ミックスやマスタリングをしていて、
「あれ?なんか音がおかしいな?」とか
「なんかすごい音が悪くなった」とか
「音が痩せて細くなった」いうような経験はないでしょうか?


レッスンで生徒さんの曲を添削するときに
アナライザープラグインを見ながら聴かせて頂くことが多いのだが
LRの位相が打ち消しあって音が悪くなってしまっている方がたまにいるので
(Correlation Meterが極端にマイナス側に針が触れている)
少しここに位相のことを書いておきたいと思います。


Correlation Meterに関して理解を持つために、
ますはミックスにおける位相の簡単な説明を見てみます。



スネアのトップマイクとボトムマイクの位相関係。


上の画像はスネアのトップマイクとボトムマイクの位相関係です。
昨今のドラム音源は複数のマイキングによる
被りの音までしっかりある非常にリアルなドラム音源が増えてきました。


私はToontrackのSuperior Drummerを使っているけれど、
スネアの音にマイクが2つあったり、
キックの音にマイクが3つあったりする。


このとき、ただ書き出すだけなら問題は起こらないけれど、
実際の生ドラム収録だけでなく
DTMでミックスしているときもプラグインのレイテンシーの問題で
例えばトップとボトムのそれぞれのスネアトラックに
異なるプラグイン処理を行うとレイテンシーのせいで
位相が反転するような状態になってしまうことがある。



赤い線と青い線はわかりやすく波形の動きを書き出したものだけれど、
トップマイクのスネアが下がるときに
ボトムマイクのスネアが上がるような波形だと
互いに打ち消し合って音が痩せてしまう。


完全に同じ波形を位相反転させると音は綺麗に消えるけれど、
実際の曲では中途半端に打ち消し合うような
音のぶつかりが出来ることがほとんどで、
その結果「音が悪くなる」「音が痩せる」「音が変になる」などのような
印象を与える結果になってしまう。


これを避ける方法はとても簡単で、
波形をサンプル単位で僅かにずらすか、
プラグインの位相反転スイッチを使えば解決できる。


WAVES Q1の位相反転スイッチ

WAVES API560の位相反転スイッチ

プラグインに位相反転スイッチが付いていれば
そのプラグインをインサートして反転させてしまうのが一番楽です。


DAWの機能を使ったり、波形をズラすのもありだけれど、
ミックス中に途中で「やっぱりこれ止めよう」となったときに
原本の波形を書き換えたり、ズラしてしまうと
面倒なのでプラグインを使うのが一番てっとり早い。


この手のことはよくDTM系の本に掲載されているので
ご存知の方も多いはず。


要するに位相の反転した波形が同時になると
互いに打ち消し合って音が悪くなるというのがポイントなのだ。



次に本題のCorrelation Meterだけれど、
出来上がった2mixのLとRの信号にも
似たような問題が起こることがある。


これを視覚的に見ることができるのがCorrelation Meterで
DAWに最初からついていることもあるし、
アナライザー系のプラグインにも搭載されていることが多い。


Correlation Meterは簡単にいうと
2mixのLRの音の位相の相互関係を眼で見れるプラグインです。



Vienna suite Goniometer

Voxengo SPAN


logic付属


IK Multimedia T-racks3のメーター部分



個人的に作業でよく使うのはViennaのGoniometerと
Voxengo SPAN plusだけれど、
スペクトラムやステレオの広がりと同時に
Correlation Meterが見れる。


「プラス1 ~ ゼロ ~ マイナス1」という振れ幅なのだけれど、
プラス方向に動くとモノラルっぽい2mixということになり、
ゼロ(中央)だとステレオ的な2mixということになる。


マイナス側に触れるのは決して悪いことではないけれど、
これはLとRでそれぞれ位相が打ち消しあっていることを表しているので
メーターを見るまでもなく聴けば音が悪くなっているのがわかるはず。


楽器の数が少ないBGM系の楽曲だと
瞬間的にマイナス側に触れることがあるけれど、
常時マイナス側に触れるようなことは普通はないはず。


もしあったらそれはミックスで余程変な処理をしているか、
生レコーディングなら位相が打ち消し合ったまま書き出して
音が悪くなってしまっていることを意味している。


2mixでは色々なケースがあるけれど、
特にステレオイメージャー系のプラグインの使いすぎて
このような状態になってしまうことが多い。


出来上がった楽曲のLとRの信号の位相が
互いに打ち消されて音がおかしくなっていると
ずっと左側(マイナス側)に触れっぱなしだったりするので、
生徒さんに説明するときに楽ちんなのでよく持ち出している。


自分の作業では音がおかしいというか、悪くなっている時は
メーターを見るまでもないのだけれど、
レッスンの添削で生徒さんにそれを言葉だけで伝えるのは難しいので、
このようにメーターの数字で表してもらうと非常に理解がスムーズで助かる。


自分の曲ではまずCorrelation Meterをチェックしながらやることはないが、
ヒット曲のCorrelation Meterの動きを観察して
自分でマスタリングするときの参考にすることはよくある。


一例として最近個人的に作曲・編曲・ミックスをチマチマ分析している
ラブライブ!の「No brand girls」と挙げてみたい。




No brand girlsは非常に音圧が出ている曲だけれど、
Correlation Meterを曲を聴きながら観察していると
楽器が出揃う部分では
大体プラス0.5~0.7くらいの間を行ったり来たりしている。



No brand girlsのCorrelation Meterのスクリーンショット。


上の画像はサビの「壁は(ハイ!ハイ!ハイ!)壊せるものさ~」あたりの
メーターの動きのスクリーンショットです。


最初のイントロのギターリフがセンターからモノラルで出ているので
当然プラス1だが、段々ボーカルや楽器が増えてくると
プラス0.5~0.7くらいになり、
マイナス側に触れることは曲中ただの1回もない。


こうやって自分の好きな曲をメータリングしていけば、
自分で作るときもメーターが同じような動きをしていれば
一概には言えないけれど、同じようなステレオ感が出ているということなので
マスタリングを行う際の一つの目安にはなるはず。
(Correlation Meterのみ同じでは駄目です)


ボーカル曲だけでなく、BGM系の曲なども
メーターを見ながら聴くことでどういう風に聴こえたら、
どういう風にメーターが動くのかがわかるようになるので、
自分で作る時の大いに参考になる。


マイナスに触れるのが悪いというわけではなく、
BGM系楽曲のピアノのみになる部分などのように
音数の少ない部分ではマイナス側に針が瞬間的に動くこともある。


またプラス1に近い位置でメーターが動くときは
モノラルっぽい2mixということになるが、
それも決して悪いということではなくて、単なる目安に過ぎない。


プラスなら良い、マイナスなら悪いというわけではなく、
あくまで最終的な判断は耳で行う必要があるけれど、
耳だけでなく、目で確認することで自分の作品の精度を
上げていくことが出来るので良ければ参考にしてみて下さい。



お手持ちのDAWやプラグインにCorrelation Meterがない方は
フリーソフトのVoxengo SPANがお勧めです。

Voxengo 公式サイトはこちら


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クリックでプリセットを選ぶだけで簡単にミックスが出来るのが
売りのEZ MIX2


半分玩具、もう半分は研究材料のつもりで
エンジニアパックを買っているのだが、
ぼちぼち分析をしているので思ったことを書いてみます。


正直もうコンプやEQの掛け方はお腹一杯気味なのだけれど、
EZ MIX2のエフェクトをたくさん組み合わせる(4~6個)パターンは
特に著名なエンジニアのパックが勉強になる。


EZMIX PACK - CHUCK AINLAY

追加パックのエンジニアシリーズは複数出ているが、
どれも勉強になるものの
今回はCHUCK AINLAY(グラミー賞受賞のエンジニア)のディレイの設定をご紹介したい。


実際に使っていて
「おぉ~すごい、これ使うとオケにトラックが馴染む」
となるのでちょっとどうなっているのか解析してみた。



使ったのは以下のプリセットです。

B-3 Dryというプリセット

オルガンの中にあるので、
B-3はハモンドオルガンのB-3のことだと思われるが、
基本的にディレイであることに変わりはないのでオルガン限定ではなく、
実際には何にでも使える。


実験の仕方だが、波形編集ソフトで
20msec程度のテスト音を作って
それにCHUCK AINLAYのディレイを掛けることで
ディレイタイムを測定した。


ディレイタイムを測定したもの(クリックで拡大)


テンポ120で書き出した時、
最初のディレイ音が166msecの時点なので
ディレイタイムが166msecであることがわかる。


テンポを変えて書き出すとディレイ音もずれているので、
テンポ同期のディレイということがわかるが、
この数値からどういうテンポディレイなのかがわかる。


テンポ120の場合は音符とディレイタイムの関係は以下のようになる。
(4分音符で500ms)

16分音符 125ms
付点16分音符      187ms
16分3連音符 83.3333333…ms


問題のディレイタイムは166msなので
16分3連音符2つ分の166msということになり、
16分のシャッフルでのディレイであることがわかる。


基本的にテンポディレイは曲の雰囲気に合わせて、
どんな音符で動機を取るかは自由に決めていいのだけれど、
個人的にはシャッフルのディレイはシャッフルの曲で使うことが多く、
普通の8ビートや16ビートの時はやはり同じく
8分音符や16分音符のディレイを使うことが多かった。


16ビートの曲で16分のシャッフルはさすがに嫌だが、
なるほど8ビートの曲で16分のシャッフルのディレイは
R&B的なノリ・スピード感が出て良いかもしれない。


曲の作り方、リズムの組み方を作曲の段階で考えなければいけないけれど
これはミックス段階でグルーヴ感やノリを出すのに
なかなか妙を得た設定だなぁと思った。



ちゃんとそれ用に作られた8ビートの楽曲なら
実際に使っていも違和感なく、
R&B的な感じで気持ち良く使えると思う。


またディレイ音そのものは原音にくらべて
小さいのでビートに関係なく使っても
実際はこれは絶対に駄目!というほどの違和感は生まれない。


ミディアムディレイの数値をテンポと同期計算なしで
使うことも絶対に悪いとは思えないので、
(ギターなんかでたまにやる)
ミディアムディレイの設定として特に何も考えずに使っても
かなりいい感じになる。


またディレイ音だが、いい感じにこなれていて、
設定を見るとテープディレイであることがわかる。


テープディレイと書かれている。


内部の仕組みは良くわからないが、
音は如何にもテープディレイっぽい。


ディレイの構造が理解できたので
自分も全く同じ設定で真似て
WavesのKramer Tapeでやってみたのだが、
如何せんCHUCK AINLAYみたいな感じにならない。


Waves Kramer Tape


WavesのKramer Tapeでテープの音も似ているし、
ディレイタイムも同じなのになんでだろう?
と思ってよくよくもう一度波形を見てみると
左右のディレイタイムが微妙にずれている。


左右のディレイタイムが微妙にずれている。


上の画像を見るとわかるがRのディレイ音がちょっとだけ遅い。
具体的には6msだ。


こうやって左右の音を僅かにずらすテクニックは
ミックスの中のあらゆる部分で活用するので
別段珍しいテクニックでもないが、
ディレイの後ろに左右の音をズラすプラグインを入れて
全く同じ時間差でLRのディレイ音をずらしたら
CHUCK AINLAYみたいなディレイ音になった。



ProtoolsのTime Adjuster


左右の音を微妙にずらすとディレイが良く馴染むのは知っていたが
なるほど、ここでも使われている。


このように分析すると客観的にディレイの設定を知ることができ、
なんとなくではなくテンポ同期やLRのズレ、ディレイの音質(テープ)など
自分でも再現出来るレベルになるので、
こういった分析は大いに「勉強」という意味では有用だと思う。


またこうやって細かく知ることが出来れば
曲に合わせて応用が出来る。



EZ MIX2は
ワンクリックでサウンドメイク!お手軽ミキシングツール!
が公式の売り文句なので
本来こういう分析用途で使うものではないのだろうけれど、
個人的にはこういうことをするために購入しているので、
こういうネタがいくつも溜まってきている。
(レッスンをする時の資料にもなる)

WavesのSignatureシリーズもそうだったけれど、
有名なエンジニアさんのEQやコンプやディレイやリバーブなどの
設定をやっぱり知りたいので
やっていて勉強になることが度々ある。


EZmixをそのまま使ってもいいのだが、
それだと勉強の意味がないし、
なんとなくプライド的に良くないような気もするので
結局は今回のように自分で【分析→再現】となるのだが、
興味があれば是非EZ MIX2をお持ちの方にはやってみて欲しい。



多分ミックス中級者以上の方はEZ MIX2なんて初心者用じゃんと
思うかもしれないが、
そのまま使うのではなく研究資料としては
得るものがないでもない。



プリセットだけを選んで
ワケもわからず使っても一応それなりにはなるが、
別に楽したいがためにEZ MIX2を買ったのではなくて
(ちょっとはそんなつもりもあるけれど)
著名なエンジニアの設定が知りたいがために買ったのだから
こうして研究して得ていく知識を自分のミックスに
応用できるようにしていかないと意味がない。



わからないものをわからないまま使っても
応用が利かないし、自分で再現出来なければ理解していないことになり、
今後の成長にも繋がってこない。


耳だけを頼りに出来るのが本来の姿なのかもしれないけれど、
それだけで上手く行くなら誰も苦労はしないので、
こうやって大いに研究することで少しずつミックスは上手くなっていくはずです。


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