<10月2日(日)>

晴れインディアン・サマーの週末は実に快適で、ゆっくり英気を養いました。明日から又慌しい毎日が始まりますが、精一杯頑張らにゃ。だって、今月のスケジュール表は真っ黒で、なんとROHに11回、バービカンに3回、ロイヤル・フェスティバル・ホール3回、グラインドボーン1回という物凄さ。その上に人前でお琴を2回弾くので練習もしなくちゃならなくて・・・ショック!

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9月19日と27日の2回、ロイヤルオペラハウスでプッチーニの三部作を観ました。話題性ではオールスターキャストのファウストの影に隠れてたものの、始まってみれば高い評価で切符の売れ行きもぐーんと伸び、新シーズン幕開け演目として幸先良いスタートとなりました。


超有名アリアもあり最も一般受けするコメディ仕立てのジャンニ・スキッキのプロダクションはすでに何度かやっていて、いつも似たようなラヴェルのスペインの時との組み合わせでお笑い二本立てだったのですが、こうして本来の3部作とパートとして眺めると、ナンセンスな滑稽さもなにか意味があるような気さえします。


まるっきり違う設定の個別オペラなのに、テーマが死ドクロということだけでなく、全作品にまるで心臓の鼓動のようなリズムが共通して流れ、優れた作品だということがわかります。一挙に上演されるべきなのですが、セットも歌手もたくさん必要になるので難しいのが残念。


3種類の死を描いて人間の哀しさが浮かび上がる3つの一幕オペラの内容は、


外套  若い妻の浮気相手を殺してしまう中年の伝馬船長のやるせない嫉妬

修道女アンジェリカ 貴族出身でありながら私生児を産んで社会からはじき出され、尼寺で健気に頑張る若い尼さんが息子の死を知って毒薬自殺をするが、神に許されて昇天する悲しさと救い

ジャンニ・スキッキ フィレンツェの金持ち連中の遺産争いに一計を案じる身分は低いが頭の切れるスキッキのドタバタ痛快な悪巧み 



Composer Giacomo Puccini

Director Richard Jones

家製作チームワンピース

IL TABARRO
Set designs Ultz/Costume designs Nicky Gillibrand/Lighting design D M Wood/Movement Director Sarah Fahie

SUOR ANGELICA
Set designs Miriam Buether/Costume designs Nicky Gillibrand/Lighting design D M Wood /Movement Director Sarah Fahie

GIANNI SCHICCHI
Set designs John Macfarlane/Costume designs Nicky Gillibrand/Original lighting design Mimi/Jordan Sherin/Lighting revived by D M Wood/Choreography Lucy Burge/Revival Choreographer Sarah Fahie


同じ演出家が担当し、衣装デザイナーも同じで、3つともリアルで色調の揃ったセットと1950年代に読み替えたことで統一され、連帯感ができました。 


音譜出演者男の子

IL TRITTICO

Conductor (3作全て) Antonio Pappano

オペラ三昧イン・ロンドン
IL TABARRO

Michele Lucio Gallo
Giorgetta Eva-Maria Westbroek
Luigi Aleksandrs Antonenko
Tinca Alan Oke
Talpa Jeremy White
Song Seller
Ji-Min Park
Frugola Irina Mishura
Lovers
Anna Devin/Robert Anthony Gardiner


オペラ三昧イン・ロンドン
SUOR ANGELICA

Sister Angelica Ermonela Jaho
The Princess Anna Larsson
The Abbess Irina Mishura
The Monitress Elena Zilio
Mistress of the Novices Elizabeth Sikora
Sister Genovieffa
Anna Devin
Nursing Sister Elizabeth Woollett
Alms Sisters Gillian Webster/Kathleen Wilder
Sister Osmina Eryl Royle
Sister Dolcina Elizabeth Key
Novice Katy Batho
Lay Sisters Melissa Alder/Kate McCarney


GIANNI SCHICCHI
オペラ三昧イン・ロンドン Gianni Schicchi Lucio Gallo
Lauretta Ekaterina Siurina/Anna Devin
Rinuccio Francesco Demuro
Zita Elena Zilio
Gherardo Alan Oke
Nella Rebecca Evans/Lisa Anne Robinson
Betto di Signa Jeremy White
Simone Gwynne Howell
Marco Robert Poulton
La Ciesca Marie McLaughlin
Maestro Spinelloccio Henry Waddington
Ser Amantio di Nicolao Enrico Fissore
Pinellino
Daniel Grice
Guccio John Molloy


オペラ三昧イン・ロンドン


オペラ三昧イン・ロンドン
外套


ルチオ・ガッロはジャンニ・スキッキもやり、そちらの方が声色駆使して大奮闘だったのですが、こちらの影のある哀れな中年男の方が良かったです。


若い美男美女の浮気カップルが素晴らしくて、豊満な若妻ウエストブルックと愛人の沖仲仕アレクサンドロス・アントネンコのタテヨコでかい二人の濡れ場は肉弾迫力で、二人とも歌も立派。


ラトヴィア人のテノール君、はじめて聴く名前だけど、気に入りました。若いのにすでにオテロも歌ったいるようですが、精悍なルックスも声もマッチョ力でぴったり。今回のめっけものは彼でしたが、これ以上太っちゃ駄目よブタ



オペラ三昧イン・ロンドン


修道女アンジェリカ

楽しみにしてたアーニャ・ヘルテロスがちょっと前にキャンセルして大失望。

代役はトラヴィアータで何度も聴いたエルモネラ・ヤホで、上手いけど華がないから主役として存在感がでるのかしらと心配でしたが、これがなんと素晴らしい出来。


批評でもこぞって彼女が一番誉められて、上演順位の真ん中で一番地味なのを一番見応えのあるオペラにしたのはヤホの心の底から絞り出た悲しい叫びで、ぐっと来ました。

声自体に魅力があるわけではないしうんと小柄な彼女は華やかさに欠けるけど、コントロールの効いた立派な歌唱で、この役はとても向いてます。
オペラ三昧イン・ロンドン


他も女性ばかりで、たくさん尼さんがたくさん出た中でフレッシュなROH若手アーチストのアンナ・デヴィンがこれからを期待させて目立ってました。彼女は初日にシウリーナの代役でジャンニ・スキッキにも出たそうです。


    オペラ三昧イン・ロンドン    


オペラ三昧イン・ロンドン

オペラ三昧イン・ロンドン
ジャンニ・スキッキ


これが私には一番退屈だったのは、何度も観てるからというだけでなく、主役のスキッキのルチオ・ガッロの魅力不足だったのが理由ではないかしら。一応合格点なんだけど、プレミエのブリン・ターフェルのゆっさゆっさと登場しただけで笑いが起こるユニークな存在感に比べるとまったくカリスマ不足。


脇役の中ではプレミエからずっとこの役をやってるZita役のエレーナ・ジリオが今回も抜きん出て光ってて、この役は彼女以外には考えられません。修道尼アンジェリカにも出て、そちらも声量たっぷりで迫力。


一番楽しみにしてたのはテノールのフランチェスコ・デムーロだったんですが、ファウストに出てるグリゴーロと比べたら(誰でもそうだけど)声量がなく割を食った印象でしたが、清々しい声の好青年で、シウリーナとの若手カップルは溌剌として今までのコンビの中で最高。



オペラ三昧イン・ロンドン
そして、最高の功労者はやはり指揮者のパッパーノでしょう。何をやっても安定感のあるROH大将ですが、特にプッチーニは素晴らしくて、彼の表情も見える席の私には自信に満ちて楽しんでいるパッパーノがよく見えました。


     オペラ三昧イン・ロンドン



というわけで、サプライズ・ヒットとなった三部作を左右から一度づつ理想的な席で観られてラッキーなことでしたニコニコ


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