chatでネタを振られたので久しぶりに書いてみる。「もしあなたが○○さんでないのならサインインしてください 」の話だ。極論してしまうと、その言葉がユーザーに理解可能か、という問題である。


具体的には「ログアウト」や「サインイン」という言葉はユーザーが理解できるのか、という話なのだが、アプリケーションのマニュアル、特にチュートリアルを書くときには、専門用語を不用意に使わないという鉄則があって、もちろん Webユーザビリティにおいてもこれは重要なことだ。


そもそも「ログイン、ログアウト」という概念がまったくわかっていないらしい。


確かにログアウトしない人は結構いるようだ。「次回からログインを省略」のようなサイトも多いのだ。


本件を少し細かく分けると、2つのポイントがある。まず、ログイン、ログアウトという言葉が通用するか。もう一つは、ログイン、ログアウトという言葉の概念がユーザーに理解されているか。この二つは似ているが、微妙に異なる問題である。そもそもログイン、ログアウトの必然性を理解せずにログインしているユーザーが多いのではないか。


この話を見たときに、ある子供向けビデオを思い出した。中身は算数の学習用ビデオで、ターゲットは幼稚園児から小学校1年生あたりだろう。1+1から説明して、1桁の足し算、引き算あたりまで教えるというものだ。まず1+1の説明。博士みたいな人が出てきて、いきなりこう来る。


1たす1というのは、さんすうのきそになるものなんじゃ。


もちろん子供は「きそってなに?」と言うことになるのだが、誰だこのビデオ作ったのは?


まあそれは置いといて、「ログアウト」や「サインイン」という言葉をユーザーは理解できるか。他の方が指摘していたが、日本語という条件も重要である。英語を使う人達にとっては「sign in」という言葉がポピュラーかもしれないが、そもそも「サインイン」なんて日本語はないのだ。例えば goo辞書で探すと、新語として「サインオン」は出ているが、「サインイン」は見つからない。


ちなみに「ログイン」は

ID 番号・パスワードの入力など所定の手続きを経て、端末からホスト-コンピューターに接続し、複数ユーザー用コンピューター-システムの使用を開始すること。ログ-オン。

(goo辞書 - 三省堂提供「大辞林 第二版」より)


となっている。ログインという表現は、万人が知っているかどうかはさておき、一応、日本語として認知されていると考えてよいだろう。


ところで、この「もしあなたが○○さんでないのならサインインしてください」という言葉が不自然な日本語だという指摘がある([観] もしあなたが○○さんでないのなら…… )。


不自然な日本語といえば、私が中学生か高校生だったかいつだか忘れたが、友人が電車の中に置いてあるカバンを見て、「一つの鞄がある」と言ったのを思い出してしまうのだが、それはどうでもいいとして、私見としては、「サインイン」という言葉は日本語としては不自然である点を除けば、この日本語は特に不自然な感じはしなかった。むしろ普通の日本語だと思う。もっとも、普通は「相手が誰だか不正確だが○○さんである可能性が高い」のようなシチュエーション自体が不自然なのかもしれない。


yodobashi.com の場合、次のような表示になっている。


(もし○○さんではない場合は、こちらをクリックしてください)


「こちらをクリック」の所は、ログインページ(ログアウトではない!)jに誘導するリンクになっている。代名詞ではなく固有名詞が表示されていること、「クリックする」という具体的な操作が示されていること、この2点がユーザビリティ上は重要である。ユーザーは文章を最初から逐一読むとは限らないので、部分的に見たときに誤解がないように指示することに、意味があるのである。また、固有名詞は文自体を強調する働きがあるので、ユーザーがうっかり見落とさないようにする効果もあることに留意しておきたい。


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