<14th July Sun>

「婆さんや、暑いから冷たい麦茶でも飲みたいね」、なんていう会話はイギリスではまずありませんが、昨日今日はそうでした。昨日は30度を軽く越して、いやー、暑かった。湿気は少ないので外は快適だけど、冬用にできてる家の中は暑さが篭って不快ショック!  そんな夏の週末、土曜日は食生活改善と体作りのセミナーに。今日は、明後日から我が家に滞在するお客様のためにムスメの部屋をお片づけ。とりあえず放り込んでおける広い屋根裏部屋があってよかった。

7月のROHはバレエがない分、オペラばっかりで忙しいったらないんですが、写真とざっくり感想だけ備忘録として残しておきましょう。

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London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

6月27日の初日と7月3日の2回、ROHのヴェルディのシモン・ボッカネグラを左右から一回づつ観ました。


シモン・ボッカネグラはジェノヴァの総督で、幼い時に行方不明になった娘との再会を果たすが、恨みを持つ部下に毒殺されるという話で、細かい設定でかなり無理のある展開なので感情移入は難しいけど、ヴェルディらしい重厚さのある渋い作品で、リゴレットと同じ久し振りに会った父娘の悲劇。


華やかさに欠けるのでヴェルディのオペラとしてはそんなに人気がない上に、3年前にドミンゴ先生が歌ったのをまだ皆が覚えているので、「えーっ、又これやるの~?!」、と思われて、今回は切符の売れ行きが悪く、ダンピングもされたようですダウン (注:ダンピングは高い席だけなので、私には縁がありません)


80年代のモシンスキーのプロダクションは笑っちゃうくらい古臭いんですが、それが却って新鮮で、まるでカビの生えてそうな衣装は豪華な上に役柄に忠実なので(最近のオペラではこれは珍しい)、とてもわかりやすく、音楽にも合ってました。


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)      London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)


London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
  London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)  

  

  London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

Simon Boccanegra


Director Elijah Moshinsky
Set designs Michael Yeargan
Costume designs Peter J Hall
Lighting design John Harrison
Fight director Natalie Dakin

Conductor Christopher Willis
Simon Boccanegra Thomas Hampson
Amelia Grimaldi Hibla Gerzmava
Jacopo Fiesco Ferruccio Furlanetto
Gabriele Adorno Russell Thomas
Paolo Albiani Dimitri Platanias
Pietro Jihoon Kim


パフォーマンスについては、どうしても3年前のドミンゴ・チーム(→こちら )と比べてしまうわけですが、

タイトルロールのトーマス・ハンプソンは、もう駄目になってるかもと思って期待は低かったのでだけれど、一本調子であっても声はちゃんと出てたし、一本調子気味なのと、時折目玉をひんむく大袈裟な演技がサイレント映画スターのようで笑っちゃいましたが、なかなか良かったです。
London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
時に好きなわけではないけど、長身でハンサムな彼は舞台映えもして華のあるバリトンだと思います。でも、フィエスコ役のフルラネットの重厚さと貫禄と比べると薄っぺらくて、ニセモノに聴こえてしまいました。

    London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
  
でも、それは、フルッチョ・フルラネットがいかに素晴らしいかということであって、私はバスやバリトンには惹かれないのですが、なぜか生で聴くフルラネットは何度聴いても飽きることがなく、まだつい最近ドン・カルロで何度も聴いたばかりなのに、やっぱり凄い人だわと感心。脇役であって彼の格調高い深い歌唱のおかげで全体のレベルがいつもぐっと上がります。あ、でも、そう言えば、先回は大事な生中継の日に体調崩して口パクになっちゃったんだったよねにひひ(声の代役はJトムリンソン→こちら )。

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)    London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)      London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

    London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
ストーリーの中心であるアメリア役は、先回は例の箱ふぐポポ(マリーナ・ポプラフスカヤ)だったので誰だって勝てるのですが、今回のヒブラ・ゲルマーワは、ポポと比べては失礼なくらいの張りのある美声で素晴らしかったです。

ROHにはよく出るソプラノで、これまで良い時(オネーギン→こちら )とどうってことない時(ラ・ボエーム→こちら )とあったのですが、この役は彼女に合ってるのでしょう。但し、ヒブラ嬢は演技はいつもあまり上手ではないので、声は不快だけど芝居は上手いポポ嬢にその点では負け。でも、オペラだから、どっちが大事かは明らかですよね? 

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)
芝居が下手といえば、アメリアの恋人であるガブリエレ役のテノール、ラッセル・トーマスはひどかった。もっとも、小柄な黒人の彼は例え迫真の演技をしてもイタリア人美男子という元々の設定からあまりに外れているのでハンディキャップが大き過ぎるわけだけど、これではアメリアとのラブシーンもケミストリーが全く無し。
でも、オペラでは見掛けや演技がどうであろうと歌さえ上手けりゃいいわけで、だからこそ彼が抜擢された
んですが、男らしく力強いテノール声はなかなかのもの。彼だけが聴いたことのない歌手で不安材料だったし、無名の彼には期待はしてなかったけどど、これは嬉しい驚きとなりましたクラッカー
先回のジョセフ・カレヤのよく響く美声にはまだ敵わないけど、すでにNYメトでティトーの主役もやったようだしアメリカ人の新人ラッセル君もこのままもっと伸びて欲しいものです。厚みのある声なので、容貌を生かして、いつかオテロをやるんでしょうが、演技の勉強もしましょうね。

ボッカネグラに毒を盛る悪役のパオロ役、今回はこの前リゴレット役(→こちら )で印象的だったディミトリ・プラタニアス。ずんぐりむっくりの醜男は実に上手く役選びをしてて、今回の卑屈な家来(リゴレットもそうだ)には全ての面でうってつけ。歌が下手では容貌がぴったりでも台無しだけど、影のあるなめらかな声で脇役ながら存在感をしっかり示しました。

London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)    London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

というわけで、全体のレベルがなかなかだった歌手陣ですが、でもやっぱり、何が一番素晴らしかったかというと、それはオーケストラで、「そう、流れるようなヴェルディってこれだわ」、と感激させてくれた指揮者パッパーノ大将には毎度のことですが感謝。
London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)     London Opera-loving Kimono-girl (着物でオペラ in ロンドン)

というわけで、先回程華やかさはありませんが、ROHとしてはなかなかのレベルだったのではないかしら。


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