疼痛のリハビリテーション2

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行為間比較を用いた慢性疼痛に対するリハビリテーションについて、前回から記事にしています。

疼痛治療において、
患者さん自身が経験している世界をどのように表象するかをセラピストは観察することが重要である。

比較するものは大きく分けて
「疼痛のある現在の行為」

「疼痛のない正常な行為」

ただし、
慢性的な痛みを抱えている患者さんほど、
自分の身体に関する記述が曖昧で症状は全体化し「いつ」「どこが」といった細分化が困難な傾向がある。




患者「背中に硬さを感じます」「歩くとき背中の下の方が痛いです」

TH「痛みなく歩けていた時の感覚を思い出せますか?どのような違いがありますか?」

患者「はい、動くときの柔軟性が足りないです。以前はもっと骨盤が上下して柔らかかった」


このように明確な差異を言語化できる症例は軽度で、
骨盤に対する課題を展開することで症状を改善に導くことは比較的容易であると判断されます。

しかし臨床ではこれだけ身体への気付きが良好な方は少なく、
セラピストが言語や体性感覚、視覚を用いて対象者の注意を細分化していくガイドが求められます。

Marina先生が例に挙げた症例の1人は、
椎間板ヘルニアをきっかけに重篤な神経因性疼痛が生じ、
6年もの間あらゆる外科的治療を試みた末に下腿切断に至った若い看護師でした。

切断後も下肢の痛みは何一つ改善せず、
しばしば大腿・膝の筋が強く収縮し「何もかも揺れている」上に、
すでに無い足首が「硬直してナイフが刺さっているような」痛みに苦しめられていたそうです。

すでに無い左足で何かするイメージをさせただけで痛みが出現し、けがをする前に自分の足がどんな感じで床に接していたかも思い出せなかった。

ミラーセラピーを受けた時は「見えるものを感じることは全くできませんでした、とても努力が必要で、すぐに痛みが出ました」

・・・
過去の行為をイメージするには「足」に関する識別性が不可欠で、健側を用いた運動覚や圧を識別する課題から始めた。


「犬を撫でるためにしゃがんだとき、足首は閉じてました」

「雲の上にいるみたいに床に乗ってないような」

「柔らかいスポンジが足指の中に入ってくるのを感じる、足底の皮膚が伸ばされている」

TH(このような感覚を歩行中に感じたことがあるか?)

「砂浜です。足が沈んで指の間から入って来て···」

TH(右と左では同じ感覚なの?)

「はい、砂の暖かさまで感じることができます!とても心地よくて、今までの焼け付く感じや違和感が無いです」

···
このような過程を経て慢性疼痛から脱却させることができた経験には、
疼痛のない過去の正常な行為の特徴や多面性に患者がどれだけアクセスできるか、
どのレベルで比較できるか、
そして時間的·空間的にも情報を統合できるか
という要素に着目する。


分離している情報
・複数の体性感覚情報モダリティ
・身体の複数の部位
・体性感覚以外の情報モダリティ(視覚、聴覚···)

その中から動員できる情報を用いて多感覚の統合へとガイドすることがセラピストの作業である。

やはり「個別性」というものを無視して治療は成り立たないようです。
自分もそのような目線で治療に望んでいきたいと感じました。

随分専門的な内容になってしまいましたが、
我々の専門性が非常に問われる分野であり考えることを放棄してはいけませんね。

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