ずっと昔にSPL Vitalizer mk-2の使い方の記事を書きましたが、
アナログ感の付加やブラッシュアップに結構使えるプラグインなので
改めてもう少し掘り下げてみたいと思います。


変則的・複合的なプラグインではありますが、
基本コンセプトとしてはイコライザーと考えて良いと思います。

Stereo Vitalizer Mk2-T

Model 9530 Tube Vitalizer


現行のVitalizerは実機に2タイプありますが、
プラグイン化されているのは廉価版の1Uの方です。


自宅では2UのModel 9530 Tube Vitalizerを使っていますが、
こちらよりは設定できるパラメーターの数は減るものの、
プラグインも基本コンセプトは全く同じで出来ています。


今回はスペクトラムに焦点を当ててみていきます。

デフォルト(クリックで拡大)

デフォルトの画像です。
プラグインの目盛りとスペクトラムを対応させてみて下さい。

通すだけでは何も変化はありません。


○MID-HI TUNEとPROCESSとハイシェルフと
60Hz付近の低音コントロール

基本はMID-HI TUNEとPROCESSで音作りを行っていきます。

MID-HI TUNE「3kHz」 PROCESS「5」(クリックで拡大)

MID-HI TUNEを3kHz~8kHzあたりにして
PROCESSを回していく使い方を私はよく行いますが、
60Hz辺りが3dBカットされ、
画像では3kHzからシェルビングでハイがブーストされているのがわかります。

MID-HI TUNEはハイのシェルビングを行う周波数を何処にするのか?を
決めるパラメーターと考えてOKです。

60kHzがへこむのはMID-HI TUNEを何kHzに設定しても変わりません。


マスタリングでこの設定のまま使うと低音を支えるベースの基音や
キックの成分が減っていくため重心が上がっていきます。

微調整の仕方は後述しています。

MID-HI TUNE「1,1kHz」 PROCESS「18」(クリックで拡大)

わかりやすくするために極端な設定にしていますが、
MID-HI TUNEを1,1kHzに下げると
シェルビングの開始周波数も1.1kHzまで下がっています。

60kHzのカット部分は周波数に変更はありません。

PROCESSのパラメーターを「18」と極端ですが、
これはそのままMID-HI TUNEで設定した周波数からの
ハイシェルビングと60Hzのカットをどれくらい強烈に
行うかというパラメーターになります。

ハイシェルビングと60kHzのカットは2つセットで連動します。


MID-HI TUNE「8kHz」 PROCESS「18」(クリックで拡大)

MID-HI TUNEを8kHzに上げると
シェルビングのスタート周波数も当然8kHzになりますが、
周波数が上に上がれば上がるほど単なるシェルビングではなく、
MID-HI TUNEで設定した周波数より低い周波数が
広めのQ幅でカットされているのがわかります。

画像では1kHz~8kHzあたりまで広めのQ幅で
やんわりカットされています。


普通のイコライザーのように杓子定規に動くのではなく
スペクトラムカーブの動きはやや変則的で
このあたりがsplの宣伝文句である
「音響心理学と聴力検査の原理を活用したプロセッサー」
ということなのでしょうか。

音響学的にベストな音像をsplなり研究した結果を
簡易的に使うことの出来るプラグインという感じです。

基本はハイファイなサウンドになっていきます。


○LC-EQ とINTESITYはハイシェルフ

LC-EQ 「HIGH」  INTENSITY「MAX」(クリックで拡大)

LC-EQは高域のブーストの位置(周波数指定ではありません)を決め、
INTENSITYはブースト具合を決めます。

LC-EQの値がHIGHだと2.7kHzあたりからシェルビングでブーストし、
2kHzあたりが少しカットされています。

LC-EQ 「LOW」  INTENSITY「MAX」(クリックで拡大)

LC-EQの値がLOWだとだと1.9kHzあたりからシェルビングでブーストが開始しています。
(その少し下の周波数はへこんでいます)

つまりLC-EQはおおよそ1.9kHz~2.7kHzからの
シェルビングの開始位置を決めるパラメーターになるわけですが、
MID-HI TUNEもハイのシェルビングを決めるパラメーターですので、
MID-HI TUNEをを補強するような形で使い事が多いです。


○BASSは低音作り

MID-HI TUNE「3kHz」 PROCESS「4」(クリックで拡大)

前述の通り60Hz付近の低音は
MID-HI TUNE とPROCESSの値によって連動しています。

BASSだけを動かしても意味はありません。

MID-HI TUNE とPROCESSによって作られた60Hzの
イコライジングカーブに対して低域をよりシャープにするか
モワっととブヨブヨにするかを決めるのがBASSのパラメーターです。

絵柄のイメージでなんとなくわかりますが、
■側に回すと低域がシャーブに、●側に回すと丸みを帯びてきます。


具体的には以下のようになります。

(クリックで拡大)


●側に回すと45Hzあたりがブーストされているのがわかります。
このあたりはキックよりももう少し下の可聴周波数ギリギリのちょっと上あたりなので
超低音がモワっとします。

よく言えば低域がふくよか、悪く言えば低域がだらしないという感じでしょうか。

■側に回すと45Hzあたりが逆にカットされて、
超低域がスッキリして、その上にあるキックやベースがより
シャープな感じになっていきます。

BASSのパラメーターを弄らなくても
60Hz付近は少しカットされてしまうので
この辺りを触りたくない場合は
●側に時計の10時半くらいに回すと
多少の変化はありますがなんとかバランスがとれます。

(クリックで拡大)

あるいは■側に最大してわりとフラット気味になります。

(クリックで拡大)

この設定ならまぁ少しくらい動いてもいいか…という感じです。
MID-HI TUNE とPROCESSを使いたいけれど
低域を完全にフラットにしたり、低域に影響を与えないようにすることは
Vitalizerでは出来ません。

低域を全くいじらずに高域だけの音作りをしたいなら
LC-EQ とINTENSITYで行います。


しかしミックスで使う場合はそれほど問題にはならず、
●と■を調整して「これでいいかな?」という風に耳で調整していけば
多少ローが弄られてもVitalizerの持つ効果と差し引くと
十分にプラスになります。



○DRIVEは効果の強さ

MID-HI TUNE「8kHz」 PROCESS「18」+「DRIVE-20」


MID-HI TUNE「8kHz」 PROCESS「18」+「DRIVE+6」

DRIVEのパラメーターは上の2つの画像を見比べてわかる通り、
その設定の効果をどれだけ強調するか?です。

MID-HI TUNE、 PROCESS、LC-EQ、INTENSITYを動かしても
DRIVEを最低の-20にしてしまうと
ほぼバイパスと変わらなくなります。


MID-HI TUNE、 PROCESS、LC-EQ、INTENSITYで作った設定を
微調整するのに使えます。

実機のVitalizerは真空管機材ですし、
DRIVEというと歪みを付加するというイメージですが、
このプラグインのVitalizerにおけるDRIVEのつまみは
純粋にEQカーブのコントロールのみのようです。

1kHzのサイン波にDRIVEを最大にした倍音付加の画像


VitalizerのDRIVEを最大にして1kHzのサイン波を通してみましたが、
基本的に倍音の付加がないことがわかります。


また述べていませんが、ステレオエキスパンダーも付いています。


○まとめ

非常に変則的ではありますが、
MID-HI TUNE とPROCESSによって中高域と同時に低域も作るのが
Vitalizerのコンセプトなので、
もの凄い不自由なイコライザーだけれども
型に嵌れば凄く良いイコライザーという風にとらえても良いかもしれません。

ミックスの中で似たような処理を行うことは多いので、
その代替えとして使うことも出来なくはありません。

しかし現実には単純なイコライザーというよりは
音作りに使えるエフェクターという位置づけになっています。


基本的に細かい周波数設定をしたりするのではなく音をハイファイにしたり、
マイクでレコーディングしたような空気感やアナログ感、
奥行きなどが生まれる効果を求めて使うことが多いので、
イコライザー○○Hzを○dBブーストしたい」というときは
普通にイコライザーを使ったほうが便利です。


また単にスペクトラムだけに注目して記事を書いていますが、
公式に書いてあるようにマスキングされた音を取り戻したり、
奥行きを出す効果はスペクトラムには現れない処理をしているということなので
アナライザーには映らない部分もたくさんあるのでしょう。

複雑なアルゴリズムが組まれているはずです。


ハードウェアのModel 9530 Tube Vitalizerの方は
高級機を通したときのような立体感・空気感・奥行きみたいなものが
出るのが顕著にわかりますので、
周波数スペクトラムだけがすべてではなく、
むしろトラックに立体感を出したり、ハイファイにするために
ミックスやマスタリングで使うのが私個人の用法です。


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