2015-04-24 11:00:00

名画にみるアンティーク:カントリーサイドに響く"Home,Sweet Home"

テーマ:名画にみるアンティーク

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パンカーダ 早春の特別企画
Antiques in the masterpiece
~名画にみるアンティーク~
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よい季節になってきました。


こんな時は、お部屋の中にも、明るいガーデンと

愛らしい女性の美しい絵がほしくなりませんか?


おすすめの画家は、ジョージ・ダンロップ・レスリー

/George Dunlop Leslie(1835-1921)。





Self-portrait (1882)


父や叔父もロイヤルアカデミー会員という芸術一家に生まれました。


出生地はロンドンですが、自然を愛した彼はオックスフォードシャーに居を構えます。
隣のロッジには彼の妹が住んでいたといいます。



Roses


1887年のヴィクトリア女王のゴールデン・ジュビリー(即位50周年)には
女王のポートレートを妹と共に描きました。

兄妹はとても仲が良かったのではないでしょうか。



Queen Victoria 1887年



さて、この絵。





タイトルは「Home,Sweet Home」。

製作年は不明ですが、服装から恐らく1900-1910年頃と思われます。


タイトルの「Home,Swet Home」は1823年に作られた歌。


作曲はイングランドのヘンリー・ビショップ/Henry Rowley Bishop(1786-1855)。
作詞は、アメリカのジョン・ハワード・ペイン/John Howard Payne(1791-1852)です。


日本では「埴生の宿」として知られています。





ピアノの周りに少女達が集い、歌を歌っています。
本が沢山あることから、学校の教室でしょうか。

先生らしき人がピアノを弾き、傍らには膝まずいて楽譜を広げる一人の少女。




その脇にある小さな家具が、「カンタベリー」です。

パンカーダにも、このカンタベリー がございます。




カンタベリーとは、楽譜などをのせる仕切りつきのスタンドのこと。
カンタベリー大聖堂の司教が最初に注文したことに由来してこの名前がついたとか。


ピアノを弾いている女性が座っているのはピアノスツール。
弾き手に合わせて座面を上下できるタイプが多く、パンカーダには
このようなタイプのピアノスツール がございます。




柔らかな光りと風を感じるような彼の筆致は、
現代でもプライベートコレクターにとても人気の絵となっています。、


俗っぽい話ですが、40年もサウス・ウェールズの学校に掛けられたままだった彼の絵が、2000年にはオークションで17万ポンド(約2800万円)で売れたそうです。


「生徒たちのために、売らないほうがよかったのでは?・・とご心配の方、

ご安心ください、そのお金は学校を作るための基金となったそうです。

詳細は以下のBBCサイトでどうそ。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/wales/697069.stm



買主にとっては、それほどのお金を積んででも、手に入れたい魅力にあふれていたのでしょう。




The Daughters of Eve


ヴィクトリア時代の幸福な日常を描いた彼の絵は
少女達の歌声と共に、今なお、人々に安らぎと幸せを
運んできてくれるような気がします。



by N


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2015-04-10 09:00:00

名画にみるアンティーク:パリの芳香・優美なサロン

テーマ:名画にみるアンティーク

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パンカーダ 早春の特別企画
Antiques in the masterpiece
~名画にみるアンティーク~
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優雅なパリの風俗画を独特の筆致で描き、

傑作を生みだした一人の異邦人をご紹介いたします。


ハンガリーの画家、ミハーイ・ムンカーチ/Mihaly Munkacsy(1844-1900)。




ミハーイは1844年、ハンガリーのムカチェヴォ

(Mukacheve:現在はウクライナ)に生まれました。


少年時代は貧しく苦労しますが、やがてブダペスト、
ウィーン、ミュンヘン、パリ、ジュッセルドルフのアカデミーで学び
1872年以降はパリに定住します。



ギュスターヴ・クールベに強い影響を受けながら、
準写実的,準アカデミックな作風で、
フランス的写実主義とは異なる力感にあふれた作品を多く生み出しました。


1880年代に彼が多く手掛け、また評判がよかったのが風俗画、そして肖像画。




Lady Seated At Her Needlework





A Portrait of the Princess Soutzo
1889年


当時の上流階級の様子をミハーイ独特の厚みのある筆致で描き出しています。


さて、この絵。





タイトルは「in the conservatory」。


製作年ははっきりしていませんが、ミハーイが風俗画を
多く手掛けた1880年代の作品と思われます。


天井の高いサロン。
奥には、見事なコンサバトリー(温室)が瑞々しい沢山の植物と共に描かれています。





当時これだけのコンサバトリーを愉しむことはかなりな贅沢。
おそらく上流階級の邸宅であることは間違いありません。


豪華なドレープカーテン、咲き乱れる花々。


そして、会話を愉しむ女性たちが座るのは、赤ワイン色のセティ。


セティは、18世紀にフランスで完成され、やがてヨーロッパへと広がってゆきました。

パンカーダにも、このような貴婦人の為のセティ がございます。





おしゃべりの為の軽い飲み物を置く小さなテーブル。
このようなこぶりなオケージョナルテーブル がぴったりです。





ハンガリー出身であるミハーイの描く風俗画は、大層評判が良く、
アメリカに多くの顧客がいたといわれます。


それはきっと異邦人であることこそが、
当時のフランスらしさ、他国と違う文化の薫りを
より感じることができるからだったのではないでしょうか。



後年は宗教画を主とし、更に絵画の表現も深みを増していったミハーイ。
彼はハンガリーを代表する巨匠として、作品はほとんどがブタペストの
国立ギャラリーに展示されています。


19世紀後半、パリ、ベル・エポックの幕開けに立ち会った一人の異邦人。
彼の感じたパリの芳香は、絵を通じて今なお私たちの前に漂ってくるようです。


by N







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2015-04-05 10:00:00

名画にみるアンティーク:ランプに照らされるレディ

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「ランプとレディ」を描かせたら、最高の作品を描く作家をご紹介しましょう。


デルフィン・アンジョルラス/Delphin Enjolras(1857-1945)。
彼は1857年、フランス・マルセイユの少し北、ククロンに生まれました。




フランス・アカデミック美術を代表する画家であり、
水彩、油彩、パステルを駆使した彼の絵はほとんどが
若い女性のポートレイト。


そのなかでも、ランプに照らされたレディの肖像が有名です。




さて、この絵。




タイトルは「la Lettre/The Letter」。


ランプの灯りで、手紙を読むレディの肖像です。


流れ落ちるサテン地のドレス。
透明感あふれる肌。

周囲の宵闇はまるで繭のように
密やかに、柔らかく、彼女を包み込むようです。


手紙を読むレディが向かっているのは、小さなビューロー。
天板には、便せんやインク壺があるのがみてとれます。



この大きさでは、実務と言うよりは
手紙の読み書きくらいをするためのもの。


パンカーダにも、このようなレディのためのビューロー がございます。





あわせるアームチェアは、絵よりは少しこぶりになりますが
このようなチェア はいかがでしょうか。



組み合わせれば、19世紀終わりのフランス、貴婦人の私室のように
この上ないエレガントな空間が演出できます。


デルフィンが属したアカデミック美術は、いわば理想化された新古典主義。
20世紀半ばには、保守的だと批判され人気がなくなりましたが、
また近年、その完成度の高さから再評価されている分野でもあります。



彼の絵は単なる「保守的できれいな絵」を超えて、
宵闇がせまった廊下(ギャラリー)の一角に
ひっそりと置いておきたいような蠱惑的な光で溢れています。


by N





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2015-03-30 11:00:00

名画にみるアンティーク:1896年「SAVOY」4月号

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今日は少し毛色の変わったアーティストをとりあげてみましょう。


オーブリー・ヴィンセント・ビアズリー
/Aubrey Vincent Beardsley(1872-1898)。



画家というよりはイラストレーター、もしくは思想家。


その筆致は鋭く、単なる商業用イラストを超える
個性と完成度で、今なお絶大な人気を誇っています。


オーブリーは1872年、英国南部の港町、ブライトンで生まれました。

学校に上がる前からショパンを弾きこなし、音楽の天才とよばれたこともありました。


1879年には結核を発症。
事務員として働きつつも病気の為に休職を余儀なくされ、つらい日々を送ります。


1891年にはエドワード・バーン=ジョーンズに才能を絶賛され、画家としての道を歩み始めます。


1893年トマス・マロリー「アーサー王の死」挿絵


1894年オスカー・ワイルド「サロメ」挿絵




強い意志と個性的な性格から敵も多く、風刺画で相手をやり込めるなど、
もめごとも多くあったようです。


1894年、美術担当編集主任として
挿絵入り文芸誌「イエローブック」創刊。




さて、この絵。



1896年発刊、「サヴォイ」4月号の表紙。


「イエローブック」より追放されたビアズリーが

アーサーシモンズと共に創刊したものです。


ビアズリーとしては比較的温和なイラスト。
お得意の、細線や点線を駆使した画風が目を惹きます。


貴婦人の寝室にお仕着せのフットマンと、道化師。




この道化師の意味するところは謎めいています。
ビアズリー特有の風刺をこめた演出でしょうか。


貴婦人は外出用の帽子を選んでいるようです。
ベッドの脇には小さなデスクとミラー。

脚の形は少し異なりますが、パンカーダにもこのように
レディのプライベートスペースにぴったりのデスク がございます。




テーブルトップにぴったりのフランスのミラーも。
パンカーダのシルバープレートのミラーは1880年代のもの。
ちょうどこの時代と重なります。




なにげない貴婦人の日常を、どこか含みのある仕上げで
完成度の高い表紙としています。


20世紀の曙をみる前のわずか25年間、
ロンドンとパリを駆け抜けていったビアズリー。


そのあまりにも鋭い筆致は、今も見る者をとらえてやみません。


正統派の絵画の影に隠れるように存在しつつも
どうしようもなく魅力的な、過激なまでの主義主張。




世紀末の爛熟した英国文化が生み出した妖しい花を
愛でてみるのも一興かもしれません。



by N


*テーブルミラーはサイト未掲載です。詳細はお問い合わせください。

パンカーダ自由が丘 TEL:03-5701-7380

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2015-03-22 09:20:32

名画にみるアンティーク:賑やかなおしゃべり

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今日はとびきりエレガントな絵を生み出す画家をご紹介します。


チャールズ・ジョセフ・フレデリック・ソウラクロス
/Charles Joseph Frederic Soulacroix(1825-1879)は
1825年にフランス南部・モンペリエに生まれました。



1849年にパリのサロンでデビューした彼は、その優美な世界観と巧みな筆致で、
当時の富裕層に絶大な人気を得たと言われています。


「The proposal」



エレガントなドレス。

凝った壁紙。

高価な家具。

シルクサテンのファブリック。




「A Lady in her Boudoir 」




彼の生涯は長くはありませんでしたが、その間ずっと評価が高く
現代でもその人気は衰えていません。



さて、この絵。




タイトルは「A Stirring Conversation」


「賑やかなおしゃべり」と訳せばよいのでしょうか。



一方、この絵は過去にクリスティーズでオークションに出品されたこともあり、
その時のタイトルは「Afternoon Tea for Three 」となっています。
副題でもあったのかもしれません。




貴婦人が三人よりそってのお茶会。


上流階級の夫人らしく、白い滑らかな肌。


ご婦人だけで寛ぐお茶会らしく、それほど着飾り過ぎない、

ゆったりとしたドレスに身を包んでいます。




それでも、輝くようなサテンのドレスはその肌触りまでも伝わってきそう。


軽食やお菓子もいらない、お茶と、おしゃべりが主役の小さく優美なひととき。



三人の輪の中には、彼女たちに負けないほどに優雅なテーブルがひとつ。


なめらかな曲線の脚が美しい、小さなオケージョナルテーブルです。
恐らく脚は真鍮かブロンズ、天板は石でしょうか。
華奢に見えても意外に重いのかもしれません。



このテーブルがここにあるからこそ、ドレスのしなやかさ、優しい色合いが引き立つようになっています。


少し素材は異なりますが、良く似たフォルムのオケージョナルテーブル がパンカーダにもございます。




素材は銘木、ローズウッド。


象嵌の天板も見事ですが、しなやかな脚のフォルムが

まるで重力を感じさせないよう。



19世紀後半、フランスはナポレオン・ボナパルトの甥による第二帝政が敷かれていました。政治の動乱のなかにも、しっかりと腰を据えていた富裕層は間違いなくしたたかに生き延びていました。そして、そんな動乱があるからこそ、フレデリックの美しい絵が人気だったのかもしれません。



三人の貴婦人たちのように、綺麗な脚のテーブルをひとつ、
ティータイムのお共にいかがでしょう。





19世紀後半のフランスが生んだ、ひとときの夢を共にみながら。


by N








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2015-03-16 10:00:00

名画にみるアンティーク:Grandmother's Birthday

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今日はスコットランドのアーティストをご紹介いたします。


ジョン・ヘンリー・ロリマー/John Henry Lorimer(1856-1936)。



エディンバラ大学の教授であるジェームス・ロリマーの子として生まれました。
エディンバラで育った彼は、エディンバラ大学をでたのち、
ロイヤルスコティッシュアカデミーに所属します。


人々の生活を生き生きと描く風俗画、そしてその人となりを鋭く描き出す肖像画。
ロリマーはその分野にて秀でた作品を多く残しています。




Sir Robert Lorimer, A.R.A., as a Boy/1875
*ジョン・ヘンリー・ロリマーの弟の肖像
(テートギャラリー蔵)





The Flight of the Swallows/1903




さて、この絵。




タイトルはGrandmother’s Birthday。
1893年の作品です。


天井の高いダイニングルーム。
大勢の子供たちがテーブルを囲んでいます。


子供たちの後ろには数人のメイドと、赤子を抱えた乳母が控えています。



子供たちは、やや顔をふせ、なにか祈っているよう。
タイトルは「おばあ様の誕生日」なのに、主役のおばあ様の姿が見えません。



注目は一番手前の椅子。


誰も座っていませんが、柔らかそうなクッションが置かれ、
テーブルにはきちんとお皿がセッティングされているのがわかります。




・・・きっとここがおばあ様のお席。


推測ではありますが、きっとおばあ様の今のお住いは天国なのではないでしょうか。


一族に慕われたおばあ様のお誕生日、孫たちはその日を「特別な日」として
集まり、天国のおばあ様と一緒にお食事をする・・・。

そんな光景を描いたような気がします。



凝った内装、豪華なテーブル。
子供たちの服装から見ても、かなり裕福な家庭であることがわかります。



そして、ダイニングチェアは英国家具の正統派、チッペンデールのリボンバック。

素材はきっと選りすぐりのマホガニー。




おばあ様のお席だけが、肘掛つきのアームチェアであることも見逃せません。



普段はメイドや乳母と子供だけで、キッチンやファミリールームでとる食事も

今日だけは、高価なマホガニーの家具が置かれた、正式なダイニングルームで。


そういえば、子供たちはちょっとかしこまっているようにも見えます。




あたたかな色合い、優しい筆致。


時は英国ヴィクトリア時代の終わり頃、成熟した社会がもつ、気持ちを尊ぶ心。

祖母から孫へと受け継がれる、確かな想いがこの絵には込められているようです。


by N


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2015-03-07 09:00:00

名画にみるアンティーク:「ポーラ・タンカレー」のキャンベル夫人

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先日この特別企画でご紹介したジョセフ・ソロモン




今日は彼の傑作をご説明するまえに、一人の女優をご紹介しましょう。




キャンベル夫人/Mrs.Patrick Campbell(1865-1940)はロンドン出身の女優。










1893年、A.W.ピネロ作『第二のタンカレー夫人』のポーラ役 (1893) で認められ,イプセン、シェークスピア、ズーダーマンの「故郷」、G.B.ショーの「ピグマリオン」の女主人公の役を得意としました。豊かな演技力、美貌、気まぐれ、毒舌で知られ、レイトヴィクトリアンからエドワーディアンにかけての英国では、とても評判の女優でした。




彼女の素顔を、思いがけないところで見つけました




20世紀を代表するアメリカのダンサー、イサドラ・ダンカン/Isadora Duncanをご存知でしょうか?彼女の自伝に以下のような文章があります。












「私たちはその女性について行き、ケンシントンスクエアの彼女の美しい家を訪ねた。その家にはバーン・ジョーンズ、ロセッティ、ウィリアム・モリスなどが描いたこの夫人の素晴らしい肖像画がかかっていた。その女性はパトリック・キャンベル夫人だった。彼女はピアノの前に座ると、私たちのために演奏し、イギリスの歌をうたった。それから、詩を朗読し、最後に私が彼女のために踊った。彼女ははっとするほど美しかった。豊かな黒髪、大きな黒い瞳、クリームのような肌、そして女神のような声をもっていた。」






これはちょうどダンカンがロンドンに滞在していた1899年のことと思われます。




キャンベル夫人の優雅な姿が目に浮かんでくるような描写です。




さて、この絵。








「ポーラ・タンカレー」のキャンベル夫人

/Mrs. Patrick Campbell as "Paula Tanqueray"

1894年




クリームのような肌をもつキャンベル夫人が豪華な衣装を身にまとい、

晴らしいレディステーブル
の前に腰かけています。











背景には、これもまた凝ったパーティション
が立てられ、

さぞ贅を尽くした邸宅の一角であることを窺わせます。








でも、なぜか女性の目に輝きはなく、表情はうつろ。











実は「ポーラ・タンカレー」とは、大富豪タンカレー氏に

後妻として嫁ぎ、様々な苦悩を抱える主人公の名前。




役柄の深い苦悩、演じる女優の内側からこぼれ出す様な美しさ、

そして当時の英国の富裕層を表す豪華な舞台装置で

見る者の心をつかむ深い叙情を表現しています。




画面から迫ってくるのは、当時の英国がもつ富と闇。




いつの時代でもある解決しがたい人間の業を巧みな筆致と類まれな美的感覚で傑作に仕上げた深い陰影をもつ1枚です。




傑作の舞台を再現するために、当時そのままの

ヴィクトリアンのパーティションとレディステーブルで

往年の名女優の席を設えてみるのも一興かもしれません。












・・・もちろん主役は、あなたです。




by N













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2015-03-03 10:00:00

名画にみるアンティーク:ベジーク・ゲーム

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19世紀後半のパリで大きな役割を果たした一人の男。





ギュスターヴ・カイユボット/Gustave Caillebotte(1878-1894)。
パリに生まれ、裕福な家に育ちました。
一時は法律家を目指しますが、やがて画家として生きていくことを選びます。



彼はパリにおいて自らも創作活動を行いながら、その恵まれた資産でシスレーやマネ、ドガやルノワールなど印象派の画家たちを支援し、特にモネには援助を惜しみませんでした。



さて、この絵。

二人の男がゲームに興じ、他の男たちは熱心に見物中。
タイトルは「ベジーク・ゲーム/Game of Bezigue/La Partie de Besique」。

製作年は1880年。


ベジーク・ゲームとは2~6のカードを除く32枚のカード2組、計64枚で遊ぶカードゲームのこと。19世紀中頃フランスで生まれたと言われています。



ここで注目していただきたいのはテーブル。


これはゲームテーブル、もしくはカードテーブル といい、天板が布で張ってあり、カードさばきがし易いようになっています。天板は折り畳み式。たたんであるときはコンソールテーブルとしても置いておけるアイテムです。





テーブルの幕板が一部ニスの色が明るいことから、このゲームテーブルも折り畳み式であることがわかります。脚の彫り物などをみると、かなり良いお品物。資産家であるカイユボットの屋敷にあるゲームテーブルはマホガニー製でしょうか。それともローズウッド?



部屋の内装は金箔のモールディングが廻され、上質な雰囲気が漂っています。





カイユボットは弟と二人で1879年からオスマン大通り31番地に住み始めました。


家はオスマン大通りとグリュック通りの角地にあり、とても眺めがよく、二人の家には多くの友人が訪れました。この絵も彼らの家で過ごす友人たちの様子を描いたものといわれています。




カイユボットはこの絵を描いた1880年頃から徐々に絵を描くことが減り、ボートやガーデニング、議員活動を主に行うようになりました。1894年、45才で短すぎる生涯を終えます。


フランス画壇で当初評価の低かった印象派の画家たちを積極的に支援し、多くの傑作を生みださせた影の立役者、カイユボット。



その確かな目で選び抜かれた家具は、きっと当時最高級のものであったに違いありません。


静かななかにも確かなこだわりが感じられる1枚です。



by N





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2015-03-01 09:00:00

名画にみるアンティーク:港を見渡す部屋

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19世紀後半の風俗画の名手といえばジェームズ・ティソ。




ジェームズ=ジョセフ=ジャック・ティソ
/James-Joseph-Jacques Tissot(1836-1902)。


ティソは1836年、フランス南部の町ナントに生まれました。パリで絵を学びますが1871年、パリ・コミューンで戦い、その後1871年ロンドンに亡命。ロイヤルアカデミーに社交界の絵を出品し、大成功を治めます。ロンドン滞在は10年に及び、多くの作品をうみだしました。



ジャポニズムを愛した彼は多くの日本美術品を愛し、
絵のモチーフとしたことも度々ありました。




晩年は宗教画に転向しますが、評価された作品は風俗画が多く、当時の富裕層の華やかな生活を描いた絵はいまだに多くのファンを持っています。


さて、この絵。



タイトルは「Room overlooking the harbor」。
製作年は1876-1878年。ティソ、ロンドン滞在中の作品。


港を見渡す部屋の窓辺。
凝った手すりのテラスの向こうには、間近に船のマストがせまっています。


ティソは度々テムズ河やポーツマス港を好んで題材にしました。ここは大戦で大きな被害をうけるまえ、大英帝国の港として栄えたポーツマス港かもしれません。



テーブルの上には調味料のセットやオレンジ、トーストラックなどがみえます。
少し遅めの朝食のあとでしょうか。



物憂げに座り本のページをめくる女性。
座っているのはきれいなカーヴをもつサロンチェア



明るいレッド&ホワイトのクロスがかかったテーブルはサザーランドテーブル


仕組みはゲートレッグテーブルのように開閉式の天板をもつテーブルですが、さらにクオリティが高く、エレガントなものがサザーランドテーブルです。

正式なディナーに使うのではなく、この絵のように朝食やティータイムなどに重宝されました。




天気の良い朝。


「今日はテラス際に朝食のテーブルをつくって」

・・・とレディはメイドに言ったのでしょうか。


この後、メイドがテーブルを片づけた後、
小さくたたんで部屋の隅にもっていく様が目に浮かびます。



良く見れば画面左端には新聞をもった人が。




ごつい手からみるとおそらく男性で、この女性の夫なのでしょう。


ひととおり朝食が終わり、思い思いに過ごす。
海からのここちよい風にあたりながら。


広い海の遙か向こうまで手にしていた大英帝国。
実はここから見渡しているのは、港ではなく、世界なのかもしれません。



by N









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2015-02-22 09:00:00

名画にみるアンティーク:居心地の良い場所

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今日ご紹介する画家は、今では世界中に広まったある習慣の
「はじめて」を描いた人物です。



ジョン・コルコット・ホーズリー/John Callcott Horsley(1817 - 1903)。




彼は1817年、ロンドンに生まれました。
父は音楽家であり、ヴィクトリア女王からナイトの位を
授かったコルコット卿の縁者でもありました。


1843年、画家として既に成功し、ロイヤル・アカデミーの会計会長の職務にあった彼がヴィクトリア&アルバート博物館の設立者ヘンリー・コールからの依頼で描いたのは世界初の「クリスマス・カード」でした。





さて、この絵。





タイトルは「A Pleasant Courner」。

製作年は1865年。


光り差し込む窓辺の花瓶にはスノー・ドロップが飾られています。
冬の終わり、まだ少し遠い春。
英国はまだまだ寒く、暖炉の炎はかかせないものでしょう。




でも窓から差し込む陽は暖かさを増し、
窓辺のベンチは心地よい光で溢れています。


ベンチ上、壁面の装飾はおそらくCUOI D'ORO/クオイドーロ。
日本では「金唐革/きんからかわ」という名前で知られています。




ルネサンスの巨匠・サンドロ・ボッティチェリが完成させた壁面装飾の技法です。牛革に特殊な金属箔をつかい、金型をつかって凹凸をつけたこの技法はイタリアを発祥とし、その後ヨーロッパ各地の宮廷や寺院などの壁面を飾ってきました。




そのようなクオイドーロがあるお屋敷は、さぞ立派なものだったに違いありません。


そんなお屋敷の一角。立派な書物をかかえる女性。
ドレスは深みのあるワインレッドのベルベット。
小脇には更に数冊の書物が見えます。




腰かけているベンチはがっしりとした作り。
恐らく英国家具で一番歴史が古い、オーク材でしょう。

修道士がつかっていたというモンクス・ベンチだったかもしれません。




頬の赤みは、暖炉の暖かさのせいか、
それとも、本から得られる心地よい興奮のためでしょうか。


遠くをみつめる柔らかい瞳に、満ちたりた生活が
あるからこその知的好奇心が輝いています。





豊かな安心。暖かさ。ぬくもり。

それは1865年の英国がもつ余裕そのもの。


いつまでも傍に置いて心癒されたくなる、そんな1枚です。


by N

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