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■黒衣をまとった方


こんばんは。
この記事、TBできないようなのでコメントを残します。

各紙の訃報を読むと、やはり鋭利な頭脳明晰、徹底的に情報分析をして日本社会に戦略思考をもちこんだ方、というコメントが多いですね。

これだけの手腕の持ち主は、今の日本の経済界・政界にも見当たりません。
最も印象に残ったのが「華やかな公職にあるときも、心のどこか奥底に黒衣をまとっているような、光よりも影の似合う人だった」という言葉です。

その黒衣に守られた内部を知りたかったですが、今は見事な軍人の生き方だと感じる次第です。

樹衣子 2007-09-05 22:23:49


元伊藤忠会長の瀬島龍三氏死去
http://konstanze466.jugem.jp/?eid=88


「瀬島龍三 参謀の昭和史」
http://blog.goo.ne.jp/konstanze/e/ef728692f8b017c2745beff65fd577dd
『千の天使がバスケットボールする』より


保阪 正康
瀬島龍三―参謀の昭和史 (文春文庫)
山崎 豊子
不毛地帯 (1)
共同通信社社会部
沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫
瀬島 龍三
大東亜戦争の実相 (PHP文庫)


樹衣子さんのこのコメントがおもしろかった。瀬島氏の記事には、「彼が非常に付き合いにくい人物だった」という感想に満ちている。あれほどの業績、あれほどの人脈を誇る彼がである。


また同時に、日本社会に「戦略的思考」をもちこんだ人物とも評される。



「華やかな公職にあるときも、心のどこか奥底に黒衣をまとっているような、光よりも影の似合う人だった」



僕はこのコメントで、京極夏彦さんの京極堂シリーズを思い出しました。主人公自体が黒衣をまとった人ですし、そのなかで特務機関の指導者だったある大佐が出てくるのですが、彼らの生き方やイメージが、この黒衣の瀬島龍三にとてもだぶる。

京極 夏彦
文庫版 塗仏の宴―宴の始末 (講談社文庫)

ちなみに、僕自身はまだましな方だと思うのだが、長期の時間を俯瞰して見渡す「戦略思考」の持ち主には、他人との関係をすぐ冷やしてしまう部分があることは否定できない。


それは、情緒や雰囲気、ノリよりも、ロングスパンに見えてくる予測やかなり遠方の合理的な帰結というものが、まだ物事が始まってもいないのに見えてしまうことがあるからだ。


僕は、時々、プロジェクトや相手の人物の人生の帰結をポロっといってしまうことがある(意図して吐露しているのだが・・・・)。


もちろんだいたい酷評や最悪の結末を予言する。


何も今そんなこと言わなくてもいいだるとシラけられることもしばしばある。けれど、プロジェクトには波があり、調子に乗った時に引きしめたり準備しないと、後で沈む。つねにいま受ける感じの、先の手を打たなければならないのだが・・・・これが、なかなか普通にはできないようなのだ。僕には理解できないのだが・・・。


また他人の潜在的に抱えている問題点などを、えぐって暴露して、表へ吐き出させたいという志向性も強い。もちろん自分自身の弱さも強烈に直視するので、激しく行動して忘れないと死にたくなるような強烈な不安に苛まされて生きている。


それは、「真実」を表に出さないのは、倫理にもとるという個人的信念もさることながら、そういうものを、さらけ出していないと、人生や仕事で大失敗してしまうことが多いからだ。弱みやへたれは、余裕がある時に、切り刻んで、表に出して、克服した方がいい。人生は短いと思うのだ。


なんというか、戦略的な思考・・・・・・物事をロングスパンで俯瞰するマクロの高速思考は、人間の情緒や肌触りを否定してそれを超える「真実」や「モノの見方」を招来する。


だから、戦略的なものが生来身についている人、そういう志向性を持った人は、どうしても闇がつきまとうと思うのだ。


そして、そういう人は他人に馴染めない分、生き難い。そして人には好かれない。


なんだか、そんなこと思った。

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山崎豊子氏の『不毛地帯』のモデルといわれる瀬島龍三氏が、本日亡くなった。


95歳。


シベリヤの抑留の11年間を考えると、なんと凄い人生だろう。


たぶんその責任を取らない参謀的なあり方は、旧大日本帝国そしてそれに続く戦後日本という国家のエリートの究極のロールモデルとして賛否両論あり、光と影がいまだ交錯する。


しかし、「凄い」と、なんのてらいもなく言える。


こんな波乱に満ちた、凄い人生はない、と思う。


ご冥福をお祈りいたします。

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採用のページは、実は面白い!


先日、丸紅の中東投資について書いたんだけれども、


丸紅が新高値、3600億円を投資し、UAEで発電・淡水化事業との報道
http://ameblo.jp/petronius/entry-10035874076.html


そこで、新卒採用のページを見ていたんだけれども、事業のことがわからない学生向けのストーリーなので、多少、美しく書きすぎだぜって気もするが、事業を行う夢と希望と幻想が書かれていて、、、これは、実はとっても楽しいエンターテイメントって僕は思っている。


伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 > Works.ch > プロジェクトストーリー
http://www.benichu.com/Recruit/works/project.html


三井物産歴史博物館
http://www.saiyo.mitsui.co.jp/shinsotsu/ht/ht01.html  


キャノン~求める人材像
http://www.canon.co.jp/employ/person/index.html


”らしさ”があるからHondaがある~本田技研工業採用HP
http://www.honda.co.jp/recruit/hondaism/02_01.html


任天堂で働くということ
http://www.nintendo.co.jp/jobs/work_at_nintendo/index.html


てきとーに有名どころ選んでみたが、どれもおもしろそーだぜ。物語としてもね。


まっ、ここで書いてあることは、物事の良い側面を良い形で物語化しているので、その仕事に就く裏の面とか、、、そこのカルチャーに合わなかった場合の精神や肉体崩壊とか、そういった悲劇げはわからないので・・・・というか、そういう悲劇の方が、就職選びには役に立つような気がするなー。


・・・・・・いろいろ思いついたけど、あまりにやばすぎて(苦笑)働くのが嫌になりそうなので、書くのやめた。


昔、ある人に、「営業マンに必要なことは?」と聞いた。


そん時に、


「ウソは絶対にいわない!」


「・・・・・けれど同時に、本当のことも言わない(笑)ことができる人」


といわれた。


うーむ。


リクルーターや会社説明もそうだよね。ウソは一つも言っていないけれども、ほんとうのことも何一ついっていない(笑)。


いろんな人生があるね。


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■丸紅が新高値、3600億円を投資し、UAEで発電・淡水化事業との報道

 丸紅 <8002> が8連騰。一時97円高の990円まで買われ、4日の年初来高値900円を更新した。出来高は1億株を突破し、東証1部トップとなった。
 6日付日経新聞は同社がアラブ首長国連邦(UAE)で発電・海水淡水化事業に乗り出すと報道。UAE北東部のフジャイラに天然ガス火力発電所と淡水化設備を組み合わせた施設を建設。発電能力は200万キロワットで大型原子力発電所2基分に相当。造水能力は日量59万トンで、日本の家庭なら188万人分の生活用水を賄えるという。総事業費は約3600億円。今年12月に着工、10年度の運転開始を目指すとする。
 報道に対し同社では、「先月行われた入札で一番札を取った段階で、正式受注したわけではない。最終決定はおそらく来月。細かい内容もスキームレベルの話で、今後変化していく可能性がある」(広報)としている。
 市場からは、「受注に成功しても運用開始は10年度で、今08年3月期収益に直接関係してくるわけではない。しかし日本政府も巻き込んでおり、材料として見た場合、長期的な株価には間違いなくプラス。また、丸紅に限った話ではないが中東関連でのインフラ事業は今後も拡大していくだろう」(銀行系投資顧問)との声が出ている。
 なお、大和総研は5日付で来期も海外IWPP(発電・造水事業)などで成長が期待できるとして、同社のレーティングを「2」から「1」に、目標株価を880円から1180円引き上げた。

提供:株式新聞社
http://charge.biz.yahoo.co.jp/vip/news/kab/070606/070606_mbiz164.html



総合商社の凄いところは、その「総合」なところ。たとえば、↓丸紅の柱の一つであるらしいチタン、銅合金管、ステンレスクラッド鋼板などは、いってみれば、自社で調達できる。


こういう産業連関的な波及効果のあるビックビジネスを描けるところは、やはり凄いな、と思う。


ちなみに、たぶんこの淡水化プラントで、もっとも儲かるのは、建設した後の、メンテナンスなんじゃーないかな?とか思う。




伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
http://www.benichu.com/Recruit/works/project4.html

>新素材室は鋼材第三本部内のチタン開発チームを母体とし、チタン輸出、国内商権の取得などを主たるミッションに2004年4月に発足しました。当部署の大きな特色は、海水淡水化プラント用の主要建設資材であるチタン、銅合金管、ステンレスクラッド鋼板の全てを取り扱っているという点です。これらは商品ごとに複数の部署で担当するのが通常ですが、1つの組織に集約させることで、必要な資材調達を始めとした、社内連携強化等のメリットが大きく、より合理的な供給が可能となります。
腐食に強く、軽量で丈夫、加工性にも優れているチタンは、21世紀の素材として脚光を浴びています。航空機業界を中心に、自動車のエンジン部、屋根材、ゴルフクラブなど用途は様々です。中でも海水淡水化プラントで使われるパイプ素材としての需要が、世界的に注目されています。「海水淡水化プラント」とは海水から真水を作るための施設で、汲み上げた海水を100~110度に加熱して気化させ、それをパイプ内で冷却することで、塩分が取り除かれた水を得られる仕組みです。プラントは海岸部に建設され、また海水を扱うことから、海水等の影響を受けにくいチタンや銅合金管が適しているのです。当社が海水淡水化用プラントの資材を集約する部署を立ち上げたことは、他の鉄鋼商社のみならず、メーカーからも大きな注目を浴びています。


ちなみに、なんとなく注目したのは、丸紅云々とか淡水化プラント云々ではなく、


>また、丸紅に限った話ではないが中東関連でのインフラ事業は今後も拡大していくだろう


という一文。


中東の投資は、凄まじくハイリスクだ。このカントリーリスクをどう考えるか?によって、物事の見方は全然異なる。しかし、



>原油の高騰などで経済成長が続くUAEでは、電気や水不足が大きな課題になっている。丸紅が原油輸入相手国のUAEに協力することで、日本への原油の安定供給につながるとみられる



これが、日本の国益や日本経済の基盤である原油の安定供給につながる(しかも商社としては優先権のあるサプライヤーを確保できるということ)ものでもあり・・・・・


ここは、僕は注目している。



ちなみに、注目しているのは、アメリカの中東政策と、イスラエルとイランの動向が左右する国際政治の魔窟でもあるからだ。



興味深い。



イランの台頭を容認するアメリカ
2007年6月1日  田中 宇
http://tanakanews.com/070601iran.htm


アメリカを中東から追い出すイラン
2007年5月29日  田中 宇
http://tanakanews.com/070529mideast.htm



何度も、指摘するが、この人のゼロベースで物事を戦略的にとらえる発想は素晴らしくシンプルであると同時に、ゼロベースであるがゆえにトンデモ・陰謀妄想説に堕しやすい可能性が常にあるということを割り引いて読むと、これほど見事なエンターテイメントはない(笑)。戦略思考の断片(マテリアル)は、「ファクト(=事実)」と「ファクト同士のつながりのスキーム(=解釈)」であって、なるべくダイナミックに、極論を考えると全体を俯瞰しやすい。


ただし、解釈は、常に、妄想と紙一重(笑)に考えて置くと、ちょうど良い。



丸紅HPより
経営からのメッセージ~勝俣宣夫代表取締役社長
http://www.marubeni.co.jp/ir/ir_message.html

「強固な基盤のさらなる増強を図る分野」について
エネルギー・資源開発と海外IPPは当社が従来から強い分野であり、資金の優先配分によってさらに増強を図ります。現在、当社が保有する原油・ガス権益の合計は、原油換算の日量で8万バレルに達しています。2005年度は、丸紅として過去最大規模の投資案件となった米国メキシコ湾の油・ガス田権益取得をはじめ、赤道ギニアのLNGプロジェクトへの参画やカタールのアル・ラヤン油田を含む鉱区の権益を取得しました。約1,360億円を投資したメキシコ湾の案件は、大半がすでに生産を開始している権益なので、投資資金の大宗を3年以内に回収できるのが大きな特徴です。

豊富な実績とノウハウを持つ海外IPP関連では、IPP事業の資産管理・開発運営を目的とした事業会社を設立し、事業運営の効率化を促進する一方で、新規開発・買収にもそのノウハウを活用し、より積極的な事業展開が可能な体制を構築しています。サウジアラビアでは、世界最大級の石油精製と石油化学の統合コンプレックスに対し、電力だけでなく、水、蒸気を25年にわたって供給する事業権を獲得しました。中近東地域においては、2005年1月にアブダビで世界最大級の発電・造水事業の事業権を獲得しており、今回の大型案件の連続受注により、アジアにおけるIPPのトッププレーヤーである当社が活動範囲を拡大し、そのプレゼンスをより一層高めていることが証明されました。


丸紅の話ではないが、伊藤忠の元トップの半生を物語化した(必ずしも事実ではないが、限りなく事実のマテリアルは使用している)この本をを思い出す。山崎豊子さんの『不毛地帯』は、商社マンであるならば必ず読んでいないともったいない(笑)。



『不毛地帯』山崎豊子を読む~総合商社の二つの側面をえぐる
http://ameblo.jp/petronius/theme4-10000381920.html

『大東亜戦争の実相』瀬島龍三を読む~伊藤忠商事元会長のハーバードでの公演
http://ameblo.jp/petronius/entry-10001693226.html

この辺を読んでいると、日本の財界エリート・・・・そして日本のエリートたちの悲願の物語が透けて見えて、なかなかぐっときますよ…昨今の中東インフラ事業への投資はね。


ちなみに中東の悲願のプロジェクトといえば、三井グループの総力を挙げた失敗を描いた高杉良の小説『勇者たちの撤退~バンダルの塔―小説・イラン石油化学プロジェクト』、これですね。この話もぐっとくるー。


高杉 良
勇者たちの撤退―バンダルの塔
高杉 良
バンダルの塔


ちなみに、この時の話の続きというか接続が、下に来るんだよなー。


『特攻の島』佐藤秀峰著 『一下級将校の見た帝国陸軍』山本七平著 殉教者~日本的意思決定の聖域
http://ameblo.jp/petronius/entry-10035422657.html

大組織を、活動的なまま管理し、ダイナミックで健全な意思決定を保つためにはどうすればいいか?ってこと。


ポートフォリオ・マネジメントの継続徹底について
“V”PLANでは、より細分化した単位で経営管理を行うため、営業部および事業会社を約100のポートフォリオ・ユニットに再編するとともに、資本コストの概念を導入した当社独自の指標であるPATRAC※でユニットや事業会社を評価し、強みを持つ部分、将来伸びる部分に経営資源を投入する、いわゆる「選択と集中」を、スピード感を持って行ってきました。ユニットごとの評価・判断の基準を、単純に黒字か赤字かではなく、PATRACがプラスかマイナスかの一点に絞って議論してきたことにより、グループ全体に非常に短期間でPATRACの考え方が浸透しました。特に、事業会社を含めたユニット制を敷いたことにより、全ての社員に事業会社も一体と考える連結の意識が浸透したことが大きな成果です。“G”PLANにおいても、引き続きPATRACを重要な経営管理指標としたポートフォリオ・マネジメントを行います。

“G”PLANの目標である2年間合計で連結純利益2,200億円を達成するためには、収益性の高い優良資産の選別をこれまで以上に厳格に行っていく必要があると考え、PATRACのリスクアセットコストを従来の8%から10%に引き上げました。また案件のフォローアップ体制も強化します。従来は案件がスタートしてから6 ヵ月後に行ってきたフォローアップを、よりスピーディな経営判断による利益の拡大と損失のミニマイズを実現すべく、案件開始3ヵ月後から実施することにしました。

※ PATRAC=Profit After Tax less Risk Asset Cost=連結純利益-(リスクアセット×10%)
  PATRAC>0、およびその極大化が目標



>営業部および事業会社を約100のポートフォリオ・ユニットに再編するとともに、



このへんの組織論は興味深い。一度中身で体験している人に話を聞いてみるか…。


>資本コストの概念を導入した当社独自の指標であるPATRAC※


この指標ってのは、凄く管理するのが難しい。。。これをどういうふうに社内に根付かせているのか、それは興味深いなー。あまりに抽象的な指標をつくると、管理屋ばかりが幅を利かせてダメになった出井SONYを思い出すもんなー。


竹内 慎司
ソニー本社六階

『ソニー本社六階』(竹内慎司著)を読む~内輪からの暴露本はなかなか興味深い

http://ameblo.jp/petronius/entry-10001521549.html




     
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★★★★★星5つです。



僕は山崎豊子さんは、かなり好き。

この人は、組織人の切なさ悲しさをよぉ~くわかってらっしゃる。

 
 

この本は、学生時代にもし総合商社を目指すならば、ぜひ読みなさいと三井物産の人に進められた覚えがある。でも、伊藤忠商事の話なんですよね。その『薦めかた』は、とてもいいと思う。これは、確かに商社を目指すときには読んでいて損はない。


しかし、もともと山崎豊子さんは、商売人の家の栄枯盛衰を描いてきた人だけに、現役の組織人(サラリーマン)が読むと、ぐっとくることこの上なし。



ちなみにシベリヤに10年抑留されて、それから生まれて初めてサラリーマン勤めを始めた人が、もともとの経歴が素晴らしいとはいえ、わずかの間に伊藤忠商事の副社長まで登りつめていく様は、物凄いサクセスストーリーにしてビルドゥングスロマン。鳥肌が立つ。


信じられないドラマチックな経歴ですが、これって「けっこう実話」なんですよね。


それがすごい(苦笑)。

元伊藤忠商事会長にして、中曽根政権の闇のフィクサー瀬島龍三氏がモデルです。


ただ、あまりに美化して描きすぎていて、「瀬島伝説」という美談を作ってしまい、彼の欠点や問題点を覆い隠してしまったという批判も強いです。なにしろ、理想主義の素晴らしい日本人として、涙が出るような描きかたです。


----------------------------


作中で、10年のシベリヤ抑留から帰還して身体も精神もボロボロの元軍人の壱岐正が、はじめて会社勤めしている時に、電話がかかってきて「棚卸」(在庫棚卸のこと)意味が分からずに、新入社員みたいな若造に罵倒されるシーン(笑)があるが、その数年後既に彼は副社長まで登りつめます(笑)。すげーよまじで。






それにしても、よくもまぁこれほどの緻密な情報を集められたものだ。


この作品には、総合商社の二つの側面を、描き出している。




一つは接待と不正、ほとんどギャンブルである相場で利ざやを稼ぐ獰猛な悪徳商売人として他人の褌を食い物にする腐敗した側面。



そして同時に、全地球規模での国益までも含めたストラテジーを、その情報力と総合力と取扱高を利用して行動していく日本の前線部隊としての側面。



たぶん商社マンというのは、壱岐の対象であるライバル鮫島のような悪徳獰猛な側面と、壱岐のような理想主義でストラテジックな側面を併せ持つ人種なのだろう。確かにぼくの付き合いのある大商社の諸先輩方には、そういった風格と怖さみたいなものが同居している。今は、投資銀行化してきているので、そういった狡猾さの側面は急速に消えつつあるが。それでいいのか?。

この作品の大きな流れとして、戦後「組織力」をバックに強大化しつつある三井・三菱・住友などの旧大財閥の連携に対抗して、野武士集団として財閥を背景に持たない繊維問屋出身の伊藤忠商事(近畿商事)が、



財閥に負けない組織力と総合力を発揮する体質に脱皮するため



の苦悩を描いている。


その「総合化」「重化学工業化」という抽象的な変化を、その中核にいた組織のプロである瀬島龍三元大本営参謀の人生を小説化することであぶりだしている。



日本の総合商社マンという世界的にもめずらしいものの生な感触をここまで描き出している文章を僕は知りません。


現在では、その「重化学工業化」の後に大土地バブルとIT革命を経て、豊富な資金力信用力を利用した「投資銀行的な側面」と、やはり口銭と利ざやで稼ぐ側面が同居しています。



ビジネスの世界に今いる自分の日々の状況などとオーバーラップして一気に読んでしまいました。しかし、女性であるにもかかわらず、ここまで男性的な苦悩とビジネスの現場を描ける山崎さんの筆力には、驚嘆させられます。というのは、男性でもまともに描けない「組織の力学」が見事に描ききられているからです。


またラストシーンは、物凄く感動した。



まさに、男の生き様だとぐっときた。もともと、第1巻の最初の最初で大門社長は、明治に政商から出発した財閥としての伝統に基づいた大組織と戦える組織力を近畿商事にもたらすために、壱岐正を雇います。その眼力に素晴らしさが証明される瞬間は、涙なしには見れませんでした。商社の会社面接を受ける学生は必ず読めといわれるようだが、この本は、数年大組織で働いた経験がある人、ましてや財閥系の大商社と非財閥系もしくは中小の専門商社との違いを見たことがある人ならば、唸らせられ、実感する作品です。

また、主人公壱岐正(瀬島龍三)は大本営参謀時代から大商社の商社マンとして上り詰めるまで一貫して、大東亜戦争を参謀として企画した真の理由である、石油エネルギーの確保という国益を追う真摯な姿、そしてその世界の汚れきった泥臭さの対比は、見事といわざるを得ない。



そして、日本という経済立国が成立するための最大のKSFは、エネルギーの確保であるという現実はいまだ変わっておりません。国家戦略と地球を見据えるスケールの大きな作品でした。読んでよかったです。物語としては、壱岐正かっこよすぎです。


時間があれば、ぜひモデルの瀬島龍三の伝記や評価も合わせ読むと、戦前から続く日本社会の縮図を感じられて、素晴らしいテキストだと思います。


 
著者: 瀬島 龍三
タイトル: 大東亜戦争の実相  
 
著者: 保阪 正康
タイトル: 瀬島龍三―参謀の昭和史  
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