2007-05-05 07:06:21

KSR最高裁判決の影響の予想

テーマ:特許実務に関わる諸々の話題

KSRでは、当業者の水準を考慮する限り、課題や分野に関わらず、厳密な教示なし(2011年10月修正)に、組合せで特許を自明と判断することが出来ると判示していると思います。


さらに、最高裁は、当業者のレベルを考慮することにより、文献からの「特定の」発明の主題の教示(teaching)の厳密な教示が不要になると言っています(下記参照)。


As our precedents make clear, however, the analysis need not seek out precise teachings directed to the specific subject matter of the challenged claim, for a courtcan take account of the inferences and creative steps that a person of ordinary skill in the art would employ(判決文14ページ).


「特定の」とかかれていますが、本事件では、組み合わせる引例の課題が異なるだけでした。構成は引例にほぼ全て揃っていました。しかし、今後審査官は判例の射程範囲を広く捉えるでしょう。

課題が異なるだけではなく、引例の構成そのものが足りない場合にも、「当業者の常識」を持ち出しかねません。


文献ベースでオフィスアクションが行われている審査の現場で「当業者の技術水準や常識」をはかることができるでしょうか。答えはNOだとおもいます。実際上、エキスパートの証言などは裁判所でしか得られません。現場のオフィスアクションでは、技術常識は文献ベースで立証していくしかないのが実情です。


しかし、恐らく特許庁は、先日記載した組合せ要件の緩和についてのみ審査実務を当てはめることはしないでしょう。特許庁は、上記最高裁の文言をたてに、「当業者の常識」という言葉で出願発明を乱暴に拒絶してこないか心配ですが、実際はそうなるでしょう。日本の審査官も、忙しい時は設計変更で済ますこともなくはないですが、原則、それが常識であることは別の文献で立証するのが実務です。「当業者の水準」というのは、権利化の現場でどのように扱われるか、上記最高裁判例が一人歩きしそうな気がして怖いです。結局、予期できない結果や阻害要因が強力に立証できない限り、当業者にとって容易ということで、特許されないということになりそうであります。IT特許のパテントトロールが力を失うと、今度は、特許庁の審査の促進政策と変に絡まって、進歩性が厳しすぎる別の方向に行き過ぎてしまう可能性があるでしょう。


今後、US向けであっても、作用や効果を明細書に「詳細に」盛り込むことがよさそうです。←化学の分野ですね。

米国の「予期できない結果」と日本の「有利な効果」について思想としては恐らく似ていると思います。突き詰めると「効果や作用が新しい」ということだと思います。課題がどれほど米国で重視されるのか今後の裁判例を注視したいですが、日本の進歩性と似て着ていると思います。


TSRテストは最高裁判決ではまだ死んではいないと個人的には考えますが、世論の動向から今後の動向を予想すると、TSRテストは死んだに等しい結果に今後なると思います。今後は、米国では「当業者にとって容易」とprima facie caseのレベルの立証無しに自明と指摘してくるOAが乱造されそうな予感が致します。KSR事件は普通に読むと、現状は「組合せ」のしかも「動機付けの有無」のみが射程範囲と思いますが、この判例は下級審で一人歩きして、射程範囲を不合理でない範囲で徐々に広げていくでしょう。

また、審査実務の心理面で、法律上の根拠無しに(!?)USPTOの自明性のレベルが上がってくる気がします。早期のUSPTOのレポートを待ちたいです。
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