前回の記事で独学でクラシックを勉強なさっている方への
クラシック作曲習得のための和声に関する内容を
書かせて頂いたが、今回は対位法について書いてみたい。


あくまで個人的な意見なので、
絶対に正しいということはなく、
そういう考え方をする人がいる程度に興味がある方は読んでみて下さい。


前回同様、まず以って私がお勧めすることは
本気で和声でも対位法でも作曲でも勉強しようと思うなら
良い先生に師事することだ。


別にそのためだけに専門学校に通う必要はないし、
音大に進学する必要もない。


それも一つの形ではあるけれど、
個人的にこの人と決めた先生を見つけて
その方にしっかりと習うのが一番良いと思う。



ネットで情報を調べても、本を一人で読んでいても
こと和声や対位法やクラシックの作曲に関しては限界がある。



もちろん極めて天才的なセンスの持ち主であれば
独学でもと思うが、多くの場合は先生に師事したほうが
上達の速度や伸び幅は絶対に高いと思う。



ロックやポップスならまた違うのかもしれないが、
和声法や対位法は「習うより慣れろ」よりも
個人的には「慣れるよりも習え」だと思っている。



その意味を私なりに書いてみると以下のようになる。

先生に師事する最大のメリットというか、
これがないと大幅なレベルアップが見込めない理由は
対位法や和声法は本に書いてある禁則や理論的な内容を覚えることが本題ではなく、
自分で解いた課題を自分よりも熟達した先生に添削してもらうことに意味があるからだ。


ルールの暗記ではなく、
自分の不得手とするポイントを的確に指摘してもらい
それを克服していくことが上達につながっていく。


なかなか自分では自分のことはわからないのだ。
自分の目的を知り、客観的に自分よりも熟達した技術の持ち主の指導が
対位法でも和声法でも作曲でも重要なポイントになってくる。


例えば「完全5度は駄目」というルールを丸暗記しても
作曲の上達にはあまり関係がない。


鵜呑みにするのではなくなぜ駄目なのか?
そのルールを守りつつ綺麗な曲を書くためにはどうすれば良いのか?
実際の過去の大家の作品に触れ、自分でも良い作品を書くためには
どういう風に和声を応用すれば良いのか?
などに関して自力でそこまでたどり着ける人間は少ない。


完全5度は避けるべき、などのような
ルールを覚えることそのものに大した意味はない。


覚えるだけなら誰でも出来る。
そこまでなら本を読んで独学で可能だが、
分かり易く言えば「和声法や対位法を学んで自分が作曲家として成長した!」とか
「目に見えて自分の曲がレベルアップした!」と自覚できるようになるには
一人ではなかなか難しいということだ。


実際に作曲の勉強をしていくなかで和声法や対位法を学んだものの、
「あまり役に立っていない」とか「何に使うのかよくわからない」etc…
のような方は多い気がする。


ある程度の時間を使ったのに得たものが少ないというのは勿体ない。
(和声法や対位法は習得に時間が掛かります)


そのような浅い理解では和声法や対位法を学んだことにはならない。


もちろん私自身もまだまだ未熟ではあるが、
私は先生に師事して時に対位法をみっちり学んだことが
自分の今の財産になっているので、
是非しっかり勉強して欲しいと思う。



要するに本当にこの人と決めた先生を見つけて
その人に教えを乞うこと。
別に先生が一人のみである必要はない。
二人でも三人でも構わない。



もちろん先生と生徒と言っても
つまるところ人間と人間の関係であるし、
先生と言えども得手不得手や特化している部分や
固有の考え方・個性というものがあるので、
本当に自分にあった良い先生を見つけるのはなかなか難しい。


そういう意味では私は非常に恵まれていたと思う。



スポーツでも何でも先生、コーチ、師匠など、
高いレベルに到達している人はそういった人が必ずいるものだ。
作曲も例外ではない。



とは言え、ここからが本題だが、先生に師事するということが
現実的ではないという方も多いと思うので、
わかる範囲で対位法を学ぶ意義について触れてみたい。


まず参考書籍だが、個人的にはノエル・ギャロン、マルセル・ビッチュ共著の
「対位法」をお勧めする。


http://www.amazon.co.jp/%E5%AF%BE%E4%BD%8D%E6%B3%95-%E3%83%8E%E3%82%A8%E3%83%AB-%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%AD%E3%83%B3/dp/4276105625/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1335960220&sr=1-1 


予備知識ゼロの人には難しいかもしれないが 
ほかにも何冊も対位法関連の本はあるものの
これが一番現実的というか「作曲に役立つ」本だった。


何のために対位法を学ぶのか?と考えたときに
作曲以外の目的、例えば対位法の歴史的・学術的な研究だとか
楽器の演奏家が対位法の様式を学ぶために行うとかではなく、
作曲をする人間が作曲をするために対位法を学ぶなら
個人的にはこの本を薦める。


とはいえ、本屋さんで立ち読みしたり、持っている人から見せてもらって
フィーリングが合いそうならなんでも良いと思う。
また手に入る限りの書籍を勉強してみるのも良いと思う。



次に対位法を学ぶ意義を考えてみたい。
ポイントをまとめてみた。


・和声法確立前の時代の作曲家が一体何を拠り所にして作曲を行ってきたかを知る。

決して綺麗なメロディーを書くための勉強ではない。
ここでいう「綺麗」とは個人の嗜好の問題の綺麗のこと。
 


・音楽における横の流れを身に付ける。和音+メロディー1つというポピュラー的な
作曲に慣れている人にとっては特に有効。


・単純に作曲家としての修行を目的とする。2声、3声の対位法楽曲や
フーガやカノンを習得するための土台として必要不可欠なのが対位法である。


・たくさん修行を積むと作曲の速度や正確さそのものがアップする。
(これは対位法に限ったことではないが)



ほかにもあるかもしれないが、大まかに言うならば上記のような感じになる。
言葉にすれば短いが、血肉になるレベルで身に付けるには
個人差があるけれど時間が掛かる。


少なくとも一朝一夕にはいかないが、
血肉となるレベルまで習得できたなら、
そのときは作曲家として一皮も二皮も剥けていることだろう。


明らかに自分の成長を実感できるようになっているはずだ。



・和声法確立前の時代の作曲家が一体何を拠り所にして作曲を行ってきたかを知る。
 

まず1つ目について。
厳格対位法と自由対位法という言葉があるが、
ちょっとそれは置いておき、
対位法の意味というか成り立ちについて考えてみたい。


音楽において長調と短調という2つの調が支配的になったのは
ここ400~500年くらいだと個人的には感じている。


いわゆるカデンツや機能和声と呼ばれる理論や
ジャズやポピュラーでいうところのドミナントモーション、Ⅱ-Ⅴなど
そういった理論は基本的に長調と短調という土台の上に成り立っているが、
その土台がなければそれらの理論は基本から崩れていってしまう。


ダイトニックコードを作ってこの和音を【T】という役割にしようとか
【D】という役割にしようとか決めるようになったのは
長調と短調という考え方ありきなのだ。


また「この和音に【D(ドミナント)】という機能を与える」という考え方がなければ
当然ドミナントモーションなんて在り得ない。


そういった考え方が生まれたのが大体バッハよりちょっと前くらいだと感じている。


バッハはそれまで7つの教会旋法が平等に扱われてきた中で台頭してきた
長調と短調という二つの考え方を用いて極めて優れた作品を残し、
両者を音楽の中心に置くことに多大な貢献をした人物だ。



例えばバッハよりも遥かに古い作曲家の曲を分析してみると
いわゆる教会旋法で書かれていることが多い。
ここでは教会旋法=モードという意味で扱います。


ドリアン、リディアン、ミクソリディアンなど長調と短調しか知らない人が見たら
なんだかよくわからない曲ということになってしまうだろうが、
歴史的に見れば人類は教会旋法のほうを長く使っているわけで
教会旋法を学ぶことは極めて意義深い。


さすがにポップスの曲は長調か短調かのどちらかだが、
映画やゲームやアニメのBGMでは教会旋法は当たり前のように
たくさん使われている。
作曲法の一つとして身に付けている作曲家はほとんど全員だろう。



教会旋法が主流であった当時、
つまりバッハよりもずっと古い時代の作曲家たちは
カデンツもドミナントモーションもⅡ-Ⅴも知らなかったわけだが、
彼らは「どうやって」作曲をしていたのだろうか?



例えば私たちが8小節のコード進行を作るとき「どうやって」作るのだろう。
カデンツ、ドミナントモーション、セカンダリードミナント、サブドミナントマイナー、
裏コード、 分数コード、UST、並行和音、平行和音、テンションコード、オルタードコード、
ブルース的なアプローチ、変形スタイル分数コード、ドロップ2などの各種ボイシング、
ハーモニックまたはメロディックマイナー、ペダルポイント、転調、4度堆積和音、
偶成和音、内部変換、借用和音(SDM以外)、反復進行、
ホールトーンやコンディミなどの特殊音階から生まれるコード、etc……



などなどちゃんと作曲を勉強している人なら
「どうやって」と聞かれたときにその考え方の拠り所となる部分がちゃんとあるはずだ。


しかしながら上記の拠り所はバッハ以前にはなかった。
では昔の人はどうやって作曲していたのだろうか?


8小節分作曲してみてと言われたら彼らは一体に何を拠り所にして作曲したのか?
適当に音符を並べただけのか?デタラメなのか?何の法則もルールもなかったのか?
と考えたときに、
彼らの時代の彼らのルールが「対位法」なのだ。



彼らは対位法という厳格なルールにも基づいて作曲していた。
要するに様式の一種だと思えばいい。


「昔の人はこういうルールで作曲してたのか~」という
現代の作曲技法のご先祖様を学ぶことに一つの意義がある。


当然そこにはカデンツもなければ、Ⅱ-Ⅴもない。
そこにあるのは「対位法」なのだ。


当時の様式がわかれば当時の作曲技法に基づいて、
バッハ以前の対位法楽曲が書けるようになる。


ペロタンやジョスカン・デ・プレやギョーム・ド・マショーのような曲を書いてみ?
といわれたときに書けるようになるだろう。
(もちろん個人個人をちゃんと分析した上で)

ペロタン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8C%E3%82%B9

ジョスカン・デ・プレ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AC

ギョーム・ド・マショー 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC


稀に対位法を学ぶ目的は綺麗なメロディーの作り方を学ぶため
という人がいるが、私は綺麗という言葉は個人の嗜好によって変わると思っている。


ある人が「○○さんは美人だ」と言っても別の人は「いや
□□さんのほうが美人。」
などのように個々の美的基準は異なる。


まして対位法全盛期の時代と2012年の現代とは
何を綺麗とかカッコいいと感じるかのセンスは大きく変わっているだろう。


綺麗なメロディーを書くというよりは当時の様式を学ぶため、
敢えていうなら400年以上前の人が綺麗と思っていた作曲の仕方を学ぶためだろう。


膨大なルールがあるが、
それらを拠り所に当時の人は曲を書いてきたのだから、
現代人の我々が同じルールを守れば当時の様式になるだろうし、
また守らなければ当時の様式感を出すことは不可能だ。



ロックンロールの作り方でバロック風の曲調を出すことは難しいし、
その逆もまた然りとなる。


様式を学ぶことに1つの大きな意味があると言えるだろう。
長くなったので残りの3つは次回に持ち越すことにした。


・音楽における横の流れを身に付ける。和音+メロディー1つというポピュラー的な
作曲に慣れている人にとっては特に有効。


・単純に作曲家としての修行を目的とする。2声、3声の対位法楽曲や
フーガやカノンを習得するための土台として必要不可欠なのが対位法である。


・たくさん修行を積むと作曲の速度や正確さそのものがアップする。
(これは対位法に限ったことではないが)


これらは次の機会に書きたいと思います。



////////////////////////////////////////////////////////////


作曲・DTMの個人レッスンの生徒を募集しています。
このブログの書き主の自宅でマンツーマンレッスンをしています。
詳しくはこちらをどうぞ。

初心者の方用の作曲本と
ミキシングとマスタリングの本を書きました。

電子書籍ですが宜しければどうぞ。

DTMマスタリングのやり方


DTMミキシングのやり方。


【パソコンで始める日本一簡単なDTM作曲本】 

販売ページへのリンクです。  

AD