辻泰彦の人生と作品

 辻泰彦(1945-)は地主の高等遊民であるが、その人生は波乱万丈であり、その主著である『恐慌と戦争経済哲学の誕生』はサラリーマン学者の作文とは本質的に異なるものである。この本がアカデミズムとジャーナリズムから目の敵にされた後に新潮社から自費出版されるのは、サラリーマン学者の生存を許さないからである。経済学や哲学の世界では教授や博士はとうの昔に時代遅れになっている。経済学者や哲学者と称する人間の本を買う人がほとんどいないのは当たり前である。民主政の平等主義が終わり、共和政の自由主義が始まる。職業的専門家の時代は終わり、万能の教養人の時代が始まる。新しい時代を代表するのが『恐慌と戦争経済哲学の誕生』である。