11月23日 劇団都 「三人吉三」 その11 | 桃象の観劇書付
巣鴨吉祥院の場

じつは「伝吉内」の場面とこの場面との間に、1年の歳月が流れています。
お坊、お嬢、和尚、三人の吉三はあれからそれぞれ悪事を働いていますが、
1年の間にあまりいいエモノを見つけられず、みんな少々落ちぶれています。 


また、そろそろお奉行所のチェックも厳しくなってきました。
そろそろ捕まりそうです。今度捕まったら、生きては出られないでしょう。


さて、吉祥院の場面です。
なぜこのお寺が「吉祥院」かというと、つまり「吉三もの」だからです。
八百屋の娘のお七と寺小姓の吉三郎が恋に落ちた場所が、吉祥院ですよ。
今も東京都文京区白山(昔はここまで巣鴨村)に「八百屋お七の墓」があります。


和尚吉三は、今は荒れ寺のこの吉祥院に住んでいます。
和尚吉三が留守の間にお坊吉三がやってきます。
百両手に入ったので、
江戸にいるとそろそろヤバいし、
東北のほうにでも逃げようと思い、和尚にあいさつに来たのです。



和尚は、帰ってきたところを捕り方に囲まれます。
しかしお坊吉三とお嬢吉三を捕まえれば許してやる、と言われます。

和尚は引き受けます。



寺に入って、お坊と和尚の会話、 
お坊吉三は、前も書きましたが、もとは旗本の息子です。
父親は、最初のほうで説明した安守源次兵衛(やすもり げんじべえ)です。
名刀「庚申丸」を盗まれて切腹、お家が断絶になった人です。 


庚申丸を盗んだのは伝吉さんなので、
お坊が今浪人しているのは死んだ伝吉さんのせいですよ。

お坊は、じつはお家再興のために今も庚申丸を探しています。



おとせちゃんが十三郎くんと一緒に、兄である和尚吉三を探しにやってきます。
父親が殺されたので敵を討ちたいという相談です。


あと、ふたりは好き合って、夫婦になりました。
落とした百両の問題も片付いていないのでいろいろ助けてほしいと頼みます。


犯人の遺留品として、落ちていた小柄を見せるふたり、
さっきお坊が見せてくれた脇差と同じデザインです。


あいつか!!


とりあえず、話があると言って、寺の裏のお墓に行く三人です。



この お坊吉三との会話、おとせ達との会話によって
和尚吉三は、愕然とするわけなんですね。

 お坊吉三の 父親は 安守源次兵衛(やすもり げんじべえ)で
  伝吉(自分の父)が 盗みを 働いたことが 原因で  切腹。

・ その お坊吉三が 伝吉(父親)を 殺害した。

・ 本人達は 知らないが
  双子である おとせ と 十三郎が  夫婦となっていて
   近親相姦という とんでもなことになっている

そういうことを 知ってしまうのでございます。



ちなみに 近親相姦、
現代の日本では、仮に それがバレても 
同義的には問題になりますが、犯罪ではありません。
もちろん 結婚は出来ませんが・・
(ドイツでは 死刑なんだとか

江戸時代のおいては、不義密通とされ つまり 犯罪で
遠島 あるいは さらし首 だったんだそうです。

それ以上に 儒教の影響もあり 畜生道だとして
「祟りが 起こる」 と 信じられていたそうです。



おとせ と 十三郎  
本人達は 知らないまま  そういうことになったわけですが
そのことに関して

父親である 伝吉さんは 生前 
双子であることを 秘密にしたまま 黙認しようとしてました

和尚吉三は   双子であることを 知ってしまっています。