何故か東南アジアで小説暮らし・リハビリ編

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即興連載小説:白石君 ・・・最終回ですマリオ

 

 

 3年E組の棋王を自認する僕としては、まるで道場破りにも似たいきなりの挑戦者である白石君に連敗するわけにはいかない。

 前もって日曜日に勝負の約束を交わしていたとしても、学校ではなく僕の家での勝負を挑んできた彼の意図はいったい何なのか、そんなことを考えながらも、ここは一勝一敗のタイに持ち込んでから三局目は次回の楽しみとしたいと思い、そんな気持ちで手を進めていたものだから、いざ盤面での深い読みまで及ぶはずはなく、二局目も痛恨の悪手を指してしまった。

 

 棒銀作戦に出た僕は、白石君の角頭目指して突き進み、銀将を犠牲にして相手の陣地へ飛車を暴れこませる作戦なのだが、なんと彼は自身の飛車を四筋に浮かせて、銀を角頭に突き当てたところ、右から左へすっ飛んできた飛車によってかっさらわれてしまい、結局飛車交換の銀損となってしまったのだ。

 戦意をかなり喪失してしまった僕に好手が浮かぶはずもなく、やがてジリジリと追い詰められて二局目も負けてしまった。

 

 盤面を再び見つめる僕に白石君は「今日は君が見落としたのと、ちょっと僕に気を遣ったからやろね」などと言い、僕は素直に負けを認め「白石君、強いわ」と弱々しい笑いを無理に浮かべて煎餅を勧め、そしてぬるくなってしまったお茶を飲みながら、しばらく学校の話などを交わした。

 

「就職するのか?」

「成績悪かけん、高校は受からんっちゃ」

「専門学校に行けばどうなん?」

「うちはそんなお金の余裕はなかやけんね」

「そうなんか~、うちも貧乏やから、バイトしながらやな」

 そのとき母親が奥から出てきて「お茶、ぬるなってしもうたやろ、熱いのもう一杯飲んで帰り」と白石君に言い、あらためて運ばれたお茶を冷ましながら飲んでいると、外は次第に暗くなってきた。

 

 僕は白石君を家まで送っていった。彼は「ひとりで大丈夫ぶやけん」と言ったが、「夜道は暗いからな」と、送っていった帰りは今度は僕がひとりになるのだから、まるで説得力のないことを言って、無理やり彼と一緒に家を出た。僕は白石君ともう少し一緒にいたかった。

 

 彼の家は古びた二階建てのアパートの一階で、風呂はないとのことで、少し離れたところの銭湯へいっていると言った。「ただいま」と言いながら白石君がドアを開けると、お母さんが料理を作っているようで、煮物の良い匂いが漂ってきた。奥の方ではテレビの音が聞こえてきた。

「また来てくれよ、今度は勝つからな」

「また行ってもよかね?」

「あたりまえやろ」

「ありがと」と言って白石君はドアの中に消えた。

 

 白石君は僕のプライドを木端微塵に砕くほど強かったが、クラスではこれまでと全く変わらず、僕を打ち負かしたことなど一切口には出さず、相変わらず僕の将棋戦況を後ろで見守っているだけであった。

 そして彼は僕の家に再び来ることはなく、突然引っ越してしまい、ある日担任が「白石君は、急に九州の田舎に帰ることになってしまいました。皆さんによろしくとのことです」と報告をした。

 「えぇ~っ?」という驚きや疑問の声がどこからも誰からも聞こえないほど、白石君の存在はクラスの中では薄かったようだが、僕には彼がいつまでも大きな存在としてこころに残り続けるのであった。

 

‐了‐

 

※これは実話なんですよ、実は。なんちゃって。爆  笑

 

グッド!大切なもの

 

 

 

 

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即興連載小説:白石君



これまで5回のお話は以下で最初からお読みいただけます。グッド!

 

⇒ http://ameblo.jp/perorin/theme-10101273490.html

 

 

 将棋というものは、始めた当初はだれもがヘボ将棋で、むやみやたらと歩を突いていって、数手先など読む術も持たないから、定石というものを少し知っている相手の前には全く歯が立たず、あっという間に王将の逃げ場がなくなってしまう。

 つまり「詰んだ」という結末まで数分かからない対局もある。

 

 もちろん僕自身はこれまで数多くの対局において、場面場面での定石、つまり最善手というものには自信を持っていたのだが、白石君を相手に手を進めていくうちに、彼も「定石」の極意を会得しているようで、ふたりの勝負は僕がこれまで学校で打ち負かしてきた相手の対局内容に比べて数段ハイレベルなものであった。

 

 一局目は中盤あたりまで淡々と手が進み、両者がっぷり四つの五分五分というところであったが、8筋の歩を切ってこられたものを、ほぼ無意識に同歩と応じると、同筋の桂馬の頭に歩を垂らされ、「アッ」と気づいたときはもう遅い、桂馬を取られてと金に動き回られ、一気に局面は終盤に突入し、僕の王将は見事に詰んでしまった。

 

「強いなぁ、参った」


「そんなことはなかよ、君が見落としたからやけん」


 見落としは十分な敗因である。

 将棋で負けたのは、父親相手にこの年の正月以来だっただけに、詰まされた盤面をしばし呆然と見つめていた僕に白石君は「もう一局やろう」と言い、「よし今度こそ!」と応えて駒を並べ始めたものの、目の前の白石君の身体が、どういうわけか少し大きく見えたりもするのであった。

「今度は君が先手でやろう」

 白石君の言葉に甘えて、僕は2-6歩と飛車先の歩を突き、ありきたりではあるが最も速攻となる棒銀作戦で雪辱に出た。

 3-4歩と白石君は当然角道をあけた。

 

つづく・・・





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体調立て直しの旅にでていたこともあって、一か月余り、連載小説「白石君」を休んでいましたが、ふたたび続けます。ニコニコ

 

これまで4回のお話は以下で最初からお読みいただけます。グッド!

 

http://ameblo.jp/perorin/theme-10101273490.html

 

白石君 5

 

 白石君がやってくる日曜日、朝刊配達を終えてから、母親に「今日、午後から同じクラスの友達が遊びに来るから」と一応は伝えておいた。

 家族が六人もいたことが大きな要因だったのか、いつもお金が無いと言っていた僕の家は、それでも父親の勤務先は既述したとおり大手鉄鋼会社の直雇いだったので、従業員への戸建て住宅の斡旋の恩恵あずかって、数年前に今の住所に小さな平屋建て一戸建て住宅を新築したことは、唯一賞賛に値する父の快挙と言えた。

 

「友達が来たらお前の部屋にあがってもらったらええ。この前お祖母ちゃんからもらった煎餅でも出そかね」

 母はこれまで息子の友達など一度も訪ねて来たことがないだけに、少し戸惑い気味に言った。

「何もいらんで、お茶だけでええから」

 

 平屋建ての住居は、和室が三部屋と台所、風呂とトイレで構成されていて、家族六人、つまり子供が四人いるということは、自分の部屋などあてがわれるはずはないのだが、僕は長男という特権だろうか、三畳のひと部屋をひとりで使っていたことは、今思い返しても不思議である。

 

 午後二時ちょうどに白石君が「こんにちは」とやってきた。まるでその時刻まで近くに隠れていたような正確な登場であった。

「よく来たなぁ、あがれよ」

 小さな玄関のすぐ目の前が僕の部屋だ。さあ入ってと言い、さらに白石君を促したが、彼は例のヘラッとした顔をして「いや、ここでよかけん」と言って上り框に腰をおろしてしまった。

「遠慮せんとあがれよ、さあっ」

「いや、ほんとにここでよかよ、ありがとう」

 そう言って白石君は腰をおろしたまま動こうとしないのだ。しつこく勧めるのも彼が気を遣うだろうから、君がそれでいいならここでやろうということになった。

 

 二つ折り式の薄い木製将棋盤を広げて、僕たちは無言で駒を並べ始めた。ピシッピシッと気持ちよ良い駒音が上り框に響く、その音が聞こえたのか母親が奥から出てきて「あがってもらったらええのに、こんなところでお尻が冷たいやろうに」と言った。

「白石君がここでええって」

「そんなこと言わんと、遠慮せんであがってや」と母は言うが、振り駒から白石君が先手となり、8‐4歩と指したので、母は諦めていったん奥に戻り、薄い座布団を二枚持って来てそれを置き、もう一度奥に引っ込んだら、今度は丸いお盆に湯気が立ち揺らぐ番茶と数枚の煎餅の入った木の器を乗せてゆっくりやって来、「お尻が痛かったら、ほんまに部屋に入ってもらいや」と言い残した。

 

 僕はようやく7-6歩と角道をあけた。

 

つづく・・・

 

 

 

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こんばんは~、右腕右上半身につづき、右膝がまた痛みはじめた、ポンコツ野郎のPeroです。むっ

 

過去に110メートルハードルの和歌山市内中学校記録保持者(これは少しオーバーですが)だったあの脚力はどこへ行ったのでしょうか?笑い泣き

 

昨日の補足でですが、大昔は和歌山市内にも路面電車が走っていましたよ、自転車がパンクしたときなどには、情緒ある市電に乗って高校に通っていました。マリオ

 

路面電車の話題がしつこいって?

 

はいはい、それでは白石君の4回目です。グッド!

 

白石君 4

 

 当時、僕は月曜日から土曜日までは朝日新聞の朝夕刊配達、日曜日は朝刊配達のバイトを行っていた。

 バイト料はかなりの金額になったが、母に半分ほど渡し、残りは中学校での昼のパン代と自分の好きな本やレコードなどを買うとすぐになくなった。

 なぜ朝夕刊配達のバイトをする必要があったのかと問われれば、それは単に家が貧しかったからであるが、それだけではない。

 朝早く起きて暗いうちからまだ寝入っている家々に新聞を配って回るのは楽しいし、次第に夜が明けていく街の風景を見ながら自転車をこぐのは気持ちの良いもので、夕刊配達のときの一日が終了に向かう独特な町の雰囲気とともに、中学校一年生のころから僕の生活の枠組みにガチンとはめ込まれていた。

 雨の日は雨合羽を羽織って、新聞が濡れないように気遣いしながら配達するのは大変だったが、雨の日はまた異なった情緒があって、嫌ではなかった。

 だから特に苦にもしなかった新聞配達のバイトは、休みはほとんどなかったが、日曜日の夕刊だけは新聞自体が発行されていなかったので、朝刊配達を終えてから夜寝るまでが一週間の中で唯一のんびりできる時間帯であった。

 

 白石君は僕が毎日学校を終えてから夕刊配達のバイトに行くことを知っていたようで、土曜日も午前の授業が終われば夕方四時ごろまでは空いているには空いていたが、少しの時間しかないからゆっくりできる日曜日を選んだのだろうと思った。

 

「今度の日曜日に君の家に行ってもよかね?」

「えっ?いいけど、何するの?」

「将棋、やろう」

「将棋なら学校でできるやろ?」

「君の家でやりたいっちゃ」

 白石君はこのとき初めて口を朗らかに開けて目を細め、いわゆる「笑顔」を僕に見せた。その笑顔がすごく良くて、僕は「じゃあ、やろう」と、ほとんど無意識に返事していた。

「僕の家、知らんやろ?」

「だいたい分かるから、心配なか」

 だいたい分かるとはどういうことなのだろうと、少し不思議に思ったりもしたが、ともかく次の日曜日の午後二時に白石君と約束を交わした。

 白石君がなぜ僕の家にまで来て、将棋をやりたがるのか、このときは全く予測がつかなかった。単に平日はバイトがある僕を気遣ってのことだろうと解釈をした。

 そして日曜日がやってきた。

 

つづく・・・

 

しかし、僕の妻はもうこの世にいないのですよね、本当に、来月一回忌なのに、未だに受け入れられません。ショボーン

 

グッド!

  

 

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これまでの話は⇒ http://ameblo.jp/perorin/theme-10101273490.html です。グッド!

 

 白石君 3

 

 次の一手を沈思黙考していた僕の右肩後方からの突然のつぶやき。

「そこは角切りやな」

 イントネーションは関西なまりではなく九州のそれだ。振り向くと白石君が盤面をじっと見つめながら立っていた。

 初めて耳にした気がする彼の言葉、声のトーンは意外に高め、僕と視線が合うと、少し恥ずかしそうな顔をした。

 

 盤面に目を戻す。

 白石君のつぶやきの手を打つと、つまり角を切って銀で取らせて、その銀の腹に手持ちの飛車を叩き打つ、相手は王将との間に相駒を打つ、相駒の頭に桂馬をピシッとこれまた叩き打つとあとは定石手順で簡単に詰めに持ち込めるっていう寸法である。

 参った。その手を僕は見落としていたのだ。

 白石君のつぶやき通りの手を打ちたくはなかったが、勝ちが見えるとあればそれを選ばない訳にはいかない、たかが将棋だ、義理人情の渡世の仁義や人の言うとおりにやりたくないという意地は不要、僕は「そうやな」と言いながら角を切った。

「白石、余計なこと言うなよ」と今日の相手、できない奴らのおとなしい派のひとりである柏木が言う。

「いや、僕が考えてた手と同じやっただけや」と僕、白石君のほうを振り返ると例のヘラっとした顔で黙ったままだ。

 

 将棋は一気にケリがついた。もちろん僕の鮮やかな終盤の寄せで終わった。

「白石、俺と一局やろうや」と、柏木が白石君に将棋盤の前に座れと指さしながら言った。白石君は「僕はやらんけん」と言うと、その場を離れた。

 柏木は白石君と同じ九州からの引っ越し組で、言葉は無理に関西弁を使わず、九州弁で通していた。社会科の特に地理が大得意で、世界中の国の位置やほとんどの国の首都を記憶していたが、その他の科目は皆目できない変な奴だった。

「逃げよったな白石、そしたらもう一局やるっち」

 柏木の要求にこたえて、この日の昼休みはもう一度対局したが、今度も僕が圧勝したことは言うまでもない。

 

 それからも昼休みや夕刊配達のバイト時間までの短い間に、僕への将棋のチャレンジャーがあとを絶たなかったため、学校では授業時間以外は将棋に興じていることが多かった。

 白石君はいつも僕の斜め後ろでヘロッとした顔つきで立っていたが、先日の「そこは角切りやな」の一言以降は一切何も言わずに戦況を見守っていた。

 そしてある日の放課後、「今日も夕刊配達のバイトか~」と、うんざりしながら教室を出たとき、白石君が言いにくそうに声をかけてきた。

 

「今度の日曜日に君の家に行ってもよかね?」

 

つづく・・・

 

 

グッド!音譜

 

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