消しゴム君の写真絵本集

いつか写真で絵を描きたいです


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「今から地元の人も行かない

秘境の地にお連れします!」

 

横手の細部まで知り尽くした彼に連れられ

ボクは雪深い村を訪れた

地元人すら足を運ばないと言われるこの地は、

四方を深い森に囲まれた

まさに深山秘境の地だった。

 

気がつけば

ついさっきまで降っていた雪は小雨に変わり

時折吹く風が雨を顔に叩きつけて来る

足の底から身体へと伝ってくる寒さは

冬の寒さに耐える大地の体温そのものだった

 

ボクは何故こうも

厳しい土地に惹かれるのだろう

 

その時、視線を感じた

 

振りかえると

今にも大地に突き刺さんとする

巨大な氷の柱がそこにあった

 

その堂々とした立ち振る舞いとは遠く

何故か横顔は物悲しく

まるで年老いたインディアンの横様に見える

 

彼の視線の先を見ると

そこには

荒廃し始めている森があった

 

森を守る番人役を

神々に言い渡された彼が

次第に朽ち果ててゆく森の様に

為す術なく哀しんでいる様だった

 

「春になったらまた来るよ」

 

誰にも聞かれないようにそっと呟き

ボクはその場を後にした。

 

 

(作品「悲しき老インディアン」より)

(@2017.横手市・滝の下にて)

 

 

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百歳になったら

 

きっとボクはあのカフェの窓辺の席に座って

もしかしたらパイプの煙なんかくゆらせながら

ちょっと渋い顔つきでインタビューにこう答えているんだ

 

「プロデュースって日本語に直訳すると

作物っていう意味なんだよね

で、ある日その事に気がついて

ボクは作物家だったのかって驚いたんだ

そもそもボクは映像の世界で演出家として生きてきた訳だから

だったら演出家という呼び方の方がしっくりくるんだよね」

 

なぁんて格好いい事言ってるんだ

きっとね

 

でも頭は白髪で

肌もしわしわになっていて

もしかしたら杖なんかついているんだろうな

 

そんなボクから少し離れた席で

長年連れ添ってきたボクの奥さんが苦笑いしているんだ

なにを格好つけてんだかっていう顔しながらね

何もかもお見通しなんだよね、彼女にはね

 

でも

そうやって

百歳になっても

毎日、人の写真撮って

毎日、人のドラマ書いて

毎日、人の映像作って

現場の力仕事だけは若手に任せて

たくさんの人をデビューさせているんだ

 

百歳になってもね

 

 

(作品「百歳になったら」より)

 

 

 

 

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