な音を作っていくことはよくあります。

 

波形をそのままDAWのオーディオトラックに貼り付けるということも昔はよく行っていましたが、Kontakt上でMIDI管理した方が編集の幅が大きいので最近はその場での生録音以外は積極的にKontaktのライブラリー化を行うようになりました。

 

面倒と言えば面倒ですが、1回やってしまえば2回目以降は楽ですし、例え1回しか使わないとしても面白い効果を得られる場合が多いので面倒がらずにやっています。

 

お勧めなのが楽器屋さんでカスタネットやタンバリンなどの簡単な打楽器を買って自分で録音する方法で、これによって自分の思い通りのニュアンスの音源を作ることが出来ます。

 

ソフトorハード音源にもカスタネットやタンバリンなど楽器は入っていることが多いですが、「自分の思い通りのニュアンス」でなくて不満がある方は自分で録音してしまうのが一番です。

 

 

「やっているうちにフリーのKontakt音源ってこうやって作っているんだなぁ」という風にやり方がわかってきますし、規模が大きくなれば製品として販売されている音源もやっていることは基本的には同じだということがわかってきます。

 

 

もちろんレガート機能のようにサンプル間をうまく繋ぐプログラムを組んだり、入力ベロシティーの変動によって選択するサンプルを変えたり、ギター系のコード検出機能などのように特定の組み合わせのキーが鳴った時は○○のサンプルを再生するなどのように入り組んで来ると素人にはお手上げですが、ただサンプルを鳴らすというだけでも十分過ぎるくらいクリエイティブな効果を上げることが可能です。

 

 

とくにソフト音源のプリセットだけで作っている方にとっては他者との違いを出すための有力なツールにもなり得ます。

 

 

実はこういった手法は遙か昔から存在するのですが、ソフト音源の充実と共に自分で録音してサンプラーで使うということをしなくなって来たという方も多いのではないかと思いますし、最近DTMを始めた方であれば音源が充実しているのでこんなことをしなくても大抵欲しい音は手に入るため、そもそもやらないという方が多いのではと思います。

 

 

マイクで録音するのは面倒ですし、録音するにはある程度の道具も必要になるため録音環境を揃えるのも面倒だったりします。

 

しかし職業作曲家が担当したBGMなどでomnisphereなどのプリセットの音がそのまま使われていたりする時代なので、他者の差を付けるという意味で音源が充実してきた今だからこそやる価値があるのではないかとも思います。

 

パーカッション系はKontakt音源化するのが楽なのですが、最近は慣れてきたのでウクレレなどの音源にも挑戦してみようかと思っています。

 

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バルトークは作曲は全く教えませんでしたが、ピアノ教育にはかなり関心を持っており、教育目的の作品をたくさん残しています。

 

ミクロコスモス」「子供のために」が代表的ですが、ほかにも「10のやさしいピアノ小品」など子供が音楽に親しむための簡単な作品をいくつも残しており、これらに触れているうちに私も作ってみたくなりました。

 

 

小学校低学年あたりの子供が弾けるような、複雑な和音やオクターブの出てこない(手が小さいから弾けない)簡単で20秒~60秒くらいの短いピアノ曲をたくさん作っています。

 

 

 

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1曲目 DLリンク

 

 

子供が喜びそうなタイトルで作っているのですが、まだ始めたばかりなので10曲ちょっとしかないものの、いつものように作曲そのものよりもFINAREでの浄書に時間が掛かります。

 

 

とりあえず30曲くらい溜まったらセットでA4サイズでまとめようかと思っていますが、作曲3分、FINARE30分以上の手間が掛かり、手書きの汚い楽譜なら速攻ですが、浄書はいつになっても面倒です。作曲よりも、子供たちにどんなことを覚えて欲しいか?指使いはどうするか?のほうが考えるのが難しいです。

 

 

鍵盤で弾くと単純な曲でも、子供たちに様々なアーティキュレーションやディナーミク、音楽用語などを覚えてもらうために書き込むことが多くなるので、上の画像の1曲目もピアノ弾いたら超絶単純のただのスケール上行ですが、楽譜に書き込むとなると文字や記号がどうしても増えていきます。

 

 

ピアノが下手くそなので、技術的な専門性の高いものは私には無理ですが、BGMのように様々な雰囲気を表現して、楽しい、悲しい、不気味、コミカル、綺麗、間抜けetc…、のような表現性の高い小曲はネタが山ほどありますので、それらを子供向けに単純化して、指使いと楽典的な内容の習得に絡めて作っている感じです。

 

 

私には潰せるよな暇はありませんが、ちょっとした時にささっと作って溜めていけばそのうち曲集みたいに出来るかもと考えています。

 

 

悩むのが、何処まで難しいことを曲に取り込んで良いのか?で少しずつレベルアップしていくように考えていますが、アイデアはたくさんあるのである程度まとまったらまた記事を書いて紹介したいと思います。

 

 



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フーガ書法: パリ音楽院の方式によるを買って読んでみました。

 

 

奈良に来てからこの本が置いてある楽器屋さんや本屋さんがないので、せめて買うのは立ち読みして中身を確認してからと思い、長いこと放置でしたが先日ある楽器屋で発見し、読み物としてなかなか面白そうなので購入してみました。

 

 

タイトル通りパリ音楽院での「学習フーガ」の書き方を学べる本ですが、池内友次郎著の「学習フーガ」に比べるとかなり説明が端折られていて、用語の説明や各部分の作り方などはフーガに関する予備知識なしでフーガの作曲に挑戦したい初心者の方にとっては、やや厳しいかも?と思いましたが、池内友次郎著の学習フーガにはないアプローチもあり、著者のパリ国立音楽院時代の出来事などが書かれていて、単なる教則本と考えると中級者向けですが、読み物としては面白いです。

 

 

 

しかし池内友次郎著の「学習フーガ」はとうの昔に絶版ですし、国立音楽院のフーガの実習(島岡譲著)は(調べたらネットで購入出来るようです)手引きという感じで説明も少ないので学習フーガに関する書籍はこの本を除けば、まともに勉強出来る本がないため初心者向けにもの凄く丁寧に説明してあるとは言えませんが、なにしろニッチな市場ですので興味のある方にとっては価値ある本だと思います。

 

 

池内友次郎著の「学習フーガ」のあとがきには「この学習フーガはいつから行われているのかわからないが、一番古い主唱にケルビーニがあるので、それくらい昔(1800年初頭)からやっているはず」みたいなことが書かれていますが、ケルビーニと言えば1760年生まれでベートーヴェンよりも10歳年上の古典時代の作曲家ですから、軽く200年以上は作曲家たちの間でフーガを学ぶための方法として受け継がれてきたことになります。

 

 

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ルイジ・ケルビーニ(ベートーヴェンの10歳年上)

 

 

個人的に興味を引かれたのが、バッハ、ベートーヴェン、シューマン、フランク、ラヴェルのスタイルのフーガ実習があることで、色々な作曲家の和声法習得のためによくブログでアナリーゼを書かせて頂いてますが、それをフーガで、つまり対位法的な技術の上で再現するというアプローチは池内友次郎著の「学習フーガ」にはなかったので、譜例が手に入るのと著者の簡単な解説があるというのが最も興味が湧いた点です。

 

 

レッスンでブルックナーの作曲法を習得したいという生徒さんがいらっしゃるので、この本には「ブルックナースタイルのフーガがないなぁ」と思い、ブルックナーのフーガ(交響曲5番の4楽章やいくつかのオルガン曲)をアナリーゼしたりしています。

 

 

ラフマノノフが好きなのでラフマノノフ風フーガもやりたいですし、メシアンやバルトークのフーガも仕事の合間にぼちぼち手を付けていきたいと思っています。

 

 

フーガそのものは少なくとも私がやらせて頂いているようなBGMのお仕事ではすっかり廃れた分野であり(むしろ完全に死亡)、人気もなければ、理解もされない技術ですが、たまにBGMでカノンにして納品してみたり、趣味で(というよりは修行の一環として)フーガや対位法楽曲を勉強するのが好きだったりします。フガートという形であれば組み込みようはいくらでもあるようにも思えます。

 

 

フーガそのものを書くことは、出来の良さを度外視していいなら、ある程度作曲が出来る方なら別段難しいことではありませんが、現代人としてフーガとどのように向き合っていくか?あるいはフーガという対位法技術のエッセンスを現代人なりに自分の個性・作風の中にどういう風に活用していくかを考えることはとても大切なことだと思います。

 

 

修行時代に学習フーガを誰もそうであるように私も先生について学びましたが、この本を読んでもっとBGMにフーガ的な要素を取り入れても良いのでは?という久々の刺激にもなりましたし、フーガそれ自体を現代人が芸術作品として発表したり、フーガがそのまま劇伴のお仕事で丸々必要とされることはかなり珍しいですが、作曲における対位法的な発想や技術訓練、あるいは興味深く発展的な着想は過去の大家のフーガのアナリーゼから得られることが多いので、そういった意味では作曲を志す方がフーガ(というか対位法)を学ぶことは価値がある、というよりは高いレベルを目指すなら必須だと思われます。

 

 

私が思うだけでなく、実際に必須だからこそ未だに大学などの学習機関で対位法やフーガが取り入れられているし、バッハの死後250年経った今でも対位法やフーガは作曲家の必須訓練みたな扱いになっているわけで、今となっては私個人の意見としてはフーガを学ぶのに絶対に学習フーガでなければいけないとは思いませんが、文字通りフーガの基本構造を学習出来る数少ない手引きとなり得る本ですのでお勧めです。

 

 

作曲系の名著の多くが絶版になってしまっているので、何冊もこの手の本があれば話は別ですが、スーパーニッチな分野と市場ですので、学習フーガについて学びたいのでしたら、思うところがないわけではありませんが、良書だと思います。

 

 

もちろん学習フーガは「学習」のためにやるものであって、最終目標は学習フーガを書くことではなく、現代人として対位法技術の結晶であるフーガとどのように向き合っていくか、活用していくかを考えたり、バッハやヘンデルからスタートしてバルトークやメシアンなどの近現代の作曲家たちのフーガを読み解いて着想を得たりするための理解を持つための技術なので、学習フーガだけをやって終わりというわけではありません。

 

 

バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ベルリオーズ、シューマン、フランク、ラヴェルetc…などのフーガをアナリーゼして、学習フーガとどんな風に違うのか、どんな特徴があるのか?などを自分でアナリーゼ出来るようになるのが通過点の目的でもあり、最終的には自分がどうするか?○○な部分は賛同できる、あるいは出来ないetc…、を見極めるのが目的です。

 

 

フーガなんてすっかり廃れた古い技術に一切興味はないというのもある種一つのスタンスとしてはありかもと思いますが、私個人としては対位法やフーガから得たものはとても大きかったので、学習フーガを学べる一つの本としてこれから勉強なさる方にお勧め出来る一冊です(ほかは絶版か簡単過ぎるものですので…)。

 

 

この本だけだとちょっと苦しいかも?と思いますので、プラスαでバッハの平均率のフーガ研究を合わせてやると良いのではと思います。

 

 

 

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バッハ 平均律クラヴィーア〈1〉解釈と演奏法にはフーガの構成などの解釈がありますので、勉強なさる方の取っ掛かりに大いになるはずです(改訂版が出ているようです、また平均率2巻のもあります)。

 

 

フーガに関してはバッハが土台になっているので、バッハの平均率やフーガの技法、オルガン曲などでフーガの構成・作曲法などがわかってきたら、あとは好きな作曲家のフーガをどんどん見ていけば得られるものが多くあるはずです。

 

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雑感と日本和声の紹介。

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最近バルトーク研究、東ヨーロッパ民族音楽研究と並行して、日本の音楽(雅楽、箏曲、民謡など)を改めて見直しているのですが、日本っぽい曲を作るのに参考になるような本をご紹介したいと思います。

 

 

「日本和声~そのしくみと編・作曲へのアプロー チ」という本で既に絶版となっており図書館や持っている人から借りるしかないのが現状ですが(amazonで¥32,000-で売ってます……元値は¥2,900-です)、日本の陽旋法と陰旋法を元にしたオリジナル和声理論を体系化した本で、CDを聴いたり、日本の音階がわかっただけでは作れない、あるいはある程度体系化した理論的な手引きが欲しいという方にお勧めです。

 

 

日本の音楽は、それが何であれ、わりと呂旋法、律旋法、陽旋法、陰旋法さえ知っていればなんとなく作れてしまうのですが(あとは楽器とリズムも)、この日本和声では陽旋法、陰旋法にフォーカスを当てて、音階の説明からそれに基づく和音や(西洋音楽理論でいうところの)和音連結、転調、借用和音や偶成和音についてオリジナル理論が述べられています。

 

 

西洋の音楽において長音階と短音階を元にして行われているいわゆる音楽理論を、陽旋法、陰旋法において似たようなアプローチをしているわけですが、日本っぽい曲を作るときの技法の習得には役に立ちます。やろうと思えばこの本に習って呂旋法、律旋法でも同じことが可能なので理論体系化することが可能です。

 

 

やや西洋の和声からの影響が強い(連続8度の禁止、第3音の重複、共通音の保留云々など)気もしますが、逆にこれをメリットと感じる方もいるかもしれません。日本の「和声~理論と実習」みたいなアプローチで書かれています。

 

日本の音楽については、言うまでもないことですが、古来の日本の音楽に西洋の音楽理論がそのまま当てはまるはずもなく、既に調律からして異なり、西洋の全音階システムや平均率に基づく半音階とは全く相容れない独自の音楽が日本にはあるため、88鍵盤のピアノでそっくりそのまま表現することは出来ませんし、理論的なアプローチも「和声」という側面では箏曲や雅楽を自分で研究していくしかありません。

 

 

もちろんそれで私個人としては十分納得出来るのですが、耳や感覚だけで作るのが苦手で理論的な拠り所が欲しいという方にとっては素晴らしい本ではないかと思います。

 

 

 

著者の小山清茂氏は(もう一人の中西覚氏はご存命のようです)2009年に亡くなられた日本的な作風を西洋の器楽体系で表現した方で聴くとそのまま日本民謡・神楽・祭囃しをオーケストラでやっているような曲がたくさんあります。

 

 

分かりやすい意味での日本民謡の活用であり、タイトルもすべてがそうだという訳ではありませんが、【音詩「木曾路」】【田植うた】【管弦楽のための信濃囃子】のような日本的なタイトルが多いです。

 

 

ロシア五人と呼ばれる作曲家たちが一枚岩だったわけではありませんが、ドイツ・オーストリア圏の音楽の真似ではなく、ロシア的な音楽を指向したムソグルスキーたち、チェコ民謡を多用したドボルザーク、フィンランドらしさを求めたシベリウス、スペインらしさを表現したグラドナスやファリャ、ハンガリー民謡(だけではないですが)を多いに自分の作品に取り入れたバルトーク(コダーイも)のように、ドイツ・オーストリア圏の音楽を模倣するだけでなく、単位は国だったり個人だったりしますが、自分(たち)の音楽性を求めた作曲家という意味では、日本和声の著者の小山清茂氏も国民楽派に入れてもいいのかもと思います。

 

 

 

そういう意味ではドビュッシーやラヴェルもドイツ・オーストリア圏の影響から見事抜け出してフランスらしさを表現しているので、ドビュッシーやラヴェルを国民楽派とは言いませんが、ドイツやオーストリアの影響を脱して国単位での音楽性の表現という点で成功していると言えます。

 

 

クラシック音楽は古くはイタリア圏、バッハ以降はドイツ・オーストリア圏が長らく最強で、バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームスなど、クラシック音楽の中心地はドイツやオーストリアでした。音楽の都ウィーンというのは伊達ではなく、今に至るまでもの凄い影響力を持っています。

 

 

バッハやベートーヴェンをガン無視出来る演奏家や作曲家がどのくらいいるのかわかりませんが(日本にはいない気がしますが)、少なくとも私の回りにはバッハやベートーヴェンたちドイツ・オーストリア圏の作品を完全無視してきた人はいません(あくまでクラシックをやる人でという意味です)。

 

 

これは他国でも同じで、最初は模倣で良かったのかもしれませんが、段々とただ真似ているだけでは駄目だという意識が生まれて、それぞれの国の作曲家たちが自分の、あるいは自国のオリジナリティーを求め始めます。

 

 

 

 

武満徹氏の作品が私は大好きですが、ノヴェンバーステップスのような琵琶や尺八を使った誰にでも分かりやすい日本らしさ、露骨な日本らしさではなくって、もっと後期のクラシックのオーケストラの中で一般に用いられる楽器を使いつつも、本質的な意味において日本の無拍子や和声感を背景に作られている武満徹氏の音楽の方が個人的には好みです。

 

評価は個人差があるでしょうが、少なくともこれは西洋のあらゆる作曲家たちとの大きな差違と言えます。

 

ノヴェンバーステップスは単に日本の楽器を使うという単純な民族表現を越えた素晴らしい作品であることは理解しているつもりですが、日本らしさを求める音楽家たちがヴァイオリンやフルートとやギターや打楽器の代わりに三味線、箏、和太鼓、琵琶、尺八、笙、篳篥etc…などの和楽器使い(それ自体は別に何も悪くないですが)、それで「日本らしさを表現してま~す!」、みたいな安直なスタイルに永続性はないし、本質的な芸術の高度さや深みもないように私には思えます。

 

 

大抵そのような場合は和声(コード進行)やリズムや曲の構成は外国のスタイルそのままで、楽器だけを安直に日本のものに差し替えているだけだからです。

 

ギターを三味線に差し替えたり、フルートを龍笛に差し替えたり、ドラムセットを和太鼓に差し替えたりするなど、日本の楽器を使うこと自体は誰にでも出来るわけで、それ自体は何も特別ではなく、その部分は芸術性の高度さとはあまり関係がない気がします。武満徹氏は海外で評価が高いですが、表面的な意味ではなくて本質的な意味で日本的な作風が評価されているのではないかとも思います。

 

 

三味線やお琴や和太鼓を使ってクラシックやロックをやっても、曲のリズム、和声(コード進行)、楽器の用法、曲の構成はまんまドイツ・オーストリア圏だったり、アメリカやイギリスの洋楽の模倣だったら、それは本当の意味で日本らしいのか?ちょっと浅はかなんじゃないか?それに見世物以外の芸術性はあるのか?永続性はあるのか?と感じてしまうわけで、もっと根本的に本質的に深い意味において自分たちの音楽というものを考えて進歩する必要があり、それが叶えば例えオーケストラという西洋の演奏形態を使用しても十分に日本的な音楽性は表現出来るはずですし、現に武満徹氏はそれをやってのけています。

 

 

 

程度の差はありますが、ムソグルスキーやバルトークもそれに成功しており、それを「どうやって」やっているのか?に目下関心があります。

 

 


 

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例えばバルトークの「15のハンガリー農民歌」(Sz.71)の第1曲を見てみましょう。これはハンガリーの素朴で単純な5音音階で出来た短い民謡(オクターブで弾いているレレララレレー、ミーレドレドラー~→というフレーズ)にバルトークがオリジナルの和声を付けて自分の作品としているもので、作曲というよりは編曲的性質が強いハンガリー民謡の用法の一つですが、如何にも素朴な農民歌に、バルトークらしい和声が付けられています。興味があればアナリーゼしてみて下さい。バルトークの語法の理解の助けになります。

 

 

この曲の和声的な高度さという意味ではバルトークの作品の中では中の下くらいの難しさですが、ドイツ・オーストリア圏の音楽を背景にするのではなく、自国のハンガリーを背景にしつつオリジナリティーを獲得し始めている作品であり、聴いて如何にも民謡という感じはしません。

 

 

バルトークがもっと年を重ねて民族音楽が内包している和声やその他の特性が完全にバルトークの中に溶け込んでいくと、弦チェレやオケコンや2台のピアノと打楽器のためのソナタや後期の弦楽四重奏のような、聴いた感じは全然民族音楽らしさは欠片も感じないのに、その本質には民族音楽が背景にあるという作風になっていきます。

 

 

和声法確立以前のペロタンやジョスカンたちの作品が、長い年月を通してバロックや古典派や初期ロマン派たちの作曲家たちによって進歩してきた結果が、ブラームスやリヒャルト・シュトラウスやワーグナーたちの後期ロマン派の作風なわけですが、それなら同じようにハンガリー民謡が長い年月を掛けて進歩したら、なんらかの形を持っているはずであり、実際にそれをやっているのがバルトークであるというわけです。

 

 

もっともバルトークの場合はその「長い年月」を一気に進めてしまっているわけですが、土台をドイツ・オーストリア圏に求めていないという点においては多いに賛同出来ます。表現は乱暴かもしれませんが「オレはドイツ人じゃない、ハンガリー人だ。だから作曲においてハンガリーをバックボーンに置く」というのがバルトークの言い分であり、多くの国民楽派や近代フランスの作曲家の言い分でもあったと思います。

 

 

いつまでもドイツ人やオーストリア人のスタイルを真似て書くのは嫌だというのは、近代における世界各地の作曲家たちに潜在的にあった感情であり、その最もわかりやすい現れが国民楽派やバルトークやドビュッシーのような存在なのでしょう。

 

 

もしそれが出来るなら、私もドイツ人でもオーストリア人でもフランス人でもロシア人でもフィンランド人でもないわけですから、日本にバックボーンを置いてもいいわけです。

 

 

ただ私は別にどうしても日本にバックボーンをおきたいわけではなく、他人の真似というのが嫌になってきたので、何か自分の作品が作りたいと思いで色々見て回っている感じです。

 

 

仕事は別として、雅楽や祭り囃子のような露骨なわかりやす過ぎる日本民謡的な音楽を作るのは趣味ではありませんし、ドイツ・オーストリア、近代フランス、ロシア、スペイン、ハンガリー、チェコ、などの真似がしたいわけではありません。

 

 

それらを低いレベルではありますが真似することは出来ますし、楽譜をパラパラ見て和声や形式や展開などの構造をアナリーゼすることも、多くの音楽家の方が普通に出来るように可能ですが、それはちょっと勉強すれば誰にでも出来ることであって、特にどうということはありません。

 

それらはBGMのお仕事で純粋な職人的技術として役には立っていますが、言ってみればただの物真似であって、バッハでもベートーヴェンでもドビュッシーでもラヴェルでもバルトークでもブラームスでもショパンでもラフマニノフでも何でも良いですが、それらの影響から全然出ていないのが最近は嫌になってきました。

 

 

ブラームスがバッハやベートーヴェンをお手本にするのは素晴らしいと思いますが、私がバッハやベートーヴェンの真似をしても個人的にはなんか違う、と思ってしまうわけで、対象がドビュッシーやラヴェルでもラフマニノフやプロコフィエフでも、誰であっても、なんか違うと思ってしまいます。

 

 

私と同じ悩みを持って、首尾良くそれらを乗り越えた先人たちの軌跡を辿って研究したり、何処かにヒントは転がっていないかと彷徨っているわけですが、なかなかこれが楽しくもあり、難しくもあります。

 

 

手広く色々見て行くとためになることはかなりあって、自分の成長にも繋がっていくので、もっと色々と勉強してみたいと思います。

 

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今ちょうどレッスンで管弦楽法をやらせて頂いているのですが、DTMでオーケストレーションすると「どんな無茶苦茶なパートでも演奏出来る」のですが、それが逆に「オーケストラらしさ」を損なってしまうことがあったりして、それについて思うことを書いてみたいと思います。

 

 

○金管パートの書き換えについて

 


動画の14:00から

 

 

トランペットがいなくなる例

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」第1楽章 最後のトランペットのファンファーレから

 

 

動画の14:00から上の楽譜を見ながら聞いてみて下さい。

 

有名な英雄の第1楽章最後のファンファーレですが、赤い四角の「(Es管なので)ミ♭ーソミ♭ーシ♭ミ♭ソ」までは動画でも同じですが、楽譜ではその後の青い四角のシ♭からは楽譜ではファンファーレを止めてひたすらシ♭を付点2分音符で吹き続けています。

 

 

しかし動画ではその後のトランペットは楽譜に書いていない「ファーラ♭ファーシ♭ファラ♭シ♭シ♭ー」と吹いています。

 

緑の四角の旋律がそうですが(木管ではスピード感を出すために一部8分連打にしてあります)、木管群とユニゾンして高らかに吹き上げるべきこの部分はなぜ楽譜では、途中でトランペットがユニゾンを止めてしまうのかというと、単純に当時のトランペットではこれが吹けなかったからです。

 

 

…というのはオーケストレーションを学んだ方には周知の事実であり、こういった箇所はトランペットやホルンなどの金管楽器たくさんあるので、別段珍しくもないですが、当時のトランペットは(基本的に)自然倍音列しか出せなかったため、現代から見ると不便な部分がたくさんあるものの、それがいわゆる古典のオーケストラらしさを出していることも多々あります。

 

 

動画でベートーヴェンの楽譜通り吹いていないのは、指揮者が「もしベートーヴェンが生きていたら多分こういう風に楽譜を書いただろう」と勝手に推測して書き換えており、こういった(余計な?)配慮はベートーヴェンの交響曲のあらゆる箇所に見られます。ワーグナーワインガルトナーがこういった修正を行っているのは有名です。

 

 

これはなかなか難しい問題で、楽譜通り演奏しても良いような気もしますし、現代の楽器の性能に合わせて書き換えても良いような気もしますので個人の好みの問題かもしれません。

 

○楽器の性能とオーケストレーション

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自然トランペット(バルブがない)

 

 

現代では当たり前のバルブ付きトランペットやホルンですが、シューベルトあたり(1800年代初頭)まではバルブ式のトランペットはなく、バルブ式のトランペットが出てからも作曲家がそれに慣れるまで、あるいは安心して使うようになるまでにはかなり時間が掛かりました。

 

 

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自然ホルン(巻いただけ)

 

ベートーヴェンの第9の初演が1824年ですが、ベートーヴェンは当時普及し始めていたバルブの発明によって金管楽器でも半音階が出せるようになっていたのを知っていたはずですが、結局使うことはありませんでした。

 

 

耳が聞こえないためこの新製品を聴いて判断することが出来なかったというのもあったでしょうし、新しく出来たばかりの楽器を試すよりも、使い慣れたもので作曲した方が良いというのもあったと思います。

 

 

しかしその6年後(ベートーベンの死後3年)の1830年になるとベルリオーズがバルブ式のコルネットを用いた幻想交響曲を書いており、以後トランペットやホルンによる半音階を用いたいわゆる現代っぽい金管楽器の用法が普及していきます。

 


52:30~あたりから金管楽器が活躍

 

 

当時出始めたばかりのバルブ付きのコルネットを用いたベルリオーズのオーケストレーション(ベルを使ったりする手法も)はこの時代の人たちにとってはかなり画期的だったのではないかと思います。

 

 

楽器の性能による不便さを解消するために、様々な改良が施されて現在にいたるわけですが、逆にその「不便さそのもの」と「不便さの中で作曲家たちが行ってきた創意工夫」がオーケストラらしさを出しているようにも思えます。

 

 

例えば自然倍音列しか出せなかった時代のトランペットにおいて、ハイドンやモーツァルトやベートーヴェンのオーケストラを聞くとトランペットはほとんどティンパニ同様に使われることがあります。特にハイドンのいくつかの曲ではトランペットとティンパニはセットでトゥッティーの部分で登場します。

 

 

動画の19:50秒から

 

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 ハイドン交響曲94番第4楽章38小節目

 

 

ハイドンの時代のトランペットは自由に旋律を吹けなかったため、赤い四角の部分のようにフォルテの盛り上がるところで、オーケストラ全体の厚みを力強さを補強するために使われています。

 

 

力強く輝かしい音は出せても、現代のように自由にフレーズを吹くことが出来ないという制限の中で生まれた使い道ですが、これが逆に一つの個性になっているようにも思えます。

 

 

近現代のオーケストラ曲のようにトランペットが自由な旋律を吹くようになるのはもっとずっと後の時代です。作曲家はこういった不便さの中でなんとかもっとならないだろうかとオーケストレーションを工夫し、あるいは楽器製造職人に注文を出し、徐々に進歩して現代のようになっていきますが、その時代その時代の個性を明確に感じ取るためには、楽譜のまま演奏しても良いような気もしますし、私たちが勉強するときもその点を無視することは出来ません。

 

 

○音域の拡大

音域についても同じで、古典時代よりも近代現代のほうがずっと広い音域を用いるようになっています。例えばベートーヴェンはかなり高い音に関して用心深く、「なぜそこまでする?」と現代人の私から見ると疑問に感じるほど石橋を叩いて結局渡っていないような箇所がいくつもあります。

 

 

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上の画像はベートーヴェンの交響曲第9番1楽章ですが、フルートのトップノートである「ラーソ#ソファミレ~」というのが明らかにメインの旋律のはずで、フルートとオーボエはともにオクターブ奏法になっています。

 

 

しかしヴァイオリンⅠはなぜか「ラーソ#ソファ」までを1オクターブ下で弾いて、「ミ」以降で1オクターブ上にジャンプしています。普通にフルートの高い音とユニゾンすればいいじゃないか?と思うのが現代人ですし、DTMならおそらく誰もがそうするでしょうが、ベートーヴェンはかなり高い音に対して用心深く、私の推測ですが、少なくとも音域に関しては難しい音を避け、(当時の水準から見て)失敗しそうな確実に出る音を選ぶ傾向にあるように感じています。

 

 

 

ベートーヴェンの時代と現代ではヴァイオリンの構造は変わっていないにも関わらず、現代人だったら軽々と弾ける(吹ける)ような音を明らかに避けている箇所はたくさんあり、「なんで?絶対こっちのほうがいいじゃん」と思ったりもしますが、「当時の演奏家水準・慣例・常識では不可能だった」あるいは「ベートーヴェンが失敗する可能性があるなら確実に出せる音を書くという保険を掛けていた」と思われる部分がたくさんあります。

 

だからこそ冒頭の英雄のファンファーレのように現代人が楽譜を書き換えて演奏するというある種余計なお世話というか、然るべき親切心が生まれたりもするわけです。

 

ピアノの鍵盤数に関しても似たような話はありますが、要するにCDを聴いていると「あれ?楽譜と違わない?」と思う箇所がいくつもあり、「本当は○○したいけれど、楽器の性能や演奏者の水準で出来ない時代だった」ということを飲み込んだ上で私たちは彼らのスコアを見る必要がある部分がたくさんあります。

 

楽器の性能や演奏者のレベルが向上するにつれて、それまで不可能だったことが可能になり、作曲家が書くフレーズも当然変化していったわけですが、逆にオーケストレーションの進歩の歴史を知ることで、古い技法を自分のオーケストレーションに上手く組み入れている作曲家もいます。

 

 

ブラームスはバルブ式のホルンがある時代に生まれているのにも拘わらず、自然倍音列しか出せない自然ホルンっぽいフレーズを書くことが多かったですし、ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌが自然ホルンが指定されているのも有名です。

 

現代のDTMならなんでもありですが、なんでもありで作ってしまうと逆に「らしさ」がなくなってしまうこともあり、初学者の方はこの辺りの問題で悩まれる方がいらっしゃるかもしれません。

 

 

いずれにしてもたくさんスコアを見ていくと疑問に思う箇所が出てきたり、興味を引かれた部分を細かく分析・検討してみたり、あるいは真似て自分でも作ってみるということをしている内に段々と自分なりのやり方というものが生まれて来ます。

 

こういったことを学んでいけば、オーケストレーションをまた違った角度から見ることが出来ますし、勉強するときの取っ掛かりにもなります。

 

なんでも出来るDTMでのオーケストレーションですが、なんでも出来るからこそ、一通り全体を見渡した上でオーケストレーションに取り組むことで良い意味での下敷きが出来ますので、是非色々調べてみて下さい。

 

 

この記事がオーケストレーションを学んでいる方のお役に立てば幸いです。

 


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バッハの対位法を学ぶ③

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前回のからの続きです。

バッハの対位法を学ぶ①
バッハの対位法を学ぶ②

 

4.バッハの和声法を把握する

バッハの対位法は「和声的対位法」とも言うべき、和声法を土台にした声部書法です。

あまり使われない言葉ですが、逆に「対位的和声法」と呼んでも良いかもしれません。バッハの作品は和声法と対位法がミックスされていて、2つを分けて考えるとバッハの作風が成立しないため、旋律の作り方だけを学んで和声の側面を無視するとバッハっぽい作風にはなってきません。

 

バッハの和声法への明確な理解がないまま、対位法的な側面だけを把握しても片手落ちです。

 

前回の記事で無伴奏チェロ組曲のアルマンドの前半を非和声音の分析のために、和声分析も行いましが、もっとたくさんのバッハの作品の和声分析を行う必要があります。

 

現代風にいうならばバッハ的なコード進行がどんなものかを研究し、その土台の上でバッハの旋律作法で作れば、少なからず近づいてくるということです。バッハの対位法的側面と和声法的側面の両方のアプローチが必要です。

 

 

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無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(BWV1002)アルマンドの後のドゥーブル

 

こんな感じでアナリーゼを行います。いつものヤツです。

まずは無伴奏を作るのが通過点ですので、無伴奏曲のアナリーゼをお勧めしますが、今回はバッハ風の和声法の特徴を掴むのが目的ですので、それ以外も加えて少しやってみると良いかもしれません。

 

僅か数小節ですが、バッハの典型的な和声法の特徴を垣間見ることが出来ます。1小節目のⅤ9では根省になっていますが、バッハの曲では基本形でⅤ9が出てくるとはありません。経過音・刺繍音など一時的な通り道としてⅤ9の時に根音が出てくることはあっても、完全な和音の形態としては見たことがありません。

 

またⅡーⅤーⅠはバッハの最も典型的な和声進行であり、和声進行のほとんど全部がドミナントモーションによって形作られています。転調部分を除き、属7の和音は正規の終止か偽終止以外は行われないのも特徴です。

 

転調領域は近親調が基本であり、「主調」→「平行長調」→「下属調」→「主調」というパターンでⅡーⅤ-Ⅰがたくさん登場しています。例外はありますが、基本的なカデンツが数珠繋ぎで使われています。

 

まだまだほんの一部で言い出したら膨大な量になってしまいますが、このように気付いた特徴を自分なりの言葉で箇条書きにしていきます。

 

加えてお勧めなのが全終止、半終止などのお決まりのフレーズを書き出していくのも良いと思います。

 

・属7の和音は正規のドミナントモーションか偽終止。それ以外は転調でしか出てこない。
・Ⅰ-Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ、またはⅠ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰが基本。
・D→Sの進行としてⅤの後ろにⅣの基本形はないが、Ⅳの一転はありえる。
・まず一転から入り、次に基本形に入ることが多い。
・副属7の多用(コードスケールは長調ではミクソ短調ではHMP5Bかミクソ♭6)
・根音のある形で属9の和音は使われない。
・逆に根音は除いた短属9の和音はバッハのトレードマークと言えるほど多用される。
・5度または2度の反復進行が多用される。
・転調領域は近親調
・etc…。

 

完全な単旋律の無伴奏楽曲であれ、重音奏法の無伴奏楽曲であれ、あるいは鍵盤、管弦楽、カンタータ、オルガンetc…など本質的にはそれらに違いはありませんが、「どういう和声進行なのか?」と「ある和声に対してどういう風に非和声音が用いられているか?」をなるべくたくさん、たくさんというよりは自分がバッハのやり方をなんとなくでも理解出来るまで続けます。やっているうちに気づくことがたくさんあるでしょう。

 

 

アナリーゼをしっかり行うためにはある程度の音楽の知識が必要で、日本の和声~理論と実習の赤・黄・青の全3巻が終了している程度の知識が必要になるかもしれません。必ずしも教科書が和声~理論と実習である必要はなく、それと同レベルの理解度が得られるならば何でも良いと思いますが、いくら和声法がシンプルなバッハとは言え、どうしても土台となる知識が必要になってきます。

 

 

ドビュッシーやラヴェルあたりになると古典和声のみでは把握出来ない音が増えてくるため、むしろポピュラー理論で解釈したほうが分かりやすい場合もあるのですが、バッハはいわゆる教科書的な和声要素が強いので(バッハをモデルに和声の教科書が書かれる)普通に和声学の各種課題が解けるレベルでないと厳しいかもしれません。

 

 

また和声分析のついでに前回の記事で書かれていたような非和声音の分析も同時にしていくと良いと思います。和声が把握出来る=非和声音が即座にわかるということなので、バッハの和声が普通にわかる人にとっては非和声音の分析はあまりに単純過ぎるかもしれませんが、学術的なアプローチとは別にたくさん弾いて体でなんとなくフレーズの作られ方を覚えるのも大切です。

 

 

まずは単旋律を作るのを第一目標としているので、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータBWV1001-1006」「無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013」「無伴奏チェロ組曲BWV1007-1012」が最も参考になりますが、あくまで第一段階として単旋律の習得が目的なので、上記の組曲中のヴァイオリンやチェロの重音奏法が多い曲は旋律作法の勉強教材としては不適切です。

 

 

BWV1002-2

重音奏法たっぷりな曲がとりあえず除外します。

 

 

管弦楽法の勉強としてヴァイオリンやチェロの奏法の習得という意味では勉強になりますが、それはバッハの旋律作法や和声法、対位法の習得とはまた別の問題となります。

 

バッハの和声法について書かれた本を資料にするのも良いですが、どれも少量で断片的であり、自分の経験を通して得たものには及びません。無伴奏フルートのためのパルティータは短いですし、これくらいは最低限全部やると良いかもしれません。レッスンでもこの曲でやっています。

 

 

やればやるほど理解は深まりますので、満足するまで片っ端から楽譜を読んでいきましょう。

なんとなく掴めてきたら「非和声音の使い方」で得た知識と今回の「和声分析」で得た知識を合わせてオリジナルで作ってみます。次は実際に作ってみたいと思います。

 



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バッハの対位法を学ぶ④

テーマ:

前回のからの続きです。

バッハの対位法を学ぶ①
バッハの対位法を学ぶ②
バッハの対位法を学ぶ③


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①~③までで甚だ不十分ではありますが、バッハの無伴奏に和声的特徴と旋律分析を行いましたので、今度は真似て作ってみるための考え方、というかバッハがどういう考えを持って旋律を作っているのか?を私なりに考察し、それに基づいてバッハ風の旋律を作ってみます。

 

 

間が空いてしまったので、趣旨だけもう一度述べますとバッハの作風を学ぶのにいきなり多声部書法は多くの方にとってハードルが高いので、まずは無伴奏の単旋律のみを研究し、単旋律でバッハらしい感じが出せるようになってから2声、3声とステップアップしていこうという感じです。

 

 

バッハには無伴奏の曲がたくさんありますが、旋律が和声を内包しているような構造である場合が多いため(すべてではありません)彼の場合は単旋律から学ぶという手法が成立します。

 

逆に言えば彼の無伴奏楽曲のように単旋律でバッハ風な感じを出せないのであれば、2声、3声と声部が増えてもバッハらしい感じにするのは難しくなります。

1声で出来ないことは2声、3声でも出来ません。

 

 

前提条件として①バッハ風の和声進行を模倣できる、②バッハ風の旋律作法を説明出来る、の2点がポイントになります。本当はリズムの問題や多声楽曲になった場合にほかの声部との関係性も視野にいれないといけないのですが、今回は無伴奏がメインですので、①と②だけ出来ていればOKです。

 

 

○バッハの無伴奏旋律の発想を考える

 

実際に無伴奏を作る上でのヒントを、彼自身の曲から得てみたいと思います。

 

それがわかれば私たちがバッハ風な曲を作るときに役に立ちますし、バッハ以外の誰かの旋律構造やクセを物真似するときのヒントにもなります。

 

 

① 単純なスケール的な動き

01

単にスケールを上下するタイプ

 

 

最も単純なタイプは単にスケールを上がったり、下がったりするものです。これに関しては説明の必要がないと思いますが、スケールに応じて旋律を作るのはいわゆるポップスやロックの作り方と似ています。これだけだと無伴奏は成立しませんので、もっと別の方法が必要になってきます。

 

 

② 一声部でも実は多声部構造

01

上がオリジナル、下が一声部を色分けしたもの。

 

 

この例くらい音域が離れているとわかりやすいですが、最初の「ドラソーシー」はオクターブ以上の跳躍が目立ちます。

 

フルートの最低のオクターブと中域の音色の違いを活用してより2声部っぽい感じになっていますが、赤色が上声部、青色が下声部になっています。1声部に見えて実は2声部書法になっています。

 

 

 

 

02

上の譜例を2声部書法に書き直したもの

 

 

赤と青で分類された音符をちゃんとした2声部の書法で書き直してみました。

分解されたフレーズを見てみると、和声構造もよりハッキリと見えてきます。

 

こうして見ると完全に2声部書法であることがわかりますし、むしろ最初からこういう曲だったようにも見えます。ピアノで弾くなら明らかに両手を使って弾くフレーズです。

 

おそらくバッハの頭の中にはこのような2声部構造があり、それをフルートの1声部で楽譜を書いているので、和声的には2声楽曲ということになります。

 

 

自分で作るときはこのように先に2声部で和声やリズムが充実した譜面を考えてから、それを単旋律に直すという行程を踏めばいいわけです。

 

もう一つ実例を見てみましょう。

 

01

オリジナルの1声部

 

 

01

上の譜例を2声部書法に書き直したもの

 

 

上の譜面を見ていると、明らかに2声部構造が見えてきます。バッハの鍵盤楽曲に如何にもありそうなフレーズに見えますが、時にはどういう風に分けたら良いのか迷うような譜例にも出会います。

 

どっちで分けても間違いではない場合は、それまでのバッハの譜面を見て「おそらくバッハならこうするだろう」という考えてに基づいて行うしかありません。

 

よく作曲家が死に際に作っていた曲が未完成のまま残されたときに、第3者が補筆して完成させることがありますが、これを行うためにはその作曲家の書法をよく把握していないと不可能です。

 

バッハの曲にたくさん触れているうちに段々とわかってくるものですが、こればかりはたくさん曲をやっていくしかありません。

 

 

③3声部(4声部)の和音構造が分解されたフレーズ

 

狭い音域で動いているフレーズにも②と似たような考えかたが通用します。

 

②との違いは明確に各声部が独立しているというよりは和声学の赤本・黄本で出てきそうな単純な和音の連結ように見える譜面が正体になっている点です。

 

 

01

 

 

こういったフレーズは単旋律でも分散和音+僅かな非和声音で作られているので旋律を見ただけで和声構造がわかってしまいます。以下書き出したものを見てみましょう。

 

 

 

001

 

上がオリジナル、下が和音構造を書き直したものです。

 

下の和音連結は和声学の初歩を理解していれば問題なく理解出来るほど単純なものです。

 

おそらくはバッハの頭の中に下の譜例のような和音連結があり、それを分散和音化しつつ、もっと旋律的にするために多少の非和声音を加えているように見えます。

 

 

一応「旋律」ではありますが、こういった旋律の作り方はポップスやロックとは全く違うアプローチなので、②もそうですが、普通に旋律を作っていくだけではバッハっぽくはなってきません。

 

あくまでバロック時代の和声の理解を土台にした上で作られていることがわかります。

 

 

自分で作るときは逆のことをすれば良いので、先に2~4声のバロック風の和音連結を作り、それを分散和音+多少のバッハが使いそうな非和声音で装飾していけば良いわけです。

 

 

古典の曲もそうですが、こういった手法は旋律の美しさ云々よりも、元の和声構造がちゃんと出来ていないとカッコ良くなってきません。

 

家の骨組みがしっかりしていないと、いくら外面を装飾しても駄目なのと同じです。和声が土台なので「和声をしっかり作る」必要があります。

 

個人的に生徒さんをレッスンをしていて思うのが、この「和声をしっかり作る」というのが理解されにくく、どうしてもポップスやロックのように旋律が主体で作ろうとするため、上手く行かないケースが多いことです。

 

 

バッハの曲はそれが華麗に動いている曲でも大抵の場合和声を単純化したブロック構造を書き出すことが出来ますが、その単純化されたブロック構造だけを聞いても、原曲のイメージは十分に伝わってきます。

 

しかしポップスやロックのようにコード進行が1小節とか半小節で変わり、その上で旋律が自由に動くという方法の場合は骨組みとなっている構造だけを取り出すと、作品の本質が損なわれてしまうことが多いです。

 

それは和声がメインではなく、旋律とコード進行が主体になっているからです。この辺りが掴めればバロック、古典はすんなり行けるはずです。

 

 

今回はバッハに焦点を当てていますが、言うまでもなくバッハ風の曲を作るにはバロック期の和声に対する理解がどうしても必要になります。

 

バロック和声は後の時代のものに比べればかなり単純ではありますし、こういったことがわかってしまえば、バッハ風になるか?高いクオリティーになるか?は別問題として取りあえず自分が作る時の取っ掛かりにはなるはずです。

 

 

バッハ風(バロック風)にしたければ特に和声~理論と実習に書いてあるような一般的な和声法への理解が大切になり、反復進行や保属音やバッハ風の構成音の転位などを身につけておくと役に立ちます(実際たくさん出てきます)。

 

 

半分アナリーゼの記事みたいになっていますが、誰に寄らず作曲で大切(と私が勝手に思っている)なのは、誰かの曲に触れて、その特徴を掴み、自分でも応用出来るようにすることです。

 

 

私はよく疲れた時に寝転がってピアノや弦楽四重奏や管弦楽のスコアなどを読んでいますが、それがバッハであれ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、リスト、ブラームス、ブルックナー、ドビュッシー、ラヴェル、シェーンベルク、バルトークなど誰でも構いませんが、スコアを読み終わって「ただそれだけで終わり」ではなくて、常にどういう書法で?何を考えて?どういう意図で?作っているのかを考えながら見る癖が付いています。

 

 

言い換えれば、内容を他人に説明したり、自分でも作ってみたり出来るようになりたいという観点から見ているということですが、こうやって見ていけばどんどん自分の作曲の引き出しが増えていきますので、BGMを作るときにも役だっています。

 

 

特に大切に感じるのが、彼らが一体何を考えているのか?でいわゆる大作曲家と呼ばれるような人たちはほぼすべて作曲に対して深い考えを持っており、表面的な技巧よりも、そのもっと奥に流れている思想、想念、統一的な発想といった作曲の元になっている部分に関心を感じます。

 

 

バッハに対するアプローチだけというよりは、相手がバッハ以外の誰であってもちゃんとその書法を自分で理解出来るようになるということが大切なので、バッハに限らず誰の何の曲を見てもアナリーゼ出来て、自分でも再現出来るようになると、自分で作曲するときの単に技術面のみの話ではありますが、役に立ったりします。

 

 

作曲をなさっている方であれば、多かれ少なかれ第三者の曲を聴いたり、分析したり、参考にしたりすることがあると思いますが、こういった記事が誰かのお役に立てれば嬉しいです。

 

 

ここまで①~④まで書いてみましたが、次回はこれらを応用して実際にバッハ風のフレーズを作ってみたいと思います。

 

 

最後までお読み頂き有り難う御座いました。

 

 



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