先日、成田空港に出迎えに行ったついでに鰻を食べる事にした。
本当は前日に喜多方まで足を延ばして『坂内食堂』に行くつもりでいたが
さすがに午前１１痔３０分到着の飛行機の出迎えと考えると
喜多方 → 成田の
約３２０㎞は厳しい。
おとなしく成田周辺で食事することにすると → 『鰻』 となる。
プライベートに無駄な時間を作りたくない私は、勤務中会社のパソコンで成田周辺の
鰻屋さんを調べ、会社のプリンターで情報を印刷した。
しかも、意味も無くカラーで。
お蔭さまで前夜は家でゆっくりすることも出来たし、プリントアウトした紙を持っているので
間違いもなかった。
東京の三多摩地区に住む私は、成田空港までは高速利用となる。
いつもならギリギリに行くところだが、今日は『鰻』という目的があるので
かなり余裕を持って出発した。
中央道から首都高、そして東関道と走る。
自宅からは片道約１００ｋｍ。
成田へ行くというのはちょっとした旅行だ。
自宅から西へ向かえば富士山、箱根だって１００ｋｍ以内なのだ。
今回『鰻』を食することにしたお店は、
出来るだけ空港に近いところを選んだので気持ちにも余裕がある。
成田ＩＣを出て空港方面に行くのだが、空港線の高速ではなく一般道を走る。
そうしないと空港まで行ってしまうからだ。
空港方面に向かいホテル日航成田のところで左折。
そのままホテル前を通り過ぎる。
滑走路？の下をくぐり
トンネルを出てすぐのローソンの交差点を左折。
あとは道なり。
こんなところにあるのだから車じゃないと来られないだろう。
しばらくすると左手に看板が見えた。
これを見逃すと二度とたどり着けないだろう。
残念ながら今回は『鰻』を諦めて貰うしかない。
しかしここで曲がって良いものだろうかと考える人がいる筈。
大概の人は
「ここで左折なんだろうが、どう見てもこの奥は倉庫か工場の様に思える。」
と不安になるだろう。
もしかしたら次の信号を左折か？
違います！
ここで良いんです。
私は昨日勤務時間中にかなり予習をしてあったので迷わず入って行く。
タクシーやバスが置いてあり一瞬不安になるが、
くどい様だが前日勤務時間中に必要十分な予習をしてきている。
奥は行き止まりの様だ。
それもその筈、ここは道路ではなくすでに敷地内なのだから。
工場の手前を左に曲がると小さな黒い建物が。
まさに昨日勤務時間中に会社のパソコンで見た通りの建物。
自信が確信に変わった瞬間。
開店時間は１１時、まだちょっと時間がある。
お店のお兄さんが開店準備をしているのでちょっとブラブラしてみる事にした。
隣の建物には綺麗なお水がしたたり落ちている水槽？があり中には沢山鰻がいた。
私の友人はタライの中で何十匹という鰻がヌルヌルしているのを見た時から
食べる事が出来なくなったというが、気持ちは分かる。
私も以前、ドジョウが何百匹もヌルヌルしているのを見てから食べられなくなった。
牛や豚だって牧場に行き潤んだ目を見てしまうと菜食主義者になろうかと思う瞬間もある。
・・・嘘。
この日は私が一番乗りだったようで、店や工場の周りをうろつく不審変態中年オヤジに
客かどうかの確認も含めて
「食事ですか？」
と聞いて来られた。
「えぇ」
と答えると、注文も受けてくれた。
何と親切な事か。
そして何を見てそう言いたくなったのか？
「大盛りにしますか？」
私は丁重にご飯普通盛りで頼んだ。
太ってはいるが大食いではない、間食が多いだけ。
開店少し前だけど、変態中年に店の周りをうろつかれても困るとのお考えからか
どうぞ
と案内された。
整理された店内にぽつんと一人で座った。
正直、内装は町の食堂と言った感じ。
付き合い始めの彼女やお客さんをを連れて来たりする場所では無いかも知れない。
先ほど注文を聞いていただいていたので、すぐに出て来た。
鰻重は３切れで２０００円
鰻丼は２切れで１５００円
ともに肝吸いも付く。
私の可愛いお口に鰻を放り込む。
柔らかくてなかなか美味しい。
本当の事をいうと、私の好みは関西風なのでこの蒸してふわふわな感じは駄目なのだが
それを差し引いても美味い！
コストパフォーマンスも非常に高いので結構人気があるようだ。
早食いの私がさっさと食べ終わると、続々と車が入ってきた。
成田ナンバーの車が続けて３台入って来たのを見ると平日は地元のお客さんが
多いのかもしれない。
そういうお店に外れは少ないと思う。
ちょうど空港の迎えに良い時間になった、
店を出て来た方向に戻ると
道の傍らにある何かが目に入った。
不勉強な私はここがあの「東峰十字路事件」があった場所だとはこの時に知った。
昭和４６年９月１６日、私の弟が生まれた翌日の出来事。
事件の詳細をここに書くことは無いが、現地では合掌しご冥福を祈るしかなかった。
主義主張はいろいろありそれぞれ自由だが、この事件を起こした連中はそれを
大きく逸脱した単なる暴力集団だと思う。
当時の様子も分からないまま言い切るのはおかしいかもしれないけれど。
警官に襲い掛かるとは正直やり過ぎだと思う。
国益の為に住み慣れた土地を手放さなくてはならない方々も沢山いただろうし、
犠牲になった方々は双方の立場で沢山いただろう。
そんな方々の犠牲があって私たちは空の旅を楽しめるのだから感謝しなくてはならないな。
そんな事を考えながら空港に向かった。
目的の飛行機は着陸している時間だ。
美味かった鰻と、その帰りに見た慰霊碑。
そして、かの国からあの連中がまたやって来たという複雑な思い。
成田の空がやけに滲んで見えた。
黄砂じゃないよな・・・。
涙か・・・。