塩野 七生
ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)  

評価:★★★★★星5つのマスターピース

(僕的主観:★★★★★星5つ)


僕の名前は、ハインラインの『夏への扉』に出てくる猫のピーター君(ペトロニウスの愛称)と、小説『クォ・ヴァデス』に出てくるネロの臣下ペトロニウスの二人から取っている。

ロバート・A・ハインライン, 福島 正実
夏への扉
シェンキェーヴィチ, 木村 彰一
クオ・ワディス 上 (1) (ワイド版岩波文庫 289)


けど、この20巻?・・・あれ、カリグラ帝だったかな?・・・にパレスティーナを統治するユダヤ総督(だったと思ったうろ覚え)に任官されたペトロニウスという属州の官僚がいて、同じ名前だったので興味を持った。


あまり時間がないので、がーっと説明するが、このユダヤ総督というのは、非常に政治能力が要求される難しい役職。というのは、パレスティーナは、当時の火薬庫とも呼べるヤバい地域だったからなんです(今も変わりませんね)。


それは、ローマが「帝国」となった時には、西と東の防衛(=安全保障)がメインの課題になるのですが、東にはパルティア王国(ペルシャのことね)があって、そことローマは常に最前線で敵対している。ここの国境を安定化する統治戦略の基本は、オリエントの周辺君主国を親ローマの同盟国で取りまとめるというもの。


ところが、ローマ帝国の中でも、一番取扱いに困ったのは、ユダヤ民族。


それは彼らが一神教だからなんです。


ローマ人は、基本的に日本人と同じで八百万の神を信じる多神教国家で、宗教にとても寛容な国でした。カエサルもアウグストゥスも神君として神さまにすぐされちゃう。けれども、その寛容な宗教政策の中でも、ユダヤは特別でした。神を一つしか信じないので、いろいろもめごとが起きるのです。


ネロやカリグラのように、政治センスが低いと、多神教の中で「寛容(クレメンテイア)」の政策を実施する、ローマンエンパイアのカエサルの精神が理解できない場合が多く、そうなると、自分たちの神の神聖しか認めないユダヤの性質を、皇帝(神に近い立場・・・といっても多神教のね)への否定に感じてしまうようなんです。


「俺は神だ!」


とネロやカリグラは叫んでいます。


これは、別におかしなことではありません。ローマ的にいうと、何十万といる神様の末席に生きている皇帝がいる=地上での皇帝の超越的な権力(他の国王に対してのね)を認めろという非常に単純な現状追認の話です。


それを認めないユダヤ民族が、皇帝(=ローマの秩序)に反対する反社会的行動に見えてしまうんですね。


実は、そうじゃないんですよね。ローマの視点から見るとおかしいことでも、一神教的な視点で見れば、それは仕方がないのです。このことによって、ユダヤ人は非常に帝国で制約を受けるのでしょうし、他の民族と同じ扱いにできない(皇帝=インペラトールに忠誠を誓えないので兵士として徴兵できない)、そこは皇帝(統治者)がうまく操らないと、統治が難しいのです。他の民族は、あいつらだけ優遇されてと、怒り狂いますし。


このへんの絶妙なバランスを考えながら、


ローマの安全保障上最重要戦略である、東方地域の対パルティアのための親ローマのオリエント君主の同盟とりまとめと治安維持が、戦略①となります。


また一神教であるユダヤ民族を、多神教世界観ベースのパックス・ロマーナの秩序の中でうまくバランスを取って管理する、というのが戦略②


これを同時に並列させる政治手腕が要求されるのです。


これが矛盾する命題だというのはわかりますよね?。


戦略①は、各民族間に対して公平さとローマへの忠誠を確保せよといっているんです。戦略②は、ユダヤ属州だけ特別扱いしろって言っているんです。


難しいですねぇ。



ところが政治センスのないアホな皇帝(この戦略の①と②の関係性がわからない)が、ユダヤ民族に①を貫いて、皇帝を神と認めろ!(=ローマ的に言うとローマの秩序を認めろ)とかやってしまうわけです。
意味は同じでも、言い方を変えればいいのに…カエサルもアウグストゥスも、ティベリウスもそうやってきたんだから。

ところが、たしかカリグラ?だったあれネロかな?、、、が、ユダヤの神殿に、


自分の像を建てろ!


とかいったんですよ。


あーばかですねー(笑)。民族問題に凄く馬鹿。


そしてその指令受けたのが、当時のユダヤ総督の地位にあったペトロニウスです。


この人がねー頭がよくて、戦略①と②をよくわかっているんですね。


だから、この命令を握りつぶすんです。


精確に言うと、ものすごぉーーーーーーーくゆっくり像の建設をさせて、時間を稼ぐ。怒り狂うユダヤ人たちを前に、いっさい口は出さず無言で、像はつくらせないとゼスチャーしたり、、、もう涙ぐましいの。


帝国の本質の安全保障・多民族統治戦略を深く理解しているから、馬鹿な皇帝の命令を、、、それでも上司の命令なので断れないので、、、悩みに悩みつつ時間か稼ぎをするんですね。




そして、皇帝から「自殺せよ」の命令書が下る。


命令拒否だもの。




だが、その命令を出した皇帝は、やはり馬鹿でこの命令書あペトロニウスのもとに届く前に殺されてしまうんですね。


そして、なんとか帝国東方の安泰を守られる。



無能なトップに命令された時に、優秀な官僚のせつない悲哀で、、、、ぼくはぐっときましたよ。


自分の名前と同じですしね。

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