オペラ歌手は超生モノですから、ちょっと具合が悪いと歌えないのは仕方ないのですが、
誰が出ても切符の売れるROHのドル箱La Traviataには大した人が出ないのに、やっと今をときめくアンナ・ネトレプコAnna Netrebko(以下ネト子)がヴィオレッタをやってくれるというのでもの凄い切符の争奪戦になって話題沸騰でした。
で、ふたを開けてみたら、もっと騒ぎが大きくなってしまいました。
私の個人的な心痛も、まあちょっと聞いてくださいな。
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1月11日午前11時リハーサルは、申し込んでも滅多に割り当ててもらえない切符が運よく手に入ったのですが、休暇から帰ってきたばかりで仕事が山済みであるというだけでなく、予期せぬ不都合も生じて、どうしても休みが取れませんでした
代わりに行って下さった方がとても楽しんで下さったのでいいのですが、仕事を呪いましたわ
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14日の初日は、別のコンサート
があったので、行けず。
やっぱりネト子は素晴らしいと誰もが誉めそやしたけど、かぶりつきで聴いたバービカンのドロテア・レシュマン も素晴らしかったので、これもまあいいでしょう。
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17日の二日目は大変でした。なんせ当日午後3時半になってネト子降板の発表があったのですから。気管支炎だって。
初日はあんなに元気だったのにそんな事って、という驚きというよりは、やっぱりね、と思った人が多かったのではないでしょうか。
私もそう思ったのですが、もうここまで来たら大丈夫だろうと安心してたところにこのニュース。私は大好きなキーシンを蹴ってまで、直前に舞い込んだこの日のネト子に乗り換えたのに、どうしてくれるのよ!
切符を複数で買ってあるのは、何度も聴きたいからと言うよりも、キャンセル常習犯のネト子のための予備だったのですが、いきなり的中してしまうなんて・・・
で、代役は? Ermonela Jaho・・・。それ、誰? 聞いたこともないわ。ヴィオレッタ歌える人はたくさんいるのに、なんでまた無名の人を、と不安不満で一杯でしたが、幸い、このアルバニア人のエルモネラ嬢は、当日NYから急遽飛んできた割には振り付けもちゃんとできてたし、歌もなかなか上手だったので、かなり怒りが収まりました。最初からこの人だったら、私のROHヴィオレッタのランク付 では7人のうち真ん中くらいには入れてあげよう。
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20日の3日目は、2日前のお昼ごろにキャンセル発表。やっぱりね~。
日曜日にわざわざ行くのもめんどくさいなあ。でも他人にはそんな魅力のない切符を譲るのは失礼でしょうから、トーチャンに押し付けようとしたら、前に観た事あるし一枚しかないのなら嫌だということで(二枚あればムスメと行くけど)、仕方がないので自分で重い足取りで出掛けました(悔しいから椿の羽織 着て)。
せめてもの救いは、エルモネラ嬢はきっと時差ぼけも治ってさらに素晴らしくなる筈だということでしたが、これが見事に裏切られて、あの歴代最大最悪椿姫のマルチネズ嬢を少し彷彿させるほど不快な声だったんです
最初の日も最初はよくなかったけど後でどんどん良くなったので、今日もそうかと思ったら、嫌な声のまま終わりました。アンフィシアターの隅っこの席だったし途中で余程立ち去ろうかと思いましたよ。
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23日の4日目は、たしか前日にキャンセル発表がありましたが、この日は日本からいらした友人のアテンドでもあり、着物イベント として楽しめればいいやと私は納得済み。このために日本から早目にいらした春さんには申し訳なかったですが。
幸い、エルモネラ嬢も調子を取り戻してまあまあの出来でした。
しかし、この後、私はあと一回しかないが、果たして出てくれるんだろか? いくらオペラ三昧イン・ロンドンだって、エルモネラ嬢を4回聴くのは辛い・・・
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26日の5日目、やっとネト子が再登場。
でも私はこの日バービカンのNatalie Dessay 。
ネト子め、私の行かない日ばっかり出るなんて。
この日ナタリーがキャンセルして(ほんとに具合悪そうだったし)、ネト子が最終日にまたキャンセルするというのが私にとって最悪のシナリオで、ナタリーのお陰でそうはならなかったからいいけど、ネト子に振り回されてハラハラ度も頂点に達し、疲れてしまいましたわ。
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29日は正念場の最終日。今までは3回合計で44ポンドという安い席での予備でしたが、この日が運よく取れた舞台袖の44ポンドで本命だったんです。
午後に恐る恐るネットで見たら、ギャーっ、今日のcast changeが載ってる!
一瞬心臓がバクりましたが、それはネト子じゃなくて、お父さん役のホロストフスキーだったのでほっと安堵し、夕方いくらなんでももう大丈夫だろうと遅刻しないように早目に会社を出ようと思ったら、トーチャンから転送されたROHのキャンセル通知!
お昼頃に届いたメールを親切に のんびりと今頃送ってくれたのですが、「とっくに知ってるんだから、びっくりさせんじゃない!」と電話でトーチャンを怒鳴り付けちゃいました。夫婦仲まで危うくさせるネト子って・・・
まだ安心はできません。始まる前に舞台にアナウンスの人が登場したんです。
すわっ、ネト子がこの期に及んでキャンセルか、と思ったけど、それはすでに知っているホロストフスキーの喉頭炎による降板のお知らせでした。ディーマなんかどうでもいいから、引っ込め~、と石でも投げつけたい気分でしたよ。
わー、やっぱり綺麗ね~
暗いけど実がしっかり詰まっている豊かな魅力ある声だし、声量もあるわ~
カウフマンとの美男美女カップルにはうっとり~~
だけど、だけど、気管支炎が完治してないのか、時折声がかすれるんです。先週のナタリー同様、高音はちゃんと出るのに中音が。
うーん、こりゃあ最後まで歌えないかも・・・。一番の聞かせどころの一幕目の終わりの難アリアで勝負高音を出さなかったし、一幕目の終わりでちょっとしたカーテンコ-ルまでやったのは、「ごめんね、これで終わりよ」ってことかしら
と心配しながら席に付いた二幕目ですが、ここは歌唱力より演技力が問われる場面ばかりなので、完璧でなくてもOK。ネト子が大スターなのは、歌だけでなく、美貌と演技力も要因。大袈裟な芝居なのですが、自分の歌う場面じゃなくても一瞬たりとも手を抜かず役になりきっているのは立派。それを数メートルで見られてラッキー
生ネト子は何度か聴いているし、椿姫はDVDでも観てるので、新鮮な驚きは少なくて、予想通り期待通りというだけのことでしたが、ここまでギリギリ待たされると、「ああ、よかった出てくれて」という気持ちだけで一杯。(素直にありがとうとは言えないけど・・・)
私が撮った→
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しかし、話が逸れますが、実は来月、もっとハラハラしそうなコンサートがあるんです。
ネト子は今回ミスってもまた機会があるでしょうが、一度も生で聴いたことのない60代のエディータ・グルベローバはもうこれがロンドン最後のチャンスでしょうし、私はそのためにウィグモア・ホールの会員(それも一番安いランクじゃなく)にまでなったんですよ。
数年前にもドタキャンしたし、もし今回も裏切られてもがっかりしないように、今から自分自身をなだめています。
他の街にオペラ鑑賞遠征しようかとも思うのですが、お目当ての人が出るかどうかのハラハラと、裏切られた場合の落胆を考えると、二の足を踏んでしまいます。経済的時間的にかなり限りのある今の生活でそこまで犠牲にできるのかしら?
(ヴィオレッタだけで長くなったので、今回の椿姫の他のキャストのことはまた別途)