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展示会研究所 代表:辻井勝の公式ブログです。


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展示会専門誌に、連載記事を書かせていただくようになって数年が過ぎた。

当初は展示会出展に際してのノウハウをコラムとして書いていたのだが、このところ展示会「現象」についての現象学的考察になってきている。

現象学には、自分が美術学生だった頃に教材副読本としてのメルロ=ポンティとの出会いがきっかけとなり引き込まれた哲学の思考系だ。

「見えるもの」とは何か、を考える美術学生にとって、それは刺激に満ちていたし、実際の制作にただちに関与する「見ること」の思想だった。

3年前に、ある哲学者の先生と出会って、もう数十年遠ざかっていたそれらの書物をまたひもとく機会を得て、ここ3年ほどむさぼるように読み直している。

このところ、またメルロ=ポンティの著作をしげしげと読んでいて、以前よりもそれが自分に近づいてきたことを感じている。

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ひとの日常的な理解というのは、たいてい一つのぼんやりとした概念へのつながりをもつ、いくつかの「より知っている概念」から構成された理解系を持っている。

それらの系がいくつも並列して、日々の「日常の世界」が了解されている。
この系を「理解系」とたとえば呼ぶことにしよう。

系の下部は感覚を頼りにつねに明滅している。
つまりまだ確たる概念としてではないあるまとまりとして、かいま見えるものだ。

それらの日常的な「理解系」を構成するひとつひとつの概念は、下部のものが更新されるたびに意味を捉え直す。

感覚を頼りに明滅するこの下部の概念は、メルロ=ポンティの言う物理的・生理的層に属するものだろう。
視覚や聴覚や触覚などの「感管」が受け入れる生な「世界」のあれこれの具体的な現象としてそれが確認される。

この日常的な「理解系」の上下構造の「下部」とは、また「遠さ」として描かれなくてはならない。
それは太陽系や銀河系と同様に中心(milieu)を持つ広がりだ。

また入り乱れる複数の系は互いを排除せず、霧と霧が混ざり合うように浸透しあう。
それは生物としての「他人」でありまなざしを向ける先にあるテーブルであり、読んでいる本や見ているテレビの内容だ。

その「内容」や「他者」がおりおり自分に見せる「意味」の理解というのは、霧が互いに混ざり合うような、その時々の濃度的な差異であり、揺らぐ霧のベクトルだ。
理解というのは霧構造なんだよね。

霧の構造だから、おのれの理解の系の最下部にあるあれこれの具体的な現象に対する思考抜きにしてはそれぞれ上位に構えつつある概念にたいして何事も考えることなどできない。
つまり上部構造(近いところにあるぼんやりとした概念)だけでその霧の全容は掴めない。

メシ旨い、太陽がまぶしい、そこから始まるそのはじまりがつねに大事だ。それこそが「いまつかんだ世界そのもの」であり、そこからしか始まらない。

カントの言う「理性の僭越」とは、この理解の下部構造への手触りを忘れるなということと解釈する。(勝手に)

デカルトが全てを疑ったのも同様な理屈からだ。
彼は疑った後に最後に「我が思う(コギト)」が残るという。

某先生の言うエネルゲイアへの立ち帰りも、たぶんそこを指さしているし(このあたりは憶測)そうすると系図としては「汝自身を知れ」まで戻らねばならぬということになる。

つまりは「タレス的な誤謬(万物の元素はうんぬんである)」が生成する現場を解析しさらに感じ取れということではないのか。

フッサールはデカルトの「我思う」をさらにコギタチオ・コギタートゥム、ノエシス・ノエマに分解して反省しようとしたが、それはそれが上部構造的な思考だったから最後までフッサールの中でまとまらず、晩年「いきいきした世界」という理解で辻褄を合わそうとした。

そのフッサールが残した膨大な遺稿を、真っ先に点検したのがメルロ=ポンティで、彼はその中に下部構造への理解こそ世界が立ち現れる「中心(milieu)」であると気がついた。えらいぞメルロ=ポンティ。

そしてそれを剣として二項対立的な哲学世界の転覆を計るが、惜しくも53歳の若さで逝く。

フッサールの一番弟子だったハイデガーは、徹頭徹尾フッサールの教えに沿った「存在と時間」の中で、「本来的な生への根拠」を「死への不安」に置いたが、メルロ=ポンティは「知覚の現象学」の中で、それは「より生きること」である、と言い切る。

それが20代だった自分がメルロ=ポンティにはまった理由だ。

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自分も今やメルロ=ポンティが死んだ歳になってしまった。
彼が見ていたその「世界」を、せめて長生きして自分が死ぬまでに理解したいと思う。

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