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Robert A. Gross
The Minutemen and Their World (American Century Series)

★★★★★星5つです。


<<アメリカ独立革命時の民衆史>>


1977年にアメリカ史研究のバンクロフト賞を受賞した著作。この著作は、1775年を中心にほぼ半世紀にわたり、コンコードの住民の動きを追っている。グロスは、関係資料が残りにくい『無名の一般市民』が、どのように暮らしていたかを、丹念な計量的・統計的資料から導き出している。一般にこのような手法は、民衆史というカテゴリーに入る。


民衆史などのような分野は、一般読者にとっては、非常につまらないことが多い。


物語的な流れを重視した従来の歴史学は、ある意味話を面白くしたり政治的イデオロギーが挿入されてしまい、本当に「どう?」であったかが、不明になっています。また、当然に国王や英雄などの、その時代の記録対象になりやすい偉大な人物「のみ」に偏って、その時代の普通の人々がどう暮らしていたか?がわからなくなってしまいます。


その反動として、教会の記録や商売の手帳や無名の人々の日記や役所の住民票みたいな統計的なモノを丹念に追って、その時代の「名もなき無名の人の生活」をあぶりだそうというのが、目的だからです。名もなき民が、おもしろいわけないじゃないですか。


しかし、この作品は違います。


桁外れに面白い読み物!にもなっています。バンクロフト賞を受賞したのも、頷けます。18世紀当時の米国の名もなき人々が、どのような動機でアメリカ独立革命に引き込まれ、また積極的に加担していったのかを記述しています。膨大な資料を基に構成しているにもかかわらず、小説を読んでいるような具体性と面白さがあり、著者の文才が伺える。


ポール・リヴィアな記載など、当時のコンコードは当時の世界帝国である強大な軍事力でアメリカ植民地を統治する大英帝国の駐留軍と最初に戦火を交えた、アメリカ人にとっては、建国の聖地で、建国の神話の場所なので、たぶん日本人にとっての徳川家康とか坂本龍馬みたいなもので、全国民知らぬものいない話です。こういう典型的な話にかぎって、他国の人は知らないものです。忠臣蔵をアメリカ人が知らないようなものです。


日本語版は絶版?『ミニットマンの世界』という邦題で北海道大学出版かなにかで出ていたような気がする。しかしマイナーであるがアメリカ独立革命期の歴史を学ぶものには、必須の著作です。


僕個人としては日本社会の村落共同体や中央集権的なありかたが嫌いなので、「そうではない」分権的なアメリカの権力偏在のあり方に興味があり、社会人となった今でも時々読み返します。ここら辺の建国経緯の議論から始めないと、なぜあれほどの強大な中央集権政府(=連邦政府)と英国の国王をモデルにした大統領の強大な権力があるにもかかわらず、異様なほどに権力分散的な社会が出来上がったのかは、わからないのです。


この本の興味深いところは、アメリカ独立戦争期のコンコードというあまりに典型的な北部の町の全住民の人生をモデルにしている点です。ヴァージニア州の年季奉公人のような荒くれ者の社会と異なり、北部にはプロテスタントの強烈な教会共同体が根付いており、このコンコードの当時に全住民の統計は、完璧に教会に残っていたというのも、歴史教材としては最高でした。


その全住民の、親の世代から子供の世代への年代記を読むような流れは、著者がもともとジャーナリストであったことからも、分かりやすく物語性に富んで進みます。


当時、豊かになりつつあった北部の町コンコードは、土地が少なくなり子供に財産を分け与えることができなくなっており、財産を与えることのできない父親の父権・求心力は強烈に低下し、そのことは、回心(コンヴァージョン)の経験による選民意識やタウンミィーティングなどの軸としての教会共同体そのものの求心力が弱くなり、一枚岩だった町が、バラバラになりつつある激動の時期でした。


その時、アメリカ独立戦争が起こるのです。


はっきりいって、最初、アメリカ人のほとんどは、なんでわざわざ大英帝国と戦う必要があるのか、疑問だらけでした。当然、イギリス帝国の臣民である住民は、イギリス国王に忠誠を誓うべきだと主張する人もたくさんおりました。たぶん、あんまり実利的にも、得ということはなかったようなのです。


それが、なぜ独立革命に熱狂的に参入していくのか?。


その辺の描写が克明に描かれており、久しぶりに素晴らしい歴史モノを読んだ、という気分を起こさせます。


*********


ちなみに、大学の授業で4人しか居ない講義で、歴史学の先生に徹底的にしごかれたのを覚えている。この時の、授業は今も人生に生きている。一般教養の一コマに、あれだけ情熱を傾ける学生もめずらしかろう(笑)。一冊の本を、1年かけて徹底的に読み込み討論するという経験は、さすがに社会人になった今では、ない。けど、見事な文章は読み込んだ分だけ、自己を相対化する役に立っているような気がする。 この本は、素晴らしい名著でした。



アマソン引用

Book Description
Foreword by Alan Taylor.
Epilogue by the Author.

The classic work on one town's revolution -- now with a new foreword and epilogue.

On April 19, 1775, the American Revolution began at the Old North Bridge in Concord, Massachusetts. The "shot heard round the world" catapulted this sleepy New England town into the midst of revolutionary fervor, and Concord went on to become the intellectual capital of the new republic. The town -- future home to Emerson, Thoreau, and Hawthorne -- soon came to symbolize devotion to liberty and intellectual freedom. In The Minutemen and Their World, Robert A. Gross has written a remarkably subtle and detailed reconstruction of the lives and community of this special place, and offers a compelling interpretation of the American Revolution as a social movement.

The Minutemen and Their World, first published in 1976, is reissued now in a twenty-fifth anniversary edition with a new foreword by Alan Taylor and a new Epilogue by the author.


About the Author
Robert A. Gross is Forrest Murden, Jr. Professor of History and American Studies at the College of William and Mary. He lives in Williamsburg, Virginia.

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