9月19日、金融街シティにある複合施設バービカンのコンサートホールにユダヤ人のFromental Halevy作(1799-1862)作曲のオペラLa Juive(ユダヤ人の女)のコンサート形式でのパフォーマンスを聴きにいきました。

     

これはロイヤルオペラハウスのプロダクションですが、なぜかバービカンを借りての公演。劇場のスケジュールの関係か、それともオペラハウスを2回満員にする自信がなかったのでキャパの小さいバービカンにしたのか?この7年間では初めての試みです。


ロイヤルオペラハウスでは時々コンサート形式の上演があり、いつもそこそこの客入りでしたが、今回は有名歌手は少ないし、あまり聞いたこともない作曲家の作品だったせいか、空席が目立ちました。バービカンは華やかさにも欠けるしロンドンの外れにあるので、オペラファンは行く気がしないのかもしれません。

私はいつものように着物で行きましたが(雰囲気に合わせてカジュアルにウールの着物 に格下げ)、オペラハウスほど心が弾まないんですよね、あそこって。


Halevyって誰? La Juiveって何? 聞いたことなかったです。有名じゃないのは駄作だからという可能性が大きいし(シラノ・ド・ベルジュラック がそうだった)、セットも衣装もないのだから一番安い席でいいやと思い、15ポンドの2階席に。



23 sept 1    20 Sept 3

      左側がコンサートホール              いつもはかぶりつき席だけど



ひらめき電球だけど、これが意外に良い作品だったんですよ~ ロケット   全く嬉しい驚き。


音楽はわかりやすくて美しいし、ストーリーもアリアもドラマチック。長いオペラでしたが、必死にえらく小さくしか見えない字幕を読んでいたらあっという間でした。


1835年パリで初演されたこの典型的な仏グランドオペラは暫くの間、最も上演回数の多い大人気オペラだったそうです。それなら駄作のわけないですよね。で、150年くらいお蔵入りになってる理由は、そのスケールの大きさから舞台化するのが難しいのと、ユダヤ人迫害という扱いにくいテーマのせいらしいです。

でも、宗教のちがいによる諍いは現代にアピールするはずだし、当時のように本物の馬や大群衆を実際に登場させないで安上がりに誤魔化す方法はいくらでもあるので(最近はそんなのばっかり)、この作品はもっと今の感覚の演出で上演されるべきだと思います。


そう思うのは私だけないようで、実際、最近あちこちでカムバック目覚しいようで、NYメトやウィーン国立歌劇場他でフル舞台の公演があったようです。そう言えば2、3年前に「ニール・シコフのユダヤ人があまりにぴったり」という批評を見た覚えがあり、あれがこれだったのだと納得。シコフは私の好きなテノ-ルの一人なので、今回のロンドンも彼で聴きたかったわ~。

来年2月、3月にパリのオペラ座でシコフがこれを歌うので(お相手はアントナッチ)、パリまで飛んでいきたいけど(ユーロスターだから飛ばないか)、英語の字幕出ないからなあ。DVDで予習すればいいのかしらん?


la juive 3   la juive 5

              ニール・シコフはあまりにもぴったりだ


la juive 1 ホセ・カレラスはあまりにもトッチャン坊やだ




中年役のテノールが主役で聴かせどころのあるオペラは少ないのですが、こんな良い作品があったのですね。かつてホセ・カレラスもCD作ってます。ちょっと若すぎるし声がこの役には甘すぎると思うので、やっぱりシコフの泣き節がいいでしょう。ドミンゴ先生も、あんなつまらないシラノをやるよりこっちやればよかったのに。

愛するアラーニャの「フレンチ・アリア集」にも入っているとても美しいアリアRacheal, quand du Seigneur もあって、ああこの歌はこのオペラのこういう場面だったのかと初めてわかってあらためて感激。




ドクロ 舞台は15世紀初頭のスイスで、ユダヤ人ゆえに子供を殺された男が、殺した相手の娘を育て、ある事件でその憎き相手に娘と二人で死刑(釜ゆで)を宣告され、最後は「今お前が殺したのが自分の娘だったんだぞ。ザマーミロ」、という復讐劇。

これが新派のお芝居とか水戸黄門のエピソードだったら、最後はほだされて「旦那、実はこの娘があんたが探してる子供でごぜえますよ」と告白して許してもらいめでたしめでたしになるところですが、オペラでは殺せる人はみな死んでもらいます。死ぬ直前のアリアが一番聞かせどころなので皆喜んで死ぬようだし。


自分の肉親と知らずに殺す命令を下して最後にしてやられるのはヴェルディのトロバトーレにそっくりだし、娘が親父の復讐の犠牲になるのはリゴレットも思い起こさせる展開ですが、このユダヤ女の方が先ですからね。


9月19日のバービカンでの配役はこちら。メトやウィーン、パリに比べると知名度では劣る歌手ばかりなのですが、皆さん熱演でしたよ。


クマ Eleazar (裕福なユダヤ人宝石商)             Dennis O'Neil

ネコ Rachel (Eleazarが拾って育てた娘)        Marina Poplavskaya

パンダ Cardinal Brogni (カウンシルの長でラシェルの実父) Alastair Miles

ブタ Prince Leopold (ラシェルの恋人だか実は妻子持ち) Dario Schmunck

ブタネコ Princess Eudoxie (不倫男レオポルドの妻) Nicole Cabell

しっぽフリフリ 指揮     Daniel Oren



クマEleazar

憎きブローニの赤ん坊を偶然火事から救って、いつか復讐の手段にするつもりが育てているうちに愛情が移り、異教のキリスト教の男との結婚まで妥協して許す優しい父親であるが故に、彼女の出生の秘密を明かして娘の命を助けるか、明かさないで復讐を優先するかのジレンマに苦しむ見せ場の多い役なので、中年テノールは皆やりたがるのではないでしょうか。


ウェールズ人のデニス・オニールは一昔前のイギリスの有名テノールで、ロイヤルオペラハウス版アイーダの映像に出ています(アイーダ役はチェリル・スチューダー)。何年か前にROHのトゥーランドットで出たときは、巨体で声量も桁外れなジェーン・イーグレンのまわりにブンブンするハエみたいでいいとこなしでもう盛りは過ぎたと思っていたのですが、今回のユダヤ親父は年相応の落ち着きも感じさせ、高音でちょっとだけかすれたものの、さすがかつての一流歌手と思わせる貫禄と技術。まだまだやれます。


la juive 2 見直したよ、デニス初老おじさん (今はもっと年食って白髪なんです)



ネコ Racheal

キリスト教徒に生まれたのにユダヤ教徒として育てられて死んでいくラシェルは、オペラヒロインの可哀相コンテストでは上位入賞まちがいなしの悲惨な女性で、リゴレットの娘ジルダ と良い勝負。


恋人は自分もユダヤ教徒だからと言ってたけど嘘だったし、それでも一緒になろうと決心したのに、今度はその嘘つき野郎は妻子持ちだとわかって彼女はぶち切れ、当時ユダヤ教徒とキリスト教徒の交際は禁じられていたので、自分たちの関係を暴露してその不倫野郎ともども牢獄へ。

だけど、彼を救ってと彼の妻に懇願され、私が嘘をつきました事実無根ですと前言撤回し、自分だけが(なぜか父親も)死刑になる覚悟をします。育ての父親が彼女の正体について本当のことを言ってくれれば命は助かったのに、ユダヤ父の憎しみのために目の前に実の父親がいるのも知らず哀れ煮えたぎる(水だか油だかの)釜の中に突き落とされるのです。


この出ずっぱりの大役、チケット売り出しのときは誰が歌うのか決まっていなかったのですが、他の有名歌手の都合がつかなかったのか、ROHの若手歌手育成Jette Parker Projectに参加しているロシア人Marina Poplavskayaが大抜擢されました。ファウストのBキャストでゲオルギューの出ない日は主役を張ってるプロジェクトの先輩Katie Van Kootenとこれで肩を並べるかもしれない程の大躍進。

あまり私の好きな声ではありませんが、すでに今度のROHのドン・ジョバンニのドンナ・アンナが決まっているようで、トントン拍子の出世。


la juive 4 私が出世頭ね!ドン・ジョバンニも聴きに来てね。




パンダ Cardinal Brogni

盗賊に妻と娘を殺されたと思って聖職に身を投じたブローニ伯爵は、かつてEleazarの息子を殺したことを申し訳なく思って友情をオファーするも拒絶され、さらに実は娘は生きていると知らされ、必死で居場所をつきとめようとするが叶わず、真実を知る唯一のEleazarとその娘をキリスト教審議会長の立場で死刑を宣言。かたくななEleazarと比べて、こちらの方が寛容なキャラで、娘を探し出したい父親の必死の思いが聞かせどころ。


ROHのハウスバリトンとも言えるアリステア・マイルズはいつも脇役で手堅くて、今回の大役も持てる力を出し切って頑張ったのですが、低音に迫力ないし、主役になるには地味で存在感が不足。


ブタ Prince Leopold

妻子持ちのキリスト教徒なのにユダヤ教徒と嘘をついてラシェルとも付き合う豚野郎。同情を買わないし、聞かせどころもあまりない脇役。

顔写真だとこのアルゼンチン生まれ(ドイツ系でしょうけど)のDario Schmunck、金髪碧眼でとてもハンサムなんだけど、実物見てがっくり。まるで「アーサー」などの英国俳優Dudley Mooreなんです。顔はいいのに、かなりの寸足らず。まあ典型的なテノール体型のひとつとも言えますが。

声は甘くて良いのだけど、 まだ技術的に安定してなくて、ベテランのオニールと比べるとまだまだヒヨッコ。これでは例えもっと背が高くても人材不足のテノール業界といえどもトップグループに入るのは無理でしょう。


la juive 9 la juive 8 顔は良いけど、脚が・・・それだけ?


ブタネコ Princess Eudoxie

女癖の悪い亭主を持つ奥さんの見本たるべき女性でしょうか? 不倫相手に彼の命を助けてあげてと涙ながらに懇願。出番は少ないけれど印象に残る役どころです。


アメリカ人ソプラノのNicole Cabellは一年おきにウェールズで行われるCardiff Singer of the Worldの2005年優勝者。まだ28歳ですが、すらっと長身の彼女が素敵なドレスで登場するだけでまさに雰囲気が華やかになる容姿。この日は白い洒落たドレスを着ていましたが、2回目のパフォーマンスでは赤いドレスだったようです。


la juive 10  若いのにこの妖艶さ


しっぽフリフリ 指揮者

中年ユダヤ人指揮者のDaniel Orenは来年パリでもこれを指揮するようです。オケピットに入ったら見えないでしょうが、指揮台での身振りが派手で、立ってるだけの歌手たちの後ろで一人ぴょんぴょん跳ねながら指揮してました。舞台に上がるのだから、きっといつもよりオーバーなアクションだったのかも。



音譜 コンサート形式の長所と短所

コンサート形式と言っても色々な形態があるのですが、今回は全く突っ立っただけの基本版。余計なものに目を奪われずに歌唱に専念できるので歌手にも聴衆にも良い面はもちろんあり、私は結構好きですが、初めて見るオペラにはちょっと辛いものもあります。特にこのオペラのようにドラマ性が高いものは、事前にあらすじは読んでおくのですが、字幕に「ト書き」が出ないので、ときに不便。

このオペラも、ラシェルがさっきまで「彼のことこんなに愛しているの」と言ってたのに、オケ間奏の後で突然「彼ったら何か変だわ」と言い出すのです。その間に彼がユダヤ人ならするはずのない行為をするからです。日本人というふれこみなのに、玄関先で靴を脱がずに上にあがるみたいなことでしょう。

もっと顕著なのは最後のシーンで、「ほれ、お前の娘はここにいるんだ!」と言うセリフで終わって幕になるのですが(実際に幕は下りて来なくて歌手は立ってるだけですが)、終わって初めて「そうか、あのセリフの直前にラシェルが煮えたぎる釜に突き落とされて親父も後を追ったんだなとわかるわけで、ちょっと感激のタイミングがずれちゃいます。ここはやっぱり目の前でそういうシーンを見せてもらわないとインパクト弱いですね。


キラキラ これほどの作品だとは期待してなかった分、聴いたことのないオペラに接する楽しみが倍増しました。またどこかでもっと一流の歌手で観られますように・・・


la juive 13

カーテンコールの写真三枚はクリックで大きくなります。あまりシャープな画像ではないですが。

la juive 12   la juive 11

  


コンサート形式のオペラに、もうすぐ又行きます。ヘンデルのTheodoraで、アン・ソフィ・ヴォン・オッター主演。彼女、そういえば、よくコンサートオペラやリサイタルはやってくれるのですが、ロンドンでこの数年間一度もフルオペラに出てくれたことないですね。4、5年前にグラインドボーンでよせばいいのに似合わないカルメンはやったけど。




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9月の楽しみ



あせる 嗚呼、いつになったらのんびりと9月後半を過ごせる身分になれるのだろうか?




ニコニコ 日本に滞在して、「段々涼しくなってきたね。 チンチロリンって鳴いてるのは鈴虫? 中秋の名月っていつだっけ?」なんて縁台に座って空を見上げたり、台風にハラハラわくわくしたり・・・、



燃えるような紅葉のニュージャージーをドライブしたり、(これはトーチャンの希望)



まだ夏の名残はたっぷりあるけれど、子供たちもいなくなって静かなギリシャのリゾート地で潮風にあたりながら、エーゲ海を眺めたり、泳いだり、お昼寝したり・・・



いつもコベントガーデンじゃつまらないから、よそのオペラハウスのシーズンオープンに行ってみようよ。まずはNYメトとパリのオペラ座で何をやってるか調べてみようか・・・



な~んて




しょぼん だけど、日本の会社で働く私にとっては9月は決算月。どこの部署にいても「旅行に行くのでお休み下さい」とはまさか言えまい。おまけにこの15年くらいは娘の学校もあった・・・



だから鈴虫なんてどんな声で鳴くのか忘れてしまったし、普段よりとくに華やかになるわけでもないロイヤルオペラハウスのオープニングに毎年変わり映えもなく出掛けるわけよ・・・


暫くジムにも行けなかったから贅肉はついたし、運動不足と肩こりで体がずしーんと重いわ・・・



でも、いつも通り又バタバタしたけど、なんとか期末は越せて、週末出勤は免れたので・・・


この週末は、やっとオペラとコンサートの記事を書くことができそうだ・・・


宿題が溜まっているような気分で嫌だからね  


   ・・・でも、 またパソコンか ・・・ パソコン 




などと言っているうちに、あっという間にもう10月。

そろそろ11月のことを考えなくちゃいけないじゃないの・・・


実家の法事で11月中旬か下旬から12月に掛けて一人で日本に行こうかな、と思ってるんです。 


今年はもう2回も日本に行ったし、まだ先月帰ってきたばかりなので正直言ってすごく行きたいとも思わなくて迷っていたけど、娘は学校だしトーチャンは親の面倒で忙しくて家族一緒によそに旅行には行けないので、でも折角勤続25年で余分に休暇も頂けたことだし、娘もトーチャンも背中を押してくれてるので、行くことにしようかな、と。



虹 ともあれ、仕事の忙しい9月でしたが、遊びも目一杯して、フルに頑張って楽しめたので満足感&達成感。

仕事が忙しいときこそ遊びも負けずにしなくちゃ私の人生なんなのよ、とつい思ってしまうので、ときにはやり過ぎてフルストレッチ状態になるのですが、プッツンと切れる寸前にゆるめればいいのだし、幸い体だけは丈夫なので、人生の初秋を悔いのないよう楽しみたいと思います。




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月間新記録は断念したものの

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今月は今までに着物のお出掛けが7回にもなり、すでに6月とタイ記録。

ここまで来たら、できれば明日のコンサートであと一回頑張って新記録を作ろうとも思ったのですが、諦めました。


理由は三つ。


① 雨 天気予報は雨。週のまん中はトーチャンに駅まで迎えに来てもらえず、夜遅く着物で雨の中を歩くのは難儀。  


② パソコン 仕事が忙しい。コーディネートを考えてる時間がないし(これが結構時間が掛かる。楽しいけど)、当日多分ギリギリまで    働かなきゃならない。


③ 女の子女の子 それでも一緒に行く人も着物だったら私も無理して着るが、そうではないので、一人ではちょっと恥ずかしい。




着物を楽しむためには、好天気と時間の余裕とお仲間という三要素が必要ってことですね。



キラキラでも、日本から着物友達が来てくれたこともあり、思いがけず7回も着ることができて充分満足。


ほぼ毎日20度以上という、ロンドンにしては高温で、晴れた日も多くて素晴らしい9月だったので、夏物と単衣だけで済ませられました。ざっとまとめておきましょう。母のお下がり、自分の昔の、古着屋で買ったもの、借物と様々です。(写真はクリックすると拡大します)。



9月8日1  8日にピーコックシアターでドン・ジョバンニ。ヒメさんの綿紅梅。



15 Sept back   16 Sept 1

15日はロイヤルオペラハウスのシーズン初日。黒赤の紗合わせをソワレ風に。




16 Sept 2  16日、オープンハウスディと再びドン・ジョバンニ。 

博多献上帯シスターズ!




18 Sept 2    二人で浴衣

17日はオープンハウスデーとギャラリー。大昔に自分で仕立てた乱菊模様の浴衣。



20 Sept 5   20 Sept 7

19日はバービカンにコンサート・オペラ「La Juive」に十代の頃着てた単衣のウールで。 

おっと、まだオペラの記事が書けてない・・・ガーン




22 sept 4   22 sept 16

22日は母のお下がりの戦前レトロ御召を着たけど、雨が止まないので仕方なくポリ着物とカーテン帯に着替えてレストランへ。真ん中が私。




            23 sept 2

        23日、バービカンでLSOとキーシンのコンサート。母のお下がりの単衣の紬。




イカリマーク こうして並べてみると、ほとんどが爽やかな夏らしい装いでした。


貴重な夏をなるべく引き伸ばして楽しむ北国イギリスならではの楽しみ方。



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9月15日、ロイヤルオペラハウスの新シーズンが始まったので、早速行ってきました。


一昨年(ジョコンダ)と去年(ポルトガル王ドム・セバスチアン )はスター歌手も出ないコンサート形式の地味な幕開けでしたが、今年はアンジェラ・ゲオルギューが出る華やかな仏グランド・オペラ。私はもちろん着物で行きましたが、そのときの雰囲気等についてはこちら をご覧下さい。


グノーのFaust

1859年パリで初演のこのオペラ、ゲーテのファウストの第一部が原作ですが、典型的な「有名な作品ほど読まれない」もののひとつでしょう、私はもちろん読んだことないし、小説ではなく詩文なのでドイツ語さっぱりの私には一生縁無し。もとよりゲーテの崇高な精神をオペラで表現できるわけもなく(ワグナーのリング並みの長編にでもしない限り無理)、ドイツでは偉大なゲーテ先生の名を汚すこの作品は「マルガレーテ」と呼ばれているという話もあるし、ここはゲーテのファウストの筋書きだけ採用した俗っぽいファウストを想像して下さいね。


「年老いた学者ファウストが失った青春を取り戻すために悪魔に魂を売る話」なのですが、このオペラでのファウストはただ若いおねえさんといちゃつきたいだけのようなので、メフィストフェレス(以下略してメフィスト)は地獄からの使いの悪魔というよりは、ノルマ達成に苦労する出会い系エージェント。

今まで勉強ばかりで女性経験のない超ダサイ学者さんに「旦那、良い娘がいますぜ」と美人の写真を見せて契約させ、「じゃあその娘に会わせてもらおうじゃないか」と言われると、「いやあ、あの娘は信仰厚くて神に守られてるから難しいんだ」なんてよくある結婚相談所みたいなことを。でもそれでは悪いと思ったか、このエージェントはなかなか良心的で(成功報酬かな?)、ダサい学者をスマートな青年に変身させるだけではなく、その娘をモノにする手練手管を教えて、小道具も準備。


小道具とは、「ダイアモンドは女を裏切らない」とマリリン・モンローが映画の中でも言ってたましたが、マルグリットは、心優しい青年シーべルの捧げた花とファウストのダイアモンドを見比べて、ダイアモンドの方を選びます。その時宝石と一緒に鏡が置いてあるのがミソで、宝石で着飾った自分が美しいと気付いたマルグリットはそれまでの信仰心のある慎み深い女性ではなくなってしまいます。美しいが故に凄腕エージェントと突然発情した学者の犠牲になった可哀相なマルグリットですが、それはいわば自分で撒いた災難の種。


その災難とは、彼女はファウストの子供を身ごもって棄てられて、それを怒った兄ヴァランタンをファウストに決闘で殺され、さらに生まれた子供を殺した罪で牢獄に入れられ、気が狂ってしまうという苦労のフルセット。しかし最後は神に祈り、天から救われることが、ゲーテのファウストの第二部につながるようです。


グノー のオペラで有名なのはこの「ファウスト」と「ロミオとジュリエット」ですが、華やかで美しくて、私は好きです。フランス語が母国語のロベルト・アラーニャが歌ってくれると最高です。



家 ワンピース舞台と衣装とバレエ

ROHのプロダクションの中で私がビジュアル的に好きな舞台のひとつです。

ゴシック風のセットはまともで、ROHにしては豪華。様々なダンスが踊られますが、印象に残るのは仏グランド・オペラにはつきもののバレエ。

ミュージカル「シカゴ」やライザ・ミネリの「キャバレー」を思わせる編みタイツのセクシーな踊りもいいのですが、ジゼルのような白いバレエ衣装を着た数人のバレリーナが最初は優雅に踊っているのですが、臨月のお腹を抱えた仲間(マルグリットという設定ですね)が登場すると、突然下卑た態度になり、下品に大声で罵ったり、裸足に青い口紅という異様な衣装で古典バレエのパロディというべき振り付けになり、最後は卑猥な乱交パーティに。ショッキングなこのシーンがこの舞台で一番印象的です。それ以外に、メフィストの周りにスパイダーマンのように床を這ってる男性数人がいるのも私が感心した演出です。


faust 6 faust 5
この衣装で身悶えするバレリーナって・・・


設定は1900年前後のベルエポック時代に読み替えてあり、衣装はリアルでまとも。金髪カツラのゲオルギューはいつもの黒髪とは全く感じが変わって、でもとても素敵。


NYメトで金髪カツラを被るのを嫌がって問題になったこともあるというアンジェラですが、とっても似合うのにねえ。頬がこけるほどこの頃はほっそりしてるけど、胸は立派で良いスタイル。プレミエの時は囚人服でオッパイがはみ出るのではないかとハラハラしたけど、今回はしっかり下着付けてました。


一番の山場アリア「宝石の唄」に出てくる宝石は、ニセモノの舞台小道具だと思ったら、アンジェラの主張で本物を使ったそうです。さすが、要求の多い有名な傲慢歌姫アンジェラ。そうと知ってたら、しっかり見ておけばよかったな。私は舞台から3,4メートルの席だったのだから。


faust 3 メフィストの魔法でキリスト像から上等のワインが滲みでて


  

音譜 パフォーマンス

David McVicar演出のこのプロダクションは2004年の6月がプレミアで、同じ年の10月にすでに最初のリバイバルがあり、今回が3度目の登場。


私は全部観てますが、まずどんな歌手が出たかリストアップすると、


   June 2004 October 2004 September 2006
Faust      Roberto Alagna Piotr Beczala Piotr Beczala
Mepeistopheles Bryn Terfel John Tomlinson   Orlin Anastassov

Marguerite Angela Gheorghiu Elena Kelessdi Angela Gheorghiu

Valentin Simon Keenlyside Dalibor Jenis Russel Braun

Siebel   Sophie Koch Katija Dragojevic Liora Grodnikaite (Christina Riceの代役)


どうです、プレミアのときの顔ぶれ、すごいでしょう? 脇役にキーンリーサイドよ! この7年間のROHで一番豪華。

もちろんこの時がベストだったのは言わずもがな。皆さん素晴らしかったです。ビデオに撮ってあるもんね。



わんわん ファウスト

これが愛するアラーニャを生で聴いたのが最後というのが悲しいです。今回もベッツァーラが歌っているのに、私の耳にはアラーニャの声がずっと聞こえていたのです。もうこれは禁断症状ですね。アンジェラがしょっちゅう出てくれるのは嬉しいですが、仲たがいしたアラーニャに「コベントガーデンは私の牙城だからあなたはどっか他所で歌ってね。日本に行ったらキャーキャー騒いでもらえるでしょ?」なんて言ったとしたら、アンジェラ恨んじゃうよ。

ところで、この二人、日本では離婚したと思われてるようですが、最近の雑誌のインタビューでアンジェラが、「私たちついこないだプエルトリコで一緒に楽しい休暇を過ごしたのよ。私の誕生日にも会いに来てくれるの」と言ってます。どうなってんでしょうね? まあ夫婦仲がどうなっても構いませんが、アラーニャをロンドンで歌えるようにしてあげてね。お願いお願いお願~い!


ポーランド人のベッツァーラは、どこが悪いと言われるとどこもなくて、大オペラハウスの主役も充分こなせる力を持っているのですが(ギリギリ)、他のも聞いたことありますが、まだ若いのにもう限界なのか、前と比べて上手になってないですね。それどころか、声が太くなってしまったみたい。 全然魅力のある声ではないし、私のお気に入りテノールリストにはお呼びじゃないです。


faust 4 ごめん、あなたの声はアラーニャに変換されてしまったわ 



クマ メフィストフェレス

メフィストは、これはもうブリン・ターフェルの独壇場。この手の漫画的キャラが得意ですから、余裕綽綽。トムリンソンはシリアスな役はなんでも素晴らしいけど、こういうコミックは下手クソ。なんでこんな合わない役にまで手を伸ばすんだろ? 

今回のブルガリア人アナスタソフは、脇役でなら光るけど、こんなカリスマ性も必要な主役にはちと軽すぎ。皺もなくて整った顔立ちだから、女装は一番似合ってたけどね

この黒いドレス姿、プレミアの初日に見たときはびっくり仰天だったわあ。あの巨大クマゴロー(トスカご参照 )のブリンがティアラとイブニングドレスだもんね、どよめいた。でも気持ちの悪さで言ったらトムリンソンの勝ち。ブリンはまだ愛嬌あるけど、トムリンソンは吐き気もの。でもこういうのが忘れられないのよね、オエーっ!


faust 7 faust 13 女装競争では僕が1位なんだってさ



にゃー マルグリット

これはもう天地くらいの差。上手で綺麗なアンジェラ・ゲオルギューと、綺麗だけど喉が閉まって声がこもってしまうエレーナ・ケレシディ。ROHさん、ケレシディなんて二度と出さないで下さいねむかっ。もっといいソプラノ、たっくさんいるでしょう?


アンジェラがこの7年間にROHで歌ってくれたのは、ファウストの他にはロミオとジュリエット、ラ・ボエーム、つばめ、シモン・ボッカネグラ、トスカ、ホフマン物語で、どれも私は好きでしたが、ファウストはその中でも彼女に合っている役の一つだと思います。ますます好調なアンジェラ、あと10年は頑張ってね!



              faust 2

黒髪でも金髪でも綺麗なアンジェラ。でも顔がたとえヘチャムクレでもスターになってると思う




足あと ヴァランタン (マルグリットの兄)

プレミエのサイモンが軽くやってるのに素晴らしかったのは当然ですが、今回カナダ人のブラウンの熱演もとてもよかったんですよ。バリトンにしてはエッジの効いた細い私好みの声というだけではなく、カーテンコールでも大きな拍手をもらってました。


faust 12 みかけはぱっとしないおっさんだけど気に入った!


ウサギ シーベル(マルグリットに片思いの青年)

メゾ・ソプラノのズボン役。脇役だと手堅くてブラインドボーンどさ回りのチェネレントラ のChristina Riceを楽しみにしてたのにキャンセルでがっかり。でも代役のLiora Grodnikaiteの出来は上々。ROHのJette Parkerという若手育成プログラムのメンバーのリトアニア人。すらっと長身でズボン役にぴったりの彼女はおどおどとしたビッコのシーベルを好演。椿姫の脇役とかで見たことあるような気がするけど、こんな大役は初めてかな?

faust 14 メイクで別人に見えたから貴女だってわからなかったわ





プレミエはアラーニャ目当てで2回行ったけど、今回は良い席で見られたので(50ポンドもしたけど)、一回にしときます。


カメラ 以下は、私が撮ったカーテンコールの写真です。クリックすると拡大します。

faust 11 faust 8

         勢揃い!            真ん中の汚れた衣装がイジメに合う臨月バレリーナ



faust 9 faust 10

      囚人服で失礼します。髪も短く刈られちゃったしね。



キス 最後に、ここにいなかったのにずっと歌ってくれたアラーニャに、私からだけ拍手とキスを送ります。

お疲れ様でした。私もね・・


                    faust 15  

「しばらく行かないから、コベントガーデンの花形テノールの座をアルバレスに奪われちまったぜ。椿姫さんのハートもな。」


そうよ、世界中追っかけするほどお金持ってないも~ん。愛は現金なんだから。


さて、来月はその丸ちゃん(アルバレス)がまた来てくれる~~ラブラブ  ロドルフォー~、ミミ~!



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快晴着物日和に月間タイ記録

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                                          (ほとんどの写真はクリックで拡大します)


昨日に続き、今日も着物で出掛けました。

昨日は雨模様 だったのでせっかく着付けた正絹からポリエルテルにわざわざ着替えて出掛けたのですが、ピカピカの秋晴れの今日は、着物と帯を母のお下がりセットにしました。


23 sept 2     23 sept 4

生成色の単衣の紬は産地はどこかわかりませんが、わりと厚手で木綿のような感触。6月12日の猛暑 の日に着て大変な目に合った着物です。幸い今日は22、3度という爽やかな理想的な温度。

これでもこの時期のロンドンとしてはかなり暑い日で、もうすぐ去ってしまう夏(というより、何度も去って又戻ってきた)を惜しんで、日本だったら初夏の雰囲気というコーディネートにしてみました。紗献上帯はこれで今夏の締め収めにしますが。





23 sept 1     23 sept 3


行ったのは、バービカンでのLondon Symphony Orchestraのシーズン初日のコンサート。 指揮はコリン・デービス。

お目当てはキーシンの弾くシューマンのピアノコンツェルト。


残念乍ら、今までのキーシンの演奏の中では最低の出来でした。天才でも調子の悪いときがあるんですねえ。又来週行くので(ちがう曲目)、その後にふたつのコンサートをまとめてアップすることに致しましょう。




祝日 9月は着物を着る機会が多くあり、今日で7回目6月の月間記録 と同じです。ここまで来たら、記録更新を狙いたいですよね、そりゃ。


ラストチャンスは来週のLSOのコンサートですが、折角だから、やったろやないか、という気になってきました。フーンフン(鼻息)! 単衣を着る最後のチャンスでしょうし、晴れ用と雨用の組み合わせを考えておこうっと。





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なんとなく定位置が決まってきました。キープするためには皆様のご協力が必要ですので、よろしくお願いします。


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