やっとかめの名古屋弁井戸端会議のようですよ。本人たちは、「リクエストもあったし、もうこれ以上待てん」と言ってます。



「ドロシーさん、やっとかめだなも~。今日はなに話そうしゃんね~?」


「ほりゃあ王室のわだゃ~が受けるで、やっぱしウィリアム王子のギャールフレンドのケイト・ミドルトンだにゃあきゃあ?メアリーさん、どう思っとりゃーす?」


「どえりゃあ美人でもにゃあけど、背もたっきゃあし体格ようてて丈夫そうでええ娘だがね。王子とおんなじだゃあがくに行っとっただで、頭も悪ないし。」


「そうだいわいね、誰でもまあそう思うに決まっとるし、ケイトさんは文句の付けようがありゃせん。

けど、お父さんは貴族でもにゃあし、通信はんびゃあでお金持ちになりゃーただげな。いわば成金だがね。ダャーアナさんは伯爵令嬢だったしカミラだってええとこの出だけど、比べると差が付いてまわへん?」


「まあええだて、ほんなことは。 スペインやデンマークのこうたゃあしさんたあもやっとお嫁さんもらいなさったけど、みんな普通の人だがね。

本人同士の気持ちが一番だゃーじ。そいではよ子供産んでもりゃーたゃーもんだわ。それが王室の人んたあの一番の義務だでね。跡継ぎの予備も要るで、4、5人はおったほうがええもんね。」


「今二人とも23歳だで、来年結婚してさりゃーねんに初出産! これでいこみゃー!」


「楽しみができたらお腹空いてまった。なんか食べるもん持ってりゃーす?」


「万博土産のモリゾー煎餅かキッコロキャラメルはどう? キャラメルは味噌味だでよう。」


「・・味噌味キャラメル・・・・・?。遠慮させてまうわ。」


「そうまずにゃあよ。」 


「ま、結婚しても、どっかの国のこうたゃーしさんの嫁さんみたゃーにならんとええけどねえ。」



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久し振りなので、椿姫が通訳させて頂きます。


「ドロシーさん、お久し振り。今日は何をお話しましょうかしらね?」

「そりゃあ王室の話題が受けるから、やっぱりウィリアム王子のガールフレンドのケイト・ミドルトンのことじゃないの? メアリーさん、どう思ってらっしゃる?」

「すごい美人でもないけど、背も高いし体格よくて丈夫そうな良い娘だよね。王子と同じ大学に行ってて頭も悪くないし。」

「そうよね、誰でもまあそう思うに決まってるし、ケイトは文句の付けようがないわ。だけど、お父さんは貴族でもないし、通信販売でお金持ちになったんだって。いわば成金だわよね。ダイアナさんは伯爵令嬢だったしカミラだっていいとこの出だけど、比べると差が付いてしまわない?」

「もういいのよ、そんなことは。「スペインやデンマークの皇太子さんたちもやっとお嫁さんお貰いになったけど、みんな普通の人だわよね。本人同士の気持ちが一番大事。 

ケイトとウィリアムは大学の寮で長い間ルームメートだったから、表面的じゃなくてお互い良いところも悪いところもよく理解し合ってるから、うまくやっていけるんじゃない?」

「最近女王様とも何回が会って気に入られたみたいだし、早く結婚するといいわねえ。」

「そうそう、それで早く子供産んでもらいたいもんだわ。それが王室の人たちの一番の義務だものね。跡継ぎの予備も要るから4、5人はいたほうがいいもんね。」

「今二人とも23歳だから、来年結婚して再来年に初出産! これでいいきましょう!」

「楽しみができたらお腹空いてしまったわ。なんか食べるもん持ってらっしゃる?」

「万博土産のモリゾー煎餅かキッコロキャラメルはどう? キャラメルは味噌味だわよ。」

「・・味噌味キャラメル・・・・・?。遠慮させてもらうわ」

「そう不味くないわよ。」 

「ま、結婚しても、どっかの国の皇太子さんの嫁さんみたいにならないといいけどねえ。」



william wedding     kate middleton

ルームメートなんて、最初から花嫁候補として選抜されたんでしょうけど、それでうまくいけば結構なこと。ウィリアム王子には幸せになってもらいたいものです。

ケイトさん、よろしくお願いしますよ。

ナルちゃんちもなんとかなるといいね・・。


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ドロシーさんとメアリーさんの過去の英会話は、テーマ別「英国あれこれ(名古屋弁」でどうぞ。


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因みに、味噌味キャラメルは本当に存在します。キッコロではないですが。

この夏名古屋のテレビ塔で見つけたのをお土産に買ってきて、周囲に無理やり配りました。いつも海老煎餅じゃあ芸がないですもんね。

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ハウルの動く城 

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9月25日(日)


Howl's Moving Castleがやっとイギリスで公開されたので、早速行って来ました。

娘はアニメが大好きで、ジブリはDVDだけではなくて日本で出ているイラスト本もたくさん持っているのです。万博のトトロの家は外から眺めただけですが、我が家は三鷹のジブリ美術館にもとっくに行きましたよ~。関東地方に住んでる方、まだ行ってないでしょう?

ジブリの映画を上演するときは、英語に吹き替える場合と字幕のときと色々ですが、今日見たのは英語吹き替え版。声優は今までで一番豪華な顔ぶれで、コメディアンのビリー・クリスタル、「バットマンビギンズ」の主役クリストファー・ベイル、往年の大女優ジーン・シモンズローレン・バコール等。これだけの人たちがやってくれるということは、水準がディズズニー並みだと認められたことことでしょうから、めでたいことです。

シモンズとバコールのダブルばあさんが良い味出してました。11月に日本でDVDが出るそうですから、日本の皆さんも英語で聞けますよ。私は日本語のオリジナルで聞くのが楽しみです。キムタクだそうですね?

映画としては、まあ良い意味でも悪い意味でも典型的な宮崎ワールドで、もちろん絵はきれいだし話もきっちりできてるのですが、新鮮味がなくて、ジブリ路線も限界にきてるような気がします。どのシーンも、これは「天空の城ラピュタ」、これは「もののけ姫」、街の雰囲気はまるで「魔女の宅急便」、子供の顔はまるきり「トトロ」のメイちゃん等々、と前に見たことあるのばっかりだなあというのが印象。


ジブリの中で私の一番のお気に入りは「となりのトトロ」で、我が家にはトトログッズが結構あります。

次が「千と千尋の神隠し」かな? あのお風呂屋さんが日本の温泉宿を思い起こさせてくれて、体があったまるかんじ。英語題名は「Sprited Away」。


しかし、この1、2年新作映画をあまり見に行ってないなあ。地下鉄が週末になると修復工事でよく不通になってしまうのが主な原因かしら。私だけ夜行くというのも気が引けるしね。将来退職して暇ができたら映画三昧をする予定。テレビでOKなので、それならどこにいても、かなり貧乏でも、体が動かなくなってもできそうだから、今しかできない生のオペラ鑑賞をせいぜいしておくことにしましょう。

だから明日又行きます。

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9月21日にロイヤルオペラハウス(以下ROH)にプッチーニのLa Fanciulla del West(西部の娘)を観に行きました。イタリア語西部劇というのはマカロニウェスタンと同じスタイルで、70年代前半にCイーストウッドやGジェンマ主演で流行った元祖はこのオペラでこれをヒントにしたのかもしれないじゃあないですか?多分ちがうでしょうけど。男っぽい人気テノールのホセ・クーラが出るのが話題。

jose cura


あらすじはまるで新派のお芝居

ちょっと野暮ったい和服姿の大衆飲み屋の女将(おかみ)と、さらしを巻いた着流し姿のいなせなおあにいさんを想像しとくれやす。昔ちょっと惚れ合った二人は再会して恋仲になるんやけど、彼はほんまは極道者で、酒場には盗みに来よったんや。女将に惚れる岡っ引き(なんや江戸時代かいな?)に彼がお縄頂戴となりそなときに女将は岡引きに挑んで、「丁半で決めよやないの。アンタが勝ったらわてはアンタのものになる。そやけどわてが勝ったらあの極道は逃がしたってや。ええな」と片肌脱いで壺振りの大博打。いよっ、姐さん! まんまとイカサマで女将さん勝たはったで。

そやけどお尋ね者のおあにいさんは結局恨み千万の村人に捕まりよって、首吊りの刑にされ掛かったんや。でもその寸前に女将が刀振りかざして現われてな、

「なんや、アンタら、わての恩を忘れたんか?家から離れて炭鉱で働く淋しいあんたらのおかん代わりになって、今まで面倒みたったやろ?病気のとき看病したのは誰や思とるねん?この人殺すならわてを殺してからや!・・・なあ頼むさかい、わてがはじめて惚れた男や、許したってーな」。

ま、ここまで言われたらしゃ-ないやんか。嫁き遅れの女将と流れ者のおあにいさんは手に手を取って夕陽に向かってお立ち去り~。


という、コメディでもないのにハッピーエンドというオペラには珍しい人情物。

西部の娘 着流しは着てまへんけどな

人気の無いのはなぜ?

トスカ、マダム・バタフライ、ラ・ボエーム、トゥーランドットと人気作品目白押しのプッチーニの中では上演回数も少なくて人気のないこのオペラ。ROHでも10年以上やってません。通算でも49回目という少なさ。私は前に一度だけドミンゴのビデオ(多分メトロポリタン版)で見ただけですが、今回はじめて見てなぜかわかりました。音楽がつまらないんです。確かにプッチーニらしくきれいでわかりやすいのですが印象に残らないし、聞き惚れるようなアリアは終わりの方に一曲だけ。それに、軽すぎてまるでミュージカル。でも当然ミュージカルとしてはミュージカルに敵わないわけです。ROHの音楽監督で何をやっても賞賛されるアントニオ・パッパーノの指揮でこれに相応しい軽くて楽しいオケ伴奏でしたが。



舞台とパフォーマンス

オケの真横の舞台袖で指揮者の顔が見えるほど近い席だったので(33ポンド)、隅っこで起こること以外は細かいところまでよく見えました。そんな距離から双眼鏡も使うのですから。私たちの真下にパーカッション奏者がいたのでしょう、ドラムが体中に響いてジンジンしました。

今まで生で見たオペラの中で一番リアルな設えの一つで、映画のセットになり得るばかりではなく、酒場はすぐにでも営業できそうだし、山小屋では実際に暮らせそうだ。もちろん衣装もそれに合わせて細かいところまで気を配った超忠実映画撮影的コスチューム。19世紀半ばゴールドラッシュの北カリフォルニアという設定で、辮髪(べんぱつ)の中国人グループやロシア移民風もいて、歴史的事実に沿っているのでしょう。


その現実的な装置に見合うように、風貌もぴったりの人がほとんどで(中国人役は例外だけど)、みな楽しんで役を演じているようで、お芝居として見るならとても優れたパフォーマンスでした。


今回の目玉である人気テノールのホセ・クーラは男っぽい声だし、長身のがっしりした体格でならず者のディック・ジョンソンを好演。本当はメキシコ人の盗賊ラメレズなので、スペイン系アルゼンチン人のクーラはパーフェクト。女将が惚れるのもさもありなんという魅力もあり、この役ではこれ以上のテノールはまず望めません。

しかしもっと感心したのは酒場の女将ミニー役のアンドレア・グルーバー。50歳近いくらいでしょうか、アメリカ人の彼女、有名なソプラノではありませんが、どっかで名前を聞いたこともあるような。トーランドットの映像だったかしら?彼女の声は美しくもないし特に魅力があるわけではないけど、きっぷがよくて暖かい世話焼きおばさんで、でもキスもしたこと無いほど純情なオールドミスが恋をしてドキドキしたり悩んだりする様子を実に上手に演じてくれて、「そうそう、気持ちはよくわかるわよ~。最後はやっとオトコが掴まってよかったねえ」と言いたくなる程けなげなヒロインでした。

町の保安官ジャック・ランスのバリトン、マーク・デラヴァンもアメリカ人で、奥さんがいるのにミニーに力づくで言い寄るいやらしさと嫉妬深さを全身で表して性格俳優的な巧さ。

このオペラ、1910年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で初演されたし、もしかしたらアメリカではちょくちょくやっていて、ミニー姉御とランス保安官の二人は十八番なのかもしれませんね。



先週に続いて珍しいオペラが聴けたことは心弾む経験でした。何十年前に作ったセットなんだよ~、という恐ろしく古めかしいこのセットでの上演はもうないかもしれないし、ぴったしのホセ・クーラで見られてよかったよかった。最初に英語で炭鉱夫たちがボンジョルノならぬ「ハロー、ハロー」と英語で言い合うのはご愛嬌で、きっとNYでも受けたことでしょう。

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秋は和服の季節でもあり

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オペラシーズンが始まって、又なるべく着物で行こうと思ってます。折角実家から何枚か持って来たのだもんね。他に行くところもないし。

今月はすでに2回着て出掛けました。13日は9月だというのに梅模様のウールでいきなり季節外れのルール破りをしてしまったけど、でもそれは日本でのルールであって、勿論ここで梅が秋に咲く筈はないけれど、梅=初春とは誰も思ってないからいいことにしましょう。なんせ限られた枚数なので季節は無視しないと何も選べません。


21日はホセ・クーラという大スターも出るこの秋一番の華やかなオペラだし観客席からよく見える舞台袖の席だったので、よーし一張羅で行こみゃーか~と張り切りましたことよ。

私が持ってるのは全てが娘時代に作ってもらった日本ではとても年齢的に許されない着物ばかりなのを、ロンドンならいいやと開き直って着ているわけですが、その私が「さすがにこれはちょっと・・」と躊躇する着物を勇気を出して着て行きました。


ピンク地に牡丹かシャクナゲが散らばった訪問着。長目の袂(たもと)のせいで、お嫁に行ったら、或いはお嫁に行けなくても、30歳ちょっと越したら回りからやめなさいと言われる代物。でもここには止めてくれる人がいない・・。一緒に行った同年輩のカルメンさんも負けずに派手なバラの刺繍がカラフルでピカピカの訪問着をお召しになって、浮くなら二人で浮いてみよう、ヒンシュクも二人なら平気平気と恐る恐る・・。

でも期待(?)に反して、意外に冷たい反応だったような。わざわざ寄って来てラブリー!と言ってくれた人の数もいつもより少なかったしさ~。もちろん「あっ、こっち見てるな」という視線はいつもくらいは感じたし、目

が合うとにっこりしてくれる人はたくさんいましたが。


そんな中で若い綺麗な女性が寄って来て誉め千切ってくれたのですが、最初は「英語喋れますか?」と不安そうに声を掛けてきましたね。彼女だけではなく、今まで話しかけてくれた人は皆私たちが日本から来た観光客と思ってるようでした。だから話しかけるの憚かっちゃうのかもしれませんね(日本でだったら違う理由で躊躇うでしょうが。気味悪くて)。今度試しにタイムス紙でも抱えていこうかしらね?


その女性が「着るのに時間掛かるの?」とか色々質問してきた中で面白かったのは足袋のこと。「それってどこまでのものなの?膝まで? それとももっと上まで覆っているの?」だって。なるほど、そりゃ外から見えないからわからないわよね。


わからないと言えば、日本人でも縁の無い人は知らないのは、着物の下がどうなっているかってことではないでしょうか? 理想的な着物体型にするためにあちこちに詰め物したりして大変なんですよ。補正は着付けには大切ですからね。その必要のない恵まれた人もいますが、私は不運なことに着物向きの体ではないので、ずん胴ボディにするのにあれしたりこれ付けたり・・。あえて舞台裏は暴露しませんが、「ア~レ~、旦那様~」と脱がされでも「なんじゃ、これは?」と色気も何もありゃしません。



では、海外ならではの着物姿をご披露しちゃいましょう!

もう一度お嫁に行くときにはお見合い写真に使えそうでしょう? 拡大しなければ、ですが・・。 


homongi

9月13日にロイヤルオペラハウス(以下ROH)にドニゼッティのDom Sebastien, roi de Portugalを観に行きました。コンサート形式なので聴きに言ったというべきでしょうが。このオペラは「愛の妙薬」「ランメルモールのルチア」「連隊の娘」等で知られる甘いベルカントオペラの代表格ドニゼッティが19世紀半ばに書いた最後のオペラですが、余程のオペラファンでも知らないだろうし、全部通して聞いたことのある人も非常に少ないという程上演は稀。これをROHは華やかであるべき一年のシーズン開始演目にしました。もっとも他のオペラハウスとはちがい、初日だからと正装してくる人がいるわけじゃなし、華やかさは元々ないですけどね。

その中で二人の和服のご婦人がいましたが、ああいうのいいですね、少しでも雰囲気を盛り上げようとするその健気な心意気(って自分で誉めるな!)。

ROHでの上演はこれがはじめてであり、折角だからCD録音もしちゃおうということで(どっちの案が先かわからないけど)、なかなかの顔ぶれ、の予定だったのに、レナート・ブルソンというイタリア人の有名なバリトンが喉の不調で降りてしまい、滅多にロンドンには来ない彼を楽しみにしていたロンドンのオペラファン(少なくとも私は)は早くも失望。代役は下手くそだし、その上テノールもひどかったという一回目に行った人の報告もあり、期待度は徐々に低く低く・・。

でもいいんです。何度も観てよく知っている演目だとパフォーマンスを観に行くのであってそれが駄目だとがっかりですが、これはオペラ自体が楽しみなのであって、キーンリーサイドとカサロヴァは素晴らしいに決まってるし、・・

などとブツブツ言い訳してないで、早く本題に入りなさい! ただでさえ私のオペラの記事は長過ぎるって言われてるんだから・・。おまけにもう1週間も過ぎてるぞ。



背景とあらすじ
このオペラには直接登場しませんが、ハプスブルグ一族のフィリップ2世スペイン国王が重要な要素とも言えます。フィリップ2世と言えば、歴史的にはエリザベス1世統治下のイギリスに1588年に敗北するまでは無敵艦隊を誇ったヨーロッパの強国の国王で、これはイギリスが世界に羽ばたくきっかけとなった節目の出来事なので、イギリス人には無視できない人物です。もしあの時イギリスが負けていたら今頃イギリスはおろか世界中がスペイン語を喋っているかもしれないんですよ。エリザベス1世の姉でカトリックだったメアリー女王の夫でもあり、その後続くカトリックと英国国教会との戦いにおける天敵でもありました。

オペラファンにはヴェルディの「ドン・カルロス」の主役の一人として親しみのある人物ですね。そういえば「ドン・カルロス」では息子の許婚だったフランス王女を政略的に自分の妻にしてしまうことから起こる悲劇がこのオペラのベースであり、フランドル地方の弾圧も重要な要素でした。

で、この王様の勢力拡大路線の一環として、ポルトガルを戦わずして併合したことがこのオペラの背景であり、このオペラのドム・セバスチアンはその敗北したポルトガルの国王です。何が起こったかは紅一点で真の主役とも言えるモロッコ出身の女性ザイーダに語ってもらいましょう。


ではザイーダさん、お願いします。でも、なるべく短く済ませて下さいね。



「はいはい、では私が代表して。でも短くまとめろったってねえ・・。


私はザイーダ。モロッコで婚約者もいたのに、ポルトガルの先回のアフリカ遠征で捕らえれてリスボンに連れて行かれました。そこでキリスト教に改宗させられて修道院で沈黙を守らなくちゃいけないときに、つい嗚呼故郷のお父様に会いたいと呟いたばかりに死刑を宣告されてしまいました。処刑の場に通りかかったセバスチアン王が助けて下さったばかりでなく、モロッコへの追放という罪に変えて下さったおかげで故国に戻れました。心優しい王様にいつか恩返しができますよう・・。

私は王様に恋してしまったようで、故郷に帰っても彼が恋しくてたまりませんでした。婚約者の戦士アバヤルドスは、私が結婚を嫌がるようになったのを不審に思っているようですが。そんなときセバスチアンは兵を率いてアフリカ攻略のためここに又やって来ました。でもポルトガル軍はアバヤルドス率いるモロッコ軍に敗れて、王様は負傷。私は戦場で彼を探して看病し、今度は私が彼の命を救って恩に報い、そして私たちの愛は揺るぎないものになりました。

実は戦場で家来が身代わりに死んでくれたのでセバスチアンは戦死したことになっていて、彼の正体はアバヤルドスにはわからないのですが、彼を殺そうとするアバヤルドスに私は命乞いをして、セバスチャンの命と引換えに結婚を承諾しました。

その後アバヤルドスが和平交渉にリスボンに行った際、私は妻として同行しました。そこでは留守を任せたセバスチアン王の叔父さんがすでに後継者として即位しており、現れたセバスチアンが自分が王であると明かしましたが偽り者として逮捕され、裁判で彼が真の国王であると証言した私共々死刑を言い渡されました。

さて獄中で私はポルトガルのgrand inquisitor(宗教裁判官、大審問官とでも訳すのでしょうか、当時政治的にも絶大な権力を持っていたようです)であるドム・ホアン・ド・シルヴァの訪問を受け、セバスチアンが王位を棄てるという書類に署名するよう私から説得するよう命令されました。うまくいけば命は助けてやると。この悪どいドム・ホアムは以前からスペインのフィリップ2世と通じていて、スペインのポルトガル併合のためにあれこれ策略していたのです。セバスチアンは自ら王位を棄てるなどという不名誉なことはできないと最初は拒否したのですが、私の命を救うために書類に署名しました。

海を見下ろす牢獄の私たちに救いの手が差し伸べられました。セバスチャンを慕う詩人で愛国者のカモエーンが援軍を連れてきたくれたのです。でも逃亡するため縄梯子で塔から下っている最中にアバヤルドスとドム・ホアムが現れて縄を切ったので、ああ哀れ私たちは海の藻屑・・」。



はい、ザイーダさんありがとうございました。

何度も大陸を渡って苦労して、死刑を2度も免れたのに結局溺れ死んでしまって大変でしたね。誰が架空の人物でどこまでがでっち上げかは知りませんが(プログラムに書いてあるのかもしれませんが、可哀相な私はお金も収納スペースもないの)ちょっと無理のあるストーリーのような気もしますが(例えば、なぜ偽者と決め付けた彼に退位を迫るのか?とか)、まあもっと荒唐無稽の話はもオペラでは当たり前だし、この程度はオッケーオッケー。しかし「死ぬ~死ぬ~っ!と言いながら10分間アリアを歌うのが普通なのに、縄をチョキンと切られて一貫の終わりとは随分あっけない幕切れでしたが。


舞台

コンサート形式なのでセットは無く、その代わりいつもは狭いオケピットで窮屈そうなオ-ケストラが今日はゆったり座っています。コーラスがその後ろに並ぶのですが、その数の多さにびっくり。私の席は横に偏っているので全貌は見えないのですが、150人程いました。あんなにたくさんの人をあの舞台で見たのははじめてで、真っ黒な衣装でひな壇に並んで壮観でした。このオペラがほとんど上演機会されない理由のひとつは大コーラスが必要なのもその一因と何かで読みました。へえこんなにいたんだと驚いただけでなく、ROHコーラス、今日は歌に専念できたせいか出来は上々でした。舞台の最前列にはソロ歌手が並んだのですが、紅一点のヴェッセリーナ・カサローヴァの紫のスパンコールのドレスがピカピカと素敵でした。

この正味3時間の堂々たるグランドオペラ、フルオペラにすれば舞台となるのはリスボンとモロッコで、ヨーロッパとアフリカというコントラストの利いたセットと衣装で豪華なスペクタクルになる得ます。聴いているときはそんな余裕はないのですが、後で自分の想像の中で素晴らしい舞台セットを作り上げました。もしかしたらオペラの究極の醍醐味は音だけ聞きながら、このように自分の中で理想的なセットや歌手を創り上げる「創造力」なのではないかと思うときもあります。そこでは配役ぴったりの美男美女も可能です。


パフォーマンス

まるでヴェルディを思わせるこのオペラ(誉め言葉です。こっちの方が先ですし)、イギリスの中堅指揮者マーク・エルダーの熱意によって実現したそうで、まさに彼にとっては夢が叶ったわけで、その熱意がオーケストラにも歌手にも伝わって、まとまりのある芯の通った演奏でした。


歌手の中では際立っていたのはやはり期待通りのサイモン・キーンリーサイド。アバヤルドスは「この不貞妻め!」とか怒ってばかりの一面的な役なので彼には役不足なのですが、さすが世界のトップクラスで今が旬の彼、一流の実力と風格を見せ付けて、その夜の他のバリトンとは格がちがうことを示し、高音の多いスコアでしたが、滑らかでメリハリのある声に聞き惚れました。


でも、彼は詩人カモエーン役の方が向いてるかもしれません。これがレナート・ブルソンが歌う予定であった役で、ストーリーの進行には重要でないけれど叙情的で意味深そうな長いアリアがいくつかある得な役です。ブルゾン不在のこの舞台ではカメロ・コラド・カルーソーという聞いたこともないバリトンが代役で、下手ではないけれど特に魅力のない普通のおじさん。CD録音にはもうちょっと上のクラスの人にやって欲しいです。


並みのおじさんと言えば、悪巧み生臭坊主を演じたアリステア・マイルズもそうかな。ROHのハウスバリトンとも言うべき存在で、脇役を一手に引き受ける人ですが、今回はかなりの大役で、いつものように器用に手堅く盛り上げてはくれましたが、やはり存在自体が地味だし、低音の迫力にも欠けるので、ここはやはりユル・ブリンナーことエリック・ハーヴァソンに登場してもらってドス利かせて欲しかったです。ハーヴァソンはリゴレットの殺し屋役やワーグナーのワルキューレの記事に登場します。(6月のリゴレット7月のワルキューレ ご参照)


ザイーダ役のヴェッセリーナ・カサローヴァはブルガリア人で、メゾソプラノではトップの一人。顔も体も声もがっしりしているので男役の似合うキャラです。この役は彼女の持ち味である中音が少ないので、彼女の魅力を充分出せたとは言いがたいような気がするし、メゾにしては高音が多いのでソプラノが歌ってもOKかも。第一この時代のオペラで主役がメゾソプラノってのも珍しいですよね。


最後はタイトルロールのテノール、ジョゼッペ・フィリアノティ。2回とも行ったSaradanapalusさん の話だと、1夜目は声がひっくり返りっぱなしでハラハラし通しだったけど2夜目はうんと調子を取り戻したそうで、私が行ったのは2回目なので、良い方が聞けたわけです。甘い声で声量もあり、おまけに若くて姿も良いテノールなので今後の活躍するのは確かなのですが、一つ気になったのは高い音と低い音の間の繋ぎ目で、今ひとつスムーズではないように聞こえました。マイナーな欠点なので、彼がちがうオペラをやってくれたら期待して聞きに行きますけどね。後、一番のきかせどころのアリア(アラーニャのフレンチアリア集に入ってて素敵なの)で一度だけ声が大失態と言える程ひっくり返ったのは残念でしたね。このままでは笑い者になるのでCDにするときは差し替えるのでしょうが。


でも、でも、でも、歴史的背景が同じだからというだけではなく、どうしてもヴェルディのドン・カルロスを思い起こさせるこのオペラ、ロベルト・アラーニャ主演の映像が印象強いので、これもやっぱりアラーニャに是非やって欲しいと思ってしまうのです。今回はフランス語版ということもあり、この手のオペラのフランス語テノールといえばそりゃアラーニャに決まりでしょ!と、アラーニャに惚れてる私じゃなくてもそう言う筈です。


今日CD用に録音したものをアラーニャに聞かせたら、「こんなのよりおいらの方がずっと上手く歌えるぜ~。やらしてくんな。もう一回やり直そうぜ」と言ってくれるかもしれないじゃない? そしたら、いっそサイモンにはアバヤルドスと詩人の二役やってもらおうよ~。


尚、サイモンは来月初めにベルギー国立歌劇場の「ドン・ジョバンニ」の主役で日本公演に行くので、マスコミに出てくるかもしれませんね。ドン・ジョバンニは稀代の女たらしですが、今までに見た中で一番エレガントで素敵なDGです。

オーチャードホールのDG情報 http://www.bunkamura.co.jp/orchard/event/monnaie/


この日はdognorahさんもいらしてました。dognorahさんの記事


コンサート形式だと切符の値段が安くて、本日は5ポンド(千円)也。プログラムの方が高い・・。物価の高いロンドンではサンドイッチと飲み物とポテトチップス買ったら軽く飛んでしまう金額です。ありがたやありがたや。